1.教育課程における看護実践能力育成の現状の確認
本報告において、看護系大学の卒業者が卒業時に身につけている看護実践能力が到達目標として提示された。各看護系大学では、独自の教育理念に基づく教育目標をおき、それに基づいた教育を行っているが、それぞれの教育課程の中に本報告書にある看護実践能力育成がどのように組み込まれているのかを確認し、自大学の教育課程の改善・充実に活用することが大切である。
2.看護学教育における教養教育の在り方の検討
本検討会において、看護系大学学士課程における教養教育の意義と充実のための課題が確認された。今後は、学士課程における看護職育成の基盤として、教養教育の内容や教育方法、履修方法に関する議論を活発化していく必要がある。
本報告で述べたように、学士課程における看護学教育は、教養教育を基盤として構成されるものである。教養教育を担当することが多い看護系以外の教員についても、看護実践能力育成に関わっているという共通認識を持つことが重要である。
3.助産師の看護実践能力の大学卒業時到達目標の明確化
本報告では、保健師・助産師・看護師の三職種に共通する看護専門職としての基礎を取り上げた。助産実習等は、国家資格に直結するものであるが、教育課程上、助産資格取得に必要な教育内容の一部が選択科目として位置づけられている。これらの選択科目に関わる看護実践能力についても、到達目標を明確にする必要がある。
4.看護生涯学習との関連における学士課程における看護実践能力育成の検討の継続
本検討会でまとめられた学士課程での到達目標は、看護生涯学習の体系化の観点から、常に見直されていくものである。看護職者に対する卒後教育やキャリア開発方法の発展と連動させながら、学士課程での看護職者育成の在り方を引き続き検討する。
5.保健・医療・福祉スタッフや看護サービス利用者の協力の確保
看護実践能力育成においては、看護実践の場で行われる実習や学生の能力評価が重要な意味を持つ。保健・医療・福祉の現場で、学生が学び評価を受けることは、その場にいるスタッフや看護サービス利用者の、学生の教育に対する深い理解と自発的な協力の上に成立する。看護系大学は、学士課程における看護学教育が何をめざしどのような教育を行っているのかを十分に説明し、看護学教育への協力・参加を得る努力を積み重ねていかなければならない。
6.地域・社会とのつながりの強化
国民のニーズに応えられる看護職者を育成するために、看護系大学は社会の動向を敏感に把握し、反応していく必要がある。そのためには、看護職能団体や学術団体との関係を密にしていかなければならない。地域社会との関係は大学により様々であるが、各看護系大学は、その設置の趣旨や地域貢献に対する考え方に基づき、それぞれの特徴を生かした地域社会とのつながりを確立している。
看護系大学は、高等教育機関として、看護職全体に対する生涯学習を支援する役割を持つ。すでに各看護系大学は、研究指導、公開講座、研修などの実施、そして大学院教育や学部・大学院の科目等履修生制度や聴講生制度など、各種の方法で看護生涯学習支援に取り組んでいる。今後も、看護職のキャリアアップにふさわしい生涯学習支援の方法を開発しなくてはならない。このような相互交流を通して、大学が看護実践能力を育成する教育環境や力量を拡大していく。
7.教員の能力向上のための組織的取り組み
卒前の臨地教育を充実させるために、教員には十分な看護実践能力や、臨地で学生に看護実践を教育し評価できる能力が求められる。教員が看護実践能力、教育・評価能力を向上させることができるように、ファカルティ・ディベロップメントの企画や、教員が臨地で看護実践を行いながら自己研鑽を継続できる体制づくりなど、組織的な取り組みを促進する。また、看護実践能力の育成方法の改善に資する研究が蓄積されるように、教員の研究活動を活性化させる。
8.大学間の協働・連携
各看護系大学がカリキュラムや評価方法を充実させるにあたり、看護系大学同士が協力・連携しあうことは、各看護系大学の取り組みを後押しすることになる。評価において第三者評価を導入するシステム作り等、大学間の協働の在り方について検討する。