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大学への早期入学及び高等学校・大学間の接続の改善に関する協議会(第8回)議事録・配付資料

1. 日時
  平成18年12月14日(木曜日)16時〜18時

2. 場所
  キャンパスイノベーションセンター 多目的室3

3. 議題
 
(1) 東京工業大学における高大連携の取組み
  東京工業大学教育工学開発センター   大即 信明   センター長
東京工業大学教育工学開発センター 中山 実 助教授
(2) 京都府教育委員会における高大連携の取組み
  京都府教育庁指導部   鈴江 満   高校教育課長
京都府教育庁指導部 須原洋次 総括指導主事
(3) その他

4. 配付資料
 
資料1   大学への早期入学及び高等学校・大学間の接続の改善に関する協議会(第7回)議事要旨(案)
資料2 平成19年度 飛び入学制度による学生募集を実施する大学について
資料3 東京工業大学発表資料(PDF:145KB)
参考資料: 各高等学校における活用状況
教育工学開発センターパンフレット
高大連携プロジェクトパンフレット
資料4 京都府教育委員会発表資料(PDF:549KB)
参考資料: 京都みらいネットを活用した高大連携事業(広報資料)
京都の大学「学び」フォーラム2006
資料5 その他の高大連携の取り組みについて

  (机上資料)
 
 大学への早期入学及び高等学校・大学間の接続の改善に関する協議会 第1回〜第7回 配付資料
 文部科学統計要覧(平成18年版)
 大学設置審査要覧(平成18年度)
 教育指標の国際比較(平成18年版)

5. 出席者
 
(委員) 丹保憲仁(座長)、岩間博、上野信雄、大塚雄作、佐々木恒男、四方義啓、高間専逸、氷上信廣、松下倶子、矢内光一の各委員
(文部科学省) 中岡大学振興課長、伊藤大学改革推進室長、渕上教育制度改革室長 他

6. 議事
 
(1)  東京工業大学教育工学開発センター大即教授・中山助教授より、資料に沿って事例紹介があった。
(2)  京都府教育庁指導部高校教育課鈴江課長・須原総括指導主事より、資料に沿って事例紹介があった。
(3)  事務局より、資料についての説明があった。
(4)  事例について、質疑応答及び意見交換が行われた。

(□:事例報告者、○:委員、●:事務局)

