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第2章  点検・評価の基本的視点

(1) 大学等の多様化・個性化への対応
  現在,大学審議会答申等でも提言されているとおり,各大学における教育研究等の多様化・個性化が求められている。これを踏まえ,国立大学等における施設に関する点検・評価は,多様な教育研究を支える基盤としての観点から捉える必要があり,個々の建物,設備に限らず,学習,教育研究のための場としてのキャンパス全体について捉え,各大学等における特色ある活動の展開に対応した多様な評価軸によって行われる必要がある。
  このため,施設について一律の尺度で評価することによって,国立大学等の多様化・個性化を妨げることがないよう留意する必要がある。国が施策を推進する際においても,特色ある教育研究の展開を支援する観点から,各国立大学等の点検・評価に基づく施設の整備・活用に関する方策を積極的かつ柔軟に捉える姿勢が重要である。このため,大学等が理念・目標等に対して固有の尺度で評価する面と,一定水準を確保する観点から定量的基準に照らして客観的に評価する面の二つの観点での整理が必要である。

(2) 評価に基づく重点的整備,有効活用
  前述の大学審議会答申においては,「自己点検・評価の充実」,「第三者評価システムの導入」とともに,大学の教育研究の個性を伸ばし,質を高める適切な競争を促進し,効果的な資源配分を行うため,きめ細かな評価情報に基づき,より客観的で透明な方法によって適切な資源配分を行う必要がある,との提言が示されている。
  また,11年6月にとりまとめられた学術審議会答申「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」においては,我が国の大学等の研究施設の老朽化,狭隘化が進むなか,学問の動向,研究活動の状況,COEの形成などの観点から,ある程度対象を絞り込んだ重点的整備や,施設の利用形態の見直し等既存施設の有効活用を進めていかざるを得ない状況にあり,その具体的な方策等について検討していく必要があることが提言され,競争的資金の獲得状況等に応じてその研究用スペースをより重点的に配分することや可能な限り研究施設の共同利用化を推進することの必要性が示されている。
  更に,第2期科学技術基本計画では,施設の効果的・効率的利用を図る観点から,各部局が共有する総合的・複合的な整備を進めること,点検・評価も踏まえ,学長のリーダーシップの下に施設利用の弾力化を推進するなどとされている。
  これらを踏まえ,施設の効率的・効果的な利用を図るため,教育研究活動の評価との連携をとりつつ施設の現況や利用状況の点検・評価に基づく施設利用の弾力化,有効活用を一層推進する必要がある。
  今後の高等教育・学術研究の進展,多様で個性ある教育研究の展開への対応など,国立大学等施設に対する課題に効果的・効率的に対応するため,施設そのものの現状に関する点検・評価とともに教育研究活動等に対する評価に基づく重点的整備を進める必要があり,また,施設整備のみならず,施設の利用計画においても,教育研究活動等の内容の評価に基づく優先的利用など施設の有効活用を進める必要がある。

(3) 施設に関する多様な評価軸と総合的評価
  国立大学等における活動は実に多彩であり,独創的・先端的学術研究,創造性豊かな人材の育成,産学の連携協力,地域との連携交流,国際交流,キャンパス生活など多岐にわたっている。したがって,このような活動を支える施設に求められる役割は多様であり,教育研究を支える基盤としての役割はもちろんのこと,快適なキャンパス生活を支える環境(アメニティ)の充実,環境への配慮,地域のなかでのシンボル性など,さまざまな要素で構成されている。
  このため,点検・評価によって捉える施設の現状・目標も多面的に捉える必要がある。点検・評価で捉える側面は,各国立大学等の掲げる理念・目標に応じて,重きを置く事柄に差異があるものの,あくまで単一的側面で捉えるのでなく,長期的視点に立ち,多様な評価軸をもって総合的に評価する必要がある。
  施設に関する点検・評価を実施する場合,利用効率,投資効果などの効率性を中心とした側面が判断基準として重要であることはいうまでもないが,一方,国立大学等施設については,必ずしも効率性など一定の評価尺度だけで測り得ないものとして,アメニティ,シンボル性など良好なキャンパスを形成する重要な構成要素が存在することに留意する必要がある。

(4) 自己点検・評価と第三者評価
  先に出された大学審議会答申においては,各大学の教育研究の個性を伸ばし質を高める努力を促進するために大学の教育研究活動等に対する評価を充実することが提言されている。国立大学等の教育研究基盤である施設に関しても国民の公的財産であるとの認識から,施設の現状及び施策について学外者による評価も含め,自己点検・評価の充実とともに,より透明性,客観性の高い第三者評価を取り入れる必要がある。
  施設について点検・評価を行う際には,施設の利用方法等運営に関わる事項などについて多様な視点からの検討が求められることが考えられる。このため,大学の教育研究の充実に向けての外部からの期待など,学外者による評価を取り入れるべき事柄について,検討,整理する必要がある。

(5) 大学等における運営体制の整備充実
  21世紀の大学の組織運営については大学審議会答申において,「大学を取り巻く様々な課題に積極的に対応していくためには,予算・定員・施設等の各種資源の効果的配置や再配置の問題,各種基盤整備の問題について,大学が全学的見地から取り組み一個の組織体として意思決定を行うことが求められる。」との指摘がなされている。
  大学等において点検・評価の充実とその活用を図るためには,点検・評価の前提となる大学等の理念・目標やこれに基づく重点事項の明確化,点検・評価に基づく様々な課題への対応方針の策定について,全学的見地からの検討が重要であり,また円滑かつ信頼性の高い点検・評価を実施するために,全学的に取り組むことが重要である。
  このため,点検・評価の実施とその活用について,学長のリーダーシップの確立や全学的な学内の意思決定システムを構築することが重要であり,また点検・評価を実施するための全学的な体制づくりが重要である。
  キャンパス整備にあたり,計画の企画立案から設計,建設や施設管理まで一体的に実施,推進できる機動的体制の整備が必要である。

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