科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」アドバイザリー委員会(第22回) 議事録

1.日時

令和7年3月6日(木曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省 15 階 科学技術・学術政策局 会議室1 及びWeb会議形式で開催

3.議題

  1. 共進化実現プログラム第3フェーズについて
  2. SciREX事業最終年度における活動について
  3. SciREX事業終了後に維持発展する機能と検討の進め方について【非公開】
  4. その他【非公開】

4.出席者

委員

   有信主査、伊地知委員、奥和田委員、田辺委員、長岡委員、吉本委員

文部科学省

   藤原研究開発戦略課長、根津研究開発戦略課企画官

5.議事録

【有信主査】お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、ただいまより第22回の科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」のアドバイザリー委員会、22回目のアドバイザリー委員会を開催いたします。お忙しい中、御出席いただき、誠にありがとうございます。
それでは、事務局から資料の確認と出席者の紹介をお願いします。

【根津企画官】事務局でございます。政策科学推進室長の根津でございます。
まず、資料の確認から行います。議事次第に資料の一覧を載せておりますが、配付資料は資料1から3と、あと参考資料が2つの、合わせて5つの資料を本日準備してございます。対面参加の委員の皆様におかれましては、机上に資料を配付させていただいてございます。また、オンライン参加の委員の皆様におかれましては、本日、午前中にメールにて送付させていただいております。出席者の皆様方におかれましては、御確認をお願いいたします。不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。よろしゅうございましょうか。
続きまして、委員の出欠についてでございます。本日、狩野委員が御欠席と伺っております。また、小寺委員、田辺委員、吉本委員がオンラインで今御参加をいただいてございます。また、小林委員が30分ほど遅れてオンラインでの御参加でございますけれども、声が出づらいということで、もし御意見があったらチャット機能でお知らせいただけるということをお伺いしてございます。小林委員がチャットで御意見された際は、事務局にて代読をさせていただくという対応をとらせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
以上でございます。

【有信主査】どうもありがとうございました。
それでは、本日の委員会につきまして、議題3以降については、調整中の内容を含みますので非公開議題とさせていただきます。この件はよろしいでしょうか。それでは、そのように進めさせていただきます。傍聴者の皆様は、第2議題の終了後に事務局のアナウンスに従って御退出いただければと思います。議題の1、2の内容につきましては、委員会終了後に委員の皆様に確認の上で議事録を公開いたします。ここまでの説明で何か御不明の点等ありましたら、御指摘いただければと思いますが、よろしいですかね。
それでは、議題の1で共進化実現プログラム第IIIフェーズについてということで審議に入りたいと思いますが、事務局から資料に基づいて共進化実現プログラム第IIIフェーズについての報告をお願いします。よろしくお願いします。

