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国立教育政策研究所文教施設研究センター
「教室の健全な環境の確保等に関する調査研究」研究会

教室の健全な環境の確保等に関する調査研究報告書(2次・概要版)【抜粋】

 近年の多様化・高度化・複雑化する教育活動に適切に対応していく上で、施設整備の面においても弾力的対応が求められている。
 このような状況を踏まえ、今後の学校施設整備に係る施策に資するため、平成16年7月より教室の天井高などの環境条件が児童生徒の心身の健康に与える影響等を明らかにしつつ、教室の健全な環境の確保等について調査研究を行った。

1 報告書の構成

1 教室等の室内環境に関するこれまでの検討経緯等
2 教室環境の現状及び今後の在り方に係る多面的検証
 教室環境の現状及び今後の在り方について次のような多面的な検証を行った。
 
1. 建築基準法制定時からの変化
 建築基準法制定時(昭和25年)から現在までの(1)教育内容・方法と教室空間等の多様化、(2)建築設備等の変化、(3)社会的状況等の変化について整理。
2. 教室等の室内環境の現状の評価及び要望
3. 教室等の室内環境の変化等による影響・効果(実測調査等)
4. 国内外の教室等の室内環境に関する事例
5. まとめ


2 調査事項の目的・内容等

事項 調査目的・対象 調査内容・項目
2. 教室等の室内環境に対する現状の評価及び要望
 児童生徒、教師等の教室利用者や学校の施設整備・管理担当者の教室空間等に関する評価、認識、要望等の幅広い意見を把握するために、アンケート・ヒアリング方式等による調査を実施した。
2-1 児童・生徒の意識
 首都圏20校の小・中・高等学校の児童生徒10,246名を対象に、現在の教室環境に対する印象・評価を把握するためにアンケート調査を実施した。
1  教室に対する印象・認識について代表的な形容詞(ゆったりした、天井が高い、落ち着いた感じ等)毎の5段階(小学校低学年は3段階)評価
2  教室への満足/不満足に係る評価、及び自由記述による評価、要望
2-2 教師の意識
 全国の小・中・高等学校の教師を対象に、現在の教室環境に対する認識・評価、要望等を把握・分析するためにアンケート調査を実施した。
 
1  公立学校
(ア)  小学校:各都道府県各3校の各学年1名 165校/893学級
(イ)  中学校:各都道府県各3校の各学年1名 154校/443学級
(ウ)  高校:各都道府県各2校の各学年1名 91校/273学級
2  私立学校
(ア)  小学校:各学年1名 8校/48学級
(イ)  中学校:各学年1名 11校/33学級
(ウ)  高校:各学年1名 16校/48学級
1  基本調査
(ア)  教室の室内環境(学級人数、家具、空調設備の状況、オープンスペースの有無等)に関する調査
2  教室から受ける印象についてのアンケート調査
(ア)  教室に対する印象・認識について代表的な形容詞(ゆったりした、天井が高い、落ち着いた感じ等)毎の5段階評価。
(イ)  教室への満足/不満足に関する評価(記述式)
(ウ)  教室環境に必要な事項及び工夫・整備に関する認識(選択肢式)
(エ)  自由記述による要望等
2-3 保護者の意識
 児童生徒アンケートを実施した小・中・高等学校の児童生徒の保護者を対象に、現在の教室環境に対する印象・認識及び、重要と思われる事項について把握するためにアンケート調査を実施した。

