戦略的調査分析機能に関する有識者懇談会(第2回)議事要旨

1.日時

令和6年6月17日(月曜日)13時30分~15時00分

2.場所

WEB会議により開催

3.議題

  1. 戦略的調査分析機能に関する国内外の取組状況等について
  2. 戦略的調査分析機能に関する論点案について
  3. 意見交換
  4. その他

4.議事要旨

 戦略的調査分析機能に関する国内外の取組状況等について、4名の委員(梶川委員、松尾委員、古関委員、和佐田委員)から話題提供が行われ、また文部科学省から第1回での意見を踏まえた論点案について説明があった後、意見交換がなされた。委員からの主な意見は以下のとおり。

・戦略的調査分析の研究者層については、中国や米国より、欧州や韓国の方が厚いが、それは、前者の国に比して、後者の国は投資分野の判断等に戦略的に取り組む必要があるためと考えられる。このような中、国際競争力の低下が指摘されている日本において、戦略的な科学技術投資の重要性はより高まっている。

・戦略的調査分析とは、「信頼できる記述的な調査結果に基づき、事前に設定した戦略目標の再検討や達成手段の探索も含めつつ、設定した手段やプロセスの妥当性を傍証も用いて確認しながら、戦略目標の実現可能性や投資に対する成果の水準を最大限高めていく行為」と定義でき、戦略的調査分析(Process)を機能させるための要件として、個人レベル、組織レベル、システムレベルの要件がある。

・個人レベルで求められる要件として、1.データやアルゴリズムの専門性のみならず、2.分析の対象となる学術領域の専門性(ドメイン知識)、3.調査分析結果を意思決定につなげるためのソリューション設計能力の3つが、また、組織レベルで求められる要件として、1.Intelligent Circle(意思決定者からの要求に基づいて調査分析がなされることが重要ということ)、2.Absorptive Capacity(優れた戦略立案やデータ分析を行ったとしても、事業部の力が強い場合には受け入れられないことがあることから、部局レベルでの吸収力が重要ということ)の2つが挙げられる。さらに、システムレベルの要件としては、イノベーションシステムに必要な7つの機能を戦略的調査分析にも活用できると考えられる。新たな分析手法・アルゴリズムの研究開発(サプライサイド)、戦略的調査分析機能の調達(ディマンドサイド)が上手く組み合わされることにより、分析・設計、提案能力を備えた強い個人・組織、コミュニティが創成されていく。

・戦略的調査分析に関する新規事業、または、現行プログラムを通じて、高いレベルで戦略的調査分析機能を備えた個人を実践的に育成することが重要。

・異分野融合がブレークスルーを起こしやすく、セレンディピティアスな発見が異分野融合のきっかけになることが多い。そして異分野融合が起こると、人材育成が必要になるので10年程度は必要になる。

・最適な未来の実現のためには、まずは多様性を確保し、それらをどのように組み合わせていくかが重要。多様性の確保は、個人の研究者ではなく、国や組織がやることである。また、それぞれの研究者が自律的な競争力を維持できる必要があり、そのためには、研究基盤や研究資源といったインフラがしっかりしているか、研究がどれほどビジブルか、また、雇用の安定も重要な要素である。そして、5~10年の目標設定をしながらファンディングをし、異分野をどのように組み合わせ、どのような選択圧を与えるか、ボトムアップとトップダウンをどのように組み合わせられるかが大事である。異分野融合を促すための仕組みが大事。
 
・スタートアップの資金調達の種類とタイミングとしては、シード段階、アーリー段階ではJSTやNEDO等からの公的な支援やプロジェクトベースの支援があるものの、アーリー以降はベンチャーキャピタル等からの出資や金融機関の融資によることになり、また、リスクマネーが足りないといったこともステージが進めば進むほど大きな課題になってくるため、関係機関間の連携が必要である。

・戦略的調査分析機能の観点からは、調査分析段階から、社会実装までのプロセスを想定した知見をいかにフィードバックできるかが重要であり、そのためには検討の段階から専門人材をアサインするということも重要である。
 
・戦略目標を立てた後に、組織の中でその知識を活用しようとしたら、バイアスがかかってしまう、もしくは劣化してしまう原因については、日本でどのように起きているのか調査する必要があるのではないか。

・米国では因果関係の厳密性を重視することから、rigidな論文にしやすい分野で論文数が増え、テニュア教員も増えている一方で、アントレプレナーシップやデザイン等の分野ではテニュアの教員がほとんどいないといった状況になりつつあるなど、世界の大学のシステムでは必要な研究が行われていない可能性がある。アカデミアという観点からは、日本では今の人事の仕組みに合った、strategic intelligenceを活用できる研究開発体制を作っていく必要があるのではないか。
 
・調査分析に当たって、追加の条件があるのではないか。1つは「決断する意思が明確な者」からのリクエストに基づくインプットであること。もう1つは、完全な事後のインプットではなく、戦略的な変化が可能なタイミングでのインプットであること。

・大きな決断をする際には、深い(細くとがっている)専門性と、それらを関連づける能力が必要である。

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科学技術・学術政策局研究開発戦略課

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