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ヒューマンケアの基本に関する実践能力 |
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看護の計画的な展開能力 |
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特定の健康問題を持つ人への実践能力 |
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ケア環境とチーム体制整備能力 |
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実践の中で研鑽する基本能力 |
図2 看護実践能力の構成
1)ヒューマンケアの基本に関する実践能力
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看護実践の過程では、人と人間生活に深く関わる。そのため、まず、ヒューマンケアの基盤能力に相当する人の尊厳と人権の擁護にかかわる確実な実践能力を上げた。健康障害により心身機能や生活機能の面で自立度が低い段階での看護ばかりではなく、看護のすべての場面で求められる能力である。 卒業時到達度としては、健康生活にかかわる人権と人間の尊厳の意味を確実に理解でき、それを擁護する行動をとることができなくてはならない。そのためには、看護対象となった個人の持つ価値観・信条などについて、幅広い知識に基づき理解が出来るとともに、それを受容し、看護行為に反映して行動できる段階を求める。また、個人情報の持つ意味を人の尊厳と人権の擁護という観点から理解でき、個人情報の適切な取り扱いが出来ることが求められる。 本項の看護実践能力は、熟練度を問うものではなく、看護の学習の初期から多様な方法で修得し、実習で確実に実施することを重ね、看護職として、恒常的に追究していくべき基点として修得させる。これは、看護職者というサービス提供者が利用者である人間に対してかかわる時の考え方や対応時の態度として問われるものである。また、人権の擁護という視点からは、健康障害にかかわり生じがちな差別や偏見について、その背景や意味についての理解、ノーマライゼーション社会の実現に向けた課題意識の形成、などについての確実な学習を背景に、上記の実践能力の到達度を充足させる必要がある。 |
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看護実践における看護職の行動は、患者など看護サービス「利用者の意思」に基づくことが原則となる。利用者が医療等サービスを受け、健康問題を解決するに当たり、治療及びケアの内容を具体的に選択することを可能な限り自立して意思決定ができる必要がある。そのために看護職は、利用者が必要な情報は何かを個別に判断して適切な方法を選んで提供する、利用者が自分の考えを明確化しつつ意思決定をするのでそれを支える、そして利用者が自己の意思表明をして受けたいサービスが得られるようにすることを支える。また、利用者の意思や希望が医療等サービスにかかわるすべてのチームメンバー個々に伝達・受容されるようにするために必要な援助をするが、その中には代弁者役割も含まれる。 この能力の到達度は、まず、利用者に必要な情報の判断ができる、提供方法を利用者・家族の条件に合わせて工夫する、情報提供・解説をする、その成果・反応・意思決定への影響を調べる、これらの各事項については、複雑な課題でない限り自立してできることを求める。次に利用者の自己決定を支える過程では、相手の思い・考えを十分受止め、明確化を支え、それに沿った意思決定内容を共有し支持する、意思表明を支える、の各項も複雑な状況がかかわらない限り自立してできなくてはならない。チームメンバーへの伝達とメンバー側の受容については、チーム構成・状況にもかかわるために熟練看護職者の助言を得て出来る段階を求める。 |
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看護実践は、看護職者自身が個々に築く利用者との人間関係を基盤にして行うため、まず求められるのは、多様な価値観を持つ人や自分とは世代の異なる人々の思いや考えを理解し、その理解に基づき、その人と円滑に意思疎通を図ることができることと、ケアに必要な援助的人間関係を形成していく事ができることである。その中には、利用者とその家族員に自分が受け入れられることも重要な要素となる。 具体的に問われる能力とは、一般的な人間関係におけると同様に挨拶など人としての態度、自己紹介・任務紹介、援助目的の説明が適格に出来て初めて人間関係が拓かれる。利用者との対応過程で相手の意思を問う等受容されつつ面接関係を確立する、面接における自分の状態について客観的評価をする、意思疎通を重ねつつ援助を展開していく過程を経て信頼される、実施したケアについての利用者の意見・評価を受けとめる、利用者とその人を取り巻くケアにかかわる人々との関係を把握する、などの能力であり、到達度としては、複雑な課題を含む場合でない限り、自立してできることを求める。 |