【事例報告】
事例報告者 東京工業大学教育工学開発センター 中山助教授
 教育工学開発センターは、衛星通信遠隔教育システム(通称ANDES)運用をしている。
 我々のセンターでは、センター設置以来、遠隔教育も研究してきた。現在のANDESは、1996年の補正予算で、リフレッシュ教育と交流授業のために設置した。設置の趣旨は、開かれた大学のための研究開発事業であり、設置当初の主な内容としては、社会人向け、主に企業等で働き始めた技術者向けの公開講座、東京工業大学と一橋大学間での交流授業の実施であった。
 その後、デジタル化を機会に、幾つかサービスを増やした。1つは高大連携で、もう1つは国際通信による国際遠隔教育である。また、文部科学省でel−Netという衛星通信システムを導入しているが、この受信設備でも受信できるようにした。一部の自治体では、el−Netの受信機を高校に配置しているところがある。
 衛星通信による高大連携の実施は、中等教育と高等教育の接続という問題について何か貢献できないかということで始まった。また、東工大には附属工業高校があり、大学と附属高校との接続の問題について、常日頃から建設的に議論されていた土壌もあった。その当時、高大連携ということが脚光を浴びており、既に埼玉大学や多摩地区の大学でも高大連携を進めていた。また、東京都内の一部の高校から我々の大学に対しても高大連携について実施したいのでご協力をいただきたいという話があった。さらに、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)、サイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)等のプログラムが開始されたという機運もあり、2001年に予備実験として、附属高校、筑波大附属坂戸高校に協力を依頼し、最初にel−Netで幾つかの本学の公開講座を配信して、高校生に受講してもらえるかを検討した。その後、ある程度の可能性が分かり、2002年から高大連携プロジェクトとして配信を始めた。
 実施形態については、通常の学部授業をそのまま公開講座として配信している。1学期ごとに2つの授業を配信しており、合計年間4授業を配信している。1講座当たりの授業料は6,830円である。
 高校での取り扱いについては高校が判断することとし、先生方が授業の教材として使って高校の単位を認定する、あるいは高校生が自学自習のために用いる、などのように全て高校において判断いただいている。高校側ではコーディネーターの先生を決めていただき、その先生と大学が連絡するようにしている。受講した生徒に対しては、独自に講義の受講証明書を発行している。
 一方的な配信にならないように、高大連携協議会を開催し、高校と我々のセンター、実際に授業を担当している講師の先生方で意見交換をしている。また、授業を担当している教員の希望に応じて、授業を受信している高校を実際に訪問していただいている。あるいは、高校から講師として招きたいという話があれば、講師にご訪問をお願いして講義をしていただいている。
 受信に必要な設備は、衛星通信受信設備及びビデオなどの録画装置である。今後は、インターネットによっても受講できるように検討している。ビデオテープやDVDに保存したものを貸し出して見ていただくこともやっている。
 単位認定については、一部の高校で選択科目として単位を認定している。あるいは、学校外における学習という形式で単位認定しているが、一部の高校では総合的な学習の時間の中に一部取り入れて活用している。一方、完全に課外活動の扱いとして活用している高校もある。夏休みや土曜日、あるいは高3生がまとめて卒業間近に先駆け受講という形で勉強する事例もある。
 送信している授業の内容については、理数系基礎科目から工学部の専門科目、英語、また、一橋大学との交流授業である商学の授業である。これにかかるコストは、衛星通信にかかる通信費用、それから、収録にかかる費用等が発生しており、これらについては、センターの運営費から支出している。
 PRにも力を入れているが、実際に受信している高校数は年間1講座当たり10から15校程度である。最後まで受講して受講証明書を受け取る高校生の数は年間で60名程度である。登録者数自体は数倍あるという話であるが、授業内容によっては受講者数がゼロになってしまった高校の話もある。一方、積極的な参加例もあり、生徒から携帯電話のメールで質問がきたり、実際に大学に来てゼミに参加した高校生もいる。
 例えば、量子化学といった科目は3年生が受講するものと思っていたが、実際には高校1年生や2年生が受けており、大学の教員が補足説明を希望する高校生を集めて大学で勉強会を行った例もある。また、基礎生物学といった科目でも、大学の先生が学期末に高校を訪問して、まとめの講義を行って、受講した人たちに受講証明書を渡したという事例もある。
 こういった現状であるが、若干運営上の問題もあると思っている。1つは、基本的に全てがボランティアで、あまりインセンティブらしいものがないということである。授業を担当している大学教員、それから高校生ともに、基本的に興味があるから講義をする、授業を受けるという状況である。また、内容的なものはどうしても理科や数学が中心となっている。更に、最近は他の様々な大学でも高大連携が行われており、そういったものと競合をしているという状況もある。
 もう1つ、最近、高校の先生の話によると、高校生の志向も大分変わってきているということであった。2002年ごろは、より難しいことに色々チャレンジしていこうという意識が非常に強かったが、最近は、分かることを勉強したい傾向も見られるとのことで、最初は、非常に興味をもって受講しても、途中でやめてしまう受講者も科目によってはかなりいるという。
 それから、高等学校教育との不連続な点というものがある。特に工学専門科目などを受ける場合は、なかなか授業の内容が分からないという指摘がある。また、SSH、SPPなども高校理数科の発展系という印象があり、必ずしも大学との接続というものが視野に入っていないように感じる。
 やはり、検討すべき点は、大学で高大連携をやるメリットが何であるかを検討することだと思う。1つには、大学の社会に対する貢献になるという位置づけがあるが、今まで我々がやってきた事業は必ずしもあまり評価されているとは思っておらず、それを、どのようにすれば評価してもらえるようになるかを検討している。
 もう1点は、高校生のインセンティブの問題である。例えば、高校との連携協議会においては、配信授業を受講した成果について、例えばAO入試で活用するようにならないかといった意見もある。それから、高大連携をやることが大学の教育研究に何か役立つのかという指摘もあるが、それについてはまだ特に具体的な事例はない。ただ、大学院のゼミにまで参加できるような高校生たちが仮に1人でも2人でも大学に入ってくれば、それは大きな影響があるのではないかと期待している。そういった点で中等教育から大学院教育を見据えた科学技術分野の人材育成プランというものの検討が必要であると感じている。
 東工大における検討課題としては、学内的な理解をいかに得るかということである。それから、附属高校に関してはすでに特別選抜というものが導入されており、あえて高大連携を行う事業価値が分からないという意見もある。
 受講生が入学した場合の単位認定の問題もある。また、個人情報の問題もあり、なかなか我々自身が追跡調査等をするということも難しい。やはり最後は社会的な評価、支援というものを得られるかという点が、今後、事業の成否に関係してくるのではないかと考えている。

【質疑応答】
委員  素晴らしい試みであると感じた。講座の内容の工夫について伺いたいのだが、これらの講座は大学でやっているものそのものではなく、高校側との協議会等で色々と意見を取り入れて内容を決めているものなのか。