(ア)  小学校 6校/77人
(イ)  中学校 2校/20人
(ウ)  高等学校 3校/44人
計141人
1  教室に対する印象について代表的な形容詞(ゆったりした/天井が高い/すいている等)毎の4段階評価
2  今後、教室環境に必要と思われる事項及び計画・設計上の工夫が必要と思われる事項について調査
3  自由記述による要望等
2-4 施設管理者の意識
 全国の小・中・高等学校の施設整備・管理担当者を対象に、教室環境及びその整備に関する認識・評価と要望等について把握するためにアンケート調査を実施した。
1  公立学校
 各都道府県(47)及び都道府県ごとに各6市町村(282)、計329の自治体に調査を依頼。323の自治体より回答(98パーセント)。
2  私立学校
 小学校、中学校、高等学校のいずれかを設置している23者より回答。(23者のうち、小学校設置者は8、中学校設置者は12、高等学校設置者は17(重複設置あり))
1  教室の良好な環境づくりに関すること
(ア)  教室環境として重要だと思われる事項
(イ)  教室空間の計画・設計上工夫が必要と思われる事項
2  教室空間の形状に関すること
(ア)  教室の天井高の基準に関すること(基準に関する認識等)
(イ)  教室の天井高の実態について(天井高を意図的に変えている普通教室の有無等)
2-5 施設設計者の意識
 学校建築に見識を有する建築家(4人)を対象に、学校施設・教室等の計画・設計について、現在、意識している問題点やその改善方策等に関する意見等を把握するためディスカッション方式のヒアリングを実施した。
1  日頃、学校建築のデザインにどんなことをテーマとしているか
2  教室・オープンスペース廻りのデザインにどんな工夫をしているか
3  教室の天井高3メートルの規定(建築基準法)についてどのように思うか
4  その他、学校建築に関する諸基準、法規について気になっていることなど
3. 教室等の室内環境の変化等に関する影響・効果【実測調査】
 埼玉県S市のH小学校及びY中学校の余裕教室を利用して、天井高が異なる(2.4メートル、2.7メートル、3.0メートル)設営室を設定し、それぞれ同じ学年を1クラスずつ割り当て、2週間ずつ仮のホームルームとして学校生活を体験してもらい児童生徒等に対しアンケート調査、行動観察等を実施した。
1  児童生徒アンケート調査
2  行動観察調査
3  担任教師アンケート・ヒアリング
4  熱・空気環境測定
3-1 児童生徒アンケート調査
 天井高さの異なる設営室での学校生活を体験した児童生徒を対象に、設営室の印象等について把握・分析するためにアンケート調査を実施した。
1 H小学校: 2、4、6年各3クラスの児童
2 Y中学校: 1、2年の学3クラスの生徒
 設営室への移動初日と2週間体験した最終日にアンケート調査を実施
1  設営室の印象・認識について代表的な形容詞(ゆったりした、天井が高い、落ち着いた感じ等)による5段階(小2は3段階)で評価
2  設営室に対し「満足していること」「不満足なこと」について自由記述。
3-2 行動観察調査
 設営室での2週間の体験期間中に児童生徒の行動を把握するために観察を行った。
 観察対象は、調査対象学年(小2、4、6、中1、2)のうち2.4メートルと2.7メートル設営室のクラス
 行動観察は各クラスとも基本的に移動初日及び2週目の体験最終日に実施した。
1  2.4メートル設営室の行動の特徴
2  2.7メートル設営室の行動の特徴
3  初日と2週間後の違い
3-3 教師の心理・空間認知
 設営室を体験したクラスの担任教師(H小・Y中)計15名に対し、設営室の印象・認識について把握するためにヒアリング及びアンケート調査を実施した。
1  アンケート調査
(ア)  設営室の印象・評価について代表的な形容詞(ゆったりした、天井が高い、落ち着いた感じ等)による5段階評価。
(イ)  設営室に対する満足/不満足に関する評価(記述式)
2  ヒアリングにより従来使用している教室に関する印象評価を聴取。
3-4 空気・熱
 設営室に機械換気設備を設置し、各設営室の体験期間中におけるシー オー ツー濃度、室温等について実態を把握するために観測を行った。
 暖房・換気設備
1  第3種換気扇(排気のみ):2台
2   FF式石油ストーブ:1台
 観測機器
1   シー オー ツー濃度計、温湿度計、微差圧計
3-5 コストスタディ
 教室の天井高を下げた場合の建設費への影響の程度等を把握するために、現行法規により建設された標準的な設計の小学校校舎(RC造3階建て、延床面積約3,200平方メートル、階高3.85メートル、教室天井高3.0メートル)の建設費と、これをモデルとして教室の天井高及び各階の階高を30センチメートル下げた場合、さらに天井高のみ30センチメートル下げた場合の校舎モデルの建設費を算出し、コスト比較を実施した。
1  性能仕様の検討
 天井高及び階高を30センチメートル下げることによる構造部材の寸法、照明機器及び空調機器の仕様等への影響の検討
2  コスト算出
 天井高及び階高を30センチメートル下げることにより数量減(上記1の検討結果を含む)となる構造部材、内外装材、電気機器・配線、機械機器・配線に係る工事費の算出
4. 国内外の教室等の室内環境に関する事例
   