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看護過程の展開には、利用者個別の状況に対応した計画を立案し、実施し、評価する能力が必要である。看護過程の理論は問題解決過程の理論が応用されており、全過程は明確な論理的思考を展開させる構造となっている。看護過程は、看護実践が確実な成果を生み出すように、確かな科学的根拠に基づく実践として、位置付かせるための基本技術のひとつである。看護過程の習得には、基礎となる理論や知識の理解が欠かせない。したがって、本能力の獲得には、基礎的能力を十分培った上で各場面での具体的展開へと進むことが重要である。本能力の卒業時の到達度は、以下の事項が出来ることである。 看護で解決すべき個別の健康問題を判別するためには、まず、情報として客観的データと主観的データとを正しい方法で収集し、次にそれらの情報を分析し、健康問題を判断し、看護上の問題を表現する。さらに、看護上の問題の優先順位を判断し、各々の看護上の問題が目指すべき目標(期待される結果)を考え出し、表現する。その上で解決の方策として、個別性に基づいた看護活動を提示し、立案する。 看護計画の実施は、常に、実施する相手(利用者)との相互作用の関係において行われる。このために、立案された看護活動をその人・その場の状況に即して行いつつ、利用者の反応を受けとめ、行った結果をその都度確かめ、評価する。看護活動は目的を持った行為であり、判断された健康問題を改善・解消させる力・機能を働かせるために行うものである。したがって、看護活動の効果がどのように現れるか、また、適切な看護行為となっているかを常に確かめる能力が必要となる。 看護過程展開の最終段階では、実施した成果を解決すべき目標に基づいて(照らして)評価し、看護上の問題が解決したかどうかを判断する。解決されていない場合には、新たに情報を収集し、計画を修正する。そしてその計画を遂行し、成果を評価する。看護過程は病院等施設および家庭において展開される。 訪問看護や地区活動の手段として用いる家庭訪問の展開方法には、個人と集合体、特殊・特有な場・環境に応じる能力、および、保健医療福祉関係職種と連携する能力が加わる。これらの能力の卒業時の到達度には、判断は出来るが、実施においては、看護職者の助言・指導の下に達成される事項を含む。 |
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看護は、人の生涯を通して健康問題にかかわる専門的働きである。人間は生まれて死ぬまでの一生の間、時間と空間の中で成長し続けると考えられている。また、人は身体・心理・社会的存在として統合された統一体であり、全体的存在として反応する。人の一生涯の過程(ライフサイクル)は、人間が経年的に成長・発達する過程として、身体的、心理的、社会的に特有な時期を辿ることが明らかにされており、これを大まかに、小児期、成人期、老年期に区分して把握する。各期の一般化された特徴は、個人を理解するときの手がかりとして活用する知識となる。また、個人の健康の機会は、まったくの健康障害から個人が知覚する安寧の状態まで多様である。人の成長発達段階や健康レベルの看護アセスメントは、その固有の身体的側面と心理・社会的側面の各々について、適切な診査方法によって収集する客観的と主観的なデータを解釈し総合的に判断して決めるという能力に基づいている。人の健康問題は、その人の発達段階、日常生活を取り巻く環境と深く関係しており、したがって、一般的な人間に対する理解と、心と身体の仕組みを熟知した上での看護アセスメント能力は、重要である。 本能力の卒業時の到達度は、以下の事項が出来ることである。 個人の身体内部で起きている変化を観察・測定し、客観的と主観的データに基づいて状態を判断し、異常を識別する。認識・感情の動きと心理的変化について客観的と主観的なデータを収集し、それらの分析から心理的状況を把握し判断する。 看護サービスにおいて、利用者支援や援助を成り立たせるためには、まずどのような健康問題があるかをアセスメントすることから始められる。人の健康問題は、周産期とライフサイクル各期において、それぞれの特徴を踏まえて、個別の健康問題を把握し判断する。周産期における健康問題の把握では異常の判断に力点が置かれる。 |
