「2030デジタル・ライブラリー」推進に関する検討会(第12回)議事録

1.日時

令和8年2月5日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 東館17F研究振興局会議室 ※オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 新しい「デジタル・ライブラリー」の在り方について
  2. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

竹内主査、石田委員、大山委員、小山委員、杉田委員、西岡委員、林委員、日向委員、松原委員

文部科学省

土井学術基盤整備室長、麻沼参事官補佐、松林学術調査官

オブザーバー

青山学院大学 野末 俊比古 教育人間科学部長、東京大学 大向 一輝 准教授

6.議事録

目次


開会

目次

【〇竹内主査】
 それでは、時間より少し早いようですけれども、メンバーがそろっていらっしゃるということもございますので、第12回の「2030デジタル・ライブラリー」推進に関する検討会を開催いたします。
 本日は、現地参加とオンライン参加でのハイブリッドでの開催としております。報道関係者も含め、傍聴者の方にはオンラインで参加いただいております。また、通信状態等に不具合が生じた場合などは、チャット機能等で事務局に御連絡をいただければと思います。
 なお、本日は発表者として、青山学院大学教育人間科学部教授・学部長の野末俊比古先生、及び東京大学大学院人文社会系研究科准教授の大向一輝先生の御二方に御参加をいただいております。
 それでは、事務局より、本日の委員の出席状況、また配付資料の確認と、ハイブリッド開催に当たっての注意事項の説明をお願いします。
【麻沼参事官補佐】
 事務局でございます。本日は9名全ての委員に御出席いただく予定でございます。そのうち、小山委員、杉田委員、松原委員はオンラインでの御参加になります。なお、小山委員におかれましては別の用務がございますので、終了次第遅れての御参加でございます。現地から御参加予定の石田先生におかれましては、交通機関の影響により到着が遅れる予定でございます。また、松林学術調査官にも現地にて御参加をいただいている状況でございます。
 続きまして、資料確認ですけれども、議事次第の1枚目に、配布資料一覧を記載してございます。こちらを御確認いただきまして、もし不備等がございましたら事務局へ御連絡をお願いいたします。
 オンラインで御参加の委員の先生方への注意事項でございます。通信の安定のため、発言時を除き、常時ミュートとしていただき、ビデオはオンのままにしておいていただくようにお願いをいたします。また、発言する場合は、手のアイコンまたは挙手ボタンをクリックして御連絡をお願いいたします。指名された先生は、御自身でミュートの解除の操作をお願いいたします。発言の際には最初にお名前をおっしゃっていただき、ゆっくりはっきり御発言をお願いいたします。御発言の後は、先生御自身で手のアイコンを非表示、またマイクはミュートに戻していただくようにお願いいたします。トラブル発生時は、事務局にお電話にて御連絡をお願いいたします。
 事務局からは以上です。
【〇竹内主査】
 ありがとうございます。それでは、引き続きまして事務局より、本日の傍聴登録について御報告お願いいたします。
【麻沼参事官補佐】
 本日の傍聴登録は、報道関係者の方も含めまして258名の御登録をいただいている状況でございます。
 以上でございます。
【〇竹内主査】
 ありがとうございました。それでは、審議に入りたいと思います。
 今回は、昨今AIが教育・研究活動等に浸透してきている状況を踏まえ、大学図書館においてもAIへの対応に係る検討を行い、ロードマップの改訂の要不要について検討を行うため、先ほど御紹介いたしましたように、青山学院大学の野末俊比古先生、そして東京大学の大向一輝先生の順番で、まずAI等のデジタル技術を活用することにより高度化が可能なサービスや支援、学習支援や研究支援ということについて、また、AI等の利活用により高度化されたサービスや支援に関わる大学図書館職員に求められるスキル、AIリテラシーの向上を含むといったことについて話題提供をいただきたいと思います。
 なお、野末教授におかれましては、民間企業との共同研究にて、AI技術を活用した蔵書検索システムを開発された実績等をお持ちでいらっしゃいますので、その狙いや経緯等についても話題提供いただく予定でございます。それから、それぞれ御発表いただいた後に意見交換の時間を設けさせていただいて、最後に御発表いただいた内容や意見交換を踏まえた全体討議を行いたいと思います。
 それでは、青山学院大学の野末先生より御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

「図書館とAI-大学における教育・学修を中心に-」(野末先生)   資料1 (PDF:716KB)

