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5 大学病院における新医師臨床研修の充実

 
 大学病院は、本来的には医師養成を行う医学部等の教育研究施設として設置されているものであるが、その指導体制や教育機能を活かし、新医師臨床研修制度で求められている基本的な診療能力を幅広く身に付けさせるための総合的な臨床教育を提供することが期待されている。

 一方で、特定機能病院等として高度先進医療が求められる大学病院においては、一般的な疾患(common disease)が少ない上に、専門志向が強く、診療科別に教育指導体制等が構築されるなど、一般的な病院と比べて特徴的な状況がある。このような状況の中で、新医師臨床研修を効果的に実施するためには、診療科を横断した緊密な連携協力の下、大学病院として一体的な指導体制を確保した上で研修内容の充実等に取り組むことが必要である。

(研修体制・研修プログラムの工夫・改善等)
 このため、各大学病院においては、診療科ごとだけではなく、大学全体の統一的な理念に基づく研修目標やプログラムを策定するとともに、基本研修科目や必修科目ごとに到達目標を明示し、その下でローテート方式の新医師臨床研修を実施する体制を構築することが必要である。特に、厚生労働省が研修医等を対象に行ったアンケート(「臨床研修病院及び臨床研修医に対するアンケート」)結果から、学生は臨床研修病院の選択に当たって研修体制や研修プログラムを重視していることが伺えることから、研修体制の充実を図り、研修医に魅力あるプログラムを提供できるよう取組の工夫・改善を図ることが重要である。

 各大学病院は、それぞれの特色を活かしつつ、総合診療部等を活用した総合診療方式の積極的な導入、卒後臨床研修センター等を中心とした全体的なコーディネート体制の充実、共同して臨床研修を実施することとなる地域の医療機関も含めた学外の多様な医療機関との緊密な連携体制の構築、研修医の指導を行う指導医の養成等の研修体制の充実を図った上で、研修希望者の要望の反映、研修希望者への情報提供の充実、研修医が研修に専念できるような適切な処遇の確保、研修前後の基本的な診療能力に関する評価を踏まえた研修医への十分な指導や支援、専門分野に偏ることのない基本的な診療能力の育成を目的とした研修プログラムの策定・充実等に取り組むことが必要である。その際、大学病院における研修医の確保は、当該病院の診療体制の確保とともに、地域の医療提供体制の確保の観点からも重要な課題であることから、大学病院における研修医の減少傾向が生じた原因を分析し、取組に反映させることも求められる。

 なお、学外での新たな医療関係者等との出会いや様々な疾患の治療等の経験は有意義であることから、大学の教育理念等に応じて、複数の大学が共同して様々なプログラムを提供する方式を実施することや、卒業後1年程度は学外の病院で臨床研修を行い、残る1年程度は大学病院で臨床研修を行うというプログラム等を学外の医療機関と連携しつつ実施することも、研修医の資質向上の観点から有効と考えられる。

 また、前述したイギリスの取組も参考にした教育者・研究者の養成の観点からの研修プログラムの工夫・改善以外にも、各大学の教育理念等に応じて、新医師臨床研修の基本研修科目及び必修科目以外の研修期間の取組の工夫・改善を図ることも望まれる。

(指導医等に対するサポート体制の充実等)
 また、新医師臨床研修を契機として、指導医等を対象としたワークショップやシミュレーションコースの開催・普及など、実践的な学びの場が加速度的に広がっており、臨床現場の医療安全や研修指導の充実に有効なものとなっている。一方で、臨床研修の指導医は卒前の臨床実習の指導等も担当している場合が多く、このような取組を一過性のものに終わらせることなく恒常的な取組とするために、指導医等に対するサポート体制の充実等、国の支援方策の充実が求められる。その際、指導医等の教育業績に対する評価や処遇の充実とともに、各大学で教育機能のセンター的な役割を担う卒後臨床研修センター等の組織の整備充実も望まれる。

(卒前教育・卒後教育を通じた取組の充実)
 さらに、卒前の臨床実習と卒後の臨床研修を実施するという大学の特性を活かして、臨床研修医の卒前の実習内容等を把握した上で研修指導や研修内容の改善を図る取組や、臨床研修医が学生を指導する体制を構築することにより研修効果を高める取組など、卒前教育・卒後教育を通じた取組の充実を図ることも必要である。

 また、臨床研修における研修医の確保には、臨床実習をはじめとする学部教育段階の取組も重要であり、臨床系をはじめ教員スタッフが十分に意識して、学生を適切に指導するなど学部教育の改善を図り、大学の指導者の下で臨床研修を受けたいと思う希望を学部段階から学生に醸成することも求められる。

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