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人の生活の営みに焦点をあて、個人の日常生活行動・環境条件を調べ、その人の健康状態の現状との関連において援助の必要性を判断する。このとき、客観的事実と利用者本人の気持ちや考えなど主観的事実を含めて調べる。また、個人の生活の営みは、家族生活と深くかかわっているので、家族行動も含めた援助の必要性を判断する。 次に、家族生活が地域とどう関わっているか、世帯単位でみたときの地域の健康課題はどうか、など地域生活共同体という視点から、援助の必要性やその方法を判断する。また、地域単位で、学校・労働生活の場における健康課題や援助の必要性、さらには高齢者や障害者など生活の場を施設においている人々の健康課題と援助の必要性と方法を判断する。人々がその課題を解決するために利用できる資源の状態を把握し、解決のための支援の方法を模索する。 学士課程の卒業時の到達目標としては、以上の考え方と意義、それぞれの方法を確実に理解した上で、個人と家族への援助の必要性の判断については、確実にできる段階が求められる。地域的広がりを持つ援助および学校や職場など機能集団単位での援助については、援助方法を含めた判断であるので、卒業時到達度としては熟練看護職の助言が必要な段階にとどめる。 |
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人の健康問題を看護の専門的技術によって解決に導くのは、看護の基本技術を適確に実施する能力である。各基本技術を看護行為として実践する過程では、利用者に対する深い理解と社会的責任に立脚した判断が含まれる。 看護技術を支える態度や行為の構成要素は、知識と判断、実施と評価、利用者への説明、安全、安楽確保、プライバシーの保護、指示確認・報告・記録、個別性への応用、家族相談・助言、である。これらの要素を念頭において、利用者個別へ基本技術を正しく適用する。また、技術施行の過程における危険性(リスク)の認識とリスクマネジメントを意識して行動する能力は重要で、事故を未然に防ぐように予測的に準備し、インシデントやアクシデントが発生したときには適切に敏速な対応が出来なければならない。 本能力の卒業時の到達度は、以下の事項が出来ることである。 利用者の看護上の問題を解決するために施行する看護基本技術は、その目的と必要性および期待される効果を理解しており、施行前に利用者に対して、看護計画に即してそれらを説明し、実施の了解を得る。技術の準備・施行・後始末の各段階は、基本的原則に基づいて実施する。基本技術の施行前、施行中、施行後を通して利用者の状態・反応を観察し、その結果を判断して実施方法を調整する。実施した基本技術の成果、影響を客観的データに基づいて評価すると同時に、利用者による主観的評価を聴取し、あわせて判断する。 基本技術を施行する際の、自己の技術の程度から、施行過程における危険性(リスク)を判断・予測する。そして、危険性(リスク)の判断・予測に基づいた安全確保対策を準備し、実行する。公衆衛生看護活動としての家庭訪問や在宅看護技術の施行では、看護職者の下で適切・安全に実施する。 |
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看護職者として取り組む健康保持増進と健康障害の予防にかかわる実践能力である。看護過程の展開を基本にして、健康増進・予防を目指してセルフケアの支援を個人の状況に応じた方法を選んで実施することである。ライフサイクル各期の健康増進・予防に関する知識を基盤に、対象となる人の生活行動・生活環境の客観的現状と当事者の問題意識などを調べ、自己管理能力の把握と判断から、その人の状態に適合した方法を選択・実施していく能力が問われる。 卒業時の到達度としては、いずれの細目においても、個人のセルフケアを支援する方法については、自立して可能な段階が求められる。支援の手段としては、個人別援助ばかりではなく、小集団による健康学習支援の方法があるが、支援の展開については自立して可能な段階を求める。看護の援助としては個人別方法と小集団単位の方法の組み合わせにより効果的方法を開発しながら実施するが、この看護固有の方法の開発については、その重要性が確実に理解されていること、実施については熟練看護職者の助言を得て出来る段階である。 |
