次期学術情報ネットワークの整備について(意見のとりまとめ)‐SINET3からSINET4への移行‐【概要】

(平成22年7月 次期学術情報ネットワークに関する検討会)

1.次期学術情報ネットワーク(SINET4)整備の基本的考え方

(1)整備の基本方針

  •  学術情報基盤作業部会『学術情報基盤整備に関する対応方策等について(審議のまとめ) 』(平成20年12月)において、次期学術情報ネットワーク整備の基本方針を示しているところであり、これに基づき整備を図ることが必要。
    1. 最先端の学術研究及び教育を支えるためのネットワークの高度化
    2. 大学等接続機関全体のネットワーク環境の向上
    3. 先進的な技術・研究開発によるネットワーク設計並びに効率的な運用による経済性の向上
    4. 大学等、研究機関及び産業界との連携・協力等の新たな展開
    5. ネットワークの持続的な整備方策の検討

(2)学術情報ネットワークの基本的在り方

  •  学術情報ネットワークは、我が国の大学等における学術研究及び教育活動全般を支える情報ライフラインであるとともに、先端的学術研究の推進、連携に不可欠な最先端ネットワーク基盤として果たす役割は重要。
  •  国公私立大学等に対し開かれた研究環境を提供する学術情報ネットワークの基本的な在り方は、SINET4の整備に当たっても維持されることが必要。その際、ネットワークを利用する大学等全体で支え発展させていくとの視点も重要。

(3)国立情報学研究所が一元的に整備する意義

  •  学術情報ネットワークは、国立情報学研究所が各接続機関のニーズを把握した上で、先進的な技術・研究開発によるネットワーク設計を実施。一層の経済性の向上を図り、先進性、優位性を確保するためには、引き続き同研究所が一元的な整備を図っていくことが適当。

2.次期学術情報ネットワーク(SINET4)の基本的構成

(1)ネットワークの基本的な構成

  •  SINET4の構築に当たって、以下の3課題への対応が必要。

 1. 急激なネットワーク需要の拡大への対応
 ・ 40Gbpsをベースに100Gbpsを超える高速・高信頼コア回線を導入。
 ・ 各接続機関間のネットワーク需要に対応するため、エッジ回線は2.4Gbps以上とし高速化。
 ・ エッジノードをデータセンターに設け、一層の安定化・高信頼化。

 2. 高度化・多様化するニーズや需要増への対応(上位レイヤ機能の強化)
 ・ 大学等の学術研究や教育活動に必要な学術リソースを共有・提供。

 3. 先端学術基盤格差の解消
 ・ 13の「ノード空白県」にエッジノードを配置。

(2)関係機関間の連携・協力の強化

  •  学術情報ネットワークの整備に当たっては、国立情報学研究所の一事業という観点ではなく、国の学術情報基盤全体の中で整備の必要性、必要経費の確保等について考えていくことが必要。
  •  SINET4の構築に当たっては、国立情報学研究所と大学等接続機関との連携・協力の強化が適当。

3.必要経費の見込みと負担の在り方

(1)必要経費の見込み

  •  SINET4の構築に当たっては、平成22年度において「ノード空白県」を解消するため、該当県にエッジノードとしてのデータセンターの整備を含むSINET3からの移行のための経費の増が必要。
  •  SINET4の本格的な運用が開始される平成23年度以降については、その構築・運用に係る経費が必要。平成26年度から平成27年度には、需要増への対応のためコア回線の高速化に伴う経費増がある見込み。
  •  国立情報学研究所においては、コアノード及びエッジノードの整備に際し、配置の適正化などにより一層の経費の抑制に努めるとともに、接続機関が負担するアクセス回線の使用料についても共同調達などにより経費の節減を図ることが適当。

(2)回線構成と費用負担の在り方

  •  学術情報ネットワークは我が国の大学等における教育研究活動全般を支える基盤であるとの観点から、その整備等においては国の支援が不可欠。しかし、国の厳しい財政状況の下、費用対効果を十分考慮しつつ整備する必要があるとともに、新たなニーズや特別なニーズを伴う利用については、応分の負担を求めていくことも検討することが必要。
  •  SINET4においては、エッジノードが、現在のノード校からデータセンターに移行するなど接続方式が変更されることから、現在のノード校の在り方や経費負担の方法等についても引き続き検討することが適当。