事例報告者 中山助教授
 基本的には学部生が受講する授業そのものを配信している。

委員  すると、学内からの抵抗は思ったより少ないということになるのか。

事例報告者 大即教授
 というよりも、実際はその抵抗のない先生にやってもらっているというのが実情である。

事例報告者 中山助教授
 先ほど説明したように、あくまで先生方のボランティアでやっている状況である。以前、担当教員がある高校を訪問していただいたところ、先方には1人の生徒しかいなかった。ただ、高大連携授業の内容について色々と質問されて、高校生が普段学んでいる内容などについて1時間以上話をしてとても楽しかったという報告をいただいた。そういうまさにボランティアでやっている状況であり、それは生徒も同じ、高校も同じである。

委員  高校生が思ったより楽しんでいたという感想があったが。

事例報告者 中山助教授

委員  2002年当時は、最後まで残った生徒たちの意見としては、楽しかったというものが多かった。生徒からの意見としては、高校生に合わせた授業をやってほしくない、大学でやっている授業をそのまま教えてもらいたいというものであった。ただ、その後少し状況が変わって、さすがにちょっと難しい授業だとやめてしまう生徒もいるように感じる。

委員  我々の高校では土曜日の2時間を使って特別授業として40ほどの講座を設け、生徒たちが受けるということをしている。主として卒業生を頼りに来てもらい、講義をしてもらっている。それを、1学期8回を単位に、年3回、3つのテーマで話をしてもらうということをしているが、例えば、90分8回くらいのサイクルであれば講義してもらうということは可能か。

事例報告者 中山助教授
 恐らく難しいと思う。それは、公開講座に合わせてデザインをして運営すると、その分手間がかかるからである。授業ではなく、独立の公開講座としてやろうとすると、内容を検討することから始め、先生方の日程を合わせたり、教材の検討などが必要になり、先生方の協力を得にくい。やはり、通常の正規授業としてやっていることをそのままやってもらうというのが長続きするように思う。

事例報告者 大即教授
 附属高校に毎週土曜日に行ってやっている授業など、公開講座として設計しているものも中にはある。

事例報告者 中山助教授
 総合的な学習の時間を使って配信授業を活用している高校からは、オムニバス形式の授業をお願いしたいという要望もある。オムニバス形式であれば、何人かの先生が順番に講義をするというものであるから、そのうちの1人、あるいは2人分の講義を高校の授業に活用するということもでき、高校側の取捨選択が容易となる。

委員  普通の授業であれば、大学生には試験とかレポートとかがあるが、公開講座ということであればそういうものはないと思う。そこで、高校側から評価の実際のやり方などについて問われることはあるか。

事例報告者 中山助教授
 評価については完全に高校に任せているが、例えば大学で期末試験等を実施している授業については、期末テストの問題を送ってほしいという要望もある。そういった場合、担当の教員が作成した問題の模範解答も一緒に送っている。中には、生徒がレポートを書く場合もあり、そのような場合は授業担当の教員先生に見てもらっているいる。

事務局  検討課題として、受講生が入学した場合の単位認定の可能性ということが挙げられていたが、法令的には十分可能。これについて踏み切る、踏み切らないという色々な議論があれば教えていただきたい。

事例報告者 大即教授
 以前は単位認定に関してあまり議論はなかったようだが、今の話を聞いて、恐らく数年前と状況が変わっており、前向きな検討ができるのではないかと思う。

委員  18歳にならないと大学生にはなれないが、放送大学では15歳から科目履修生として入ることができる。22歳にならないと卒業はできないが、30単位を取れば16歳でも17歳でも正規課程に入れる。今、15歳から18歳までの高校生相当の学生が50人くらいいる。しかも、これは大学から単位が出るから、協定さえ結んでいればどの大学に入っても60単位までは読むことが可能であり、飛び入学を丸々やったことと同じような効果があると思う。また、現実に学生が活用しているかどうか分からないが、大学院の授業は18歳から受講できる。
 オープンユニバーシティーというものはそういうものであり、しかも、テレビやラジオで受講でき、試験を受ければ大学生と同じように単位を取得、成績もつけられる。また、面接授業もある。もしオープンユニバーシティーというシステムがうまく機能すれば、飛び入学などという議論はなくなるのではないかと思う。高校で必修になっているものを勉強しなかったから大学に行けないということも恐らくなくなる。日本は、オープンユニバーシティーというものが少なすぎると思う。
 大学は箱に入れて箱から出しているのではないか。何々学部、何々学科というと、どうしても必修がなければ学科構成ができないので、必然的にある塊を勉強することになる。塊の途中を省略して抜けていくこともできない。そういったものとは別の学修の仕方があるのではないかと考える。箱を外に置いたもう1つの教育体系がパラレルにあると、随分色々なことが柔軟になるのではないか。高等学校と大学院まで円滑につながるのではないかという気がする。

