4.次期学術情報ネットワーク(SINET4)の整備計画

 平成23年度当初からの次期学術情報ネットワーク(SINET4)の運用開始に向けて、平成22年度中のネットワークの構築と現行の学術情報ネットワーク(SINET3)からの円滑な移行を図る。コア回線については、当初、現状と同様の最大40Gbpsで構築・提供を行うが、平成23年度以降、需要の状況を勘案しつつ増速を検討。

 ノード空白県へのエッジノードの設置は、最優先課題として整備する必要があるが、平成22年度においては4県に整備するとともに、平成23年度以降、予算の状況を勘案しつつ早急に整備。

 学術情報基盤オープンフォーラムの活動を活用しつつ、国立情報学研究所と大学等の連携を強化していくことが必要である。特に、アクセス回線の整備に当たっては、本フォーラムの枠組みを活用して、共同調達による回線の導入を図ることが効果的。

 国際回線については、今後の需要を勘案しつつ必要な帯域の確保に努めることとするが、ニューヨーク回線を10Gbpsから20Gbpsへ、また、アジア回線については香港回線またはシンガポール回線のどちらかに統合した上で、計1.2Gbpsから2.4Gbpsへ増速。

 なお、平成22年度においては、SINET4への移行を行いながら、教育研究活動に支障が生ずることがないよう、SINET3の安定的な運用を継続的に実施。

(1)平成22年度における移行・整備計画

1.ノードの配置及び回線の整備

 国立情報学研究所においては、学術情報ネットワークの整備・運用を重点課題として捉え、特に、平成22年度においては、限られた予算の中で、次期学術情報ネットワーク(SINET4)への移行作業を最優先させることとし、平成23年度当初からの運用開始に向けて、平成22年度中のネットワークの構築と現行学術情報ネットワーク(SINET3)からの円滑な移行を図る。即ち、SINET4の詳細設計を行うとともに、SINET3からSINET4への移行設計及び移行作業を行い、平成22年度末には両ネットワークの並行稼働を開始する(並行稼働の期間は、平成22年度末の1.5月を想定)。併せて、SINET4の基本構成となるエッジノードの全県設置を実現するため、現状において13県存在するノード空白県へのエッジノードを整備するほか、国際ネットワークの安定的な運用を引き続き図る。

 平成22年度におけるSINET4の基本構成は図7(55頁)のとおりとし、コア回線については、当初、現状と同様に最大40Gbpsで構築・提供を行うが、平成23年度以降、需要の状況を勘案しつつ増速を検討することとする。学術情報ネットワークの利用の現状を踏まえると、総トラフィック量は毎年1.4倍の増加が見込まれるところであり、早急な増速整備が必要である。

2.ノード空白県へのエッジノード整備

 ノード空白県へのエッジノードの設置は学術情報ネットワーク整備の最優先課題として考える必要があるが、平成22年度においては、予算の状況を勘案して4県へのエッジノードの設置とエッジ回線の整備を図ることとする。さらに、平成23年度以降、予算の状況も勘案しつつ、可能な限り早期のノード空白県の解消を目指す。(「5.ノード空白県へのエッジノード整備」22頁を参照)

3.SINET3の運営

 平成22年度においては、SINET4への移行を行いながら、学術情報ネットワークを介して行われる教育研究活動に支障が生ずることのないよう、現行のSINET3の安定的な運用を継続的に行う。併せて、最先端学術研究を支える先進的なネットワークサービスの提供や利用者支援を継続的に行うこととする。

4.アクセス回線の共同調達

 SINET4においては、各機関が接続するエッジノードを各県に置くデータセンターに設ける構成となるため、各接続機関等は、従来、ノード校に接続していたアクセス回線に係る契約期間の更新を行う際、平成23年度以降平成27年度末までに順次データセンターに接続変更を行うことが必要となる。その際、増大するネットワーク需要に対応したアクセス回線についてコスト増を抑えつつ整備する必要があるため、国立情報学研究所は学術情報基盤オープンフォーラムの枠組みを活用してアクセス回線の共同調達について周知を行うとともに、1Gbps以上の高速の専用回線の利用を検討している機関を対象として、共同調達による回線の導入を図ることが効果的である。