目次

【野末先生】
 よろしくお願いします。では早速ですけれども、今回お話をいただきまして、大学図書館におけるAIの活用というのがテーマだと伺っております。教育・学修という、どちらかというと学生に少し焦点を当てたようなサブタイトルにしたのは、今、主査からお話がありましたけれども、民間企業というか、富士通Japanさんとの共同研究で開発した、AIを活用した蔵書探索のシステム、文献探索のシステムがどちらかというと学生を対象にしているので、今回の話も、よって学生のところが少し多めになるということでサブタイトルで教育・学修というところに、特に学修のところに焦点を当てるということでつけている次第です。
 下の自己紹介のところですけども、私は、御紹介にありましたとおり青山学院大学に勤めておりますが、今日は、そこの大学にあります革新技術と社会共創研究所という研究所の取組が中心となりますので、どちらかというとそちらの立場でお話をするということになるかと思っております。
 今日の話題提供ですけども、事前にお話を事務局からいただいたときに、3点御質問をいただきました。1つがAIの技術を活用した蔵書探索システム、文献の探索システムを開発した狙いや経緯ということで、2つ目が、先ほど主査からもありましたけども、AIを使った高度化が可能なサービス等々です。それから3点目が、そのときに大学の図書館の職員の方に必要なスキルの話ということです。
 私がお話しするのはこの3点ですが、特に1点目のところを中心にお話をしたいと思います。後ろの2点はきっと大向先生がいろいろお話をしてくださるに違いないので、2点目、3点目のところも、共同研究の中で得られた経験とか、思いとか、考えとかといったあたりを中心にお話をできればなと思っております。
 では、まずAIを用いた文献探索システムの開発について少し経緯を簡単にお話ししたいと思います。本学、青山学院大学にシンギュラリティ研究所という、今となっては、おやっという名前ですが、18年に設置しました。この研究所は、AIやDXについて開発的な理工系の研究ではなくて、人文社会系、人文社会科学の視点から、AIが普及した社会における人間や社会の在り方について検討しようではないかということでつくられた研究所です。今は名前が変わって革新技術・社会共創研究所になっております。
 その年にプロジェクトを私がリーダーとして1つ立ち上げました。それが近未来の図書館と新しい学び研究プロジェクトという名称になっています。これはもう文字どおり、AIが普及した時代における図書館や学修、学び、教育の在り方について研究しようということで、いろいろ取り組んだわけですけども、その中の一つに翌年年末、当時の富士通マーケティングさんと共同研究を開始するということで、プレスリリースも出しまして、取組を始めたということです。
 そのときのテーマの一つがAIだったのですけども、AIを含むテクノロジーを使って、学習者、学び手にとって最適な学びの在り方と、それを支える図書館というのはどうあるべきかということを実証的にやっていこうということで取組を始めたということです。いろいろ取り組んだのですけど、AIを活用した文献探索システムの開発には翌年からスタートしております。
 その下にありますけど、24年の1月に、実際に一番、日本で初めて入れてくださったのが横浜市立図書館ですので、横浜市立図書館に入るまで大体3年ぐらいでしょうか。とにかくコロナの最中だったので、プロトタイプの開発とか実験とかがなかなか大変でした。実際に使っていただいて、プロトタイプを使ってもらって、インタビューしながらやるんですけど、それもオンラインでやりましたので、なかなか時間がかかったというか。その苦労話を始めると時間がなくなりますので、先に進みます。という経緯であります。
 ごく簡単に、この文献探索システム、仕組みは非常にシンプルで、目録データをAIが学習します。それを使って我々が文献を探すことができるという、言ってしまえば非常にシンプルなものですけれども、それを、プロトタイプをつくって実装できるまでに開発をしたということになります。
 こう言っていると、文献とは何かというと、我々は文献を学習資源だと捉えています。学び手にとって、いろんな学ぶ機会、学ぶ方法というのはあるんですけども、その中で文献というのは、特に大学などはとりわけそうですけども、非常に重要な資源であると。だからその学習資源である文献に、自分が必要としているものになるべく効果的に、効率的に出会うことができる、それを探すことができる、入手することができるというのは非常に重要だろうと。そのためにできることを考える、その中の一つにAIがあったということです。
 実際には、これ以外にもいろいろやっているのですが、それは後ほど時間がありましたら少し御紹介をしたいと思います。ちなみに今、全国で自治体と、それから大学、20弱ぐらいの図書館に既に導入をしていただいております。20自治体、20大学といったほうが多分いいと思いますけど、館ではないので、導入をいただいているところです。それから念のためにお伝えしておくのですが、私は一銭ももらっておりません。いっぱい入りますが、私のところには何も入ってきませんので、その点は強調しておきたいと思います。
 では、次のスライドをお願いします。AIによる文献の探索は決して万能ではありません。それから万人に通用する、いつでも便利だというものでもないです。これはもう初期の頃から分かっていたので、我々としては、調査をして、それから議論をして、仮説を立てて臨むことにしました。この図がその仮説を端的に表したものですけども、左右、横軸が、右側が能動的に文献を探す。だからレポートを書かなければいけないとか、会社で企画書を作らなければいけないとか、何らか情報が必要になれば探しに行くぞというのが右側の能動的です。左側の受動的は、見かけたら読むかなとか、そういうかなり相当受け身な感じです。その中間的なものがありますので、大体3つぐらいのパターンで横軸をつくると。
 縦軸が、探している情報、文献が、どういったものが必要かということが、どのぐらい自覚できているかという意味ぐらいと捉えていただけるといいと思います。下のほうが、顕在的ニーズと書きましたけども、どういう文献が必要か、どういう情報が必要か、割とはっきり分かっている状態。上のほうが、まだぼやっとしていて、よく分かっていない状態、どんなものをとにかく読めばいいのかというのが分からないような状態です。
 このときに、伝統的な図書館のOPACのようなものだと、キーワードを入れなければいけませんが、顕在的に自分が何を探しているかがはっきり分かっていれば、キーワードは思いつくんですけど、これから何かを学びたい、探したいというときに、キーワードを思いつくのがなかなか難しいというか、論理的には難しいわけです。初学者にとって、その分野で適切な検索語、キーワードを思いつくというのは実はかなり困難なものだというのが我々の見立てです。
 だからこそ、右上のあたりは実はレファレンスサービスのようなものはここに位置づくんですけれども、なかなか図書館も24時間営業とは限りませんし、リモートで利用する方もいるので、右上のところに、これから必要性が増すのではないかということで、ここにAIを使うことはできないかということを考えたということです。
 では、下のスライドですが、開発に当たっては、プロトタイプをつくり、実験をし、プロトタイプをつくり、改修して実験をし、というのを繰り返していったのですけども、ニーズがないところでやっても仕方がないので、実態を調査して、ニーズがどの程度あるか、実際に社会的なニーズも確認をしています。これは2003年のときの調査ですけども、図書館を使っているいないにかかわらず、老若男女480名に、本をどうやって選んでいますか、探していますか、そのときに困っていることは何ですかという質問紙調査を行いました。
 細かい数字は今回割愛していますけれども、それをまとめたのがこの図です。右側が能動的です。能動的に探す場面。左側が受動的に、見かけたら読むかというような、そういう傾向、態度のある人たちという分類をしました。それから、緑の枠が図書館をよく使う方で、赤い枠が本を読む方です。枠の外れているところは本をあまり読まないという方ですけども。細かいところは省きますが、この辺り、これでいうと、どちらかというと右上の辺りが、特にAIのサポートが効くところだろうというのが我々の見立てというか分析で、事前に立てていた仮説をおおむね裏づけるものだったと受け止めています。
 一方で、今回図書館の話ですので、左下のところです。点々になっていますけども、あまり本を読まない、かつ、受動的に本に接する、見かけたら読むような方は、自分に合った難易度の本が分からないんだよねとか、それから自分に合った分量の本がうまく見つけられないんだよねというところで実は悩んでいるということが分かりました。
 これは今のところ、現時点では、AIで我々挑戦はしているんですけど、難易度の判定はなかなか難しいです。あと分量もそう簡単ではないです。単純にページ数とかというわけにいきませんし。ここは伝統的な図書館サービスで手厚くしていくといいところではないかなと思っています。右上のところもAIで全て解決するわけでは決してなくて、伝統的にやっている図書館のサービスで解消に結びつけられるところはたくさんあると思っています。
 次に、成果をごく簡単にまとめております。学会の口頭発表を4回ぐらい、たしかやっていると思います。それを、要点を要約するとこんな感じということです。まず結果ですけども、AIだからこそ見つかるものがある、ということは、これは我々は確信を持って結論としています。セレンディピティと呼ばれる偶然の出会い、「これ欲しかったんだよね」という出会うということについては、これは実験等でも何度も見かけました。
 ただ、これは理由があって、AIにある質問をします。AIが「これはどうですか」と返してきます。それに対して、「もう少しこういうのないの」と、そのやり取りの中で、対話的なやり取りの中で、利用者自身がニーズを明確化していくというプロセスがよく観察されました。その効果が非常に大きいだろうと思います。その上でキーワードマッチングではないものをAIがお勧めをしてくるので、その中でセレンディピティ、掘り出しもの的な発見が起きやすいんだと受け止めています。
 課題もあります。AIでうまく見つからない場合も、正直に申し上げるとそこそこあります。例えば文脈を読むのはAIでは今のところ難しいので、ピザ、食べるピザですけども、ピザについての本が読みたいというときには、ピザを自分で作りたいのか、おいしいレストランに行きたいのか、栄養について分析したいのかということでは方向性が違うのです。そこをなかなか、こちらが言葉を補っていって、その文脈をある方向に持っていくというのは、そこそこ大変です。
 ほかにも幾つか、漢字・平仮名問題とか、固有名詞の問題とか、AIが必ずしも得意ではないところはあると思っています。これについては、実は解決策の幾つかはもう既にそのときから試していますので、後ほどお話ができればと思います。ですので、今のところ社会的に実装されていたのをお使いいただいている図書館もたくさんあるのですけども、どういう場合に伝統的なOPACがよくて、どういう場合にAIによる探索がよいかというその使い分けのところ、ここの理解を進めるところが一番ハードルが高いといえばハードルが高いです。
 端的に言うと検索と探索の違いですけど、これを概念的に説明するのは非常に実は難しくて、いろいろ苦労しながらやっているところではあります。各図書館のヘルプページというか、解説のページを御覧いただくと苦労の跡がお分かりいただけるかなと思っています。
 示唆のところは先ほどお伝えしたのですけども、AIにも得意不得意があるので、その不得意なところをちょっとずつカバーしていくようなことを考えたときに、実は既存の、特に図書館が蓄積してきたノウハウと組み合わせるとうまくいくことが多いということが我々の中で分かっています。
 下を見ていただくと分かるのですが、下の右側の一番上です。多分野にまたがるトピックというのは先ほどのピザのようなものですけども、こういったときに、その方向性を示すのはなかなか難しいですが、NDLに、NDC Predictorという、国会図書館がつくっているものがあります。あれを組み合わせてあげると、NDCの候補が出ます。ピザだと、ばらばらピザのものが、食べるのとか、食べにいくのとか、作るのとかいろいろ出るんですけども、その中でNDC Predictorをかけると、どの方向ですかというのが選べるので、それでやるとものすごくいい結果が出るんですね。必ずではないんですけども。何もないときに比べると、我々が探しているものが、より素早く効率的に見つかるようになるということが観察されています。
 ほかにも実はあって、キーワードマッチングを我々ではないやり方で、今回もちろんAIですので、やっているのですけども、一部にキーワードマッチング的な要素をちょっとだけ入れるんです。表示をするときに。そうすると、我々が求めているものがより見つかりやすくなるということも実は見いだせています。
 何が言いたいかというと、上のスライドに戻りますけれども、人間の得意なところ、人間が理解できるところと、それからAIが得意なところ、AIができるところというのはすみ分けがあるので、それをうまく組み合わせたときに、よりよい結果が出て、我々も納得しやすい。だからAIというのは人間にとってパートナーですねというのが我々の研究グループの中でよく聞かれる言葉です。
 ここまでがAIを用いた文献探索システムの開発のお話です。
 以下、2つ目、3つ目のお題です。2つ目、3つ目のお題が、AIを使って図書館の高度化が可能なサービスや支援とはどのようなものかということですけども、ここについても、せっかくですので、共同研究の中でこんなことを実際考えています、やっていますということをお話ししようと思います。
 では、2つ目のお題です。高度化が可能なサービスや支援について、つながるようなところ、共同研究で取り組んでいるところからお話をしようと思います。大きく3つに今回は分けました。1つ目が現有の文献探索システムをよりよいものにしていくということです。仕組みとしては、文献目録データですので、それに類するものであれば、基本的に何でも扱えるということになります。例えば洋服屋さんで洋服を管理している単位でもいいですし、人間の、人物のデータベースもいいですし、レコードの単位は基本的に何でもいいんですが、ただチューニングはものすごく必要です。
 今回3年かかったところの多くは、文献のデータ、目録のデータ、書誌データの特性みたいなものはあります。それに合わせてよりよい結果が出るようにチューニングするというところが、一番時間がかかっています。だから、そう単純ではないというんですか。そのデータの特性、それから利用者の特性、利用の場面というものを合わせて、一つ一つつくり込んでいくというところはそういうことかなとは受け止めています。ですので、我々の共同研究で最もお金がかかっているのは、AIのエンジニアの人件費です。
 というわけで、その探索システムの改良のところですけども、上の2つは先ほどお話ししました。3つ目の生成AIですけれども、これも我々は、かなり早期からGPTの2.5で試していましたが、当時はっきりと使いものにならなかったです。もう全然駄目でした。キーワードを思いつかないんだから、GPTに投げて、キーワードを拾ってもらえればいいじゃないかとやったのですけど、本当に広がり過ぎてどうにもならないです。ただ、ごくまれにものすごくいい結果が出るんですけど、その当たりの確率が非常に低いので、その時点では諦めたということです。
 今はもう相当よくなっていますので、うまく使えば、少しいい結果が出ると思っていますけれども。今我々がやっているのは、幾つかあるのですが、その中の典型的な一つが、例えば「おいしいコーヒーについて書かれた本を読みたい」と利用者が入力したとします。そのとき「について」とか「本を」とか「読みたい」はあまり意味ないですよね。意味がないので、そういうところをはじくとか、そのように入れた言葉を生成AIが、よりこのシステムに適した形に少し加工するような形でプロンプトを投げて返したもので探索をしていくというようなことで精緻化をしたりとか。