【根津企画官】はい。承知いたしました。事務局から資料1について御説明をさせていただきます。1ページ目、最初に予算の関係の御報告でございます。SciREX事業につきましては、来年度が最終年度ということでございますけれども、概算要求時は前年度と同額の予算を要求してございましたが、年末に取りまとめられた政府予算案につきましては、前年度と同額の4.5億円ということで盛り込んでございます。ただ、御承知のとおり、国会の予算委員会の審議の状況が例年とは異なる状況でございまして、衆議院もかなり難産ではございましたが、通過をしてございますが、その予算の修正の過程では、特にこの事業は影響を受けていないという状況でございます。参議院でまだまだ御審議が続くと思いますので、現時点ではということで御覧いただければと思いますが、繰り返しになりますけれども、政府の予算案としては前年同額で盛り込んでいるということでございます。
続きまして、次のページでございます。共進化実現プログラム第IIIフェーズの件でございますけれども、2ページ目、御覧いただければと思いますが、既に委員の皆様、御案内のとおり、今、第IIIフェーズの共進化実現プロジェクトとしては1から6の6つの課題を進めているところでございます。3ページ目を御覧いただければと思います。昨年11月にアドバイザリーの皆様方にも御参加いただいて、中間成果報告会と交流会を実施したところです。11月15日と18日、22日の3回に分けて実施させていただいてございます。その際は、お忙しいところ、アドバイザリー委員の皆様にも御参加いただきまして、誠にありがとうございました。
4ページ目、御覧いただければと思いますけれども、その中間成果報告会でアドバイザリー委員の皆様からも御助言をいただいたところでございますが、各プロジェクトにおきまして、優れた活動については横展開をしていくということを目的に実施したところでございます。実際、各グループからは有用な取組事例が見受けられたということで、4ページ目に事務局のほうで簡単にまとめさせていただいてございます。まず1つ目のポツでございますけれども、行政官を含めたワークショップを実施して、縦割り的になりがちな課室を横断した取組を進めているという点。また、2点目でございますが、研究者と行政官が協働でリサーチクエスチョンを練り直すなど常に目的意識を更新しながら進めているというプロジェクトもございました。
さらに3点目、行政官と対外的な発表会を都度企画して、成果を積極的に発信するということで、様々なカウンターパートから当事者意識を醸成してもらいながら進めているといった課題もございましたし、4つ目、学会や論文発表について、共著者として行政官を加えているという点は、これはほかのやっていないプログラムからも、ぜひこれはやりたいというお声をいただいたと承知してございます。さらに5つ目につきまして、研究で得た知見から取り得る政策の方向性についてフレームワークを研究者側から行政側に提示して、例えば審議会とかでの議論にそれを活用しているというような事例もございましたし、最後のポツ、政府の審議会でそういったところを、研究内容の中間報告を行うといった課題も見受けられたところでございます。
続いて5ページ目を御覧いただければと思います。中間成果、今回、交流会で出たアドバイザリー委員からいただいた主な意見についても、5ページ目に事務局のほうで雑駁ではございますが、まとめさせていただいてございます。1つ目のポツでございますけれども、研究の中で明らかにしたいことを行政官側と研究者側でさらに議論を深めていただきたいという点。2点目でございますが、特に特定の課題については、複数の課室が参加しているという課題もありましたけれども、そういった課室横断的な政策研究であることを生かして出口を見据えるというのがよいのではないかという点。また、3つ目、行政官については、ただ成果を活用するという視点だけではなくて、自身の立場を超えて、ある意味、ライフワーク的に続けていくような、研究対象として取り組むような視点を取り組むとよいのではないかという御助言をいただいたところです。
また、4つ目、新しい研究者をやはり政策のための科学という中に含めていくというような取組をこの共進化プロジェクトの中でも実施していくことが必要ではないかという点。また、5つ目に、重層的に様々なフレームワークで省庁が横断しているということは非常に有益ではないかという点。また、6つ目、行政官の人事異動の弊害が大分以前よりは緩和されたように見受けられるけれども、共進化は人だけが進化するのではなくて、組織もきちんと変わっていくということを意識したほうがいいだろうという点。また、最後のポツとして、共進化プロジェクトで異分野の研究者とのコラボレーションが推進されたというのは、非常に重要な成果ではないかという御意見を頂戴したところでございます。
続いて6ページ目を御覧いただければと思います。共進化実現プログラムの今後のスケジュールの案でございます。今は下のスケジュールのイメージというところのR5、R6、R7と3段書いてございますが、現在はR6の、まさに3月に入ったところということで、3月中には中間報告書を各課題から提出をいただく予定でございますけれども、R7年度につきましては、5月から6月、あるいは4月にかかってしまうかもしれませんが、この辺りでまた意見交換会を実施したいと思ってございます。
R7年度はやはり最終年度ということで、早めにもう一度意見交換会を実施して、その中間成果報告会、去年11月にやっていただいた報告会の結果を踏まえて、どういう進捗があったかということを再度アドバイザリー委員の皆様にも御確認いただいて、御助言をいただいた上で最終年度としての成果の取りまとめが、やはり3月末まであるということではありますけれども、最終成果報告会は年末から2月にかけてやりたいと思ってございますので、そこから半年ぐらい時間をとりたいなと思いますと、意見交換会は、できれば5月から6月ぐらいにかけて実施させていただければと思ってございますので、また御案内をさせていただきますけれども、お忙しいところ、大変恐縮ですが、またアドバイザリー委員の皆様方におかれましては、ぜひ御参加をいただければと思ってございます。
7ページ目でございます。第IIIフェーズ、共進化実現プログラムのフォローアップの観点例ということでございますけれども、プログラムについて今までもずっとフォローしていただきましたけれども、資料に書かれてあるような4つの観点から引き続きフォローアップをしていただければと思ってございます。
8ページ目、今日、ぜひ御意見賜りたいという点でございますけれども、これまで約2年弱、共進化実現プログラムの進捗状況を見守ってきていただきましたけれども、来年度からとうとう最終年度に入るということで、このタイミングでいま一度、共進化プログラム第IIIフェーズ全体として、こういうふうに進めていくべきではないかということ、あるいは複数のプロジェクトに共通することであるとか、そういったところをぜひコメント、本日、いただければと思います。
あと、共進化プログラムの第IIIフェーズ自体は来年度が終了でございますけれども、こういった研究者の方と行政官がある意味、協働して何か1つの政策を作っていくという枠組みは引き続き、ある意味、我々が行政官である以上はずっと続けていくべき取組だ思ってございますので、まさに先ほどの御意見であったとおり、行政官自らが研究するということも有用ではないかというコメントもいただきましたが、来年度以降のこういった行政官と研究者の方が協働していくという取組に対し、お気づきの点があれば、ぜひ御助言いただきたいというのが本日の御趣旨でございます。
雑駁ではございますが、資料1の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【有信主査】どうもありがとうございました。
今の説明に関して、どんな観点からでも、さっきの4つの観点というのは、出ていましたけれども、どなたからでも御意見があれば、どうぞよろしくお願いします。
と言って、さあ、意見を出せというのもなかなか難しいかもしれませんが、第IIIフェーズまでの間に、第IIIフェーズの行政官と研究者の間のコラボレーションの関係も大分、従来に比べれば進展があったというところと、それでもなおかつ、こういうポイントが不十分だというようなことだとか、実際にはいろいろな議論がそれぞれ個別テーマごとというんですか、幾つかのグループに分けてそれぞれアドバイザリー委員も担当のプログラムが決まっているので、そこの範囲では一応、そのプログラム間の違いとか、いろいろなものは見ているのだけれども、もっとプログラム全体で俯瞰的に見たときに浮かび上がってくるような問題があるのではないかという話だとか、あと今後、具体的にこういうプログラムをやるべきか、やらざるべきかというか、やるとしたらどういうふうに進めていけばいいかというような話だとか、周囲の境界状況も随分変わってきていますよね。世界的な状況も前に御紹介いただきましたけれども、いろいろ動きが変わってきていますし、科学技術関係もAIの発展のようにいろいろな意味で可能性が大きく広がったのか、リスクが増えたのか分かりませんが、そういうような問題も出てきている。
田辺さん、どうぞ。

