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高等教育

活用の必要性と必要な視点  
4  活用の必要性と必要な視点

  マルチメディアの活用により、高等教育を、多様な学習者に対して広く開かれたものにするとともに、柔軟な学習形態の実施を可能にすべきである(オープンかつフレキシブルな新しい高等教育システムの構築)。
  そのため、各高等教育機関におけるネットワーク等の情報基盤の整備を図るとともに、各高等教育機関における取組への支援体制の整備や、制度の見直しなどを早急に行う必要がある。

  • 活用の必要性 
    • 3で指摘したように、マルチメディアの活用は、高等教育を、多様な学習者に対して広く開かれたものにするとともに、柔軟な学習形態の実施を可能にする。したがって、マルチメディアを活用することにより、オープンかつフレキシブルな新しい高等教育システムを構築し、社会の変化に対応しうる創造性豊かな人材の養成に努めるべきである。 
    • 我が国の高等教育の全体的な状況は、前述した国内の事例の通り、一部において先進的な取組が見られ、その動きが徐々に広がりつつある。しかしながら、欧米やアジアの先進的な取組を行っている国々と比べると、全体的・体系的な取組が遅れている。 
    • また、社会全体の高度情報化は、ますます進展し、例えば、インターネットは、今後、技術の進展やネットワークの高速化、ネットワーク上で提供される内容の充実等により、これまで以上に普及していくことが予想される。こうした状況は、教員や学生の教育研究活動にも、大きな影響を及ぼすことになる。 
    • そのため、各高等教育機関におけるネットワーク等の情報基盤の整備を図るとともに、各高等教育機関における取組への支援体制の整備や、制度の見直しなどを早急に行う必要がある。 
  • 活用を進めるに当たって必要な視点 
    • 教育に限らず、多くの分野において、「技術が進展したので、それをどう利用するか」という観点から、マルチメディアの活用が検討されることが多い。もちろん、最新の技術動向には常に注目していく必要があるが、重要なことは「学習者の視点に立って、充実した教育活動を行うにはどうすべきか」であることに留意すべきである。 
    • したがって、各高等教育関係者においては、活用に際して、単に、ハードの整備だけに関心を持つのではなく、「どういう分野に、どのように取り入れていけば、教育の充実に資するか」という視点が重要である。その際、 
      • 大学学部・大学院・短期大学・高等専門学校・通信教育等のそれぞれの分野において、どう使いこなしていくか、 
      • 教育・研究・キャンパスライフ・学内の管理運営、等の各分野において、どう使いこなしていくか、 
      • オン・キャンパスと、ネットワークを活用したオフ・キャンパスの適切な組合せはどうあるべきか、 
    • 等の考慮が重要である。 
    • また、高等教育におけるマルチメディアの活用形態としては、将来的には、ヴァーチャル・ユニバーシティのようなネットワーク上でのみ授業を行うケースもありうるなど、多様な形態が想定される。しかしながら、各高等教育機関が、マルチメディアをどう活用していくかについては、一律な方法をあてはめるのではなく、それぞれの組織や学生の状況等に応じて、必要と考える手法とアプローチが尊重されるべきである。 
  • 支援体制の必要性について 
    • 各高等教育機関においては、各校の特色ある教育活動に適した教材やデータベースの整備充実が期待される。さらに、メディアを使った教授方法の研究開発や、教員研修等も必要であるが、我が国の高等教育は、こうした点が弱い  (研修の状況についてグラフ参照) 。そこで、各高等教育機関の自主性に任せるだけではなく、そうした取組を積極的に支援するための体制の整備も重要である。 
    • なお、欧米の高等教育機関においては、既に、マルチメディアを高度に活用しうる人材が多数育っているため、各高等教育機関に、マルチメディアの活用を支援するための中心的なセンターが設けられていることが多い。 
    • また、ネットワークや機材の保守管理・運用には、かなりのマンパワーが必要であり、運用体制の整備も重要である。 
    • マルチメディアの活用が持続的に行われるためには、教員や学習者のインセンティブを高める必要がある。そこで、教員に関しては、マルチメディアの活用が教員の業績評価として組織的に行われることが望まれる。また、学生に関しては、単位認定を制度的に位置づけることが必要である。 
  • 情報倫理について 
    • 一人一人が情報の発信者となる高度情報通信社会においては、プライバシーの保護や著作権に対する正しい認識、コンピュータ・セキュリティーの必要性に対する正しい理解、情報の独占による弊害などの情報に関する倫理観を各人が身に付けることが必要である。 
    • とりわけ、各高等教育機関において、映像・音声を伴う教材を作成・活用する場合など、メディアを使った教育を円滑に進めるに当たっては、著作権の取扱いが重要な課題になってくる。 
    • このため、各高等教育機関においては、著作権に関する研修会の開催、情報倫理教育に関する調査研究、教育ソフトの開発に当たってのガイドラインやハンドブックの作成等の方法により、情報倫理の普及を図ることが重要である。 
    • また、教育用ソフトの著作権に関し、円滑な権利処理ルール作りと管理の在り方についての調査研究も重要な課題である。 
  • 人材養成について 
    • なお、高等教育とマルチメディアについては、「マルチメディアの高等教育への活用」と同時に、「マルチメディアの進展に対応した人材の養成」も大きな課題である。このうち、専門的な資質・能力を有する人材の養成については、多様な種類の人材を必要とするが、近年、ネットワーク技術者の養成に加えて、コンピュータ活用能力と映像制作能力を兼ね備えた人材養成の重要性がしばしば指摘されている。 
    • 例えば、アメリカにおいては、大学の映画学部等において、マルチメディアに関する実践的な芸術系教育を行うところが多く見られており、現在のアメリカで、コンピュータ産業、ソフトウエア産業、映像産業等が盛んな要因の一つになっている。 
    • 一方、我が国においては、こうした分野の人材養成は、民間企業や専修学校等の他に、一部の大学等においても行われているが、マルチメディア社会に向けて、大学等における、マルチメディアに関する人材養成の在り方について検討する必要がある。 

(高等教育局  企画課)

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