4-1 国内の学校の事例、学校以外の施設の利用状況等
(1)  学校での教室空間の利用状況
 首都圏の小・中・高等学校21校(小12校、中6校、高3校)を選定し、教室の整備事例について調査を実施した。
1  学校長等に対するヒアリング
2  学校要覧、施設台帳など資料収集
3  学内見学、写真及びビデオでの撮影
4  教室及び教室周りの空間測定(天井高さ・形状を含む)
(2)  学校以外の児童生徒利用施設の利用状況
 学校以外の児童生徒利用施設の主な空間の形状や利用状況等についてのデータ整理、実地調査等を行った。
 対象施設
1  児童館・子どもセンター等
2  保育園・幼稚園等
3  自然体験施設・セミナーハウス・子ども科学館等
 調査内容
 建築雑誌等により対象施設の用途、規模、天井高、平面図、写真等の資料収集・整理
(3)  学校以外の施設の天井高の状況
 学校以外の一般諸施設の主な空間の形状等についてのデータ整理等を行った。
 対象施設
 オフィス、集合住宅、病院、福祉施設、図書館、店舗
 調査内容
 建築雑誌等により対象施設の用途、規模、天井高、平面図、写真等の資料収集・整理
4-2 諸外国の教室環境に関する基準、事例
(1)  諸外国における教室環境に関する基準等の調査を実施した。(11カ国/4州)
 社団法人日本建築学会調査報告書(文部科学省委託調査研究「教室等の室内環境に関する調査研究報告書 平成16年3月」)に示された「諸外国における教室等の室内環境に関する基準」を基に、更に、現地調査における情報収集を通じて、諸外国の教室環境等に関する基準を整理した。
(2)  諸外国における教室環境状況について調査を実施した。
 現地調査対象国
1  イギリス(ハンプシャー州:5校)
2  オーストラリア(ニューサウスウェールズ州:2校/ビクトリア州:3校)
3  韓国(ソウル特別市:3校/釜山広域市:3校)
4  スウェーデン(ストックホルム:3校)
 昨年度の日本建築学会調査結果等から基準等に関し詳細な調査が有効と考えられる諸国(イギリス、オーストラリア、韓国、スウェーデン)についての現地調査結果に基づき、諸外国の学校の教室環境整備の事例を整理した。


3 「教室環境の現状及び今後の在り方に係る多面的検証」のまとめ

 以下に、報告書の「2.教室環境の現状及び今後の在り方に係る多面的検証 5.まとめ」の抜粋を掲載する。

 各検討結果の後ろの項目番号(例2-1)は、13ページ〜16ページの「2 調査事項の目的・内容等」の検討事項における項目番号を指している。当該検討結果が項目番号の調査により分析された結果であることを示している。

〈現時点における主な検討結果〉

(1)  建築基準法制定時からの変化
 学校教育においては、建築基準法制定当時(昭和25年)に比べ、教育内容・方法の多様化が進んでおり、また、学級編制基準について、昭和33年当時の各都道府県の平均は60人であったが、義務教育標準法の制定(昭和33年)により、国において50人と明定され、現在は40人にまで引き下げられている。一方、教育等の場となる教室空間においても、教室面積自体は昭和25年の「鉄筋コンクリート造校舎の標準設計」の教室(63平方メートル)と同様な大きさのものも多く見られるが、教育の量的拡大期が過ぎ、教育内容・方法等の多様化への対応が求められる中、多目的スペースの整備など個別学習やグループ学習等の多様な学習形態に対応できるよう教室周りの空間構成の多様化などが進んできている。
 このような進展等により、教室空間における児童生徒一人当たりの気積は、昔に比べて大きくなってきていると考えられる。
 建築設備の高度化により、現在は以前に比べ、教室の良好な環境衛生の確保・維持が可能となってきている。
 近年、個性豊かな地域社会の形成、高齢社会・少子化への対応等の観点から、地方分権や規制緩和が推進されてきている。
 国、地方の厳しい財政状況、環境負荷の低減などの観点から、これからの学校施設は貴重な公共施設、社会資本として有効活用を図ることが必要であり、建物の長寿命化や用途変更等に対応できるよう余裕のある構造性能や空間の確保が重要な課題となっている。