【田辺委員】適切な意見か分かりませんけれども、全体に関することと今後のプログラムということでコメントします。まず、1つ、私が担当したプロジェクトの平川・木見田プロジェクトの中で議論したのですが、政策のための科学プロジェクトの研究成果を出すということの意味です。これが解決策だという、決まったものを出すのが必ずしも政策のための科学、あるいはエビデンスではなくて、政策を議論するためのフレームワークを提案する、選択肢を提案するというのが重要なエビデンスではないかということです。要するに今回の各プロジェクトの中でも、その課題に対する唯一の正解みたいなものを求めるということを期待してはいけない。これは、実は私がこういう問題意識になったのは、JSTの中のプログラムの中で少し議論があったのは、特にコロナの問題の分析のときに、数理的な研究成果を出すと、もうそれが唯一の答えと扱われ、それ自体の有効性を議論するということはなくて、それに基づいて政策を考えようとなり、エビデンスをどう扱うかというリテラシーが政策側になかった。専門家が導いたものだから、それを基に対応しないといけないという意識が日本には強いのではないかという議論がありました。
私は、この共進化プロジェクトが重要なのは、一緒にやっていれば政策側もプロジェクトの結果を出すことによって、それが必ずしも正解ということとではなく、幾つかの前提の下に出された結論というのがよく理解できて、この共進化プロジェクトを通じて、政策のための科学をどう行政側が使ったらいいか、まさに政策側のリテラシーというか、エビデンスリテラシーが培われるのではないかと思っています。プロジェクトの重要性は、研究者と議論しながら、まさに政策を考えていくベースになるエビデンスが想定を変えれば違うものが出てきて、それが重要な施策を検討するためのベースになるという理解が深まることではないかと思っています。
二つ目は、今後のプロジェクトという意味では、先ほど中間発表からのコメントで「プロジェクトに参加した行政官の人が成長するだけではなくて、組織として課が成長する」と言われましたが、私は課だけではなくて、実は文部科学省自体が成長すると思います。エビデンス・ベースド・ポリシー・プランニングの日本の府省庁の中で、文部科学省がまさにリーダーとして、つまり、省自体が政策のための科学をうまく活用する省になる、まさに科学技術を担当する文科省が、共進化プロジェクトを通じて省全体が、省自体が変わっていくということです。みんながリテラシーを持って、政策のための科学を活用する役所になる、それで日本政府を引っ張っていくということを考えてぜひプログラムを取り組んでいただければと思います。
以上です。