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人間は精子と卵子の結合によって胎児となって母体で育まれ、誕生して新生児となる。人が生まれ育ち世代が引き継がれる過程の健康生活を支援する看護の働きには、次代を育むための援助能力を必要とする。本能力の卒業時の到達度は、以下の事項ができることである。 思春期にある人の発達課題と健康問題を理解・判断し、思春期の発達課題達成に向けた支援をする。妊産婦、胎児・新生児の健康状態を判断し、経過の予測と健康問題を把握する。妊娠・分娩・新生児期において、正常経過をたどるための健康問題を把握し、必要な援助を行う。安全で快適な妊娠・分娩経過をたどるために支援する。乳幼児の成長発達状態と健康問題に基づき、家族の健康生活上の問題を理解・判断する。乳幼児が健やかに成長発達するための家族支援を行う。乳幼児と家族を支える地域資源の活用方法を理解する。患児の健康課題を理解・判断する。患児の治療・療養生活を支える家族への支援の必要性を理解し、支援方法を考える。患児と家族を支える地域資源の活用方法を理解する。学校生活集団における健康問題を判断する。学校、保護者との連携のもとに学校での性教育について考える。学童・生徒の健康問題への支援方法を理解する。次代を育む家族の発達課題における健康問題を理解する。家族機能の危機(児童虐待や家庭内暴力等)の早期発見・支援における看護職の役割を理解し、活動方法について考える。性と生殖に関わる健康問題を理解する。看護職の下で、健康問題に対する相談や生活支援をする。必要な社会的資源の活用を支援する。 |
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慢性的疾患を持つ人は、疾病の発生から治療期を経て、自己の生活を病と共に生きる営みへと移行する。疾病の憎悪を予防し、長期にわたって健康生活を維持するためには医学的管理を受信行動を確実に実行し、自己の生活を豊かに営むセルフケアの確立が必要である。人が病を生活の一部として共存し、その人なりの健康生活を維持するのを支援するためには、慢性的疾病を持つ人への療養生活支援の能力が必要である。本能力の卒業時の到達度は、以下の事項が出来ることである。 生活習慣病など、慢性に経過する疾病の病態と日常生活維持との関係を理解する。病状ならびに治療の変化に対応したセルフケアへの学習を支援する。その人の生活支援とセルフケアの必要性を理解し、セルフケア確立に向けた学習指導をする。慢性病と共に労働する人の課題克服を支援する。また、慢性的疾病の医学的管理と受診行動を支援し、急性憎悪した人への対応を適切に行う。地域の人々の健康意識・セルフケアの援助ニーズの判断方法を理解する。行政サービスの枠組みでの母子・成人高齢者・精神保健福祉、感染病対策活動等における疾病・健康問題に応じた生活支援の必要性を判断する。地域における医師との連携方法を考える。療養生活にかかわる保健医療福祉福利制度の活用を支援する。慢性的疾病を持つ人の家族に対しては、ひとまとまりの家族として健康生活上の問題を判断し、援助する。在宅で慢性的疾病を持つ人の家族へは、看護職者の下に支援する。 |
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人が著しい健康障害を受けた場合は、必ず医学的治療を受け、健康回復を図る過程がある。このような人の健康回復を促進させる看護の働きは、治療過程・回復過程にある人を援助する能力によって行われる。 疾病や損傷などの健康障害に対する治療法は、手術療法、薬物療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子療法などであり、種類や状態に応じて利用者の選択により決定される。治療法を選択し決定する利用者への支援には、時に倫理的ジレンマを伴うことがあるので、倫理原則を理解し、対処する能力が必要とされる。健康障害の程度や治療法の違いによって、利用者の治療過程や回復過程は異なり、援助方法も異なってくる。順調な回復を促進するための援助は、各治療法に応じた専門知識と技術に基づいている。いかなる治療法が適用される場合でも、必ず副作用や合併症の発生に対する知識が必要であり、またそれらを予防したり、発生した場合には適切に対応する援助能力が必要である。治療・回復過程にある人の日常生活の充実は、回復を促進させる体力と意欲を維持する上で重要であり、利用者の安全と安楽の充足状態を見極めて必要な援助を行う能力、回復と共に自立した日常生活支援へと移行させる能力が期待されている。 本能力の卒業時の到達度は、以下の事項が出来ることである。 利用者が医師の説明に基づき選択した治療法を理解し、その治療法の効果と起こりうる副作用または合併症を判断し、個別の状況に基づいて発生について予測する。順調な回復を導く個別の看護計画を立案し、個別援助計画に基づき援助する。治療法に伴う生体反応を観察・測定し、結果から異常を判別する。治療・回復過程に沿った安全で安楽な日常生活を支援する。回復のための早期リハビリテーションを計画し、実施を援助し、また、回復過程に沿った促進を支援する。治療過程・回復過程にある人の家族に必要に応じて支援する。 |