委員  今、高校生相当が50人ほどいるという話であったが、その履修状況などについて詳細に教えていただけないか。

委員  それらの学生は、高等学校と連携をとっているというものではなく、個人的な希望で入ってきているものであり、詳細については把握していないが、調べてみたいと思う。

委員  大学院の方でも、飛び入学のようなことがあるのか。

委員  大学は22歳になるまで卒業できないが、科目履修生として大学生のときから大学院の授業を取っている者はたくさんいる。特に語学や数学が多いようだ。

委員  先ほどの話のようなことはこれからも進んでいくのだろうと思うが、そういったときに大事なのは、一つ一つの授業の質の保証ということがあると思う。特に、東工大の試みはメディアを使っており、流しっ放しにするとうまくいかない部分もあると思うが、この方式で大学の授業としての質を担保していくような要件のようなものを感じていれば聞かせていただきたい。

事例報告者 中山助教授
 本事業としては実施していないが、質を保証する方法の1つとして、スクーリングがあると思う。例えば、夏休みに高校生に大学に来てもらって先生の授業を実際に受ける。2日でもいいと思うが、そういう機会を設けたら非常に良いのではないかと思う。ただし、費用の問題もあると思うが、何よりも、何のために実施するかということを明確に意識することが必要と思う。東工大としてそういう授業をやることが大学のメリットになるのか、例えば高い資質の入学者を確保できることになるのか、あるいは社会貢献としてそういうことが広く認知されるのか。そういう意識がないと、結局、何のためにやっているのかということになってしまう。高校生からも講義を受ける以外にも何か他にメニューはないのかということが実際に声としてあるわけだが、そういった声に対し、どのような選択肢が用意できるのかを大学としてある程度考えないと、非常に中途半端になってしまうのではないかと感じている。

委員  AO入試をするとき、学生の学力のレベルが分からないという問題がある。その際、例えば、放送大学のある単位を取っていた学生だったら良いなどの基準を設けるという考え方もできるのではないか。
 それから、もう1つは、1、2年生の教育は殆ど、例えば放送大学に預け、そこで所定単位を取得した者は3年に転学させるというようなやり方もある。そうすれば、随分単位互換の形が変わってくるのではないかと思っている。

委員  高校生が、以前は難しいことにチャレンジするのを好んでいたが、今は易しい、自分が分かることを学ぶ傾向があるという話があったが、一方、提供しているプログラムは大学の授業そのもので高校生向きではない。そういった状況で、受講する高校生は減っているのか。

事例報告者 中山助教授
 開始当初よりは減っている。また、高校生の受講傾向については、高校の先生から聞いた印象であって、実際は確かにそうだということは言えない。例えば、昨年、工学部の専門科目を半年間提供したところ、多くの高校で学期の途中で受講者がいなくなり、残念であった。かつては難しいから良いという話もあったので我々もチャレンジする高校生を期待していたが、必ずしもどんな授業にも最後までチャレンジするわけでもないことも再認識した。