【有信主査】ありがとうございます。
どちらも非常に重要なポイントだと思います。以前は、要するにオプションを提示するという形で、いわば研究サイドと政策立案サイドの間のギャップがあったときに、政策立案サイドに対してオプション提示というような、全体の構図を示して議論していた時期があります。それを超えて、いわば共進化というアイディアで、もう少し政策立案側と研究側とが違う、ある種の分担された格好ではない形で進めていこうという中で、今の田辺さんの御指摘は、さらに共進化全体の構図がもう少し単純に1つの解を、共進化の中で政策立案サイドと研究サイドが一体となって1つの解を追い求めるというよりは、そこの間にもう少し何か必要ではないかという、こういうような御指摘なのだろうなと思いながら聞いていました。
それから、エビデンス・ベースドのポリシー・メーキングで、これは、本当は文部科学省が実際には研究評価指針も文部科学省で作っていますし、そういうところの評価、プログラム評価というのも、以前、問題になったことがあって、プロジェクト評価、プログラム評価、政策評価と、全体の構図の議論もされていた時期もあるので、この辺を文科省全体として非常に難しいかもしれませんが、田辺さんの御主張は、これをもっと全面的に出して指し示せということですかね。

【田辺委員】指し示すというよりも、この共進化を実践することで文科省自体が成長していくと私は思うので、答えを受け取って、それで政策をやるというだけではなくて、私はエビデンスを一緒に作り、そのデータ自体を文科省の中で議論する、そういうような役所、そういう人たちがいっぱいいる省になってほしい、それが日本政府につながればいいなと思っています。