 あるいは、入れた言葉を少し広げて、広げた解釈をして、ほかにこんなキーワードもあるよということを拾ってきて、それで探索システムに入れるとか、そういう精緻化あるいは拡大化と呼んでいるんですけど、そういったものに使うということで、割といい成績が出るようになってきています。これは恐らく生成AIが、かなり賢くなってきたから、特に日本語について賢くなってきたからだと思っています。
 さて2つ目、目録データ以外との連動のお話です。一つは、今回このシステムを使いに行く人というのは、これも語弊があるかもしれませんが、図書館員の方にはあまり受けなかったんです。なぜか。自分で探しに行けるからです。かつ、図書館員の方は検索するという姿勢で臨むので、この探索というものについては、そんなことをしなくても自分たちは探せるというところが多分あるんだと思います。実際そうだと思うんです。
 だから、このシステムが割と受けたのは、あまり図書館を使わない、本を読まない人たちです。探索ですので幾らでも出てきますので、これは面白いね、こんなのもあるのかということで延々やっているという姿がよく見られました。これが典型的で、図書館の方は自分で探せる、詳しい方は検索ができるのです。だけど、それがなかなか難しい方には探索、お勧めをどんどん繰り返していくというので、そこにヒットするということが分かりました。
 大学を考えたときに、シラバスがありますね。シラバスを読んだときに、この授業はどんな授業かとなかなか分かりづらい。どこが大事かも分かりづらいので、シラバスからAIをかませて文献に飛ぶとか、そういったことも実際には試しています。これは実はシラバスだけではなくて、いろんなところに試すことができて。つい最近、2日前、3日前、横浜市が子育て支援のためのアプリをつくっているんですけど、そのアプリで、子育ての情報がありますよね。それを見るだけだとそれだけですけど、それについて、こんな本もありますよということを、このシステムを使って紹介するという、そこをつなげる仕組みをつい最近実装したということで発表がありました。
 というようなことがかなり有効だと思います。必ずしも全ての人が図書館に行って本を読むわけではないので、図書館にこんな資料もあるよというところにつなげてあげるということでいうと、シラバスだけでなくても、授業案内でも大学案内でも何でもいいのですけども、そういった既存のドキュメントから文献につなげるということも、どういう場面でそれが効果があるかということを試しているところです。
 1つ飛ばして2つ目ですけど、実は我々が最初にやっていたのは、AIに頼らなくても大学であれば、検索の履歴、貸出の履歴、閲覧の履歴、それから取っている授業、それから書いたレポート等々、あるいは取っている授業のシラバスとか、そういったデータがあるのだから、それを使えばOPACの検索結果はもっとよくなるのではないかというところから実は始めました。ですが、なかなかシステムがそれぞれ図書館のシステム、LMSの教務のシステムも全部まちまちのシステムですし、組織の壁もありますし、倫理的な課題もありますので、そこはなかなか横断するのがハードルが高いということで、個人情報を使うのはハードルが高かったのです。ですので、まずはAIでできるところを試そうというのが実は今回の経緯ということになります。
 それから、最後のところです。文献探索する以外にもAIの適用というのはもちろん図書館のサービスを考えていますので、選書に使えるかどうかとか、質問回答、レファレンスサービスに使えるかどうかということも試しているというところです。
 では、次のスライドをお願いします。AIの可能性、課題(2)のところは、こんなことを、AIを適用するときには注意したほうがいいのではないかということを私なりに今回の経験を基にまとめたものです。とても大まかに言ってしまうと、AIに何をやらせるかということは明確にすべき。何となくやってみるとうまくいかないです。AIの役割です。AIにどんな役割を担わせるのかということはきちんとしたほうがいいでしょうというのが1つ目です。
 下の2つ目が目標と書きましたけども、それは何のためにやるのですかということもはっきりしたほうがいいと。AIにこれをやらせます。それは例えば学生が学習成果を上げて、テストでいい点が取れるようになるということなのか、図書館員の方の業務が軽減されるということなのか、何のためにやるかということも明確にしておかないと、これもどう評価していいか分からないし、やってみたものの効果がないということにもなりかねないので、そのために幾つか考えなければならないことがあるというのは右側に書いてあるものです。
 とりわけ重要だと思うのが、5つ箇条書になっていますけど、一番下の利用者の課題と優先順位というところで、ペルソナみたいなものです。こういう学生がこういう課題を抱えている、それに対して、いろんな課題がある中でここが一番大事である、それに対してどういう解決が望まれるか、どうなったらよりよい状態なのかということは定義していかないといけない。そのぐらいまで考えないといいチューニングはできないです。AIを使うときに。
 だから、そこにカリキュラムと書きましたけども、例えばそのカリキュラムをこなして、いい成績が取れるとか、きちんと卒業できるとかということのためには、どういう課題が優先されるかということを考えるということになるかなと思います。
 では、次の(3)のところに行きます。ここはスキルの問題です。お題の一つにありました、3番目のお題で図書館員に求められるスキル、リテラシーの問題も含めてということです。ここについては、リテラシーそのものについては、今日は資料もいろいろ配られていますし、大向さんもお話しになるはずなので、まず2つに大きく分けてお話をしようと思います。
 1つ目がAIに対する理解ということですが、AIリテラシーは大事だと思います。いろいろ考えなければいけないことがあるのですが、ただ、個人としてそれを全てやるのはもう無理だと私自身は思っています。あくまでも組織として、図書館なら図書館という組織として、大学なら大学という組織として、リテラシー全体をカバーするような形でないと厳しいなということは痛感しています。
 AIのエンジニアの方と話していても差異は分からないです。それを理解するのは、とてもではないですけど、私にはできなかったので。役割分担みたいなものがあると思います。そこはまず押さえなければいけないところかなと思います。AIリテラシーがどういうものかということよりも、その捉え方のところが大事なのかなと思っています。
 次です。2個飛ばしますけど、リテラシーのお話をしようと思います。リテラシーをめぐる対応のところに書きましたけど、2つ目の黒丸に書きましたが、いわゆるAIリテラシーによって、あまり振り回されないほうがいいと思っています。というのは、極論すると1か月前に必要だったことがもう要らなくなっています。例えば、少し前までだとプロンプトをどうつくるのがよいか、みたいなことはすごく大事だと言われていたんですけど、今は最新の環境を使えば、ほぼプロンプトは要らないです。中学生とか高校生でも相当のことができます。課金は必要ですけど。環境さえ整えばできます。
 というのは、もう今、特に生成AIのIQは今150ぐらいと言われているのだと思います。人間の平均が100ぐらいです。半年前まで80ぐらいでした。今もう110ぐらい行っていますので、今はAIに命令すると、命令じゃなくて相談の形で投げかけないと、AIは、「こいつ命令してくる」ということで、レベルを下げて対応するんだそうです。相談の形でやると、「おお、じゃあ聞いてやるぞ」ということで、その150のIQを発揮するという感覚だそうです。昨日、ある学会の研究会で、この分野では第一人者の方がそのようにおっしゃっていたので、恐らくそういう感覚だろうと思います。
 というわけで何が言いたいかというと、とにかくどんどん変わっていくので、変わっていくところに全部追いついていくことがリテラシーではないということです。では、何が大事かということですけども、AIの捉え方のようなところだと思います。それが先ほどの上にある「知る」と「使う」のところですけど。もうAIというのは、定義上、頭の中はブラックボックスなので、なぜAIがそう判断したか、我々は知る由がないわけです。AIは人工知能ですから、それが定義ですから分からないのですけども。分からないということは人間、他人の頭の中が分からないと同じなので。
 例え話で言うと、ある事柄についてとても優秀だけれども、何を考えているか分からない新入社員のような感覚です。最近あちこちでしゃべって受けた例えがこれだったのでこれを使います。そうすると、そういうわけの分からない新入社員が来るけど、ある事柄についてものすごく仕事ができる。そうすると理解しようとするときに、その人がどういう学問を修めてきたとか、どういう経験をしてきたかということをまず知りますよね。あなたは何を知っているの、これがAIにとっては学習データです。何を学習しているかということと。
 それから、その新入社員の性格を我々は見るわけですよね。どういう人だろう。これがAIの振る舞いです。どういうことを出力してくるか、その傾向が何かということです。例えば生成AIでも出力の傾向が違いますので、そういうところは最低限理解する必要があるので、そのことについて知って、使っておくということは必要だと思いますけれども、それ以上のところは、全員がそこを全てとは私は思えないなということを一応お伝えしておきたいと思います。今日この後議論になると思いますけども。
 むしろ、下から2番目の黒丸です。より大学の場合には、教育とか研究がどのように行われているか、学習がどう行われているかということ、その学問分野等及びそのプロセスについての理解と、それから、情報を使うのは学生・教職員ですので、学生・教職員がAIを使った環境で、よりよい成果、学修・教育・研究の成果を出せるような支援をできること、それからその環境をつくることが大事かなと思います。どちらかというと、大事かというか、この2つの事柄が前提となってAIリテラシーが成り立つのではないかということだと私自身は今回の共同研究を通しても強く感じたところです。
 では、時間になりましたので、次のスライドは参考までにということで、うちの研究所がどういうところかと、それからプロジェクトがどんなことをやっているかということを簡単にメモしてありますので、御確認いただければと思います。ありがとうございました。
【〇竹内主査】
 野末先生、ありがとうございました。それでは、ただいまの野末先生の御発表に対する御質問、御意見がありましたら挙手にてお知らせください。先ほど申し上げましたけど、後ほど全体討議の中でもいろいろ議論はありますので、この段階での御意見、御質問は、野末先生の御発表に対する不明確な点の確認というようなことにしていただければと思います。日向委員、どうぞ。
【日向委員】
 都留文科大学の日向です。興味深い発表をありがとうございました。一つ明確にしておいてほしいところが、今回、青山学院大学もしくは富士通さんのこのAIを使った図書館システムのAIというのは、外部にあってリモートでアクセスするレベルのものなのか、それとも富士通さんの中で育てて、アップデートは随時行われていると思いますが、そういうローカルなAIなのかを明らかにしていただきたいです。
【野末先生】
 後者です。世の中の出回っているものを使いに行っているのではなくて、会社内というか、自前のものということになります。
【日向委員】
 利用者さんのいろいろな検索キーワードとかを外部に出すというのが、AIを使う場合、課題になるかなと思ったので、そこを確認したかったところです。
【野末先生】
 そうです。でも、基本的に、オンプレミスは最近少なくて、SaaSが多いですね。
【日向委員】
 そうですね。ありがとうございます。
【野末先生】
 一応、概念的には閉じていることが多いですかね。
【日向委員】
 ありがとうございました。
【〇竹内主査】
 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。小山委員、どうぞ。
【小山委員】
 小山です。野末先生、御発表ありがとうございました。
 私から1つだけ、スライドの8枚目、9枚目ですけれども、今回は研究プロジェクトという形で、このシステムを開発されて、実装されていると思うのですが、AIを実装するという面において、図書館員はどういう役割を果たせるのでしょうか。先ほど野末先生は、スライド9枚目のところで、AIに対する理解は組織としてとおっしゃいました。その前の8枚目のスライドでは、役割の明確化としてタスクの定義というのがございました。システムライブラリアンが求められているというわけではないとは思うんですけれども、ライブラリアンはどういう形でこういったシステムを実装することに関われるのか、御意見等をいただけたらと思います。お願いいたします。
【野末先生】
 ありがとうございます。とても重要な論点だと今受け止めています。どこがというのは濁して、率直なお話をしますと、図書館の皆さんに、こういうシステムについて、ありますということで、実際にもちろんお話をするのは、サービスをしている富士通さん側ですけど、私ももちろん話をすることがあって、行くと、AIそのもの、あるいは今回のシステムについて、言葉が難しいのですが、理解をしている方とそうでない方はいます。これは明確にいます。
 そうなったときに、AIについて理解をしてくださいということをどんどん推し進めるよりは、図書館として何を実現したいんですかというところ、どういったサービスを実現したいですか、そのサービスをどのように、より高度化したいですかというところに焦点を当てていくということだと思います。
 そのときに、これは感覚的な話で申し訳ないですけども、サービスの実践の場にいる方は、もっとこうなったらいいということを盛んにおっしゃる方もいらっしゃいます。一方で、仕組みがどうなっているか分からないといけないので、図書館の中でも、何人かの方、少ない人数のこともありますけれども、その方が、それはAIを使うからこういうことができるようになるんですよねと、仕組み、仕掛けの部分も理解する方もいらっしゃいます。そういう方々が一緒になって、利用者への説明であるとか、広報であるとか、それから検索・探索の画面の説明書きやヘルプ画面であるとか、そういったものをうまく分担してつくっていくといいものができるかなと思っています。
 ですので、図書館員の中での役割分担みたいなものが、ことAIに関しては、より明確になっていくのかなと。逆に、そうなっていったほうが組織全体としては負担が少なくて効率的なのかなと思います。お答えずばりじゃないかもしれませんが、小山先生、いかがでしょうか。
【小山委員】
 ありがとうございました。私も実現したいサービスと、それをシステム上でどう実現するのか、その間に立つインタープリターというか、何かそういった人が必要だろうなということを感覚的には思っていました。ありがとうございました。
【野末先生】
 ありがとうございます。おっしゃるとおりです。ある程度、今回のシステム、AIとはこういうもので、こういうことができそうだということがなかなか伝わらないときには、時間がかかるという傾向はありますので、小山先生がおっしゃったような方の役割というのはとても重要だと思います。
【〇竹内主査】
 ありがとうございました。ほかにどなたかいらっしゃいますか。よろしいでしょうか。では、また後ほど全体討議のときにまた議論したいと思いますので、まず先に進めさせていただきます。
 それでは、続きまして東京大学の大向先生より御発表をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

