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薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議

2002/11/15 議事録
薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第2回)

薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第2回)

1.日    時 平成14年11月15日(金)10:00〜12:00

2.場    所 文部科学省分館201・202特別会議室

3.議事進行
1) 開会
2) 薬学教育の考え方について
3) 次回の検討事項(カリキュラムの在り方)について
4) 閉会

4.配付資料
資料1   薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第1回)議事要旨(案)
資料2   「医学・歯学教育の改革」
資料3   21世紀における医学・歯学教育の改善方策について
資料4   21世紀における医学・歯学教育の改善方策について(別冊)
資料5   「臨床実習開始前の学生評価のための共用試験システム」
資料6   「学校教育法の一部を改正する法律案の概要」(法案自体は省略)
資料7   「第1回における意見」
資料8   「薬学教育の改善について(最終まとめ)(抄)」
資料9   次回以降の日程について

席上配付資料


5.出席者  
協力者: 末松座長、佐藤副座長、野村副座長、秋尾、乾、入村、北澤、桐野、佐村、全田、高柳、舘、寺田、富田、福田、望月、矢内原、吉岡の各協力者
文部科学省: 工藤高等教育局長、木谷審議官、村田医学教育課長、新田課長補佐、宮田課長補佐、ほか関係官

6. 議事
(1) 開会
  事務局より1「医学・歯学教育の改革の現状」、2「学校教育法改正案」、3「第1回での意見の整理」等について説明がなされた。
(2) 議事
  薬学教育の考え方について議論が行われた。議論の概要は以下のとおり。

1 「薬学教育への期待」について
  創薬について、日本人は非常に発想が狭いと感じる。これは全体的な視点から考える教育をしてきてこなかったからである。この点はおそらく薬学の分野だけではなく、あらゆる分野において日本の課題となってくる。
   
  産学共同研究を視野に入れて創薬を考えていかないといけない。
   
  薬剤師については、医療事故に関する記事などを見ると、もっと権限を与えられてしかるべきと思うが、一方で医者と薬剤師の意見が衝突することがある。その整理についても同時に考えていかないといけない。病院に属さず、例えば第三者機関から派遣され、チェックすることも一つの方法だと思う。
   
  薬を買う際、成分を見てもわからないので相談したいが、普通のドラッグストアに薬剤師が不足している。
   
  調剤薬局にも子育てが終わった薬剤師資格者が新しい薬の知識がないままに復職する人がよくあるが、そのような薬剤師に研修をやっていかないと不安である。
   
  ジャーナリズムの中で医療の知識のある人が非常に少ない。薬学教育を受けた人がメディアに入れば、スペシャリストとして育っていくと思う。無知なジャーナリストの中に薬学を学んだ者がいれば、医療事故に関しても間違ったレポートを書くことはなくなるのではないか。
  このような人材を育てることも薬学教育の中に必要であり、このように考えると一律に6年もかけて育てなくても、4年で薬剤師以外の道を選択をすることのできるようにする必要がある。
   
  EBMについて語る際に、エビデンスを「つくる」「つたえる」「つかう」という表現があるが、薬学を理解する上でも、くすりを「つくる」「つたえる」「つかう」という3つの視点から考えると分かりやすい。
   
  薬学教育を受けた者の進路はかなり幅広く、今後益々薬学の知識が実社会で広く必要とされる。
   
  特に薬をつくることに関しては、ライフサイエンスという広い捉え方が薬学教育の基盤としても重要。
   
  「つたえる」と「つかう」については、臨床現場の理解が不可欠であり、現場を知ることが重要。医療の現場は進歩が早く、大学での養成と同時に、生涯教育・継続教育も考えることが重要。
   
  生命科学という立場から見ると、薬学部のカリキュラムが一番よくできていると考えていたが、日本薬学会のモデル・コアカリキュラムを見ると量が膨大だという印象を持つ。
   
  一つの薬効を持った薬に多くの名前が付けられ、多くの会社から出るようになると、有能な薬剤師でも全てを把握するのは不可能。これからはITを外部メモリーとして使いこなせないと膨大な知識量には対応できない。使いこなすには生命科学として捉えることが重要。理学とは異なる薬学という立場から新しい見方・切り口で教育ができればいいと思う。
   
  薬剤師の教育としては、心理学の要素を取り入れ、患者が何の不安に怯えているかを的確に把握しそれに対応できる能力を身につけないといけない。

2 「薬学研究・研究者養成教育」と「薬剤師養成教育」について
  薬剤師も医療の流れと同じ方向に進むことが必要。また、薬学研究もこれまで以上に医療との関係を深くしなければならず、薬剤師養成と薬学研究者養成は分離して行うべきではない。
   
  医学教育改革については、臨床中心になったことは評価できるが、例えば社会医学的なことなど、周辺を見ることが軽視されていると聞いた。日本薬学会で作成されたコアカリキュラムはすばらしいが、もう少し周辺に関する内容が必要。
   
  中国では薬学教育の普通の課程の後に、3つのトレーニング(創薬、薬品管理、医療現場での経験)を3年間行わないと国家試験を受けさせないと聞いた。
   
  患者の存在は変わらない。医療人たる薬剤師を育てることが薬学の使命。
   
  薬学部には優秀な学生が入学して来るが、今の薬学教育は自由な考え方を育てるようになっていない。理学部の学生は自由にのびのびと考えているが、薬学部の学生は国家試験の影響で受験勉強的になっている面がある。
   