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人が遭遇する健康の危機的状況には、生命の危機と心の危機の二通りがある。突然の健康危機は、誰にでも起こり得る非常事態である。この事態は、専門的判断と確かな技術によって、生命の危機が回避され、心の安寧が取り戻される。生命が危機状態であるときには、正確な知識と技術で心肺蘇生術を施行する能力が必要である。心が危機状態に陥っていると判断された場合には、直ちに専門家へ委譲するなどの対応能力が必要となる。 また、突然に健康を破綻させる事故には、熱傷、出血など事故の特性に対応した救急処置をいち早く行い、処置の遅延がもたらす生命の脅かしを防ぐ能力が必要となる。いかなる場合でも本人へ的確に状況を説明し、安心できる環境を提供できる能力も期待される。 また、常に家族も危機的状況により混乱・困惑、あるいは予期的悲嘆の状況であることを理解し支援する能力が求められる。 健康の危機的状況にある人を援助する能力は、一般的な知識・技術に加えて、経験に基づく判断力と技術力が必要とされるため、学士課程では基本的な事項を演習により習得するレベルになる。 本能力の卒業時の到達度は、以下の事項が状況においてできることをめざす。 意識及び呼吸循環の状態を観察・測定し、生命が危機的状態であることを理解・判断する。理解・判断した状態に応じて、心肺蘇生術(小児対応、成人対応)を、指導の下で実施する。周産期における産婦、胎児、新生児の危機的状態を理解し、危機状態への対応を指導の下で実施する。心理的状態をアセスメントし、心が危機状態であることを理解・判断する。心の危機状態への緊急対応を指導の下で実施する。精神症状が出現している人へ援助する。熱傷、出血など、事故の特性に対応した救急処置の基本技術を指導の下で実施する。事故の特性に応じた看護援助を指導の下で実施する。意識のある者へは、状況と救命・救急処置について説明する。意識のあるなしにかかわらず、声かけを適切に行い、落ち着いた態度で接する。健康の危機的状況にある人の家族へは、支援の必要性を理解し、できる支援を実施する。 |
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高齢期を生きる人は、加齢に伴う変化と蓄積された生活経験によって、個別性が多様である。高齢期は、人生の最終期として特有であり、高齢期にある人の健康生活の援助課題の判断と支援の能力にまとめられる。 本能力の卒業時の到達度は、以下の事項が出来ることである。 高齢期にある人の尊厳ある生活の保障として、個別の生き方を理解し、安全で尊厳ある生活が保てるように、働きかける。高齢者が望む生き方に沿い、必要とする学習を支援する。健康障害の予防として、個人の加齢に伴う生理的心理的社会的変化の状態を査定し、健康生活上の課題を把握して支援する。高齢期にある人に生じやすい事故を防ぐ行動をとる。行政サービスの枠組みでの高齢者保健福祉活動における健康生活の援助課題を判断し支援する。介護保険の給付対象外や虚弱である高齢者の介護予防に支援を必要とする人を判断し、支援する。治療・リハビリテーション過程への援助として、介護保険制度を理解し、介護保険サービス利用を支援する。治療を受ける高齢者へ適切に援助する。リハビリテーション過程にある高齢者へ安全性に主眼を置いた援助をする。痴呆など、生活機能障害の程度をアセスメントし、よりよく生活に適応するよう支援する。疾病・障害を持つ高齢者の自立を可能な限り維持し、社会生活を豊かにするためのリハビリテーション・支援を考える。高齢者を介護する家族のニーズを把握する。看護職者の下で、在宅で高齢者を介護する家族への支援を実施する、また、必要に応じて介護職への支援を行う。 |