「AIとデジタル・ライブラリー」(大向先生)   資料2 (PDF:5.1MB)

目次

【大向先生】
 どうぞよろしくお願いいたします。東京大学大学院人文社会系研究科の大向一輝と申します。AIとデジタル・ライブラリーという大まかなタイトルですが、最初にお話を頂戴したときの状況と、資料を作ったときの状況と今日の状況が全く違うぐらい、非常に動きの速い世界ですので、悩みながらお話をさせていただければと思います。
 最初に自己紹介として、どういう立場で話しているかを申し上げます。私自身のバックグラウンドは情報工学です。学部生のときに、生物の進化の仕組みを模倣したAIの研究をしていました。今のAIは脳の仕組みを模倣する方向に向かっているので、アプローチは違いますが、自然の仕組みをどう使うかという点は共通しています。過去の研究が何十年かたって自分の仕事に改めてつながっていることに驚いています。
 仕事として、こちらのコミュニティーの皆さんとのつながりが一番大きかったのは国立情報学研究所にいた時期です。本の検索、論文の検索を提供する学術情報サービスCiNiiの開発責任者をやっていました。その他文化庁等の事業で、さまざまな文化資源のデジタル化、DX化、デジタルアーカイブ化にコミットしてきました。
 その後、東京大学に移り、文学部に所属しています。デジタル人文学と呼ばれる、人文学資料をデジタルデータとして扱って分析し、新しい知見を導く学際領域の研究・教育に携わっています。文学資料のデジタルアーカイブも行っています。さらには、6,000人ぐらいの比較的大規模な人工知能学会の理事や、デジタルアーカイブ学会の理事を務めています。
 東京大学大学院人文社会系研究科では、デジタル人文学の教育プログラムを展開しています。人文学の多くが対象とする過去の資料等を扱うにあたり、テキスト分析の技術や、ネットワーク状に情報を構造化したものを可視化する等、さまざまなアプローチがあります。
 デジタル情報流通の中で、デジタルアーカイブや図書館の仕組みがどのようにしてつくられており、情報が手元に届くまでに何が起きているのかを理解しなければ、学問として成立し難い状況でもあります。その土台の部分と使い方の部分を、いわばサンドイッチするような形で教育のカリキュラムをつくって教えていますが、この両面に対してAIの影響が色濃く出てきていることを実感しています。
 これから、AIについてお話ししていきますが、そもそもAIとは一体何なのかということで、私が活動している人工知能学会の趣意書が一つの定義になるだろうということで持ってきました。「頭脳の働きに代わって計算機によって実現する知的なプログラム、あるいはその結果」をAIと呼ぼうということで始まっていますが、いまだAIが定義できたとは言えないことは、多くの人がご存知の通りです。
 ウィキペディアでも同様に、コンピューターを道具として使い、知的な振る舞いをさせるのがAIだと書かれています。
 人工知能学会においても、AI技術があまりにも多様で広大なために整理がつかないという問題意識があり、専門家が集まってAIマップと呼ばれる技術の見取図を作りました。AIマップでは、現在広まっている深層学習の技術はマップの中のごく一部であり、それ以外にも、知識体系の構築や検索・推薦も、AIの要素の一つとして位置づけられています。こうした全体像を見ながら、やりたいテーマや解きたい問題に合わせて、技術をうまく使っていくことを教えるための教材になっています。
 一方で、認識や生成をつかさどる大規模言語モデルが、そのほかの領域を全て塗り替えかねない勢いで広がっていることも、見取図として理解していく必要があります。
 さて、こういった知的なソフトウエアと図書館が何の関係もなかったのかと言えば、それは全く違います。お見せしているのは東京大学のOPACの画面ですが、約1,000万冊ある本の中から、キーワードを数文字入れるだけで絞り込めるというのは、知的な振る舞い以外の何物でもありません。単に我々がこれをAIと呼ばなくなっただけだと思います。
 あるいは、推薦機能も広く利用されています。eコマースのサイトなどでも行われていますが、類似という概念を何らかの方法で定義して、近いものを提示する仕組みです。
 知識体系については、図書館コミュニティは長い時間をかけて構築してきました。ここでお見せしている国立国会図書館のWeb NDL Authoritiesだけでなく、NDCにせよ、典拠にせよ、精緻な体系がつくり続けられており、新しい概念を追加し続けています。これが図書館の活動の一部であることは我々にとっては当然かもしれませんが、社会に伝えることも必要かと思われます。
 かつての私の仕事でもAIを使っていました。CiNiiの運営においてはさまざまなパートナーから書誌情報が届きますが、同じ論文に対する情報が別の情報源から来た場合に、それが同一かどうかを確かめる作業を、機械学習の手法の一つであるサポートベクタマシン、今となっては一世代前の技術ですが、これを使ってコンピューターに判定させていました。
 これがなければ何千万という書誌情報をハンドリングできないため、縁の下の力持ちとしてAIを使ってきました。今はDOI等の普及によってこうした作業は不要になりつつありますが、これもまたAIの利用例の一つです。
 このように、知的な振る舞いをするプログラムとしてのAIと図書館は長らく付き合ってきました。この流れの上で現在の生成AIの動きとどう向き合うかというのは改めて議論が必要です。私の身の回りでは「これから委員会」、正式には「これからの学術情報システム構築検討委員会」、小山先生が委員長をされている場で議論をしています。
 この委員会は、総合目録データベース、すなわち図書・雑誌の書誌の共同構築からスタートしたシステムを、様々な情報リソースに広げていくための検討を行っています。ここ2年間、中心的な話題はAIで、分科会も含めて8回ほどAIのテーマを語り合っています。今度出る議事録では、この8回のサマリーが公開される予定ですので、ぜひ御覧ください。
 私自身もこの議論に関わっていく中で、図書館とAIとの関係性について、大雑把に3つ、図書館業務、図書館サービス、AIリテラシーに分類しました。分類そのものは意外なものではないと思いますが、この3つに沿って話題提供いたします。
 まず、図書館業務の観点では、メタデータは自動入力できるのか、できないのか、やっていいのか、駄目なのかという議論が盛んです。海外の図書館システムAlmaでは、本の写真を数枚撮ってアップロードすると、タイトルや著者名らしき情報をレコードに落とし込んでくれるという仕組みが動いているようです。
 こういった作業の結果、データには「AI generated」や「AI enriched」、すなわちAIが情報を一から作ったのか追加したのかが表示されます。人間側はこれを信頼していいかどうかを選択できます。
 このシステムを試してみた方がコミュニティーの中にはいらっしゃって、議事録からの抜粋ですが、たくさん情報を与えればそれなりによい結果が返ってくるものの、1~2枚しか送らないと、いいかげんなことをAIが語り始めるとか、同じ本に対して繰り返し同じ作業をしても違う結果が出てくるとのことです。また、日本語の本を読み込ませると、出力されるローマ字が米国議会図書館が決めたルールに従っていることも確認されているようです。
 課題はありつつも一定程度は有用な面もあるので、日本の目録システムでも提供できるといいのではないかという議論も行われています。先ほど野末先生がおっしゃった、NDCの分類を書誌情報から推測するツールはNDLの方が実験的につくっており、業務に生かされることはあるかと思います。
 別の観点として、専門職として様々な業務知識を世代交代を含めて受け継ぐかかという課題に、チャットボットのようなものが有効ではないかという議論もあります。
 ここで例に挙げるのは、GoogleがつくっているNotebookLMです。手元の資料をアップロードすると、その資料の中身について質問ができ、最近はラジオ番組のかけ合いのような音声コンテンツにしてくれるとか、多様な情報の提示をしてくれるというツールです。ぜひ皆さんもお試しください。例えば先ほどの「これから委員会」の議事録を全部突っ込んで、10年間どんな話があったかを問えば、一定程度の回答が返ってきます。
 こういったツールに様々なマニュアルなどを放り込んで、「こういうときにどうしたらいいか」を聞けば、何かは返ってきます。答えが正確かどうかは確認が必要ですが、専門的な質問に24時間365日対応できるという状況は、これまでは全く想像できなかったことです。こういった仕組みはどんどんつくっていければいいと思いますし、例えば目録のマニュアルはオープンデータですから、今すぐにこのツールと組み合わせて、誰もが試してみることが可能です。
 次は図書館サービスについてです。サービスについては「Deep Research」という概念
が大きなインパクトを与えています。AIに調査を依頼すると、ネット上を駆けめぐって、情報をまとめて説明してくれる。すでに調べ物においてなくてはならないものになりつつあります。
 初期は、ConsensusやSCISPACEなどの専門向け検索サービスの一機能でしたが、今ではChatGPT、Gemini、Claude、Grokなど汎用的なAIツールもDeep Research機能を持ち、用語として一般化している状況です。
 こうしたビッグテックの動きに、図書館が図書館らしくどのように向き合うかという点で、お示ししたいのが、RAGとMCPという2つ技術的な考え方です。
 スライドの真ん中には大きな言語モデルがあり、左右に分かれています。左側のRAGは、Retrieval-Augmented Generationの略です。RAGは一定量のデータを用意して、AIにそのデータベースの中から情報を回答させる仕組みをつくるための技術です。先ほどのNotebookLMも、このRAGを簡単に試せるサービスの一つです。
 右側のMCPは、AIツールからパソコンの中のツールやネット上のサービスを操作し、その結果に説明を生成させるための技術です。
 左側は自分たちのコンテンツに対して使うもの、右側は外部の情報サービスやツールに対してAIが操作するものとご理解ください。MCPは、Model Context Protocolの略語です。MCPに対応したサービスが徐々に登場しており、第三者の開発者が実装しているケースもあります。次の例でお見せします。
 まずRAGの事例として、ヒューマニテクストという人文学系プロジェクトがあります。アリストテレス、プラトン、カエサル、キケロなどのテキストがオープンデータになっており、これを取り込んでAIで問い合わせをかけます。「プラトンになり切ってフェイクニュースについて考察してください」といったことが可能になります。