【有信主査】ありがとうございます。
それでは、ほかに御意見ありますでしょうか。

【長岡委員】長岡です。

【有信主査】どうぞ。

【長岡委員】長岡です。どうもありがとうございます。7ページにフォローアップの観点例というのが書いてありまして、私は非常にいい観点がきちんと指摘してあると思いますけれども、やっぱり1つは、3点ですけれども、1つは、共進化というのは非常に新しいアイディアで、行政官のほうがまずニーズを明らかにして、政策課題を明らかにするところから始まって、それを研究まで、大学、学者との研究にまで持っていくということで、非常に初めての試みで、ですから、それによってどういう付加価値があったかというのを明らかにしていくこと自体は非常に重要ではないかなと思います。
ですから、それは研究者のほうだけではなくて、行政官のほうからも、どういうふうに、一番いいのは政策に生かされることですけれども、そういうことになる場合は、必ずしも多くはないと思うのですけれども、行政官も含めて共進化プロセスが何をもたらしたかというのが、この事例の中から浮かび上がってくるようなフォローアップがされると非常にいいなということで、既に観点は非常にきちんと書かれていると思います。
ただ、1つ注意しないといけないのは、できなかったことも非常に多いと思うのですね。というのは、大体2年でEvidence Based Policy Makingのようなエビデンスの研究をすること自体がかなり非現実的なところがありまして、ですから、例えば非常に単純なこと、データコレクションですね。つまり、政策課題の解決に資するような政策というのはどういうものであると効果があるのかという研究をするためには、それなりのデータコレクションが必要で、それがそもそもまだ存在しないケースも非常にあると思うのですね。というのは、ほとんど行政のほうで取り組まれている課題というのは非常に多様で新しいものも多いし、すぐに解決策が出るような課題だけではないというか、そうでないものがかえって多いのではないかと思うのですね。
だから、EBPM自体は非常に重要だと思うのですけれども、それはかなり時間もかかるし、投資も必要なプロセスであるということの認識ですね。つまり、したがって、できなかったことも非常に多いということで、それを今後どうしていったらいいのかというのが、この事業の後にどうしたらいいかということとつながると思うのですが、そういった点も明らかになるといいなと。こういうことができましたということだけではなくて、何ができなかったかということも明らかにできるようなフォローアップになっていくといいのではないかなと思いました。
その観点から言うと、私も行政官のほうは非常に時間もないし、ローテーションもありますし、なかなか難しいところですけれども、行政側がそういう知見を活用できる能力を高めていくことはすごく重要で、アメリカとかは、チーフエコノミストとか、そういう専門家を用意してやっているというところもあって、それだけ行政コストもかかっているわけですけれども、そういう行政のほうの、人のほうの対応をどうしていくかというところも非常に重要な課題になってくるのではないかなと思いました。
以上です。

【有信主査】ありがとうございます。
データの問題は、かなり重要な問題で、それぞれ所有者の異なるデータがある中で必要なデータをどういうふうにきちんと取り出していくか、これは相当また大変な話で、それをどこから切り崩していくかというような話だと思います。
では、吉本委員、よろしくお願いします。

【吉本委員】ありがとうございます。この7ページのフォローアップの観点にほとんど網羅されていると思うのですが、個人的に特にフォローアップで重点を置いていただきたいのは、先ほど田辺先生からは行政官だけではなくて、組織、文科省全体という話があったように、そもそも行政官の方自身が、この共進化プロジェクトでどういうような御自身のキャリア形成に影響があったのかとか、業務の担当のスタンスとか着眼点が変わったのかといった辺りのフォローやその辺りの追跡調査というものも関心があるところがございます。
行政官の方が、この共進化プロジェクトを通してどう政策立案にプラスの影響があったのかというところが、何かふわっとして見えにくいところがあります。プロジェクトの意見交換会とかアドバイザリー会議において、研究者の方は熱心にプレゼンをされて、その後、行政官との意見交換があるわけなのですが、やはり行政官のほうの熱量というか、そういったものが感じられにくいプロジェクトがあるようにも感じます。この共進化プロジェクトが行政の意思決定にどう影響したのかというところが、結果としてあまり見えてこないところもございます。そろそろ第IIIフェーズもクロージングに近づいてくるので、今後の中間報告とかでは、特に行政の方からはこのような観点からプレゼンがいただきたい、というのが1点ございます。
もう一つは、EBPMに関しては、プロジェクトにより適不適みたいなところも若干あるのではないかということがございます。例えば今、先ほどお話がございましたように、AIのように科学技術を取り巻く環境が大きく変わってきておりますけれども、今後、例えば生成AIで世の中がどう変わっていくのか、科学技術がどう変わっていくのか、これってエビデンスに基づいてやっている場合ではなく、そもそも半年先には驚くような世の中になっている、そういう時代になりつつあるかと思います。
我々もお世話になっていますけれども、もうほとんどプログラミングって結構、AIがやってくれますし、何かセキュリティーチェックしてよと言うと、本当にプログラムチェックまでやってくれる。シンクタンクがやることって何かなって、最近本当に思うようになってきていまして、こういう世の中になってくると、EBPMの活用方法も変わってくるかな、と感じます。EBPMが非常に有益なテーマもあれば、ENPMにこだわっていると後手に回ってしまうテーマもあると思いますので、適不適みたいなところも何か着眼点として置いてフォローしていけるといいかなと感じております。
以上です。

