2.次期学術情報ネットワーク(SINET4)の基本的構成

 次期学術情報ネットワーク(SINET4)の基本的な構成については、以下の3課題に対応することが必要。

1.急激なネットワーク需要の拡大への対応
 ・ 40Gbpsをベースに100Gbpsを超える高速・高信頼コア回線を導入。
 ・ 各接続機関のネットワーク需要の拡大に対応するため、エッジ回線は2.4Gbps以上とし高速化。
 ・ エッジノードをデータセンターに設け、一層の安定化・高信頼化。

2.高度化・多様化するニーズや需要増への対応(上位レイヤ機能の強化)
 ・ 大学等の学術研究や教育活動に必要な学術リソースを共有・提供。

3.先端学術基盤格差の解消
 ・ 13の「ノード空白県」にエッジノードを配置。

 また、学術情報ネットワーク整備における国立情報学研究所と大学等接続機関との連携・協力を強化することが適当。

(1)ネットワークの基本的な構成

 学術情報ネットワークは、CSIの中核として、我が国の大学等における学術研究及び教育活動全般を支える基盤を形成するものである。このため、次期学術情報ネットワーク(SINET4)の構成を考えるに当たっては、以下の3つの課題に応えていく必要がある。

1.急激なネットワーク需要の拡大への対応

(需要の状況)

 学術情報ネットワークの利用の現状を踏まえると、総トラフィック量は毎年1.4倍の増加が見込まれる。それを基に予測すると、現行の学術情報ネットワーク(SINET3)の回線使用契約が終了する平成22(2010)年度末の時点では平成20(2008)年度の2.7倍以上、次期中期計画期間終了時の平成27(2015)年度末時点では10倍以上に需要が拡大することが見込まれる。即ち、先端学術研究や教育活動の高度化等に伴うデータの大容量化とこれに伴うトラフィック量の増大により、次期中期計画期間の早い段階から殆どのエッジノードにおいて回線容量を大幅に超えることとなり、安定的な通信回線の確保が極めて困難になることが予想される。

 なお、今後、ペタフロップス級のスーパーコンピュータや大容量のストレージ等の計算資源が整備されるなどの状況変化にも適切に対応するため、需要の把握は適宜行っていく必要がある。また、最先端学術研究の国際連携が一層進展する中で、国際回線の需要の把握も適切に行っていく必要がある。

(対応)

 先端学術研究や教育活動の進展に伴う大容量データの転送に耐えうるネットワークを構築するためには、コア回線は平成20年度のトラフィック(10Gbps以上)の10倍以上を収容する必要があるため40Gbpsをベースに100Gbpsを超える高速・高信頼コア回線をコアノード間に導入する。また、各接続機関のネットワーク需要の拡大に対応するため、コアノードとエッジノードを繋ぐエッジ回線は、コア回線と同様に平成20年度のトラフィック(100Mbps以上)の10倍以上を収容する必要がある。このため、2.4Gbpsをベースに高速化を図る。また、エッジノードをデータセンターに設けることとし、ネットワークの一層の安定化、高信頼化を図る。

 その際、コアノード及びエッジノードの配置の更なる適正化や、コアノードにエッジノードの機能を持たせることにより、現在より双方の数を削減する。

 さらに、接続機関からエッジノードまでのアクセス回線について、経済的高速化を図るために、波長多重可変速光回線(ダークファイバー及びCWDM)によるネットワーク構成を採用する。これにより、接続機関は、需要に応じて1Gbpsから40Gbpsのアクセス回線を経済的に構築することができるようになる。

 なお、接続機関や地域等の個別事情に応じて、従来型の専用回線接続を希望する場合は、それに対応していくことも必要である。

 また、SINET3は、SINETとスーパーSINETが統合したものであり、現在のノード校は両者のエッジノードを引き継いだ構成となっている。このため、加入機関の地域拠点としての活動を含む接続拠点及び先端研究拠点として位置付けられている。

 SINET4においては、現非ノード校におけるアクセス回線の終端点が現ノード校からデータセンターに変更となるため、この移行に係る作業に要する期間を十分に設ける必要がある。即ち、SINET4の運用開始当初においては、現非ノード校のアクセス回線終端点を先ず現ノード校に収容した上で、各非ノード校のアクセス回線の契約終了時期に合わせて段階的に各非ノード校のアクセス回線終端点をデータセンターに移設収容する。