 共同調達に当たっては、国立情報学研究所(情報・システム研究機構)と共同調達を希望する接続機関等とが、予めアクセス回線の調達・契約に関する協定書を取り交わす必要がある。その上で、国立情報学研究所が一括して業者と契約を締結し、経費は各接続機関等が個別に支払うこととなる。また、共同調達を行う機会は、平成23年度以降についても順次設けられることが適当である。

 なお、各接続機関等における次年度の予算確保に係る準備の観点から、国立情報学研究所は、アクセス回線の共同調達の詳細や事務的な手続き等について、早期に各接続機関等に提示していくことが重要である。また、各接続機関等における共同調達に係る理解を得るため、広く接続機関の関係者を対象とした説明会を開催することなどについても、検討していく必要がある。

5.学術情報基盤オープンフォーラム

 学術情報基盤オープンフォーラムは、大学及び研究機関等における学術研究や教育活動の発展を支える最先端学術情報基盤(CSI)を強化することを目的として、国立情報学研究所を事務局として平成21年6月に設立された。本フォーラムにおいては、(1)発展する研究・教育活動による急激な需要の拡大に対応したネットワークの持続性の確保、(2)上位レイヤ機能の実現に向けたネットワークの構築と上位レイヤ機能の提供、(3)最先端学術情報基盤に関する地域間格差の解消を目指して、シンポジウム、意見交換会及び説明会等の開催などを行っているところである。
 引き続き、本フォーラムの活動を活用しつつ、国立情報学研究所と大学等との連携を強化していくことが必要である。

(2)平成23年度以降の整備計画

1.コア回線の整備

 東京・大阪間については、当初、現状と同様の40Gbpsとするが、学術情報ネットワークの需要増に対応するため、80Gbps、120Gbpsと段階的な増速が必要である。また、東京・札幌間については、当初、現状の10Gbpsとするが、40Gbpsへの増速が必要である。
 これらのネットワークの増速は、各回線の需要の状況を勘案しつつ、予算の範囲内で、できるだけ早期に効率的な増速を実現することとする。

 その際、ネットワーク回線の増速だけではなく、学術情報ネットワークに接続する各々の大学等においても、必要となる情報の通信を円滑に行うことができるよう、情報基盤の整備に努めることが、ネットワーク環境全体の向上を図る上で重要である。

2.ノード空白県へのエッジノード整備

 ノード空白県へのエッジノードの整備は、SINET4の基本構成上不可欠な要素であるため、最優先課題として整備を図る必要がある。接続機関等の要望を適切に把握したうえで、予算の状況を勘案しつつ早急な整備を図る必要がある。(「5.ノード空白県へのエッジノード整備」22頁を参照)

3.国際回線の増速

 最近、海外との国際共同研究等が活発化しているが、次世代を担う我が国の若手研究者をグローバルなレベルで優秀な人材として育成する観点からも、国際共同研究の推進は重要である。また、特にアジアを中心として、我が国がネットワークに関して技術面でリーダーシップを取るためには、海外との大学間交流及び研究者間交流を一層活発化することが重要である。こうしたことを背景として、海外の研究教育ネットワークとの接続や連携が益々重要になってきており、欧米(Internet2、GEANT)やアジア(APAN)のコミュニティとの連携や相互接続などを戦略的に推進していくことが重要である。このため、国際回線については、今後の需要を勘案しつつ必要な帯域の確保に努めることとする。

 具体的には、米国回線については、ニューヨーク回線を10Gbpsから20Gbpsに増速する必要がある。また、アジア回線については、現状の1.2Gbps(シンガポール及び香港との回線が各0.6Gbps)から増速を図ることとするが、香港回線またはシンガポール回線のどちらかに統合した上で2.4Gbpsへの増速を図ることが適当である。アジア回線の契約更新が平成23年度当初となっていること、また、統合・増速に伴い現状と比較して大幅な経費増とはならないことを踏まえ、関係各国の機関との検討を経て、契約更新時に増速を図る必要がある。

 なお、国際共同研究を推進する上で、国際回線のレイテンシやスループットが支障となることも想定されることから、より適切なネットワーク構成を検討する必要がある。

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研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)