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資料5−5

加工・使用等に係る賠償措置額の少額特例の見直しについて(案)

1.少額特例額の見直しの観点

 原賠法により原子力事業者が講じなければならない損害賠償措置は、原子炉の運転については現行600億円の賠償措置額が法定されているほか、政令においては、原子炉の運転等の種類に応じ、低額の賠償措置額の特例(120億円又は20億円)が規定されている。特例額の見直しの経緯は別紙1を参照。
 現行の特例額は、「被害者の保護と原子力事業の健全な発達」という法目的にも照らし、原子力事業者の行為の態様、取り扱われる核燃料物質の特性等を考慮しつつ、法制度としての簡潔性にも配慮して2区分が設けられている。
 今回の原賠法改正により法定措置額を600億円から1,200億円まで引き上げることに伴っては、対象行為の相対的リスクやJCO臨界事故の被害規模・実際の賠償総額、諸外国における少額特例に関する立法の動向等を踏まえて、見直しを行うことが適切であると考えられる。

2.少額特例額の見直し

 1.の観点で見直した結果、少額特例額の在り方については、2区分の特例額を設けることは維持しつつ、法定措置額が現行の賠償措置額から2倍に引き上げられるのに合わせて、現行の特例額の2倍の額へ引き上げることが妥当であると考えられる。改定後の特例額の全体状況は別紙1を参照。

特例額の改定:120億円から240億円、20億円から40億円

(1)対象行為の相対的リスク

 現行600億円の法定措置額については、今回の原賠法改正により1,200億円に引き上げられ、現在の2倍の額となる。
  現行の特例額の2区分は、行為の態様や取り扱われる核燃料物質の特性・数量等を勘案し、損害賠償措置の対象となる事業者の行為の相対的リスクに応じて設定されたものであり、前回の改定後もその状況に変更はない。
 このため、今回の見直しにおいてもこれを維持することが合理的であり、事業者間における保険料・補償料の費用負担についての公平性を保つ観点から、法定措置額の引上げの割合と同じ割合で引き上げることが妥当であると考えられる。
 なお、前回の改定時(平成12年)においても、法定措置額の300億円から600億円への引上げに合わせ、2区分の特例額をそれぞれ2倍に引き上げている。

(2)JCO臨界事故を踏まえた対応

 JCO臨界事故の最終的な賠償請求件数は約8,000件、賠償総額は約150億円とされている。
 事故当時(平成11年9月)における加工事業に係る特例額は、プルトニウムの加工のみが60億円とされ、その他の加工はすべて10億円とされていたが、平成12年の改正により、濃縮ウランの加工が60億円の特例額の対象行為に加えられるとともに、特例額がそれぞれ2倍に引き上げられている。
 今回の見直しにより特例額を2倍に引き上げる場合、濃縮ウランの加工に係る特例額は240億円となり、万が一JCO臨界事故と同規模の損害が発生した場合でも賠償措置額内での賠償の実施が可能である。

(3)諸外国の動向との比較

 欧州の主要な原子力国における少額措置の状況については、国際条約が認める特例額の下限を勘案しつつ、それぞれの国の事情に応じた額が設定されている。各国の立法状況の詳細は別紙2を参照。
 今回の見直しにより特例額を2倍に引き上げる場合、国際条約に定められる特例額の下限に対しては、一部改正パリ条約を満たさないレベルであるが、今後我が国が国際条約の締約を検討する場合に念頭に置くのはCSCが現実的であることを踏まえると、十分に充足しており問題はないと考えられる。

【各国際条約の特例額】

  • 改正パリ条約:7,000万ユーロ(約115億円)
  • 改正ウィーン条約:500万SDR(特別引出権)(約8.5億円)
  • CSC:500万SDR(特別引出権)(約8.5億円)
  •  CSCは特例額の設定を認める一方、法定措置額(3億SDR(特別引出権))との差額について公的資金が利用可能であることの確保を義務付けており、我が国の原子力損害賠償制度との整合性を検討する必要がある。この点は、特例額の在り方と別に検討すべきであり、今後条約の締約が現実的な課題となった場合に改めて検討すべきである。