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人生途上にあって死を迎えなければならなくなった人は、本人のみならず、近い関係にある多くの人を深い悲しみに陥らせる。とりわけ家族に与える影響は大きい。死に行く人が自己の人生を意味づけたり、希望を実現させようとするのを助けるためには、看護職者の死生観や強い意志が関係する。終末期にある人の日常生活は、自律の意思に基づく。 終末期にある人を援助する能力は、人間の生理的機能が不可逆的に変化する病態の理解と、人の死と死に行く人を愛する心の理解、そして、終末期の苦痛を除去あるいは緩和する看護技術の能力である。 人生の終末段階に至った人が、より充実した生を全うできるよう働きかける看護実践には、終末期にある人への援助能力が必要となる。本能力の卒業時の到達度は、以下の事項ができることである。尚、本能力は、全学生が必ずしも実践場面で体験学習できるとは限らないため、多くは演習レベルの達成をめざすこととなる。 終末期にある人の身体的苦痛の状態をアセスメントし、苦痛を除去あるいは緩和する援助を行う。人生の途上で死を迎える人のそばに寄り添い、苦悩を理解する。理解した苦悩を本人に伝え、苦悩の緩和に働きかける。基本的欲求の充足状況をアセスメントし、基本的欲求を充足する援助を行う。死に行く人(子供、成人、老人)の心理状況を把握し、望む生き方や希望の実現に向けた支援を、看護職者の下で行う。死に行く人の悲嘆反応(予期的悲嘆)を理解する。在宅で終末期を過ごす人への支援方法を理解する。子供、成人した子供、老親など、看取りをする家族の状況を理解し、状況に応じた支援を看護職者の下で行う。在宅で死に行く人を介護する家族の援助課題を理解し、支援を考える。在宅で死を看取るために必要な条件を理解し、家族への支援方法を考える。遺族への支援として、看取った家族の立場によって異なってくる遺族の心理を理解する、遺族が正常な悲嘆過程を経過するよう支援する方法を理解する。 |
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この実践能力は、過去には保健師のみに必要とされていたが、近年では看護職の社会的役割拡大とともに施設内看護にも不可欠な能力となった。医療・福祉施設の利用者のケアの充実には、欠くことのできない事項であり、看護職者は、働く場を問わず、利用者の生活の基盤である地域のヘルスケア資源の現状を判断し、利用者のケア充実のためのケア体制整備能力が求められる。 教育の考え方としては、看護の対象者を生活者として捉え、その人の本来持っている生活の営みに沿って支援をするという視点と、看護職者の在り方は、単にケア体制の連絡調整者ではなく、地域コミュニティづくりに寄与する専門職として住民ニーズに対応する姿を伝えることである。その中で、地方自治体の行政サービスに組み込まれた保健師の活動、医療・福祉施設の看護師の活動、訪問看護師や開業助産師の活動 などに求められるケア体制充実を取り上げる。 この項の能力には、 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 卒業時の到達度としては、各方法の意義を具体的な地域の例で確実に理解し、実施できる段階を求めるが、かかわる地域機関が多彩となるので、その部分については熟練看護職者の助言の下に自立して実施できることが求められる。 ![]() ![]() |
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治療とケアに関する利用者ニーズを充足するためのチームアプローチに関する看護実践能力である。変化する病状や生活要求を充足しつつ一定の方針で治療とケアを継続するためには、看護職同士の協働が必要であるし、治療とケアそのものが医師その他の職種との役割分担の上に成立しているために必要となる連携も含まれる。 利用者個々のニーズに応じて看護職及び他の各職種に求められている役割が認識できること、ニーズ充足に向けたチームワークの方法を描くことができること、その一員の看護職者として行動できること、などが求められる。この教育では、利用者ニーズ充足を目的に据えた協働・連携の在り方を伝えることである。 卒業時の到達目標としては、具体例での利用者ニーズ充足に向けた在り方、チーム活動の意義と役割分担が確実に捉えられている必要がある。看護職同士のチーム対応に求められる方法が実践できることばかりではなく、利用者との接点における看護職者の役割認識が重要で、利用者の状態や治療途上の気持ちの動きを捉えケアを充実させることに責任を持つ役割の遂行が求められる。この到達度は、チームメンバーとの連携が中心となるので、熟練看護職の指導の下に可能という段階でよい。むしろ、看護職者は、チームで実施中の治療やケアを利用者の立場で見直しをするという確実な姿勢を培う事が大切であり、これがサービスの充実の基盤となるという認識を培う必要がある。 保健・福祉の場においては、協働・連携が他の施設・機関に及ぶので、卒業時到達度は熟練看護職の指導の下に実施できる段階を求める。施設における活動についても、施設内他部門や施設外に及ぶ協働・連携については、前記のとおりの到達度とする。 この能力の説明は、医療サービス内に取り込まれた利用者への対応を中心に述べたが、保健・医療・福祉・介護サービスなど社会資源を利用していない時期での利用支援も含まれる。 |