 その際、県内にエッジノードが存在しない、いわゆる「ノード空白県」も含め、各機関の接続回線の契約期間の実態を早急に把握するとともに、各機関の意向も踏まえたデータセンターへの移設を円滑に行うことができるよう、データセンター設置場所に関する考え方は、できるだけ早期に明確にしていく必要がある。

 SINET4の整備の検討に際しては、JGN(研究開発テストベッドネットワーク)など他のネットワークとの関係や位置付けの明確化など、幅広い観点に立ったネットワーク基盤の検討が必要である。

 また、接続機関側においても、各々の機関における学術情報ネットワーク利用上のプライオリティ付けや、必要に応じて民間プロバイダ等との利用上の使い分けについても考えていく必要がある。

2.高度化・多様化するニーズや需要増への対応(上位レイヤ機能の強化)

(需要の状況)

 学術研究の高度化や多様化を背景として、学術研究における計算機資源、グリッド、ストレージ、学術コンテンツに対する要請や、学術情報ネットワーク上での仮想閉域ネットワーク機能(VPN)や大学間電子認証基盤の活用などといった学術情報基盤に対する新たな要請も益々高まってきている。

(対応)

 CSIの構築に向けて、このような上位レイヤ機能の強化を図るため、大学、情報基盤センター、大学共同利用機関等と連携・協力し、大学等における学術研究や教育活動に必要な学術リソースを学術情報ネットワークを介して共有し提供する環境を構築することが必要である。

 例えば、大学等が保有するコンテンツやネットワーク等の学術リソースの利用者を認証し共有するための認証基盤の構築や、スーパーコンピュータなどの計算機資源を共有するための計算機資源共有基盤(グリッド)等の一層の整備を進めること等が求められる。

 また、学術情報基盤が整備されていることを前提として進展する研究も多く存在することから、国立情報学研究所においては、研究の動向などとともに求められるニーズを把握し、大学等と連携・協力しつつ、適切な整備を図っていくことが求められる。

 なお、各大学等の接続機関においては学術情報基盤の基本的なサービスが保証されなければ、更なる教育研究の進展には対応できないため、基盤としての共通的なサービスを展開した上で、個々の大学等の要請に応じたサービスを考えていく必要がある。

 従来、学術情報ネットワークの運用においては、新しいネットワークサービスの導入に際しての技術的な支援などにおいて情報基盤センターや大学共同利用機関等の協力も得て行ってきた面もある。しかしながら、今後、上位レイヤ機能の強化に向けて、国立情報学研究所とこれら機関との連携がさらに重要となると考えられるため、その体制の在り方についても、十分検討していく必要がある。

3.先端学術基盤格差の解消

(需要の状況)

 現在、「ノード空白県」は全国で13県となっている。これらの県において、ほとんどの接続機関は近隣県のノード校と100Mbpsで接続されており、ピーク時には100%の回線使用率となる接続機関もあり、事実上の限界に近づいているなど、極めて厳しい状況となっている。こうした状況を改善し、今後見込まれるネットワークの利用拡大に対応するため、「ノード空白県」を解消しネットワークの高速化を可能とすることが喫緊の課題である。

(対応)

 このため、「ノード空白県」にエッジノードを新たに配置し、従来の接続機関の県間を超えるアクセス回線の距離を短縮するとともに、1Gbps以上の経済的で高速なアクセス回線を確保できる環境を整備する。このことにより、他大学等との送受信時における応答時間が短縮されることはもとより、共同研究における研究データの送受信や遠隔講義における映像通信等を支障なく行うことができる環境が実現することとなる。

 なお、その際、地域のネットワークとの連携についても検討していく必要がある。

(2)関係機関間の連携・協力の強化

 学術情報ネットワークの整備に当たっては、国立情報学研究所の一事業という観点ではなく、国の学術情報基盤全体(オールジャパン)の中でその整備の必要性、必要経費の確保等について考えていく必要がある。

 さらに、SINET4の構築に当たっては、運営主体である国立情報学研究所と接続機関である大学との連携による学術情報ネットワークの運営体制の強化を図ることが求められる。

 このような観点から、共同調達、情報や技術の交換・交流及び地域連携の推進を図る場としての「学術情報基盤オープンフォーラム」が創設されたところであるが、その場での取組も含め、今後、より一層接続機関との連携・協力を強化することが適当である。

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)