令和6年5月2日(木曜日)13時~14時30分
WEB会議により開催
文部科学省より、資料1に基づき本有識者懇談会の設置趣旨等について、また、資料2に基づき戦略的調査分析機能に関する現状と課題について説明があった。続いて、科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)より、資料3に基づき戦略的調査分析機能に関する海外動向について説明があった。その後、質疑応答がなされた。委員からの主な意見は以下のとおり。
・例えばカーボンニュートラル達成に向けた取組を一例にとっても、様々な技術を俯瞰しマッピングして、どういう軸立てにすべきかを考えなければならない。
・研究開発から社会実装に至るまでの政策・事業について、省庁間で協調できていないのではないか。産業界と政府も含め協働できる大きな枠組みを考えつつ、全体像を俯瞰して考える戦略策定ユニットが必要である。
・研究インテリジェンスには、科学計量学やAIデータサイエンスの技法群を用いた情報抽出と対象領域のドメイン知識の掛け合わせが必要。日本では、前者を支える科学計量学分野の研究者や、詳しいエンジニア等の人材が少ないことが課題。Scientometrics誌、Journal of Infometrics誌といった主要ジャーナルへの日本人の論文掲載は少ないことからも、人材不足が見てとれる。
・人材を増やし世界水準に追いつくため、例えば、大規模文献データの共同利用を可能とする基盤整備などを通じて、AIやデータサイエンスの領域から優れた人を呼びこむなど、この分野に研究人材が流れ込んでくるような仕掛けづくりが必要である。
・技術の進展・定着の度合いによって、政策プロセスで必要とされるツール・プロセスは異なる。現状ではFA(ファンディングエージェンシー)での将来的な技術予測に関する調査や取組と、それらが社会導入される際の監視・管理や推進を行う機関での検討がうまくつながっていない。技術が定着した社会を見据えながら、いかに萌芽的な段階から政策を全体俯瞰して展開していけるか、という予測的・先見的なガバナンス(Anticipatory Governance)が定着すると良い。政策プロセスのツールの中でも、特に、技術の社会影響を検討する「テクノロジー・アセスメント」は、第6期科学技術・イノベーション基本計画では記載がなくなってしまったが、重要である。
・トランジションマネジメントの観点から多層的に見たときに、全体のトレンド・ランドスケープなどの「マクロレベル」と、社会や科学にかかわるレジームなどの「メゾ(中間)レベル」と、個々の研究開発が行われる「ニッチレベル」は相互作用しており、特にランドスケープレベルの動きは科学技術政策全体に影響を与えることから、そうしたことも意識しながら日々の活動・政策形成がなされる必要がある。国際的には地政学的な緊張が高まり、色々なイシューが安全保障に結びついてきている中、共通の「価値」をいかに科学技術・イノベーション政策に埋め込むのか、ということもOECD等で議論されている。
・重要技術をどのように特定できるかという議論が中心になっているが、重要技術を特定した後、どのようにファンディングして、それがうまくいったのか、ということをエビデンスに基づき評価する仕組みが必要である。政策・施策の効果把握や、改善のためのツール、システム形成もインテリジェンスとして組み入れるべき。
・国だけでなく、大学、産業界など様々なセクターが戦略的調査分析機能・情報を保持・収集しているので、それらをプラットフォームとしてつなぐことで、分散型の戦略的調査分析機能を得ることができる。
・重要技術の特定だけでなく、システムやアクターの議論も必要である。
・人材の不足も課題である。短期的にプロジェクトファンディングを実施しても博士や若手人材は育たない。また、キャリアパスが明確でないと博士課程の学生が来ないので、こうしたインテリジェンスについて研究した学生の就職先をどのように確保するのかも考える必要がある。
・日本のアカデミアは変化に弱い。先端的な技術を特定できたとして、それに対応した人材育成ができるのか。一方で、「変化が遅い」日本だからこそ勝てる領域とは何なのか、ということも、先端的な技術の特定と併せて考えていく必要があるのではないか。
・アカデミアからスタートアップに移る人が増えている。そうした中で、戦略的調査分析を行う際に、公的資金のプロポーザルやパブリケーションだけを見ているのでは、先端的な領域を見誤る可能性もある。産業も含めて分析を行う必要があるのではないか。
・科学技術・イノベーションの新しい領域のコミュニティ形成については、米国では非営利組織に資金や情報が集まる例もある。行政や企業よりもそうしたモデルの方が実現可能性が高いのではないか。
・戦略的調査分析をするだけではなく、組織プロトコルとセットでないと、調査分析の結果は活用されていかない。また、戦略的調査分析に関する狭義の専門性(データ分析など)のみならず、戦略的調査分析結果の文脈を理解する幅広い専門性が求められる。
科学技術・学術政策局研究開発戦略課