【有信主査】ありがとうございました。
司会がまずくて、時間がだんだん押し迫ってきていますけれども、奥和田委員と伊地知委員、何か御意見ありますか。

【奥和田委員】これは後で、この後のフェーズの検討のときに申し上げようかなと思ったのですけれども。

【有信主査】それでもいいです。

【奥和田委員】確かに今、吉本委員がおっしゃったように、求められるものが変わってきているという感じはすごくあります。それはもちろん行政官に対してということもありますが、私はアカデミアに対して求められるものが非常に変わってきているとすごく感じております。さっき吉本委員がおっしゃったような生成AIの登場というのもあります。それ以外にも、例えば、EBPMは、この15年ぐらいで随分と定着しました。データが十分か不十分かとかいうことは別の議論ですけれども、そういうものに基づいてやりましょうという、コンセンサスとしては当たり前になってきているところがあります。
むしろ、最近は、アカデミアには何か今まで以上のものというか、考え方とか概念とか、そういうものを求められているようになってきています。行政もそういうものをアカデミアに求めるようになってきているのではないかと思われます。行政もですし、世の中もですし、このプログラムが始まった15年前とはえらく違う点だと思います。しっかりデータを揃えたりすることだけがアカデミアに求められているのではない、というフェーズに来ているという感じがしております。そのほかにも、細かい例を挙げればいろいろあるのですけれども。

【有信主査】はい。分かりました。ありがとうございます。
では、伊地知委員、どうぞ。

【伊地知委員】ありがとうございます。今まで多くの委員の先生方がおっしゃったところと重なるところがあるので、そこは割愛させていただきます。この第IIIフェーズということで言うと、まとめていただいたように、第Iフェーズからすると、かなり共進化ということで、一緒の、協働の取組が多く見られるというところです。そのときに、私もRISTEXに関わらせていただいていて、その中でも共進化枠というのがあるのですけれども、それと対比したときに、行政官の人事異動という表現もされるのですが、それは実は現象であって、本質は、組織としてコミットされているかどうかであると見ております。
つまり、この第IIIフェーズに至るに当たっては、この推進室のほうでかなり両者間の関係を取りまとめて準備をされて、一緒に対応されているところが組織として関わっていらっしゃるということで、実際にプロジェクトを進みやすくしているのだろうと思います。そのありようというのは、もしかしたら歴史的にはいろいろ変わってきたのだけれども、今の社会的な状況、あるいは働き方の状況からすると、こういった1つの枠組みがあったからこそできているのかなと考えられます。昔であれば、例えば30年前であったら、勤務時間は無尽蔵にあるとみな誤解していたようなときであると、何か別の枠組みであったかもしれないですが、それはその時々の状況かもしれません。
そうしたときに、やはりいろいろな部局があり、この政策局の課が多いと思うのですが、政策局という課が持っている行政課題のタイムスパンが、こういった活動に合いやすい。恐らくほかの局だとしたら、全然タイムスパンが短く、やはり、こういうことになかなか取り組めないというところがある。それからまた、長岡委員からデータの話があったと思うのですが、政策にはいろいろデータが必要ですけれども、データについては、この2か年、3か年では短過ぎて、そうすると、そういうことはまた別途、何か枠組みとしては必要である。よって、今回ここで、第IIIフェーズで扱っているものは、とりあえずこの3か年の中で何らかの成果が必要なことということで扱われていると思うのです。今後のプログラムへの示唆といったときに、こういった取組でできることと、こういったことよりもさらに長い時間軸が必要なことであるとか、そういった時間軸の観点を持っているとよいのではないかと思っているというところです。