【事例報告】
事例報告者 京都府教育庁指導部鈴江高校教育課長
 本日は教育委員会を窓口にして行われている高大連携の取り組みについて説明する。
 まずは京都府の状況だが、「大学のまち京都」ということで、45の4年制大学があり、その大半が京都市及びその周辺都市に立地している。京都市の人口が140万人ほど、その1割が大学生と言われている。また、南北に長い多様な地域性というのも1つの特徴であり、直線距離で150キロある。それから、大都市と過疎地が共存しているという特徴も京都にはある。日本海に面する北部地域は丹後と言われているが、舞鶴、宮津といった都市を除く大部分の地域は、農村、山村、漁村が点在する過疎地である。
 また、短大を含む国公私立合わせた大学への進学率で全国一という特徴もある。平成18年3月のデータで見ると61.3パーセント。全国値が49.3パーセントなので、10ポイント以上高い数字になっている。平成12年以来、7年連続の進学率1位。それについては、やはり身近に大学がたくさんあること、就職への選択肢が少なくなってきていることが大きな原因ではないかと考えている。また、私立大学の多くは附属高校を持っており、ここに入学するとそのまま大学進学しやすいということも進学率を高めている主因ではないかと思っている。また、普通科高校の比率が高いということも現状の進学率に影響している面もあるかと考えている。
 京都府教育委員会においても、生徒の多様な能力や個性の伸張を図るため、積極的な高大連携を進めている。進めるときの考え方の基本として、3つほど挙げる。1つは双方向性。大学から高校へ、同時に高校から大学へといった意味で使っているが、両者双方にメリットがあるということ、そして、両者が対等に連携を進められることが大切であるという考えで進めている。2つ目は、多様性。高校・大学に通う生徒・学生も様々な者がおり、多様な取組みを図るということが肝要であるという視点で進めている。3つ目は継続性。イベント的な取組みに終わることなく、子供たちの学力向上や進路意識の定着、高校と大学との円滑な接続、入り口だけではなく、教育内容における連結、そういう継続性を出して教育活動を行いたいということで進めている。
 次に、大学との包括協定について。教育委員会が大学と包括協定を結ぶに至った理由の1つ目は、高校と大学教員との個別な点と点による連携は昔から行われていたが、組織的な面と面との連携が求められる時代だと考えたこと。2つ目は、評価と公開が求められる時代になり、大学にとっても教育委員会が連携の窓口になることにより、研究・教育の面において大学の地域貢献が進められるということがあるのではないかということ。現在のところ17の大学と京都府教育委員会の間で包括協定を結んでいる。他に学習機会の提供のみ、あるいは教員養成に関わる事柄だけといった部分的な協定を京都女子大学、滋賀大学、奈良女子大学、京都大学とも結んでいる。
 次に、高大連携の状況であるが、出前講義をはじめ、IT関連高大連携推進事業、あるいはSSH、SPP、スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)といった事業の指定を受けた高校への支援という形で連携を図っている。
 また、教員養成に関しても高大連携を行っている。団塊の世代の大量退職と、これに伴う教員の大量採用の時代が始まろうとしている状況を踏まえ、大学生教育ボランティア学習支援事業、あるいはより高い実践力を身につけるための教員養成サポート・セミナーという事業を実施するなどしている。教育実習だけでは教員としての技能・技術・スキルを身につけることや自分の適格性等を確認するといったことが十分でないことから、これらの事業は教職へのキャリア形成に資する取組みとして、大学から大変喜んでもらっている。また、教員相互の研修・交流といったことにも取り組んでいる。
 次に、京の学び探訪と銘打って、IT活用高大連携事業を行っている。これは、平成16年から始まり本年度で3年目を迎える。京都の府立学校と京都府の教育機関を大容量の高速回線で結ぶ京都みらいネットを整備し、大学の先生方による模擬授業や大学の紹介を全府立高校に同時配信するとともに、京都市内の大学と府北部の高校とをテレビ会議方式で質疑応答を行うといった取組みを進めてきた。実施後は、講義を編集し、京都府教育委員会のホームページにライブラリー化して、府立高校全校で授業や進路学習への活用を図っている。大学における学問の一端に触れることにより、生徒の新たな学びの発見、目的意識の明確化、進路意識の定着、あるいは学習意欲の向上に資することを狙いとして取り組んでいる。
 ITを活用した高大連携事業の内容については、平成17年度、10講座配信し、分野・領域も多様なものになっており、ライブラリー的価値も備わってきたのではないかと考えている。本年度、「21世紀の科学」という大きなテーマを設け、4つの大学からそれぞれ4講義ずつ、計16講義をリレーでつなぐという講座を展開した。全てに取り組んだ生徒には高校の単位として認定できるという仕組みにしている。リアルタイム双方向で結んだ北部の高校は、16年度は2校、17年度、18年度はともに4校、各年度とも500人程度の生徒が参加している。
 これらの事業の成果について、まず、地域性によるデメリットの解消ということがあげられる。京都市内から100キロ以上離れている北部地域は市内とのアクセスがかなり悪く、高校生が大学を身近に感じる機会が少ない。これらの事業は、この距離のデメリットの問題を解決するのに一定の有効な方法ではないかと思う。それから、生徒に対するアンケートでは9割が講義に満足と回答している。また、進学意欲の向上とか専門分野への関心が高まったといった意見もあった。更に、進学について具体的に考えるようになったとか、学部・学科あるいは大学選択の参考になったといった感想も聞かれた。キャリア形成のための意欲・態度や能力を育てるという観点からも有効であったと考えている。
 さらに、教師の授業改善という観点においても、大学の講義は知識の教え込みでなく難解な概念を分かりやすく説明しており、また、社会や文化の見方、考え方、あるいは学び方について考えさせるといった内容が多く、高校の教師にとっても授業や教科の指導方法の改善、進路指導のあり方に参考になったといった感想も寄せられた。
 一方、課題であるが、講義をライブラリー化し、オン・デマンド配信の活用を図るというのも狙いの1つであるが、残念ながらあまり利用がないのが現実である。やはり生徒は、たとえ画面を通した講義であっても、リアルタイムの双方向でないとモチベーションが上がりにくいという面があるのではないかと考えている。
 それから実施の継続性という観点から、高大連携をイベントに終わることなく、高校のニーズを踏まえながら見直し、工夫改善を進めていくことが必要である。19年度においては、例えば京都の伝統文化といったテーマで複数の大学の先生の講義をリレー形式でつないでいけないかということを考えている。
 それから、ハード面の整備の課題がある。実は、インターネット配信、受信、収録については、スタジオがあるわけではなく、機器を会議室に持ち込み、そこで実施しているという状態である。機器についても、家庭用のホームビデオを活用するなどといった状況であり、予算的措置について頭を痛めている。
 次は、府教育委員会と大学コンソーシアム京都との連携について説明したい。大学コンソーシアム京都というのは、全国に先駆けて1994年に設立された。49の大学・短大と京都市、経済4団体で構成されている。その中に京都高大連携研究協議会という組織があり、大学コンソーシアム京都、大学、京都府教育委員会、市教育委員会及び産業界が集まって高大連携を進めている。
 ここでは高大連携事業として様々な取り組みが行われている。1つは教員研修のための教育フォーラムを年1回開催している。2つ目は、実践研究プログラムというもので、高大連携を通じた授業づくりを行っている。また、1、2年生の生徒を対象に毎年秋、学びフォーラムというものを開催し、北部会場と南部会場に分かれて、大学の模擬授業を行っており、これは大学にとっても広報の良い機会となっている。
 それに加え、今年、第30回の全国高等学校総合文化祭が京都で開催されるということがあったので、京都高大連携研究協議会においても課外活動の位置づけを明確にしようということで、課外活動プロジェクトを別に設け、部活動の面でも高大連携を進めていこうという取組みを始めたところ。
 次は高大連携における教育委員会の役割について。重複するが、教育委員会の役割としては、やはり、面と面の組織的連携を行うときに教育委員会が介在する意味があると考えている。あるいは、窓口的機能と調整といったことが教育委員会が入ることで円滑になる。それから先駆的事業の実施、すなわち、一高校、一大学だけではやりにくいようなリスクの大きい取組みや専門的な事業といったものも教育委員会が入ることによって可能になる場合があろうかと思う。また、多様な成果と課題の共有、情報の集約と発信、地域貢献といった部分でも、教育委員会が関わることによるメリットが出てくるのではないか。公私を問わない多様な連携ができるのではないかという意味でも広がりを持てると思っている。
 最後に、高大連携の成果と課題であるが、1つは専門学科における高大連携が進みにくい部分があるということ。工業に関する学科とか商業に関する学科とか、色々な専門学科があり、中には非常に先駆的な取組みをしている高等学校もあるが、そういったところと大学とがなかなか結びついていないと感じている。それから継続性について、行事的なものは見直して、教育的効果の高いものを精査して継続する必要がある。また、成果が見えにくいという課題もあろうかと思う。学力の向上、進学率など、数字でなかなか高大連携の成果を計ることは難しい。最後に、予算的な制約については、今後むしろお金をかけないことにポイントが置かれるのではないかと考えている。

