1.次期学術情報ネットワーク(SINET4)整備の基本的考え方

 次期学術情報ネットワーク(SINET4)整備の基本方針については、平成20年12月、作業部会が取りまとめた『学術情報基盤整備に関する対応方策等について(審議のまとめ)』において、次のとおり取りまとめられており、これに基づいた整備を図ることが必要。

  1. 最先端の学術研究及び教育を支えるためのネットワークの高度化
  2. 大学等接続機関全体のネットワーク環境の向上
  3. 先進的な技術・研究開発によるネットワーク設計並びに効率的な運用による経済性の向上
  4. 大学等、研究機関及び産業界との連携・協力等の新たな展開
  5. ネットワークの持続的な整備方策の検討

 また、SINET4については、我が国の大学等における学術研究や教育活動全般を支える情報ライフラインであるとともに、先端的学術研究の推進を支える不可欠な最先端ネットワーク基盤として、引き続き国立情報学研究所において一元的に整備していくことが必要。

(1)整備の基本方針

 次期学術情報ネットワーク(SINET4)整備の基本方針及び国立情報学研究所の役割等については、平成20年12月、作業部会が取りまとめた『学術情報基盤整備に関する対応方策等について(審議のまとめ)‐ 情報基盤センターの在り方及び学術情報ネットワークの今後の整備の在り方 ‐』において、次のように示されているところであり、これに基づき学術情報ネットワークの整備を図っていく必要がある。

 学術情報ネットワークを運用する国立情報学研究所においては、今後はCSI構築のため、学術コミュニティからの先端的なニーズを調査・分析した上で、最先端ネットワークに関する研究開発を推進するとともに、その成果に基づく機能の充実を継続的に図っていく必要がある。その際、学術コミュニティが求める最先端機能の実現を図りつつ、学術研究や教育の活性化を図っていく観点から、ネットワーク基盤のみならずネットワーク上で展開される機能、サービス等を一体的に整備していくことが重要であり、研究開発とネットワークの運用、機能提供といった事業との両輪体制の下にCSI構築に向けた取り組みを推進していくことが不可欠である。

 学術情報ネットワークは、CSIの中核であり、我が国の大学等における学術研究及び教育活動全般を支える基盤であることから、学術情報ネットワークを運用する国立情報学研究所は、今後とも、各大学に設置された情報基盤センターや情報処理センター等並びに研究機関などとも連携・協力して、持続的にネットワークの研究開発、整備及び運用を推進する必要がある。また、学術情報ネットワークの整備に当たって、国の支援は不可欠である。

 こうした観点を踏まえて、次期学術情報ネットワークの整備については、以下の5項目の基本方針の下に整備の方向性を検討していく必要がある。

1.最先端の学術研究及び教育を支えるためのネットワークの高度化

 学術研究や教育活動の進展を背景としたe‐Scienceやe‐Education等の重要性の拡大、高精細画像による遠隔講義、遠隔医療等学術に係る映像通信の増大、大容量データの転送とバックアップ等、学術情報ネットワークの利用の増大に繋がる要素並びに学術情報ネットワークの今後の需要見込みを勘案し、次期学術情報ネットワークにおいては、大幅な回線速度の増強が必要である。

 海外も含めた複数機関間の共同研究の進展に伴い、多様な仮想閉域ネットワーク機能(VPN)の拡張、超大容量データバックアップ等のためのリソース・オン・デマンド機能の強化等の高機能化を推進する必要がある。併せて、利用者に対する安定した利用環境の確保の観点から、新技術の導入による更なる信頼性の確保と停止のない安定したネットワークの構築が必要である。

2.大学等接続機関全体のネットワーク環境の向上

 大学等における学術研究及び教育活動の発展のため、非ノード校も含む我が国の大学等接続機関全体のネットワーク環境の向上が不可欠である。
 特に、非ノード校が行うアクセス回線の整備を効率的に推進し、学術情報ネットワーク全体の高速化を図る必要がある。また、複数キャンパスを有する大学等におけるキャンパス間接続への学術情報ネットワークの活用に対する要望が大きいことを踏まえ、これにも積極的に対応していく必要がある。

3.先進的な技術・研究開発によるネットワーク設計並びに効率的な運用による経済性の向上

 次期学術情報ネットワークにおいては、大幅な回線速度の増強並びに機能、サービスの拡大が課題となるが、一方で、厳しい財政状況の下でその実現を図っていくことが求められる。このため、先進的な技術・研究開発によるネットワーク設計を行うことにより抜本的な経済性の向上を図る必要がある。併せて、関連設備の一括共同調達の方式を進めるなど経済性の一層の向上を目指すことが効果的である。

 また、次期学術情報ネットワークにおいては、接続拠点としてのノードについても、高信頼化、安定化及び可用性の向上が求められるが、経済性の向上を図りつつ対応する必要がある。