(2)  国内における教室等の室内環境の分析
 教室空間に対する利用者の意識
(児童生徒)

 児童生徒の教室空間に対する印象については、小・中・高等学校の児童生徒が現在使用している教室の印象から分析すると、例えば、以下の結果が見られる。(2-1)
 学齢段階による傾向としては、全体的に、学齢が上がると教室は「せまい」「きゅうくつな」「圧迫感がある」と評価される傾向にある。
 クラス人数による傾向としては、従来型教室の場合、全体的に、クラス人数が増加すると「せまい」「きゅうくつ」「圧迫感がある」「ごちゃごちゃした」の評価が多くなる。
 天井高に対する意識については、従来型教室の場合、小・中・高等学校において、高い、低いの「どちらでもない」という評価が最も多く、4〜6割を占めている。
 教室の天井高が児童生徒への心身の健康に与える影響については、実測調査における小・中学校の児童生徒の設営室に対する印象から分析すると、例えば、以下の結果が見られる。(3-1)
 「天井が高い・低い」についての印象は、学齢に関係なく設営室の天井高が下がるに連れて、設営室の天井高を低いと評価する傾向が顕著に見られた。
 「教室が広い・狭い」についての印象は、2.7メートルと3メートルの設営室については、両者に差はあまり見られず、2.4メートルと比べ「広い」寄りの評価傾向が見られる。
 「教室が落ち着いた・落ち着かない」についての印象は、2.4メートル・2.7メートル・3メートルの天井高の違いによる大きな差は見られないが、3メートルよりも2.7メートル・2.4メートルの設営室の方が「落ち着いた」寄りの評価傾向が見受けられる。
 「黒板の文字が見えやすい・見えにくい」についての印象も、2.4メートル・2.7メートル・3メートルの天井高の違いによる大きな差は見られない。また、全体として「見えやすい」寄りの評価傾向が見られる。

(教師)
 教師の教室空間等に対する印象については、小・中・高等学校の児童生徒が現在使用している教室の印象から分析すると、例えば、以下の結果が見られる。(2-2)
 児童生徒が見えやすい、声が通るなど、教師の授業のしやすさに関する評価は比較的高い。「広さ」「密度」に関する印象は小・中・高等学校ともに低い評価傾向が見られ、学齢が上がるに連れて評価が下がる傾向が見られる。また、学級規模(1学級当たりの人数)が大きくなるに連れて評価が下がる傾向が見られる。
 天井の高さに関する印象は、小・中・高等学校ともに「どちらでもない」が大半を占めている。
 教室環境として重要性が高い要素は、小・中学校では、「安全性・防犯性」次いで「快適性」があげられ、その環境を実現するための工夫・整備として、全学校ともに「教室の広さ」、次いで、「空気・熱」「光」「音」環境に関する需要が高い。なお「天井の高さの確保」の回答については、全体の中ではかなり少ない状況となっている。
 教室の天井高の変化に対する教師の印象については、実測調査においては、例えば、以下の結果が見られる。(3-3)
 全体の印象としては、天井高の変化には、2週間目では「慣れた」と答える教師が多かった。また、2.4メートル以外の教室は概ね好印象で、教室環境に対する「不満」の理由は、内装の老朽化や汚れ、収納スペースの少なさなどが多い。
 なお、2.4メートルの設営室を体験した教師からは、例えば、天井が低くなった結果、音が響くこと、掲示スペースが狭いことなどの不満の意見が聞かれた。

