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米国における高等教育の国際的展開に係る質保証


   アメリカ合衆国においては、高等教育機関の設置認可等の所掌業務は、連邦政府ではなく、州政府のレベルで行われているところである。州政府毎に、’authorization’, ’license’, ’approval’, ‘registration’等州政府の関与の度合い・方法は様々であるが、一般的には高等教育機関・教育プログラムには相当程度の自主性・自律性が担保されている。その結果として、アメリカの高等教育機関は多様な特徴と質を有することとなっている。
   このような米国における教育事情を踏まえ、教育界でのピア・レビューにおいて、教育機関とそのプログラムの質の基本的なレベルを保証しようという動きから、「アクレディテーション」活動が進められて来たところである。現在、全米高等教育機関基準認定協議会(CHEA)が、3,000以上の大学・カレッジを会員とする全米最大の高等教育段階のアクレディテーションに関する連絡・調整のための非政府組織として活動しているところであり、例えば、米国のアクレディテーション団体の国際的な評価活動に際しても、「米国アクレディテーション団体が国際的に活動する場合の指針原則―非米国教育機関等のアクレディットに際してー」(2001年9月)を発表している。


1.    米国の大学の海外進出に係る質保証
   米国においては、本校の設置の認可等の手続きは、州政府で行なわれるが、大学としての社会通用性を担保するためには、地域アクレディテーション団体によるアクレディット(適格認定)を受けることが常識となっている。
   また、州政府においても、州立大学等が分校を設置する場合については、州政府の許可を求めている場合(ペニンシルバニア州)と、一度設置認可を受けた大学で、アクレディテーション団体のアクレディットを受けた大学が、州外に分校を設立する場合の質保証は、アクレディテーション団体に任せているところもある。
(例えば、カルフォルニア州は、アクレディテーション団体のアクレディットを受けていないと、州外分校設置は公式に認めていないと州政府担当者回答)
   米国の大学が海外進出している全体像は判らないが、例えば、CHEAが、2001年に行った調査によると、CHEA加盟もしくは連邦教育長官認定の78評価機関のうち、16のアクレディテーション団体が225の米国の大学若しくはプログラムの海外活動を評価していることが確認できている。
   以下は、全米にある地域アクレディテーション団体の一つ、NEASC(ニューイングランド高等教育機関協会)の分校アクレディットの基準等について整理したものである。


分校チェックの視点

1    「分校」の定義:連邦教育長官裁定
学位に繋がる50%以上の教育プログラムが実施されていること、又は当該キャンパスで学位を終了できること。
継続的に運営できる体制であること。
自己の教授団(faculty)、事務・責任組織を有すること。
(分校における教育プログラムを遂行するのに、十分な数の教員等の準備がされていること。)
自己の財務及び雇用責任体制を有すること。

2    本校との関係
本校でのコース・プログラムと同一の教育水準が保たれていること。
分校に対し十分な機関支援及びその他の支援がなされていること。
(教授団、図書、教授に当たっての技術的支援、学生サービス等含む)
適切な学習資源(図書館等)にアクセスできるようにしていること。
本校が、全ての教育プログラムのあらゆる観点からの質保証に直接・全面的に責任を負っていること。
(分校における学生の学習状況、単位、学位、その他の資格の信憑性等含む)
分校の運営が、本校の運営体制の中に明確に統合されていること。
分校運営が、現地法人との提携で行なわれる場合については、当該分校の教務体制について責任を有すること。
本校は、分校の運営体制(コース、教育プログラム、教材等)の現状を把握していること。
分校の運営に関して、必要な情報を把握し、公表すること。
分校設置にあたり、州政府認可やその他必要な法的手続きを踏まえていること(例えば、当該教育プログラムの実施に当たっての許可書を備え付けていること)

3    チェック体制
分校設置前に、当該アクレディテーション団体に、分校設置計画書(分校での教授予定のプログラム概要、教育研究体制(教授団、図書館等学習環境、学生サービス等)、運営体制等、収支計画書を含む)を提出し、6ヶ月以内に現地視察を受ける。
現地視察費用は、大学側(本校)負担。
当該大学の「分校」として運営体制が確認された後は、10年に一度のアクレディテーション周期において、5年の中間評価の際にも、当該大学の機関の一環として、分校の運営状態等についても適切に評価を受けること。

2.    外国の大学の米国進出に係る質保証
   米国においては、各州毎に設置認可等の基準が定められており、外国の大学の米国進出に係る質保証についても多様な取扱いが行われている。今回確認できたなかでは、
   ○ 外国大学分校のための特別の認可制度はなく、外国大学分校と州外大学の自州への分校設置は同様の基準で設置認可。それらは基本的には、自州内の大学新設と同様である場合(カルフォルニア、オレゴン、メリーランド゙、NY州)
外国大学が自州内での活動を許可するための基準を別途設けている場合(ペニンシルバニア州)
もある。
   また、外国の大学が米国に進出している全体像は判らないが、例えば、CHEAが、2001年に行った調査によると、CHEA加盟もしくは連邦教育長官認定の78評価機関のうち、5のアクレディテーション団体が9の外国の大学若しくはプログラムの米国内での活動を評価していることが確認できている。
   なお、アクレディテーションに関しては、上述の2001年のCHEA調査においても、米国内外の外国大学のアクレディットのために特別な基準を設けているのは、専門評価の2団体のみであり、6地域アクレディテーション団体などその他は、外国大学のための特別のアクレディテーション基準はない旨回答をしているところ。
   また、自地域内の既存の大学との提携によるジョイント・ディグリーの場合は、ホスト校である自地域内大学が責任を持つことになり、アクレディット内容のSubstantive Changeの手続きが必要となっている(WASC)。








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