【質疑応答】
委員  機会均等ということで、例えば18年度であれば16講座、全府立高校へ同時配信しているという話であったが、高校により色々な独自性、種類というものがあると思う。そういうことへの配慮はどの程度されているのか。一律の内容が全部の高校で同じように上手くいくとは思わない。少なくとも18年度の場合は「21世紀の科学」というキーワードで講義がなされているので、場合によっては相当難しいところもあろうかと思うが。

事例報告者 鈴江課長
 高校によってそれを聴講するか否か、更に単位認定するか否かを判断するものであるので、皆が同時に聞いているわけではない。

委員  聞く側の問題ではなく、配信する側の配慮はどうか。例えばもう少しきめ細かな配慮をした方が実効的な効果が上がるのではないかとか、色々と考えなければならないことは多いと思うが、その点について、教育委員会の中で議論をしてきた経緯等あれば聞かせていただきたい。

事例報告者 鈴江課長
 そういった観点からの配慮ということであれば、我々が大学の先生に依頼をしにいく時も、対象はほぼ高校の1年生もしくは2年生であるが、それほど高校のレベル、学年のレベルの学習内容ということは考えなくても結構ですという話をする。その際、もし難しいという話があれば、高校側で補習や解説をするということで対応する。決して受けっぱなしということではないが、それ以上の配慮ということはあまりできないというのが現状。

委員  成果が見えにくいという話があったが、教師の授業改善に役立つ、あるいは生徒の9割が講義に満足しているというだけでも私はすごいことではないかと思う。
 進学意欲ないし勉学意欲というものの低下の原因は恐らく目標が見失われていることにあるだろうと思う。そこで、来年は京都の伝統文化ということであったが、どのようにして講義テーマを決めるのかということも聞きたい。それから、それが生徒の学習意欲、教師の授業態度の改善等にどのように反映されたのか。さらに、それをどのように評価するのかということについて聞きたい。
 また、京都では、市内は昼間だが、丹後の方ではもう夜のようであったり、雪が降っていたりということもあり、時間通りに通常の授業を受けるということは難しい。まさにそのためのインターネットであろうかと思う。これはダウンロードしておけば、あとでいつでも見ることができる。

