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はじめに

   わが国の学士課程における看護学教育は、昭和27年(1952年)にスタートした。その後、大学数は遅々として増加しなかったが、平成4年(1993年)の「看護師等の人材確保の促進に関する法律」の施行、並びに「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」の策定を契機に、看護系大学は急激に増加しはじめた。平成15年度現在、看護系学士課程を有する大学数は107校となっている。
   学士課程での看護職者養成が進行している背景には、少子高齢社会の到来、高度医療や在宅医療の進展、介護・福祉分野の充実等、保健・医療・福祉をとりまく社会情勢の変化がある。また、思いやりと倫理感のあふれる安全な医療に対する国民のニーズも高まっている。看護系大学には、社会の要請に応えられる、確かな専門性と豊かな人間性を兼ね備えた資質の高い看護職者の育成が期待されている。各看護系大学は、学士課程における看護学教育のもつ社会的使命を十分認識した上で、真に国民のニーズを充足させる看護職者を社会に輩出できているかどうかを自問しながら、教育の質向上に取り組む必要がある。
   平成13年、看護系大学において、真に国民のニーズに応えられる看護職者が育成されるために、学士課程における看護学教育が発展する方策を探る目的で、第一次の看護学教育の在り方に関する検討会が行われた。ここでは、看護実践能力育成という観点から教育内容のコアが示され、併せて臨地実習指導体制や教育の質向上のための組織づくりが提言された。この報告は、各看護系大学の教育改革に活用されている。第二次となる本検討会では、第一次検討会で提示された課題及び第一次検討会報告を受けて顕在化した新たな課題をとりあげる。
   本検討会発足にあたり、あげられた調査研究事項は以下の通りである。
      1 看護学学士課程の到達目標の考え方
2 看護学教育における卒業時までに達成すべき看護実践能力の到達目標
3 到達目標達成度の評価方法
   各事項の検討は、日本看護系大学協議会の看護実践能力検討委員会に作成を依頼した原案を元に進められた。また、各看護系大学での教育改革の中核である教員が参加して行われた看護学教育ワークショップ(平成15年11月、文部科学省主催、千葉大学実施)において、2に関連したワークを行い、その成果を活用した。

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