 AIが本当にプラトンになり切っているのかを確かめることはできませんが、実際のデータが手元にあり、回答の最後に出典を明記しながら説明させることがRAGで実現できます。こうした楽しい使い方以外にも、日本語でギリシャ語やラテン語の文献を探すといったことは得意中の得意ですので、学術的にも十分に利用可能です。
 次はMCPで、外部のサービスを、AIツールに操作させる例です。ClaudeというAIツールにCiNii Researchを操作させてみます。チャットの履歴を見ていただくと分かるように、私の共著者5名を探して、最近の動向をまとめてほしいと指示すると、ClaudeがCiNiiの検索APIを呼び出し、その結果を説明してくれます。さらに、5名分の検索を追加で行い、さらに大きな分野としての動向を示すように求めると、5回の検索操作が行われて結果がまとめられます。
 AI側がさまざまな操作を代行するということで、同じことは人手でもできますが、待っていれば情報が集まり、どこを探しているのかも記録されるという形で一定の信頼性を担保できます。実験的な取組ではありますが、こうしたことが実現されつつあります。
 このように、AIを活用したサービスを大まかにまとめると、Deep Research、RAG、MCPというアプローチがあります。大前提として、大規模言語モデルとコンテンツの両方がなければ成立しません。そのため、この分野でまだ誰かが圧倒的に強いという状況はないようです。
 LLMを作る側からすれば、GoogleやOpenAIが検索エンジンを構築するなど、ウェブを検索して情報を取り込む仕組みを整えることがこの競争への取り組みであると言えます。
 出版社を含むコンテンツホルダーにとっては、自社コンテンツを活用してRAGの仕組みを整備し、アクセシビリティを高めることが基本的なアプローチです。PrimoのResearch AssistantやScienceDirectのLeapSpaceは自社コンテンツを生かす方向です。
 LLMもコンテンツも持たない参入者は、OpenAlexやSemantic Scholarなどのオープンな学術データを使ってDeep ResearchやRAGを提供しようとしています。デジタルアーカイブ等も含め、利用可能なものを活用していくことになります。
 いずれにせよ、自分が使っているサービスが何を検索対象にしているかは、返ってくる結果の品質に直結します。それを知らないまま使うわけにはいきません。また、CiNiiのメタデータをAIで英語化して英語キーワードでもヒットさせる実験も行われています。
 こういったサービスはさらに増えていきます。そのダイナミズムを理解することが最後の話、AIリテラシーにつながります。このリテラシーという言葉は便利ではありますが、何を知らなければならないかの共有が難しい状況です。
 AIの使い方一つとっても、「ハルシネーションに気をつけよ」と言われますが、2年前のハルシネーションと今のハルシネーションはおそらく全く異なります。学術コミュニティでは最近「ハルサイテーション」として存在しない出典の生成を指す言葉も生まれており、より微細なレベルでのコンテンツの扱いに状況はシフトしています。それを無視して「AI全般にハルシネーションがあるから危ない」というのは、やや牧歌的に聞こえてしまいます。
 プロンプトのノウハウも変わってきており、「あなたは優秀な〇〇です」と書いたほうがよいというのは昔の話です。むしろAIの振る舞いを制限するのではないかという議論もあります。
 ここでAIの仕組みの話に移りますが、ブラックボックスと言われつつも、言語モデルが事前学習と事後学習で成り立っていることは確かです。事前学習は入手可能な言語データの統計的なパターンを学習して模倣させる仕組み、事後学習は何を言うか分からないAIに対して、社会的に許される振る舞いを教え込むプロセスです。少なくとも大きく分けて2通りの仕組みで成立しているということは理解が必要です。
 また、我々が使っているビッグテックのAIは、単なる言語モデルではなく、その周囲に精密に構築された情報システムがあります。多種多様なリクエストに対してシステムが反応し、最終的に言語モデルに問い合わせて結果を返すという複雑な仕組みとして成立しており、何か一つの知的な単体が全てをこなしているわけではないことも理解する必要があります。
 当然、学術情報流通においてもAIの影響があります。情報系の学会では何万件という論文が投稿され、査読者が対応しきれない状況や、AIによる査読を行うと宣言する会議もあります。査読システムに基づく学術コミュニティのあり方が危機に瀕しており、出版も大きな影響を受けています。
 つい先日、佐藤翔先生が「オープンアクセスバイアス」という言葉を紹介されていました。AIはもっぱらオープンアクセスの論文ばかりから学習しているわけですから、オープン化を進めることに新たな意味が加わるという議論です。
 あれもこれも、ここ数週間から数か月の出来事であり、大学の構成員の全員がこのレベルにキャッチアップしているとはまず言えません。知識にむらがある状態です。その知識を一定水準に底上げする仕事は、大学図書館に求められる重要な役割の一つです。
 AIが入手可能な言語データに依存しているという観点からは、AIがまだ取り込んでいないデータ、ここにしかないデータ、あるいは新しくデータを生み出すシステムをどう構築するかに図書館がコミットすることも求められます。オープンアクセスバイアスを踏まえれば、OpenAlex情報の流し方や、資料の目次や見出し、全文といったメタデータを超えた内部情報にどう踏み込むかが問われてきます。
 そこで、いつも私が気になっているのが、「日本語蔵書のデジタル化にあたって国立国会図書館とうまく調整しながら進める」という文言です。気持ちは分かりますが、見方によってはNDLの動きを後追いすべきであると読めてしまいます。ここに積極的な意味をどう見いだすかは重要な問いです。
 日本語蔵書という点も重要です。大学図書館の蔵書は日本語だけではなく、以前の私の認識では3分の1が英語、残り3分の1がその他言語です。多様な言語の資料を扱ってきたのが日本の大学図書館です。ここへのアクションは、日本の他機関にはできない重要な貢献になり得ると考えています。
 また、言葉になっていない情報も重要です。ある分野の第一人者が誰か、師弟関係はどうなっているか、こういったことが情報検索において機能する場合があります。全く文字化されていないこうした情報を取り出す仕掛けは、積極的にアクションとして取り得ると考えています。
 最後に、Deep Researchが出てきたとき、私のゼミに所属する人文系の大学院生にどんな問いを聞きたいかを尋ねたところ、スライドに挙げたような問いが出てきました。半年~1年ほど前の話ですが、私には問いの意味すら理解できません。Deep Researchに投げかけても納得のいく回答は得られなかったとのことでした。
 大学における問いはこういったレベルで発せられるもので、AIが進化しても全てが解決するわけではない、というつもりでこのスライドを作りましたが、今となってはこの主張も怪しくなってきました。技術の進展によって分かることが増えているのはまぎれもない現実だと思います。
 一方で、私自身も、当初は全く分からなかったこれらの問いについて、AIの力を借りながら、問いを出した本人と少しずつ対話できるようになってきたのも事実です。図書館においても、大学の専門性の高い空間で役割を果たすにあたり、AIを味方につけながら大学構成員や学術コミュニティと対話する手段として、AIを積極的に活用すべきと思います。
 最後のスライドですが、そうなった先に、図書館が築いてきた広範な人的ネットワーク、各大学構成員とのネットワークが力を発揮するでしょう。個人の研究者や学生が1人でAIを使って情報検索し、行き詰まったとき、次の一歩がありません。そこからさらに進むためには、ここにこういう専門家がいる、ここにこれができる人がいるという情報が役に立ちます。大学図書館がこれまで築いてきたネットワークの力を、ぜひ発揮していただきたいです。
 長くなりましたが、以上です。
【〇竹内主査】
 ありがとうございました。それでは、ただいまの大向先生からの御発表に対する御意見、御質問がありましたらお願いいたします。先ほどと同様で、不明確な点の確認ということにしていただければと思います。石田委員、どうぞ。
【石田委員】
 石田です。御説明ありがとうございました。1点、私は知らなかったのでお聞きしたいのですけれども。このNCPというのを御紹介いただきましたけれども、これは外部のリソースといいますか、例えばここの例で言うとCiNiiを使う場合は、CiNii側がそういったものに対応していないと使えないという理解でよろしいですか。
【大向先生】
 この例ですと、CiNiiそのものが対応しているわけではありません。CiNiiのAPIはありますが、AIツール自体はAPI仕様をよく理解していないため、仲立ちをするための簡単なプログラムが必要です。この場合は第三者の開発者が作成、公開しています。CiNiiへの検索をAIツールから求められたとき、CiNii APIのキーワード検索機能をどう呼び出すか、何件取得するかなどのパラメーター設定をAI向けの知識として付加しておくと、ChatGPTなどでも人間に代わってCiNii APIに検索をかけてくれます。返ってくる書誌情報の整理はAIツールが行います。このやり取りの仲立ちをするための規約がMCPで、まだ広く普及しているとは言えませんが、実験的なトライアルが各所で行われている段階です。
【石田委員】
 ありがとうございました。そうすると例えば、今の状況で大学図書館の蔵書検索システムとかがこれに対応するというのは一工夫必要になるということですか。
【大向先生】
 一工夫ですが、これも根本的にシステムを作り変えるような話ではありません。OPACも基本的にはプログラムからアクセスする方法が把握できています。カーリルなどがうまく活用しています。
 こうした仲立ちの実装がどの程度の工数かは難しいところですが、対応できると思います。今後はシステムベンダーが公式に提供することも考えられます。ソフトウエア同士の情報交換の規約ですので、これに従っていくことになると思います。
【石田委員】
 ありがとうございました。
【〇竹内主査】
 ありがとうございます。ほかいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、野末先生、そして大向先生から御発表いただいた内容や、また意見が出ておりますので、それを踏まえた全体討議をしたいと思いますけれども、その前に事務局から、前回までの議論も踏まえて、大学図書館におけるAIへの対応に係る検討についての観点例や、あるいは参考資料について御紹介をいただければと思います。資料は3から7になります。本件は土井室長からよろしくお願いいたします。

