戻る


豪州における高等教育の国際的展開に係る質保証


   豪州の連邦・各州教育担当大臣会議は、高等教育の質保証のための全国的な枠組みを確立するため、2000年3月31日、「高等教育の認可過程に関する全国的取決め(ナショナル・プロトコールズ)」(National Protocols for Higher Education Approval Processes)を採択。
   同取決めは5つのプロトコールから成っており、そのうちの「プロトコール4」は豪州の大学の海外進出に係る質保証を含み、「プロトコール2」は外国の大学の豪州進出に係る質保証(営業許可)を内容とする。(外国の大学の豪州進出については、「プロトコール1」に基づく州の立法により「豪州の大学」として設立される道もある。)
   これらの取決めは、各州政府に対し、取決め内容に沿った認可・質保証制度の法令整備を求めるもの(豪州では、高等教育機関の認可・規制は、各州の権限。)。



1.    豪州の大学の海外進出に係る質保証

   豪州の教育の国際化政策は、豪州の教育のブランド・イメージを広めることを重視しており、「それがすべてではない」としつつも、教育の輸出戦略に重点を置いている。また、その政策対象は、職業教育訓練等を含め広く教育一般であるが、高等教育は主要な位置を占める。今後はアジア太平洋のみならず多様な国からの学生獲得を目指し、教育の質のみならず学生の質も重視するとしている。
   こうした政策の下、豪州の高等教育のブランド維持と競争力強化のため、全国的共通性を持った認可・質保証制度を整備すべく定めたのが、上述のナショナル・プロトコールズ(全国的取決め)であり、そのうちのプロトコール4(取決め4)は、他機関との提携による教育提供(海外進出を含む)について定めており、その内容は概ね下記の通りである。

【制度(高等教育の認可過程に関する全国的取り決め「取決め4」)の主な内容】

当該豪州大学の理事会が質保証に責任を負う。
豪州大学質機関(AUQA: Australian Universities Quality Agency)による監査(機関評価)の対象となる。
豪州において提供される教育に相当するスタンダードの維持が求められる。
当該豪州大学と提携機関の関係は、本人と代理人の関係。当該豪州大学は、教育の提供の全側面(以下の事項を含む)について完全な責任を負う。
他のキャンパス(本校等)に匹敵する質とスタンダード
他のキャンパス(本校等)に匹敵するレベルの資格を有する教員による教育
教育コースの提供にとって適切な資源と施設
学生の福利厚生を保護するための適切な措置
当該大学の理事会は当該大学設立地の州政府にアカウンタビリティーを負う。

2.    外国の大学の豪州進出に係る質保証

   上記ナショナル・プロトコールズ(全国的取決め)のプロトコール2(取決め2)に基づく各州の州法に従って「外国大学」として営業許可を受ける道が開かれているが、営業許可を受けた外国大学の実例は、2004年1月の段階でクイーンズランド州の3つと数は少ない(プロトコール1(取決め1)に基づく州の立法により豪州の大学として設立された外国大学進出の実例は無い)。

【制度(高等教育の認可過程に関する全国的取り決め「取決め2」)の主な内容】

出自国において合法的に設立された本物の高等教育機関であること。
教育コースが出自国において権能ある機関によるアクレディテーションを受けていること。
履修要件や学習成果が豪州の類似分野の同一レベルの教育コースに匹敵すること。
質保証や教育提供の仕組みが豪州高等教育機関によるそれに匹敵するものであること。
教育コースの提供の成功を可能にする適切な財政その他の仕組みが存在すること。

3.    設置後の質保証システム

   「豪州の大学の海外進出」については、業界内自主規制(法的拘束力はない)として、豪州学長委員会(AVCC)による「行動規範」(内容は、情報提供、提携相手、授業料返還の取扱い等)がある。また、豪州大学質機構(AUQA)による質監査(機関評価)の一環として行われている海外監査が、豪州の大学の海外進出に係る質保証に重要な役割を担っている。海外監査は、2005年から何らかの形でより強化される予定であるが、具体策については、現時点では未定(AVCCやAUQA等と協議中)。
   「外国の大学の豪州進出」については、上記2.の両州に見られるように、営業許可の定期的な見直し・更新により、継続的な質保証が図られているものと思われる。

4.    上記「全国的取決め」を受けた州(ニューサウスウェールズ゙州及ビクトリア州)での取扱い

   ☆ニューサウスウェールズ゙州及ビクトリア州の大学の海外展開について
ニューサウスウェールズ州
   NSW州の高等教育法は、豪州の大学が海外において教育を提供し資格授与を行う場合、1豪州内で提供される教育の水準を下回らない水準であること、2教員の資格の同等性3適切な財政その他の教育条件の整備を、豪州の大学の理事会が確保しなければならない責務として規定している。
   しかし、豪州の大学による海外キャンパス・海外プログラムの設置は、各大学の理事会の権限によって行い得るものであり、連邦政府や州政府の許認可等を要しない。NSW州の場合、大学の業務が豪州外においても行い得る旨、各大学の設置法に明示的に規定されている
ビクトリア州
   豪州の大学による海外キャンパス・海外プログラムの設置は邦政府や州政府の許認可等を要しない
   海外キャンパス・海外プログラムは、原則として収益を生み出すものでなければならない。その初期投資には、寄付金や借入金等が使われることが多いが、借入を行うには、州財務大臣の承認(州教育訓練大臣が助言)が必要である。

   ☆外国大学のニューサウスウェールズ゙州及ビクトリア州への進出について
ニューサウスウェールズ州
   NSW州の高等教育法は、外国の大学として活動を許される(州教育訓練大臣の認可を経て同事務次官による登録によって活動が許される)要件を、次のように規定
   ・ 豪州の大学の水準を下回らないこと
出自国で大学として活動
1コース以上のアクレディテーション(同事務次官が実施)
州教育訓練事務次官による5年ごとの見直し
※   NSW州法における「豪州の大学」と「外国の大学」の取扱いの最大の差異は、「豪州の大学」は自らの教育コースを自身でアクレディットできる(self-accrediting)が、「外国の大学」は州政府によるコースごとのアクレディテーションを課されていること。
ビクトリア州
   VIC州で外国の大学が大学として活動することを許されるためには、個別法による「大学」(通常の豪州大学)としての設立等を求める道と、大臣認可による「大学」又は「大学の一部」としての活動を求める道の両方が開かれている
   いずれの道で「大学」となった場合も教育コースを自身でアクレディットできる(self-accrediting)ことに変わりはない。ただし、大臣認可の場合、認可は更新制(5年を上限)。
   VIC州の高等教育法は、大臣認可の際の考慮事項の一つとして、外国において設立された教育機関の場合、当該外国当局(権限ある当局と大臣が判断するもの)による大学としての認定という要件を挙げている。







ページの先頭へ