(施設管理者)
 地方自治体における学校の施設整備・管理担当者の教室環境に関する印象等については、以下のような結果が見られる。(2-4)
 重要な教室環境として、児童生徒の「安全及び健康」と「居住性」に関する事項が重要度の上位に挙げられ、その環境を実現するために計画・設計上、工夫が必要な事項として、「広さ」のほか、「光」「熱・空気」等に関する事項が多く挙げられる傾向が見られる。
 天井高の基準3.0メートルについては、小学校では「高い」側の評価が多く見られるが、全体として各学校段階とも、「高い・低い」のいずれでもない「適当」の評価が最も多くなっている。(5〜8割)
 天井高の基準で制約的に感じたこととして、「既存施設の改修(2重床、OAフロア等に関すること」が最も多い。

(保護者)
 保護者の教室環境に関する印象等については、以下のような結果が見られる。(2-3)
 天井の高さに関しては、ほとんどの保護者が「高い」「高い、低いのどちらでもない」と認識。教室環境に重要と思われる事項は、小・中・高等学校とも「安全・防犯性」及び声の聞き取りやすさ等の「授業へ集中できる環境」を望む傾向が見られる。

 学校環境衛生への建築設備による対応
 空気汚染の緩和、採光・照明環境の保持については、日本建築学会の調査研究報告書(平成16年3月)も含めて検討すると、建築設備の設置等により対応可能である。

 教室の形状における設計上の工夫
 例えば、以下のような設計上の工夫がなされている例があり、その形態は多様である。(4-1(1))
 天井を高くし、その形状を工夫して天窓やハイサイドライトを設置することにより、昼光の活用や自然換気の促進を図っている例
 通常より狭く天井高の低い教室の設置、アルコーブの設置など、空間を低く抑えたり小さくすることにより、「落ち着き」や「集中」を増すことなどを図っている例
 教室とそれに隣接したオープンスペースについて、一方の天井を高くすることなどにより空間に変化をつけている例

 建設費の検討
 現行法規により建設された標準的な設計の小学校校舎(RC造3階建て、延床面積約3,200平方メートル)と、これをモデルとして教室の天井高さ及び各階高を30センチメートル下げた校舎モデルの建設費を算出し、コスト比較を行った結果、総工事費は約1.5パーセントの減となった。また、教室の天井高さのみ30センチメートル下げた場合は約0.1パーセントの減であった。(3-5)

 学校以外の施設の天井高に関する状況
 学校以外の施設の天井高に関する状況については、近年の建築雑誌において掲載されているオフィス等の商業建築、病院・福祉施設・図書館・児童利用施設等の公共施設、集合住宅の実施例を見ると、天井高については、施設の設置者がその機能に応じて設定しており、2.1メートルの基準ぎりぎりに設定している例は一部の集合住宅を除き殆ど見られない。(4-1(2)(3))

(3)  海外の教室等の室内環境
 教室の設計上の工夫としては、例えば、学齢に応じて高さに変化をつけている例や、ハイサイドライトの設置により、換気・温度を調整したり、自然光を採り入れている例、児童の活動を活発にさせるため壁などに多様な色彩を用いている例などがみられた。また、机などの家具について、グループ学習をメインにした学校では、それに対応したものを使用している例が見られた。(4-2(2))
 教室の天井高の基準等については、最低推奨値として示している国は多く見られるものの、最低基準として示している国は少ない。最低推奨値を示している国は、2.7メートルに設定していることが多い。なお、教室の天井高について最低推奨値(例:2.7メートル)を示している国の中には、別に一般的な建築物の天井高さの最低基準(例:2.1メートル)を定めているところもある。(4-2(1))

(4)  教室環境に係る多面的検証のまとめ
 教室等の室内環境の評価については、天井高のみならず、教室等で行われる活動に係る要素(人数、学齢等)、教室空間の質に係る要素(広さ、平面形状、断面形状、空調・換気設備、仕上げ材等)などによる影響が確認された。
 国内外の教室の整備事例においては、空間の広がりや高さ、設え等が多様であることが確認された。
 海外においては、教室の天井高の最低基準を設定している国は少ない状況であった
 空気汚染の緩和及び視覚的・心理的・身体的な環境の保持の観点において、教室の天井高が3.0メートル以上なければならない直接的な根拠は見出せないが、教室空間の質を支える重要な要素の一つであると考えられる。


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