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高等教育

基盤となるハード(ネットワーク)の整備  
II  マルチメディアを活用した高等教育の推進方策

   新しい高等教育システムを構築するためには、高等教育機関の全国的な高度情報通信ネットワークの基盤整備を行うとともに、教材の整備とそれを活用する取組の促進や、各高等教育機関の取組を支援する体制の整備などの施策を推進するとともに、新しい取組を可能にする制度の見直しが必要である。
  そこで、今回は、マルチメディアを活用した高等教育の推進方策のうち、当面、早急に講ずる必要があるものについて提言する。
  なお、マルチメディアを活用した推進方策については、今後も、技術の進展や、社会におけるメディアの普及の状況(例えば、放送と通信の融合化の進展や、地上系と衛星系のネットワークの整備の状況など)、さらに各高等教育機関における活用の取組の状況等を踏まえて、検討を続けることが必要である。 


1  基盤となるハード(ネットワーク)の整備

【提言】
  マルチメディアを活用した高等教育を推進するに当たっては、以下のような基盤的なハードの整備が重要である。こうした基盤整備は巨額の投資が必要であるため、私学助成を含めて国の支援が不可欠である。

  1. 通信衛星によるネットワークの充実 
  2. 学術情報ネットワークの充実 
  3. 学内LANの整備充実 
  4. 運用体制の確立 

(1)通信衛星によるネットワークの充実
  • 通信衛星の特徴 
    • 社会の各方面において、通信衛星を活用する取組が進んでおり、一部の高等教育機関では教育への活用に関する取組も始まっている。 
    • 衛星系ネットワークのメリットとしては、 
      • 画像等の大容量データの伝送が容易である 
      • 同じ内容の情報を、回線の増加なしに、一度に広い地域に伝送できる 
      • 送受信装置を設置すれば、へき地や離島も含めて、直ちに同じ条件で広域ネットワークに参加できる 
      • 設備工事が短期間で済み、運用コストも比較的低い、また、回線料が距離に依存しない 
    • などがあげられ、高等教育における遠隔教育の推進に適した特性を持っている。したがって、高等教育機関における教育のための情報基盤の整備は、通信衛星によるネットワークの充実を中心に行うことが望ましい。 
  • 通信衛星によるネットワークの整備・充実 
    • 各高等教育機関を結ぶ通信衛星によるネットワークを早急に構築し、新しい高等教育システムのための基盤整備を図ることが重要である。そのため、国立大学や高等専門学校等を中心に整備しつつあるスペース・コラボレーション・システム事業について、早急にすべての国立大学等に整備する必要がある。また、本事業の公私立大学等の参加を推進することも重要である。さらに、スペース・コラボレーション・システム事業による通信衛星回線と、学内LANとの自由な接続を可能とするための研究開発を進めることも必要である。 
    • スペース・コラボレーション・システム事業の他にも、いくつかの高等教育機関において、通信衛星の持つ可能性を研究するための先進的な取組が行われており、今後も、こうした取組が一層推進されることが期待される。 
    • また、大学附属病院における通信衛星ネットワークについては、最新の医療情報の提供や遠隔医療の実施、学生・研修医等の教育・研修に大きな効果が期待されることから、さらに充実に努める必要がある。 
    • なお、通信衛星の分野は、技術の進展が著しいことを踏まえ、絶えず技術の動向に留意しながら、高速化・大容量化を図ることも必要である。 

(2)学術情報ネットワークの充実
  • 学術情報ネットワークの状況 
    • 地上系のネットワークとしては、大学等における学術情報ネットワークの整備が進んでおり、学術研究に活用されている。近年は、国際的な接続や高度情報化に対応した高速化・大容量化が進められている。 
    • 学術情報ネットワークの、現在の接続状況は、以下の通りである。 
    (図)学術情報ネットワークの接続状況
  • 学術情報ネットワークの整備・充実 
    • 前記(1)に述べたように、教育のためのネットワークについては、通信衛星の活用を中心とするが、一方で、光ファイバーの整備等により、地上系のネットワークの活用の可能性も高まっている。そこで、学術情報ネットワークの教育への活用の可能性については、高速化・大容量化を含めて検討することが望まれる。 
    • 国立のすべての短期大学と高等専門学校について、学術情報ネットワークへの接続を早期に実現することが必要である。また、公私立の高等教育機関についても学術情報ネットワークへの接続の一層の充実が期待される。なお、各高等教育機関が、学術情報ネットワークに接続を希望する場合における、技術的支援等が求められる。 

(3)学内LANの整備充実
  • 学内LANの状況 
    • 学内LANは、各高等教育機関における高度情報化の基盤となるものであり、すべての国立大学・高等専門学校に整備されたところである。しかしながら、私立大学等においては、整備が不十分な状況が見られる。 
    (グラフ)私学における学内LANの整備の状況
  • 学内LANの整備・充実 
    • このため、未整備の高等教育機関については、早急に整備に努めるとともに、既に整備しているところについても、段階的に高速化・大容量化を推進することが必要である。 
    • また、教員、学生が学内LANに容易に接続するためのコンピュータや情報コンセントの設置を進めることが必要である。 

(4)運用体制の確立
  • 各高等教育機関における運用体制 
    • 各高等教育機関においては、全学的にマルチメディアを活用した取組が行われるよう、必要に応じて、学部を超えた全学的な委員会を設けるなど、組織体制を整備することが重要である。 
      (グラフ)新しいメディアの活用に関する全学委員会の設置
    • ネットワークの整備に当たっては、ハードの導入だけでなく、その後の運用体制を整備することが必要である。現在はボランティアに頼るところが多いが、ネットワークを運営する組織・人員の充実、管理者の養成・確保により、本格的な体制の整備が必要である。 
  • 通信料金の確保等 
    • 今後、マルチメディアを活用した教育を推進する上で、我が国の通信料金が高いことが、障害になると考えられる。特に教育分野等の公共性の高いサービスについては、通信回線の利用のための負担の軽減措置が講じられることが望ましい。 
    • ネットワークの運用に当たっては、情報利用料金や通信料金の利用者負担の在り方についても、今後検討する必要がある。 
  • 地方公共団体や産業界等との連携 
    • 情報化を円滑かつ着実に進めていくためには、学内外の高等教育関係者や地方公共団体との連携協力を進めるとともに、産学官一体となった取組が必要である。 

(高等教育局  企画課)

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