事例報告者 鈴江課長
 成果ということになると本当に難しい面があるが、以前より様々なことに奔走する中で、1人でも2人でも講義を受けて学問の面白さを感じてくれる生徒がいてくれればいいという思いでやってきた。ただ、教育行政の立場にいると、やはり進学率がどのように伸びたかとか、難関大学に入ったかとか、実際講義を聞いた大学への進学はどうであったかとか、非常に短いスパンでの成果を求められやすい。そのように成果を捉えるとなかなか見えにくい。大学にとっても、志願者が増えたか、提携先の高校から志願してくれる生徒が増えたかなど、どうしても数字に残るようなことになると成果としては見えにくいかと思う。事業ということになれば、予算を使うからにはやはり成果を問われることになる。
 授業改善という点では、毎回、大学の講義は難しい概念をわかりやすく説明したり、最近の色々な分野の動向を説明したり、高校生たちも受験科目だけではなく様々な分野を勉強することができ、将来非常に役に立ちそうだという感想が聞かれる。我々にとっても、こういうことが実に大切なことであったと気付かされる。とかく受験のための知識、数字ばかりに拘りがちだが、そういうときに本当の学び方を意識させられ、教師自身も大変に参考になったであるとか、学部選択の進路指導に参考になったとか、生徒の進路指導のミスマッチもなくなるということもあろうし、授業改善ということに関してもヒントを得るものが多かったという感想も直接学校の先生から聞くこともできた。

委員  恐らく、こういった高大連携に参加することは、大学の先生にとっても良いファカルティディベロップメント(FD)の機会になっているのではないかと思う。先ほど大学の箱という話もあったが、いわゆる従来の閉じた大学の殻を破っていくことで、また何か新たなものが生まれる可能性もあると思う。
 成果の問題もあったが、教育の成果というものは教育心理学の永遠の課題でもあり、やはり簡単に成果ということには表せないものと思う。
 こういった高大連携の取り組みというのは、特に大学受験という日本の抱えている難問題に風穴をあける1つの大事な取組みなのではないかと思っている。未履修問題なども一方であるわけだが、テストで100点をとってもそこで学びが終わってしまったら本当の学びとは言えないと思うので、単に学力ということだけではなく、感想として挙げられているような「数学のおもしろさや奥の深さを知って、見方が変わった」というように、次にまた数学をやってみようということにつながっていく、そのようなつながりをこの感想を寄せた生徒は感じているはずで、これだけでも高大連携の重要性を示す非常に重要な証拠になり得るのではないかと思っている。
 ただ、1つの課題として、このような感想が出てくるわけだが、では、この後どのようにつないでいくのかということがある。面白いと思うことに対し、次に具体的にどのように学びの道筋について情報提供することができるか、京都の場合にはコンソーシアム京都という組織もあるので、是非トライしていければ良いのではないかと思った。

委員  地域によって、東京や近畿地方など、大学・大学院といった大きな教育の集団があるところと、一方、例えば離島など、高校が一番上のランクの教育機関であるというところもある。そこで、様々なことを検討する上で、東京という、日本のエネルギーも知恵も全て集まっている、一種の特殊地帯が非常に巨大な存在としてある。そこで行われていることと地方で行われていることは随分違う。すると、例えば高大連携といっても、大学なんて見たこともないという地方もあれば、一方、目の前に大学がいっぱいあって、東京大学の門の前を毎日通っているのに東京大学へ入れなかったという高校生も多くいると思う。そのあたりをどのように考えるか。
 もう1つ、大学に入るための入学試験を突破することがもしかしたら日本の教育のかなりの部分を歪めているのではないかということに対し、我々が何かできることがあるのかということ。もしもそれがあるとするならば、それは高大連携ではないか。であれば、長期的視野に立てば、難関大学へ何人入ったかという議論はナンセンスだと思う。しかし、高校生にとっては、今難関大学を通るか通らないかということに対して必死の思いである。そのように、そこへ入ることが人生の目的のように全てを投げ打って高校で勉強してきたという生徒にとって、高大連携はどのように映るだろうか。現状は、大学へ入れるか入れないかということばかりに関心がいっているが、本当は何が教育かという大変難しいことを考えねばならない。
 何とか試験に通り、4年間だけ大学に通ったら一生それで飯が食えたという時代はもう終わった。しかし、終わったということを明確に認識していないから、1サイクル目の教育にものすごく拘ってしまう。更に、1サイクル目以上の教育が不十分、すなわち、大学を出た後の生涯教育について然るべきレベルの高い教育というものが日本では十分でない。そこが十分であれば、1サイクル目に基本教育だけやっておき、2サイクル目では色んなところで色んな勉強をしようという考え方ができる。学部を1サイクル目の教育にして、2サイクル目、3サイクル目を一生かかって勉強するというシステムをどのように作るかというのが高大連携の次の問題としてある。試験に落ちてしまったらダメということではなくて、1サイクル目を違う入り口から入ったというだけのことということを、どのように若い生徒たちに示してやれるのかということが、高大連携のかなり大きな役割ではないかと思う。
 やはり現在の大学に入るときの競争の激しさと50年前とでは桁違い。そしてフェアでなければならないということを大学入試に要求するから、試験問題を少し間違えればとんでもない問題になって、新聞に大々的に書かれてしまう。人間、間違わないはずがないのに、そういうことを許容しない社会を作ってしまっている。だから、こういった歪みについては高大連携のところで風穴を少し広げ、違うルートから違うルートへ行く学生もいるという考え方が広がれば良いと思う。
 4年間1学科にいるということは大変重いことである。だから、もう1回そこに入るということは基本的にあり得ない。修士課程2年間だって、1専攻で2年間びっしりというのは、社会人にとっては途方もなく重い。そういう意味で、教育システム全体を色々と考えなければならない状況にあると思う。大学に行ってその後に至るまでのスパンについて、おぼろげながらでも見ながら議論ができれば良いと思う。

