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1.背景

 近年、海外では2004年12月に発生したインドネシア共和国スマトラ沖大地震及びインド洋津波や2006年2月に発生したフィリピン共和国レイテ島の地すべり、国内では2004年10月に発生した新潟県中越地震など、大規模自然災害が国内外で頻発しており、国民の安全・安心の確保の観点から、広域の環境監視やリアルタイムでの災害の被害状況把握等の重要性は益々高まっている状況にある。

 現在のところ、我が国の防災関連府省庁や地方公共団体関係者は、航空機や地上系設備による観測データ等からの情報を用い、大規模自然災害の発生直後の救助活動や、その後の救援活動等を行っている。しかし、地球観測衛星が得意とする広域的な被害状況の把握や、夜間・悪天候時の観測などが実現できれば、観測データ等に基づく救助活動や救援活動の実効性はより一層高まることから、災害監視分野における地球観測衛星の活躍が期待されているところである。

 一方、世界的な地球観測に関する取組みとしては、2004年4月に東京で開催された第2回地球観測サミットにおいて、GEOSS(複数システムからなる全球地球観測システム)構築のための10年実施計画の枠組みが合意され、2005年2月にブリュッセルで開催された第3回地球観測サミットではGEOSS10年実施計画が承認されるとともに、我が国の基本姿勢として、「災害」を含む3分野に、先端的な科学技術を駆使した、より高度で有益な観測情報の取得と提供、開発途上国の能力開発に貢献していく旨が表明された。このような国際的な動向を踏まえ、我が国においては、総合科学技術会議が2004年12月に「地球観測の推進戦略」を取りまとめ、我が国が地球観測に取り組むに際して基本とすべき考え方、戦略的に取り組む重点課題等を明らかにするとともに、文部科学省の宇宙開発委員会は、これらを踏まえ、地球観測特別部会を設置し、我が国における地球観測衛星の開発・利用の今後のあり方に関して調査審議を進め、2005年6月に同部会報告書として取りまとめた。当該報告書においては、災害監視分野の衛星について「今後利用者の具体的なニーズを詳細に把握し、それを基礎として衛星・センサの構成や仕様といった観測システムの内容を早急に具体化し、次期災害監視衛星を開発すべきである」としている。

 また、2006年1月には、災害状況の把握を目的の一つとした我が国独自の地球観測衛星として、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)が打ち上げられ、2006年10月の本格運用に向け準備を進めている。

 さらに、2006年3月に閣議決定された第3期科学技術基本計画に基づいて総合科学技術会議が取りまとめた分野別推進戦略においては、「海洋地球観測探査システム」が国家基幹技術の一つとして位置づけられ、同システムの中でも、「だいち」の活用を主眼においた災害監視分野への貢献が位置づけられている。

 以上のような諸状況を踏まえ、内閣府政策統括官(防災担当)付 地震・火山対策担当参事官付及び文部科学省研究開発局宇宙開発利用課は、防災関連の各府省庁、機関、有識者等の協力を得て、「防災のための地球観測衛星等の利用に関する検討会」を2006年2月から同年8月まで、計6回にわたり開催してきた。

 本検討会においては、「だいち」以降の防災のための次期地球観測衛星システム構築に向けた基本方針と「だいち」を用いた防災のための利用実証実験計画(以下「「だいち」による防災利用実証実験計画」という。)について、検討を行ってきたところであり、本報告書は当該検討結果を取りまとめたものである。

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