4.次期学術情報ネットワーク(SINET4)の整備計画

(1)平成22年度における移行・整備計画

  •  平成23年度当初からのSINET4の運用開始に向けて、平成22年度中のネットワークの構築とSINET3からの円滑な移行を図る。
  •  コア回線は、当初、現状と同様の最大40Gbpsで構築・運用。
  •  SINET4の基本構成となるエッジノードの全県設置を実現するため、13県存在するノード空白県へのエッジノードの設置は、最優先して整備することが必要。平成22年度は予算の状況を勘案して、4県へのエッジノードの設置とエッジ回線の整備を図る。
  •  学術情報基盤オープンフォーラムの活動を活用しつつ、国立情報学研究所と大学等との連携を強化していくことが必要であり、特に、アクセス回線の整備に当たっては、本フォーラムの枠組みを活用して、共同調達による回線の導入を図ることが効果的。

(2)平成23年度以降の整備計画

  •  コア回線は、東京・大阪間については、当初40Gbpsとするが、学術情報ネットワークの需要増に対応するため、80Gbps、120Gbpsと段階的な増速が必要。また、東京・札幌間については、当初10Gbpsとするが、40Gbpsへの増速が必要。
     各回線の需要状況を勘案しつつ、予算の範囲内で、できるだけ早期に効率的な増速を実現。
  •  ノード空白県へのエッジノードの整備は、接続機関等の要望を適切に把握した上で、予算の状況を勘案しつつ早急な整備を図る。
  •  国際回線は、今後の需要を勘案しつつ必要な帯域の確保に努める。
     ニューヨーク回線は10Gbpsから20Gbpsへ、また、アジア回線については香港回線またはシンガポール回線のどちらかに統一した上で、計1.2Gbpsから2.4Gbpsへの増速を図る。また、国際共同研究を推進する上で、より適切なネットワーク構成を検討することが必要。

5.ノード空白県へのエッジノードの整備

  •  ノード空白県へのエッジノードの整備は最優先課題であり、ノード空白県における実態と要望を十分把握した上で、接続機関数の多さ、エッジノード整備に対する要望の高さ、ネットワーク全体の構成からみた地域性等を総合的に判断して、国立情報学研究所の学術情ネットワーク運営・連携本部において決定することが適当。
  •  同本部における検討の結果、平成22年度においては、山形、福島、奈良及び宮崎の4県にエッジノードを整備。

6.今後の学術情報ネットワークにおける現在のノード校の在り方

  •  現在のノード校は、研究コミュニティや地域の中心機関として、SINET4においても、次の取組みに積極的に対応していくことが必要。
    1. 学術情報基盤オープンフォーラム地域連絡会等の開催への協力
    2. 域内大学等のニーズ等の取りまとめ
    3. 関連ワークショップ、セミナー、研究会等の開催

7.高度化・多様化するニーズや需要増への対応(上位レイヤ機能の強化)

  •  学術情報ネットワーク上で学術リソースを安全かつ安心に利用できる基盤として、学術閉域網基盤(VPN)及び大学間電子認証基盤の構築が前提となるため、国立情報学研究所は、これらの整備に努めることが必要。
  •  国立情報学研究所は、大学の情報基盤センターや図書館等と連携・協力して、VPNや大学間電子認証基盤の上に大学等における学術研究及び教育活動に必要な学術リソースを共有できる環境を構築するとともに、学術サービス・連携を展開することが必要。
  •  革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の検討に当たって、各スパコン間における大量データの移動を可能とするネットワーク環境の整備、大学等におけるコンテンツデリバリー等への対応など、研究の進展や社会の変化に対応したネットワークの整備についても配意していくことが必要。

8.人材育成の在り方

  •  SINET4の構築・運用に当たり、大規模ネットワークを支える若手研究者や技術者養成の実地の場として位置付けていくことが重要。

9.学術情報ネットワーク整備に係る今後の検討課題

  •  SINET4の整備に当たって、さらに今後検討すべき課題は以下のとおり。
     - 学術情報ネットワークの役割
     - 経費負担の在り方
     - 最先端学術情報基盤の実現のための上位レイヤ機能の高度化
     - 学術情報ネットワークの構築・運用に係る人材育成の在り方
  •  これらの課題については、平成22年度以降のSINET4への移行及び運用の実態を踏まえつつ、国立情報学研究所の学術情報ネットワーク運営・連携本部において、文部科学省及び接続機関等との密接な連携・協力の下に検討を行っていくことが必要。

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研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)