資料3から資料7(事務局)   資料3(PDF:113KB)   資料4(PDF:139KB)  資料5(PDF:1.3MB)   資料6(PDF:1.1MB)   資料7(PDF:1.4MB)

目次

【土井室長】
 事務局でございます。資料3から資料7について、簡単でございますけれども、紹介をさせていただきたいと思います。
 資料3は、前回の検討会で出した資料でございます。前回の委員会の後に、さらに必要な観点がもしあればということで御意見をお願いしたところでしたけれども、追加の観点例ということでは特に意見はありませんでした。
 続きまして、資料4でございますけれども、これも事務局で調べ得る限りのところで、国内の図書館に導入されているAIを利用したサービス・システムの例を挙げさせていただいております。1番目、蔵書探索につきましては、先ほどの野末先生からのプレゼンにもございましたように、AIの探索サービスですとか、あとは資料案内のチャットボットといったものも導入されているところがあると。
 あとは2番目、利用支援やレファレンスサービスということで、1から3まで、(1)(2)(3)といったサービスを導入されている例。あとは3ポツ目、蔵書の管理ということで、AI蔵書管理のサポートサービスとか、裏面に行きまして、というのがありますということと、裏面その他ということで、これは新潟大学でのAIによる機関リポジトリ登載論文の要約をするようなサービスですとか、あとは文献データベースにおけるAIによる付帯機能といったものを導入されている例がございます。
 あと資料5につきましては、米国のALA、図書館協会で、「21世紀の図書館職員におけるスキル」についてということでレポートが出されているということで、これの下、次のページのところで、大きく9つのコンピテンシーが特に重要で、かつ、教育が不足している項目ではないかということで整理されているところでございます。
 ただ、こちらの報告書につきましては、2021年、令和3年の8月に公表されているもののようでございますので、今のAIがここまで急速に浸透している状況の前に恐らく公表されているものだと思います。概要のほかに原文と機械翻訳も参考でつけさせていただいております。
 あと、次が資料6です。こちらも3種類ありますが、概要のほうで説明をさせていただきますと、アメリカ大学・研究図書館協会、ACRLで、昨年の10月、理事会で承認されたということで、「大学図書館員のためのAIコンピテンシー」ということで、こちらも資料が公表されているということでございます。主要なコンピテンシーとしては、倫理的配慮、知識と理解、分析と評価、利用と応用という観点で求められている能力が示されているという状況でございます。
 続きまして、資料7でございますが、こちらも概要で説明をさせていただきますと、これは昨年の5月、国際図書館連盟、IFLAから出されているもので、IFLA、Entry point to Library and AIということで、図書館と人工知能への入り口というような資料が出されております。こちらは、主にAIの利点とリスクを評価、議論する際に考慮すべき事項ですとか、事例のシナリオを図書館員に向けて提供しているものでございまして、これを基に、図書館員、あるいは個人、あるいはグループで、クリティカルシンキング等々をする際の参考にしてもらうための資料というような形になっているものでございます。
 今後の全体の討議の中での参考になればと思いまして、事務局で用意させていただきました資料でございます。雑駁ですけれども、説明は以上でございます。