委員  京都の状況について、皆さんの相当の努力がないとこのようなことを実施するのは難しいと思うが、京都府教育委員会や私立の高校の担当者含め、このような事業に携わっていることに喜びを感じられるような状況にあるだろうか。恐らく、そのような感情がないとこのような大きなことはできないのではないかと思っている。

事例報告者 須原総括指導主事
 なかなか大学の先生方も快く引き受けていただけるということはまずないし、初年度やったときも、機械的な問題等も課題としてあり、色々と大変なこともあった。ただ、例えば京都大学には入学しないであろう高校生が京都大学の先生の話を聞ける機会というのは、もしかしたらもうこれでないかもしれない。また、非常に難しい講義をしていても、その子の目が一生懸命聞いているということも多々ある。感想を取り寄せて読ませてもらうと、やはりやって良かったと思う。どこの学校にも満足を得られるということは本当に難しいし、更に次のステップとして単位認定ということをやろうと思うと、取組みを縛る部分もあり、また難しい。また、これだけ多様化した高等学校が多くある中で、それぞれの学びの広がりをどのように教育委員会として考えていくかということも非常に難しい問題ではあるが、やっていること一つ一つは、成果をすぐに数字で捉えなければならないということがなければ、大変楽しい事業だと思う。

事例報告者 中山助教授
 今日配付している高大連携のパンフレットは、毎年全国1,000校ほどの高校に配付しているが、残念ながら受講している高校は15校ほどしかない。高校側から受信設備を整える予算がないという話も聞くが、一方で、大手予備校の講義を受ける受信設備に関しては、学校で工面して実際活用しているところもある。
 また、ある高校からの問い合わせで、そこの高校の生徒ではない高校生がぜひ受けたいということで、他の高校の生徒も受講して良いかという話があり、それは是非受けていただいて構わないという話をした。
 我々としては、高校側にも少しこういった高大連携事業に参加するということに価値を見出してもらって、高校と大学でこのような協力関係が築ければ良いのではないかと思っている。

委員  予備校ができて大学ができないというのは困るが、それについては色々と今の日本の仕組みの中では難しい問題もあるのだろうと思う。
 ただ、講義と講演というものがかなり混同されている可能性があるのではないかと感じた。講義というのは10回とか15回とかやって1シリーズで、そこから学生が体系的なものを身につける。オムニバスという講義もあるが、それは極めて特別な講義であって、一般的にはそうではない。それから、講演というのは、1回か2回の単発的な話の内容で、聞く者に強いインパクトを与えるというもの。だから、公開講座といっても全く性質が違うものを1本にしてやると、例えば一発型のものを10回受けたら1単位やるなんてことにしたら子どもが大変。高大連携が何を狙うかということを明確に設計した上でやらないと、場合によっては、高校にそんなもの15回も流されたらうちのカリキュラムが壊れてしまうというようなことを言われてしまうこともあると思う。高校全体を対象にしてやった方が良いのか、能力のあり余っている高校生が夜家で勉強した方が良いのか、そういったことも全体のシステムとしてしっかりフォローアップする必要があるだろう。

7. 次回の日程
  次回は、平成19年1月24日(水曜日)14時〜16時に開催することとなった。

(高等教育局大学振興課大学改革推進室)


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