検討の趣旨
1)看護実践能力を取り上げた経緯と考え方
第一次検討会において、学士課程における看護学教育が、社会の期待に確実に応え、更なる発展を図るために解決しなければいけない課題を検討したところ、学士課程卒業生の看護実践能力向上の必要性が指摘された。第一次報告を受けて、各看護系大学では、臨地実習の充実等の報告書を参考にした改善が積極的に行われている。
多くの卒業生が、国家資格を有した看護職者として社会に出るという特質上、国民のニーズに応えられる看護職者を育成し輩出することは、看護系大学の大きな使命である。そのため、確かな看護実践能力を修得した人材育成への取り組みが継続されるように、本検討会においても引き続き看護実践能力に焦点を絞ることとする。
2)前検討会報告から提示された課題
第一次検討会からは、学士課程全体を視野に入れたコア・カリキュラムの検討、
学生の看護実践能力の質を保証するしくみづくりの検討、
実習受け入れ施設との連携の充実と教育の基盤づくり、等が今後の課題として提起された。
前検討会では、看護実践能力育成を学士課程における教育内容のコアを構成するひとつの重要な要素として、「看護実践を支える技術学習項目」を提示した。この提示は、主に看護専門科目における教育内容を念頭においたものである。本検討会では、引き続き看護実践能力育成に焦点を絞りながらも、教養科目、専門関連科目、専門科目といった学士課程全体を視野に入れて到達目標を検討する。すなわち、本報告書で示される看護実践能力の到達目標は、4年間の学士課程全体を通して育成される能力である。
本報告書では、卒業時の到達目標だけではなく、その評価方法についても言及する。到達目標が明示されることで、これを活用した評価方法の確立が可能な段階になる。評価方法の確立は、学士課程卒業生の看護実践能力の質を保証することにつながる。
3)本報告書の意義
看護学教育改革の推進
本報告では、学士課程における看護学教育で達成される看護実践能力の到達目標と、その基盤となる学士課程における看護学教育の特質、そして到達度評価に関する事柄が提示される。これを基に、各看護系大学は、それぞれが独自に進めている教育改革の方向性を確認でき、到達目標達成に向けて、教育課程の見直しや教育方法の工夫など、固有の課題を明確化することができる。
大学同士の連携・協働の体制整備
学士課程で要請される人材が、看護職に対する社会の要請に応えることができる人材であるためには、個々の大学の教育改革に加え、看護系大学全体の教育の質を向上させる必要がある。学士課程では、どのような専門性を持った人材の育成をめざしているのか、そのためにどのような教育を行っているのか、それをどのように保証していくのかということを、各大学の連携の元に明示することで、各大学の教育改革を推進することができる。
社会に対する説明責任の遂行
現在、看護職養成の大学化の趣旨や大学卒の看護職が増加している事実は社会的に認知されつつある。しかし、看護系大学がどのような教育を行い、どのような人材を輩出しているのか、その実態は十分に説明できていない。資質の高い看護職者の育成を求める社会の要請に対し、看護系大学がどのように応えようとしてどのような成果を上げているのかを示していく必要がある。
また看護学教育は、看護実践の場において看護サービスの利用者の理解と協力を得て行われるものである。今後、看護学教育が発展を続けていくためには、看護学教育が社会に受け入れられることが不可欠であり、そのためにも自責を社会に示し、評価を受けていくことが看護系大学の責務である。