4.大学等、研究機関及び産業界との連携・協力等の新たな展開

 大学等における社会・産学連携に貢献する活動及び共同研究の推進を支援するため、VPN機能を強化するとともに、共同研究等により大学等の施設・設備を利用する民間企業等のネットワークに対するニーズに適切に対応していく必要がある。このため、国立情報学研究所においては、産業界及び研究機関に対して、大学等との共同研究を実施する際の学術情報ネットワーク利用の効果等について、積極的に周知を行う必要がある。

5.ネットワークの持続的な整備方策の検討

 学術情報ネットワークは、学術研究の効率的な推進等のため、国公私立大学等に対して広く開かれた研究環境を提供しているところであり、効率性の観点からは、引き続き一元的な整備を図っていくことが適当である。同時に、学術情報ネットワークの安定的な運用を確保し、その整備を不断に進めていくため、国立情報学研究所においては、ネットワークの加入機関と連携しつつ、国の厳しい財政状況の下での継続的な整備方策を検討していく必要がある。

 その際、国の支援の下に国立情報学研究所が整備すべき部分と、各機関の判断に委ねられる部分とをどのように整理するのかについても検討していく必要がある。

 さらに、学術情報ネットワークの持続的な整備やその基になる研究開発を推進するため、一層の経済性の向上に努める一方、大量データの流通やストレージなどを活用しないと進展しない研究など、ネットワーク接続の新たなニーズあるいは特別なニーズについては、当該利用機関に対しても応分の負担を求めていくことを含めて検討していく必要がある。その際、利用者の実態なども勘案しながら、多角的な検討を行っていく必要がある。

 なお、学術情報ネットワークの運営及び整備に係る経費については、現状においては、国から国立情報学研究所に対して運営費交付金の特別教育研究経費として措置されている。しかしながら、我が国の大学等における学術研究及び教育活動全般を支える基盤としての学術情報ネットワークの性格上、今後、その安定的な財政基盤確保の方策についても、併せて検討していく必要がある。

(2)学術情報ネットワークの基本的在り方

 現行の学術情報ネットワーク(SINET3)は、平成19年に全国の大学等を結ぶ情報基盤としてのSINETと先端的研究プロジェクトを支援するためのスーパーSINETを統合して整備されたものであり、我が国の大学等における学術研究や教育活動全般を支える情報ライフラインであるとともに、先端的学術研究の推進・連携に不可欠な最先端ネットワーク基盤として、ネットワークを利用する大学等の様々なニーズに対応して整備が図られてきた経緯がある。

 また、SINET3は、大学等において、学内のネットワークや学術コンテンツに係る利用環境の向上はもとより、研究者間における研究資源及び研究成果の共有、研究活動の効率的な展開、遠隔講義や連携大学院などの大学間連携の強化等の学術研究及び教育活動全般を支える基盤として重要な役割を果たしているところである。

 さらに、我が国の最先端の学術研究や国際的な最先端研究プロジェクト等で必要とされる国際間の高速・大容量データ転送を可能とする国際回線も整備し、海外の研究教育ネットワークと相互接続することで、我が国における最先端学術研究・教育活動の国際連携基盤としての役割も果たしている。

 このように、大学等における学術研究及び教育活動全般を支えるとともに、先端的な学術研究の効率的な推進や国際連携等を図るため、国公私立大学等に対して広く開かれた研究環境を提供するというSINET3の基本的な在り方は、SINET4の整備に当たっても維持される必要がある。

 また、学術情報ネットワークを安定的に維持・運用し発展させていくためには、ネットワークを利用する大学等全体でそれを支え発展させていくという視点も重要である。

(3)国立情報学研究所が一元的に整備する意義

 学術情報ネットワークは、国立情報学研究所において各接続機関のニーズを把握した上で、先進的な技術・研究開発による先進的なネットワークの設計を行ってきているところであり、一層の経済性の向上を図るためにも、引き続き同研究所による一元的な整備を図っていくことが適当である。このことにより、学術情報ネットワークには以下のような先進性、優位性が確保されると考えられる。

1.先進的研究の成果をネットワーク設計に実現

  • 国立情報学研究所におけるネットワーク研究の成果が直ちにネットワーク設計に反映されることにより、世界的にも最先端な超高速回線やL1オンデマンド等、他のネットワークにはない先進ネットワークが実現される。

2.教育研究活動に安全で安定的なネットワークを提供

  • 商用ネットワークとは別に、我が国の大学等における学術研究及び教育活動全般や先端的学術研究のために、十分な通信帯域とVPN等による高度なセキュリティサービス等が確保されたネットワークが提供される。
  • 現在、学術情報ネットワークにより大学等の間で、グリッドコンピューティングや遠隔講義が実現されているが、併せて、ネットワークの安定性と運営の透明性が確保された上で、その運用が行われている。

3.効率的・経済的なネットワークを実現

  • 国立情報学研究所においてネットワークの企画と整備を一体的に実施することにより、極めて費用対効果の高い効率的なネットワークが実現される。
  • また、国立情報学研究所が一元的にネットワークを整備することにより、個々の大学等が別々に商用ネットワーク等を利用するよりも、全体として効率的・経済的なネットワークの実現が可能となる。

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研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)