全体討議

目次

【〇竹内主査】
 ありがとうございました。見ていただくと分かるように、既に、図書館員がどういうスキルを持つべきかということについて、諸外国でかなり様々な議論が行われているという状況がお分かりいただけたかなというところでございます。
 それらも念頭に置いていただきながら、先ほどの野末先生、そして大向先生の御発表、そして、そこで出た御意見も含めて、大学図書館におけるAIへの対応について少し議論をしていきたいと思います。最終的には、我々がつくったロードマップをどのように改訂していけばいいのかというところに方向がつながっていくような議論になればと思ってはおります。
 御承知のように、AIの問題は、「審議のまとめ」が出たときには、まだ大きく取り上げられている状況ではなくて、まだ先、というようなところがありましたが、この検討会を始めた頃には、もうAIは避けて通れないということで、AIの問題にきちんと取り組んで、このロードマップの中にも入れていきましょうということがあって今日まで議論が進んできたというのが過去の経緯ということではございます。
 どのように議論を進めていくかということについて、資料3をベースにするのか、あるいは、今日、大向先生からお示しいただいた3つ、つまり図書館業務と、それから図書館サービスと、そしてAIリテラシー、この3つで中心的に議論していくかというのはあるのですけれども、資料3の話も全体として見れば、この大向先生の3つにほぼ集約している部分が明確にありますので、せっかく今回は大向先生からお示しいただき、3つのキーワードで使って整理して行ければとは思っております。
 まず図書館業務とAIということになります。先ほど実際にメタデータの自動入力などのお話について御紹介をいただいたわけですけれども、まず、そのことについて何か御意見があればお願いします。もしそれが難しければ、もうちょっと緩やかなところから話をしていただいて、広くAI時代の大学図書館ということでも結構です。小山委員、どうぞ。
【小山委員】
 小山です。大向先生、御報告ありがとうございました。はじめに、「これから委員会」の紹介もしていただいてありがとうございます。それで、先ほど野末先生にも同じような質問をしたのですけれども、例えば、今日、大向先生の話を聞いていて思ったのは、図書館業務においても、図書館サービスにおいても、コンテンツが重要だということを改めて理解したということです。このことは前回も話題になったかと思います。
 そのときに、19枚目のスライドで「見えないコンテンツ」というお話をされていて、なるほどと思いました。すなわちデジタル化されていない、あるいはテキスト化されていないものをいかにデジタル化して、それを利用できるようにするのかということもまた重要だなと思いました。
 それに加えてですけれども、改めてシステムに関わるようなところとして、先ほど石田先生も御質問されていた14枚目のスライド、RAGとMCPの組合せというのはとても興味深いなと思いました。例えばこういったシステムを構築するときに、図書館員はどのように関われるのかということ、これは野末先生にも先ほど質問したのですけれども、大向先生の目から見て、どういう形で関われるのかといったようなことを教えていただけたらと思いました。
 以上です。
【〇竹内主査】
 大向先生、お願いいたします。
【大向先生】
 様々な関わり方があると思っています。自前のコンテンツを生かすという意味では、機関リポジトリのコンテンツが真っ先に浮かびます。デジタルアーカイブや、オープンにアクセスできるという意味でここにしかないかもしれないOPACのコンテンツも含め、まず手元にあるものの力を発揮できる状況をつくることが先決です。
 次に、コンテンツ化されているようでされていないものについてですが、特に人文系にとってはクリティカルな問題です。複数人で原稿を持ち寄って1冊の本にするということはよく行われますが、その中の情報がテキスト化されていないため、業績として認められないということが現実に起きています。
 本の中のコンテンツを把握しなければ、誰がその本に貢献したのかが分かりません。こういった情報源の整備を望む声は多くありますが、手間がかかるためなかなかアクションが起こしにくい状況でした。ここにAIの力をどう組み込むかも考えられます。見えているのに情報として取り出せていないデータは多々あります。そういった部分に目を向けて整備していけるとよいと思います。
【〇竹内主査】
 ありがとうございます。
【小山委員】
 小山です。一言だけ付け加えさせてもらっていいですか。
【〇竹内主査】
 はい、どうぞ。
【小山委員】
 ありがとうございます。今、大向先生がおっしゃっていただいたことは、ある意味、これまでも図書館員が関わってきた、あるいは関わっている活動であると思うんですけど、そこにAIという調味料というか、新たな技術ですよね。それを加えるとなったときに、図書館員が持っておくべき素養と言いますか、それはどうすればいいのかなということを考えました。
 先ほど野末先生との話では、インタープリターのような図書館員もまた必要だなと私自身は理解したんですけれども、例えばこういったシステムを組んでいくとなったときには、それなりに知識が必要で、それは大向先生もその点について指摘されていたと思うんですけれども、ここに図書館員が関わっていく中で、AIあるいはAIリテラシーと表現できるのかどうか分かりませんけれども、図書館員が持っておくべきもの、知識、技術、技能、素養、関わり方みたいなものには、どういったものが考えられるのだろう、それをどうやって身につけたら、あるいは組織としてどうやってそれを実現したらいいのだろうというようなことをうかがいたいと思いました。もし何かお考えがありましたら教えてください。
【大向先生】
 特別なスキルというよりも、ふだんAIを使うときと同様、頭の中の言語化されていないものをどう引き出すかに尽きると思っています。優れたプロンプトは何千行にもなることがあり、自分の思考や要求をここまで言語化できるのかと感心させられます。AIとの対話を通じて引き出しているのでしょう。この点が鍵になります。
 専門知やノウハウと呼ばれてきたものは確かに存在しますが、外からは見えにくいその情報の取り出し方が問われているのは、図書館に限らずどの分野でも同じです。トレーニングとしては、隣に座っている人に自分の仕事を説明できるか、というレベルから始めることが有効です。
 私のゼミにはいろんな専門の人が来ますが、普通に話しても全く通じないことがあります。各々の経験と専門知が違うからです。どうしたら相手に伝わるかをしつこく対話しないと、なかなか出てきません。私自身もそうです。的確に伝えられる力があれば、AIエンジニアとの協働でその言葉をシステムに落とし込むことも、直接プロンプトとして使うこともできます。
 今のAIは言葉で動くものですので、言語化の力を磨く必要があります。慣れてしまえばということでもあります。図書館はもともとそういう場所ですので、決して苦手なことではないはずです。
【〇竹内主査】
 ありがとうございます。
【小山委員】
 ありがとうございました。
【〇竹内主査】
 単純に言ってしまうと、これまで知識経営論なんかで言われてきたような暗黙知をどのように表現し得るかという話だろうと思います。なので、それは図書館員に特有のものでは決してないだろうと思われます。暗黙知は様々な専門領域の中に存在しているはずですから、それをどのようにするかということだと思います。
 この部分は、先ほどの大向先生のAIリテラシーの中にあった、見えないコンテンツという中にあったのとまさに同じですね。これは私も学生にいろいろと課題をやらせている中でですが、例えばある時代区分のやり方について、ある研究領域だったら当たり前に考えられているような時代区分があるのをAIは全く無視してしまうといったこともよく起きてきている状況です。言語化されていないけれども、その分野の人たちであれば皆が知っていることの処理というのが、今のところはAIを活用していく上でのボトルネックの一つになっているということだろうと思います。
 それでは図書館という仕事に関してはどうなのかというのは、多分今のこれからの議論だと思うのですけれども、今、小山先生から御提起のあった問題というのは、資料3のところでいうと、(4)のAI時代における図書館員の問題という、人の問題とAIはどのように関わるかというところで、どのようなスキルが図書館員には必要かというところかなと思いました。
 それに対して、先ほどの野末先生のお答えも含めて考えれば、ある種の仲介者、媒介者というところになると思うんですけども、それは振り返ってみれば、大昔の図書館システムの機械化なんて言っていた時代にやっていたことと多分同じで、そのシステムをつくる人に対して、我々は一体何をやっているのかということを正確に伝えられるかどうかというところに大きな問題というか課題があるんだろうと思います。
 ですので、特別なものではないんじゃないかという気がしないではないというところがございます。一応そのようにまとめさせていただきましたけれども、ほかにいかがでしょうか。どなたからでも結構ですが。林委員、どうぞ。
【林委員】
 貴重な情報提供ありがとうございました。今、小山さんが図書館の「これから委員会」の立場も踏まえながら、一生懸命そのギャップを埋めようとする議論を聞きながら改めて思ったのですが、私は反対側からのアプローチも考えています。というのは野末さんのお話にあった、これから必要な知識、サービスに必要な図書館像というのは一体何だろう。それに基づいた組織や運用のフレーム、そういうデザインができて初めてスキルとかそういったものが記述できるのかなと。
 これまでの活動をいたずらに否定する意図は全くなく、ありていに言うと、ユビキタスとして長らく語られたように、要するに図書館に行く前からスマホでAIと知識の対話しているユーザーがいて、でも図書館関係の方と一緒に知識を探索して深めていくという、そういうサービス設計をまず念頭に置いた上で、そこから必要な図書館像をひねり出す。大事なキーワードは、図書館が一次コンテンツを持つ時代、だと思っています。いつもの議論で言うと、図書館が“副本”を持つ時代ではなくなったというのは電子になるときずっと言われていましたけど、いよいよここに来て、RAGにしろ、ソブリンティのある、主権のあるAIを持つにしろ、一次コンテンツをいかに持つか、それは奇しくも機関リポジトリの再定義につながるという流れになります。議論を発散させてしまって恐縮ですが、この後収束させようとは思っています。
 というのも、以上を踏まえて、大向さんのこれまでの取組がすごく生きてきてくるのではないかなと思っているからです。これまでの経緯から漸次的にイずっと寄り添いながらITの側面から改善してきたところに次のヒント自体はあろうかと思います。竹内主査が小山さんとの議論でおまとめいただいたように、そこの本質のところは何一つ変わらない、その上でもう一度、諸状況を整理するワークショップでもやってまとめ直すことが必要に思います。この資料3は何一つ否定しないですが、これは要するにそもそも大学図書館ありきで書かれていますす。私にはそう見えるので。そうではなくて、これから国民にあるいは高等教育に必要な知識・情報提供の在り方というのを決めてから、それから図書館像をひねり出すという、それとセットでやるのがいいと思いました。
 以上です。
【〇竹内主査】
 ありがとうございます。図書館がそもそも何のためにという議論がないと、この話はできないということですけども、とはいえ、これまで図書館がやってきたことを現象として理解するのではなくて、本質としてどう理解するかということは、審議まとめの中でも繰返し言ってきたことで、その中で言えば、知の生産―審議まとめの中では知の再生産と言っていますけれど-知の生産ということに対して関わっていくような基盤であり続けるということだと思うんです。
 そのためにAIはとても便利な道具であるということは恐らく言えるだろうと思うわけですけれども、でも、そのAIがきちんと機能していくために、我々はコンテンツ基盤として何を維持していけばいいのかというのが、大きな課題としてはあるのだろうと思います。
 そのことについては、大向先生の先ほどの議論の中にもあったように、そのコンテンツ、見えているコンテンツ、見えないコンテンツというお話がありましたけども、コンテンツという部分について、我々は大きなアドバンテージを持っているというのは事実だろうと思うのですが、そのアドバンテージを生かしていくためには、紙のままではどうしようもないというのはあるわけであって、そのためのデジタル化は非常に重要な課題だということは恐らく議論の余地のないところかなとは思っています。
【林委員】
 林です、なので多分議論の項目自体は既にもう出尽くしていて、今の文脈でもう一回整理し直すというか、デザインし直すみたいな、多分そういう流れなのかなと考えています。
【〇竹内主査】
 そうですね。ですので、ロードマップでもそういう書き方がされていると思うのですけれど、基本的には、紙のものをデジタルにするということが、これはもう2020年のコロナ禍のときに、リモートサービスができないということの問題があって、それを乗り越えるためには最低限デジタル化が必要だという議論があったと思うのです。2023年の審議まとめのスタートはそこにあったはずです。そこに我々が議論していく中で、急激にAIという問題が入ってくるようになって、それを使った知の生産、あるいは知の再生産といったようなディレクションに動いていく中で、図書館というところは何を実現していれば、これからの人たち、ユーザーの期待に沿う形になるのかというのが多分問われていることだと思うのです。