【有信主査】ありがとうございました。
いろいろな観点から御意見いただきましたけれども、共進化の具体的な今後の在り方を含めて、それから、データの在り方だとか、あるいはAIを含めて、環境が大きく変わっている問題だとか、幾つか指摘があったので、それを少し整理してまた議論をしましょう。先の議論の中でも、またいろいろ出てくると思いますので、議事の第2議題、SciREXの事業、最終年度における活動についてということで、事務局から説明をお願いします。

【根津企画官】事務局でございます。次年度は、先ほど冒頭御紹介したとおり、来年度がSciREX事業の最終年度ということになりますけれども、最終年度、やはり成果の取りまとめに向けて基盤的研究や人材育成をはじめとして、様々な取組、特にサマーキャンプであるとか、行政官研修みたいなものも含めて、今年度同様の実施を予定しているところでございます。
また、各拠点の事業終了後の実装化状況についても、中期計画の年度フォローアップでも状況は確認してはおりますけれども、引き続き必要に応じて各大学との文科省との対話を通じて、ぜひ実装してくださいということを後押ししていくということを予定している中ではあるのですけれども、今回、議題でお時間をいただきましたのは、最終年度ということで、これまでのSciREX事業の成果の取りまとめを対外的に発表する機会としまして、SciREXセンターを中心としてオープンフォーラムというイベントを開催する方向で検討をしてございまして、本日はその企画案についてSciREXセンターの原田様から御紹介をいただいて、ぜひ委員の皆様からも内容について御助言いただければということで、今回議題を用意してございます。
それでは、早速でございますけれども、原田さんから御説明いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