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看護実践の充実のためには、自己の所属するサービス組織の枠組みとその組織の特性を十分把握して行動する事が大切である。そこで、まず保健・医療・福祉・介護サービスの提供組織について、制度的・経済的背景を含めた成り立ちを捉え、それらの下位システムとして機能する看護提供組織の位置づけ・構成・特性、現状と課題を理解する。看護提供組織にかかる法的・経済的背景、組織運営の現状と課題、看護やケアに関連した経済的・政策的課題を把握して。その課題を解決していくための視野を各自が持つ必要がある。看護職者は、ヘルスケア提供組織の中で利用者への看護提供方法の充実を図るだけではなく、自ら所属するサービス提供組織そのものの在り様を改革していく視野を培うという意味である。したがって、到達度としては、上記について理解している状態であることは当然であるが、具体的な利用者ニーズ充足の課題との関連において、問題解決の方法の提案を出し、議論が出来る状況を求める。そのためには、看護職者の社会的役割の拡大という側面の認識を高め、サービス提供主体者としての責務に向けた議論ができることが求められる。 |
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看護実践では、援助ニーズの判断、看護計画・活動計画作成、個々の援助方法の選択・決定、等作業が必須となるが、この各段階においては、自己で提起した課題意識に沿って文献・資料や先輩の実施例・先駆例等の情報を収集し、そこから有用な情報を取り出し、学び、実践方法を選択し自己の看護方法を決定して行く能力が必要となる。卒業時の到達度としては、自己のかかわる看護実践における課題意識の整理とその解決に向けた取り組みは自立して出来なくてはならない。また、自分の判断や考えを習熟度の高い看護職に説明して助言を得る事ができる段階を求める。 この実践能力は、すでに先輩看護師により看護計画が作成されている状況において学生がチームの一員としてかかわるときにも、同様に求める能力である。むしろ、そのような状況においてこそ、学生の立場で疑問を提示し、これまでの研究成果と照合して実践の検証や改善方法を模索する。そのことにより、学生は高度に自立した看護職像を描くことが出来るし、クリティカルシンキングの基本的な体験が出来る。 上記は、学生自身がかかわる看護実践の素材で研究成果や先駆例を活用する面を取り上げたが、実践の場で取り上げられている看護実践充実に向けた課題についての応用についても同様に求める能力である。 |
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4年間を通して、看護職として生涯にわたり専門性を深めていくための基礎能力を培うには、看護の本質、専門職としての成長の方向、看護の専門性を各自がどう捉えているかで動機付けが異なる。しかし、最も大切なのは、学生の側に看護実習などの看護実践体験を通して、看護事象を理解する基盤が出来ていることである。とくに、自己の看護実施過程と自分が絡んで形成した看護現象を客観的事実として把握できることと、具体的な看護実践について改善の課題の整理と課題解決に取り組む事ができることである。 看護は、常に相手との人間的かかわりの上に成り立っている営みであるから、これを事実として自分で捉え、表現することができることが専門性を深める第一歩と位置づける。看護現象を客観的に捉えるには、常に看護職自身の行動や意識を含めた様態を適格に自己評価することが求められる。さらに、目的とする技術提供に際しては、相手の人間的反応を含めて事実を評価しながら進めなくてはならない。これは、看護固有の営みであり、卒業時の到達度としては、すべて独立して実施できる段階が求められる。 次に、看護実践方法の改善を追究するときは、看護現象を客観的に表現できることが大前提となり、その上に研究活動が始められるので、到達度としては看護現象の客観的表現ができる段階を求める。 学士課程全体を通して社会の動向や保健・医療・福祉・介護・看護にかかわる社会の要請について学習するが、これらを受けて看護専門職に期待される社会的役割について、学生は自分の見解を持つ事が重要である。卒業時には、看護職の社会的責務という観点から、看護職者として責任を果たしていくための課題が明示できることを求める。 |