 さっき申し上げたように、表面的に、これまではある種メディアに記録された資料と言われるものを集めて保存しておいて、「要るよ」と言われたときに「はい」と出してあげることができるということが、おそらく当時の学術情報流通のシステムとか技術とかを考えたときに、図書館が社会的に果たす役目を考えたときの最善の方策だったはずです。その最善の方策をずっとやり続けていても、環境が変わっているのだから、もうそれは違うでしょう。それはもう間違いがないので、その変わっていく環境の中で何をやり続けることが、我々がこれまでやってきた機能と同等のものを実現する上で必要かという議論だろうとは思います。
 方向性の違う話になってきておりますけども、それは我々としては常に確認しておかないといけない話であって、要は、技術に振り回されないように、我々の本質をきちんと見極めていく上では重要な話だろうというのは思いますが、そのことについては、折に触れて繰返ししていきたいところです。とはいえ、そういったことを前提として、AIが出てきたときにどう考えるかということがあると思います。
 一つ気になっているのは、先ほどの野末先生のお話というのは、図書館が提供しているシステムの内部にAIの機能を持ち込むという話だったと思います。大向先生がお示しいただいたRAG、そしてMCPの話というのはそうではなくて、図書館システム、あるいは図書館が提供しているデータベースサービスの外にAIが存在していて、それによってサービスが実現するという話だと思います。この問題は結構大きいのではないかと思っています。
 今は様々なベンダーが、自らが提供しているデータベースの中にAI機能を取り込んで特色をいろいろ出そうとしているわけです。例えば、大向先生の資料の中にも出てきたような具体的な名前なんかも多分そうだと思うのですけれども、その辺りを今後どのように考えていけばいいのかというのは、かなり大きな課題ではないかと思っていますが、その辺はいかがでしょうか。どなたからでも結構です。
【野末先生】
 補足してよろしいですか。
【〇竹内主査】
 どうぞ、野末先生。
【野末先生】
 先ほど委員の先生からの御質問にもあったんですけど、今、AIで蔵書を探すシステム、別に蔵書じゃなくても実は探せるのですけど、学習させれば、チューニングすればですけど。図書館システムの中につくり込むタイプと共同利用のモデルが実はあります。外部にAIを置いて、そこへAIも目録データ、書誌データを学習しています。そこに、OPACがここにあります。管理はこちらでしています。こちらで検索すると、そこを見に行って、それをもらってきたものをこっちへ表示させるというモデルも実はあります。
 だから、つくり込むタイプと、もう外に仕組みがあってそこを見に行くという両タイプあるんです。これは、実は値段の問題で、つくり込むほうがはるかに高いので、今それでできているんですけど、外部にあることのメリットみたいなものも一方であるかなと思います。というのが今の補足です。
 先ほどの話で、今日、話題提供に来たので1個だけ。質問回答の話をさっきちらっとしたんですけど、レファレンスサービスで、人間がやるのとAIがやるのとどう違うかというのを、実は富士通さんが試したものがあるんですけど、AIのほうは直接的に答えを言おうとする傾向にある。レファレンスライブラリアンがやると、直接答えを言う場合だけではなくて、探し方を伝えたりとか、典拠を伝えて、ここで見てということを言ってみたりとか、つまり伝え方に違いみたいなのもあるのですよね。
 先ほどお話が出ている中での、暗黙知と主査がおっしゃったようなこと、学習科学なんかでいうところのメタ知識とかメタ技能みたいなものが、恐らく大向さんがおっしゃっていた、見えないコンテンツとしては図書館としては非常に多くのものを持っているなと思いました。だから、レファレンスサービスなんかは、例えばQ&Aを全部打ち込めば、国会図書館の共同データベースにぶち込めば、何かいい結果が出るかというと、多分出ないんのではないかなと我々としては思っていて。そこにはまだ、そういうやり方ではないやり方があるだろうと研究チームの中では今思っているということ。今日は情報提供なので、補足で。話が一個戻りましたけど、ということです。
【〇竹内主査】
 ありがとうございます。大向先生お願いします。
【大向先生】
 今日はDeep ResearchやRAG、MCPなどの話題で皆さんを攪乱させるつもりではありませんが、あの状況は、情報へのアクセスにおいて個々のプレイヤーがどこにタッチポイントを作るかをめぐる壮絶な争いにも見えます。AIツールで全てまとめたいと思う側もあれば、検索エンジンのような体験をタッチポイントにしたい側もあります。ルールが一旦リセットされた状況で、各ステークホルダーが良い体験のデザインを懸命に考えているのが現状です。
 そのとき、大学図書館は大学の中で物理的な実体を持つ組織として、有利に機能するデザインがあるのかどうかが問われます。AIを作るという点では資本の力が大きく効いてきます。その資本でも実現できないタッチポイントを持つ図書館が何をするのかは、自由度の高いデザインの問題であり、個人的に強い興味を持っています。
【〇竹内主査】
 ありがとうございます。まだ今日御発言いただいていない委員の先生方もいらっしゃるので、ぜひ御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。
【西岡委員】
 1点質問大丈夫ですか。
【〇竹内主査】
 はい、西岡委員どうぞ。
【西岡委員】
 大向先生に御質問です。本日の議論の本筋からは少しずれる部分があるかもしれませんが、スライドの3ページ目で、デジタル人文学プログラムを御紹介いただいています。右側の図は、ある種、研究のライフサイクルを示したものだと捉えています。2030デジタル・ライブラリー推進に向けたロードマップでも整理・検討事項として、研究のライフサイクルと研究者の作業フローの見える化というものがあるので、御質問させていただきたいと考えました。
 この中で特に図書館と関わりが深いのはデジタル人文学の研究基盤のところなのではないのかなと推察していて、この中でAIとの接点でしたり、また実際に人文学プログラムの研究の過程で図書館との接点などがございましたら、ぜひ教えていただければなと思いました。
【大向先生】
 手近なところから言えば、まず資料の読み取りです。人文学としても、AIに対して最も期待しているのは、多様な資料をテキストに落とし込む部分にどうAI技術を使うかというところで、今はそこに強い興味が向いています。
 それをやるために必要なのは、読める人です。結局、アルゴリズムを処理させた結果がいいか悪いかを評価できなければ意味がない。人文系の大学院生も含めて、読める人が、AIを使った結果をもう一度見るというプロセスが絶対に必要です。ですから、インフラだからといって何の気なしに使うのではなく、インフラ側にも積極的に参加しなければ研究ができないのではないか、という議論をしています。
 このことはすごく大学図書館にとっても重要だと思っていまして、大学図書館にも読める人が多くいらっしゃいます。多言語の目録が取れるなど、様々な専門性を持ち、資料を理解しながら情報をつくっています。これまでは当然の仕事として行ってきましたが、このことの価値をAI時代においてうまく提示していく必要があります。
 研究の現場との距離が近くなれば、分野としての課題やトレンドなど、文字ではないけれど何らかの流れを読むことになります。読むという行為をデータに落とし込んで活用できるようにすることは、大学の他の部局にはできない図書館ならではの活動です。そこにうまく価値を見いだせればと思っています。
【西岡委員】
 ありがとうございました。
【〇竹内主査】
 ほかいかがでしょうか。大山委員、どうぞ。その次、松原委員、お願いいたします。
【大山委員】
 東京大学図書館の大山でございます。本日、野末先生、大向先生のお話を伺っていて、非常に興味深かったとともに、実際に大学図書館で働いてきた身としては、どのようなこれから働き方をすべきかということですとか、大学図書館はどういった機能を果たしていくべきかというところで非常に考えさせられました。
 コンテンツの重要性ということで、AIに対して良質なコンテンツをきちっと提供していくというのは我々が非常にできるところかなと思っていますし、また責務でもあると思っていて、そこは非常にこれからも大学図書館の役割としては重要なところだなと感じました。
 一方で、今まででしたら、自分たちで持っている蔵書ですとか図書館という場を使って、比較的、直接的なサービスを行ってきたのですけれども、今後そういったところが、割と提供したコンテンツは別に図書館の中で使う必要はありませんので、例えば考え方としては、我々は大学で働いている者ですので、大学の目的に沿った形でいこうということであれば、また、研究支援のために何ができるのか、教育支援のために何ができるのかということであれば、図書館という区切りが必ずしも必要ではなくなってくるなと。
 ある部分においてはそういったほかの部署との融合というのが出てくる中で、危機感も持ちつつですが、2030というのが今回の着地点ではありますけれども、もうちょっとそれは先になるのだとは思うのですが、このロードマップですとか、この課題をまとめたものの中に、そういった視点を入れ込んでいくというのも必要なのかなと思った次第です。直接AIに対しての何か記述というわけではないですが、AIによってもたらされる何かそういった変化も見越したものを示していく必要があるかなと思った次第です。
【〇竹内主査】
 ありがとうございます。ぜひその観点でやるときには、図書館がその周りから浸食される危機感ではなくて、図書館が外を侵食していく強みというか、ぜひ考えていただければと思います。
 松原委員、どうぞ。
【松原委員】
 松原でございます。最初に野末先生から図書館とAIということでお話がありましたが、この検討会の対象は大学図書館ですので、大学図書館にとってのAIの在り方というのは、一般の図書館とは異なる点があるかと思います。大向先生からはコンテンツホルダーとしての図書館の役割という話がありました。AIは進化が早いので技術はすぐに陳腐化するかもしれませんが、AIが活用しているコンテンツの価値というのは持続しやすいので、コンテンツをホールドしていることにはアドバンテージがあると思います。
 一方で、コンテンツホルダーとしての大学図書館が、現状で十分に大学のコンテンツをホールドできているかという点では課題があるように思います。大学の活動、特に、研究活動と教育活動に対しては、大学図書館がホールドするコンテンツやデータをもっと拡充していく必要があるのかなと思います。
 大学における図書館の意義を高めていくことを考えるとき、ホールドするコンテンツやデータの対象をどのように広げていくかが重要な戦略になるかと思った次第です。
【〇竹内主査】
 ありがとうございます。貴重な視点を御提供いただいたと思います。まだ御発言いただいていないのは杉田委員ですが、何かございますか。
【杉田委員】
 ありがとうございます。感想だけですけども、見えないコンテンツというところが一番、聞いていて、これはどうしたらいいんだろうと思いました。現在のAIではなくて、より汎用的なAIという話題が最近出てきますけども、そういったものがこれを解決できるのかな、どうかなというところをすごく考えさせられました。どうもありがとうございました。
【〇竹内主査】
 ありがとうございました。ちょうど予定の時間になりました。これについてはなかなか議論が難しい面があって、本日、野末先生、そして大向先生からは、それぞれの御経験も踏まえて、AIと図書館との関わりについて、いろいろお話しいただいて、それに対して、いろいろ委員の皆様方からも御意見をいただいたところです。
 先ほど林委員からも問題提起がございましたように、こういう状況になっていったときに、大学図書館のコアな役割は何であって、そしてその周辺にどういう役割が存在していて、それを大学というコンテクストにおいては、誰がどのようにやっていくのかという、大きな絵の必要性を改めて共通認識として得たのではないかと思っております。これは2030年に答えが出るという感じではないですけれども、その辺りは意識しながらやっていかないといけない部分かと思いました。
 というところで、皆さまには諸々御貢献いただきましてありがとうございました。特に、お忙しいところ、野末先生と大向先生にはプレゼンテーションを御準備いただきまして、大変有益な御貢献をいただいたことに改めてお礼を申し上げたいと思います。それでは、本日出されました意見等につきましては、事務局で整理の上、今後の審議に生かしていきたいと思います。
 それでは、最後に事務局より事務連絡等があればお願いいたします。

閉会

目次

【麻沼参事官補佐】
 事務局でございます。本日の議事録ですが、各委員及び御発表いただきました野末先生と大向先生にも御確認いただいた上で公開をさせていただきます。次回、第13回目につきましては、既に日程調整をさせていただいたところですけれども、3月2日月曜日の16時からを予定しております。詳細につきましては改めて御連絡をいたします。
 事務局からは以上です。
【〇竹内主査】
 ありがとうございました。それでは、これで閉会とさせていただきたいと思います。皆さん本当にありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室

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(研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室)