  21世紀の薬学教育、製薬企業が発展することは間違いない。
   
  例えば糖尿病についても個性があるが、現在の医療は糖尿病を一括して治療するために副作用が起きる。将来テーラーメード医療になると医療現場の人間がそこまで理解していないと必ず副作用が起こり危険。このため、創薬の心を持った薬剤師が必要。研究者養成と分化したらこれからの医療は成り立たない。また、私学は薬剤師養成だけ、国立は研究だけやるということではこれからの医療は立ちゆかなくなる。
   
  研究的な創薬と薬剤師の業務である医薬品の適正使用は一体化していることが大切。
   
  医学の教育の原点は人体にあるが、薬学の場合は化学からきており、臨床教育が不十分であった。そのひずみがある。人を基本に考え、基礎薬学と医療薬学をいかに融合するかが総合科学としての薬学の一番の特徴となる。
   
  町の薬局の薬剤師のレベルを高めることが国民の期待していることだと思うが、薬学の先生方の意識が希薄だと感じる。一番被害を受けているのは学生であることを踏まえて、薬学教育の在り方についての議論を展開していただきたい。

3 「薬剤師の役割」と「薬剤師養成教育」
  各都道府県の薬剤師会は、未就業薬剤師の研修などを行っている。
   
  患者の心理的な不安要素を取り除くことはこれからの薬剤師に求められる姿だと思う。
   
  病院薬剤師の役割は、患者への適正な薬剤使用への貢献、リスクマネージメントへの貢献、医療チームの一員としての貢献、そして病院職員に対する薬剤に関する教育の貢献がある。
   
  東大附属病院では5つの病棟で病棟薬剤師がおり、注射薬の混合を専任で行い安全性を確保している。また、医師や看護職からの薬剤に関する質問についてリアルタイムに回答できるため、医師の処方へ反映し、医療全体の質をあげている。
   
  薬剤師の活動の拠点が病棟に大きくシフトしており、このことは患者一人一人にあった適切な服薬指導を行い、治療効果を上げる面からも非常に重要である。
   
  今後の薬剤師には、積極的な参加を期待したい。また、医師に対する疑義照会も重要だと考える。医療チームの中の職種はそれぞれ独立しており、立場も対等である。
   
  6年制の議論があるが、結果として何が期待できるのかを明確にする必要がある。
   
  これまでの議論では、国際的な視点が出されていない。例えば教育サービスに関してWTOなどで自由競争を求められており、またEU内では資格の相互乗り入れが議論されている。世界的に活躍できる人材を作らないといけない。
   
  一般教育的な部分まで含んだ薬学教育の議論をすることが必要。
   
  薬剤師の現状について資料を事務局より提出して欲しい。

4 「薬学研究・研究者養成教育」の在り方・可能性について
  薬学部を出て、企業に入った場合、研究、開発と生産、営業、市販後調査を担当する学術の5種類の活躍の場がある。適正使用をするための情報を創製していくことが全ての職務に共通したものである。
   
  仕事の信頼性、品質の重要性を、なぜ重要かも含めて教育することが重要である。
   
  開発では病気のこともよく知り、薬のこともよく知った上で、高度な専門性、例えば生物統計などを付与して適正な試験計画をつくり、計画通りに実行し、評価する。このようなことを薬学部を出た人が中心となって行われることを期待する。
   
  薬学部では、薬剤師の養成は非常に大きな要素であるが、現在では薬剤師の免許を取るための予備校的なものになっている。
   
  薬学部に入ってくる学生は入学時の偏差値は高いが、卒業時にはモノトーンになっている気がする。医療に対する責任感がないのではないか。また自ら研究することが必要だが、現在の薬学教育がそうなっていない。
   
  柔軟な頭脳を使える教育をする必要があるが、教育をする側の発想が今のままだといい結果が出てこないのではないか。
   
  現在東京大学では、理科系の研究者養成について大学院教育の改革が薬学部も含めて議論されている。現在、多くの場合、修士を卒業して社会に出て研究者・技術者になり、後で論文を提出し論文博士として学位を取るが、これでは世界に伍していく高度な研究者・技術者の養成は不可能。高度研究者・技術者養成には博士課程まで修了する「課程博士」とすることが必要。
   
  国際的に通用する研究者養成には論文博士を排し課程博士とする必要があるとの点は、非常に重要な論点。
   
  サイエンスとしての医療薬学の確立が薬剤師業務の基盤をなすことになる。臨床医学ではサイエンス、アート、ヒューマニティが医師の立場だと思うが、医療薬学でも同様。
   
  これからの薬学者に必要なのはシャープな分析能力だけでなく、人文、社会科学も含んだ統合的な能力であると考える。研究者や薬剤師の教育を考える際に、単なる一方的講義ではなく双方向性であること、又セミナー等で課題を与え調査、研究させレポートを作成、プレゼンテーションをさせるなどにより、能動的、積極的に課題にチャレンジできる薬学者を養成することが必要である。
   
  ゲノム研究、ポストゲノム研究がこれからは重要であるが、それとともに慢性疾患の予防に生活習慣、とくに食材が重要となることを考える。その点で予防科学についても、薬学研究がカバーすべき領域ではないか。

     (3) 次回は、カリキュラムの在り方について検討することとなった。
     
  (4) 閉会


(高等教育局医学教育課)

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