【原田特任フェロー】SciREXセンターの原田です。今、画面に出ているこの資料に沿って企画案を説明させていただきたいと思います。オープンフォーラムに関しましては、実は第5回目に相当します。今まで、2021年度に開催したのが第4回です。それ以降、少し時間が空きましたけれども、今回、企画させていただきました。
開催の目的としては、最初の段落に書いてあるところです。SciREX事業そのものの目的を幾つか書いてあるのですけれども、最後のところです。SciREX事業15年を振り返り、各拠点長をはじめとした関係者が一堂に会し、この15年間で何が変わったのか、国内外の社会情勢の変化、ほかの取組等、織り交ぜながら政策のための科学について議論するということで、いわゆるオープンフォーラムですので、一般公開を前提として企画を立てております。
こういう目的に沿って、テーマ名は仮ですけれども、「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業のもたらしたもの」というテーマで開催したいと考えています。これからは、まだテーマ名を変えることがあるかもしれませんが、仮の題で進めております。対象者は、一般公開なのですけれども、特に政策、イノベーション政策に関心のある行政官、研究者、企業、NPO等、広く声を掛けて集まっていただこうと思っています。最後は、我々GRIPSのSciREXセンターが主催という形にしておりまして、文科省様、ほかの人材拠点大学の方、関係機関に共催いただくということにしております。
プログラムの企画は次のページでありますので、そちらで説明いたします。時期は、もう本当にピンポイントになってしまったのですけれども、11月21日金曜日が関係者の都合が一番いいところということで、ほぼ確定しております。それから、運用については、会場には大体100名ぐらいリアルな方に集まっていただくのと、それから、オンラインで参加していただく形で催したいと思っていまして、いわゆるウェビナーを使ったハイブリッド開催の形にしたいと。それから、会場は、これもピンポイントですけれども、ベルサール虎ノ門。虎ノ門の駅から歩いて4分ぐらいの比較的近いところです。それから、当然、1日で全てを説明する時間はございませんので、会場の中でできるだけたくさんパネルを展示して、今までの成果をできるだけ分かりやすく目に見えるような形で展示するということをしたい。
それから、併せてフォーラム参加者に、プログラムと資料をお渡しするのですけれども、それと併せて別冊のような形で、今までのSciREX事業を紹介するような冊子を作りたいというふうに企画しています。上のパネル展示で使った内容を冊子に編集し直すのですけれども、SciREXのホームページで公開しているいろいろなプロジェクト、概要とか成果物、そういうのを手短にまとめて、SciREX事業総目次のような記録として冊子を作りたいと今計画しているところです。こういう形で実施をしたいと思っていまして、11月21日、ぜひアドバイザリー委員会の方々にも御出席いただきたいと期待しております。
次のページをお願いします。まだ大枠しか決めていないのですけれども、最初に挨拶がありまして、SciREXセンターのほうから事業全体を、粗々の紹介を20分ほどでさせていただきます。もちろん共進化のことにちょっと触れますけれども、あと、今整理を進めておりますフォローアップ調査、こういうものも成果物として少しここで話したいと思っています。午前中の1つの目玉は、人材育成拠点の方に出ていただいて、5つの拠点、6大学、6名の方に出ていただいて、人材育成についてどうなったのか、よかった点、要改良点、フォローアップ調査でも学生の意見を聞いておりますので、そういうのも参考にして各拠点の特徴と、それから、共通した課題なり、あるいは成果というようなものをここで抽出して話をしていただきたいと思います。できれば、後半には実際の卒業生等、ゲストとして出ていただければと考えております。
昼を挟んで午後は個々のプロジェクトというか、機関についての説明を入れております。1つはデータを集めておりますNISTEP様、ここに20分ほどで、これまでデータの基盤を作ってこられた活動と、それから、最近話題になっている博士課程の調査、それから、謝辞コードを入れた、こういう地道な活動をされていますけれども、ぜひその辺りを触れていただいて、SciREXの成果として出していただければと思っています。それから、RISTEX様は、公募型のプロジェクトが何本も走っていましたけれども、それについて全体の話と、それから、比較的メディア等で取り上げたようなもの、比較的目立ったようなテーマを選んでいただいて、幾つか目玉を発表していただければと。これは少し長めに30分とっております。
それからその後、少し時間が短めなのですけれども、40分ほどのパネル討論を用意して、ここに共進化の皆様に集まっていただくようなパネル討論を予定しております。全員の方に集まっていただくことはできそうもありませんので、比較的近くにおられる共進化プロジェクトの代表的な先生、それから、行政官、できましたらアドバイザリー委員会のどなたか、ここにお出ましいただいて、お話し合いをしていただければと思っております。この辺り、まだ設計の段階です。それから、その後、特別講演ということでゲストスピーカーをお招きする予定にしておりますが、ここについては今、文科省様に人選をお願いしているところで、我々もまだ全然、名前を存じ上げないところです。
その後、最後です。最後にもう一つ全体のパネル討論、60分を用意しておりまして、できれば上にお招きしたゲストスピーカーの方にも入っていただいて、拠点の代表の方、関係機関、文科省の方々にお互いに話し合っていただいて、SciREXという事業、非常に多岐にわたる事業を行ってきたのですけれども、それの振り返りをここでやっていただいて、できればここで総括的なメッセージが出せればと。ここでアドバイザリー委員の方にモデレーターもお願いできればと思って、勝手に名前を入れるわけにはいかないのですけれども、お願いしたいと。総評というのは、必要かどうか分かりませんけれども、一応、全体を締めくくって、SciREX全体を見ていただいてきたアドバイザリー委員会の主査の先生に一言総評をお願いしたいというのが我々の目論見でございます。
企画案は、まだこんな段階ですけれども、大体、日取りと場所が決まりましたので、あと細かいところは、我々事務方のほうで進めさせていただきたいと考えています。以上です。

【有信主査】ありがとうございました。
ただいまの説明に関して、多分、いろいろ御意見はあるかと思いますが、どなたからでもどうぞ。いかがですか。

【伊地知委員】では、私、伊地知から。ありがとうございます。まず、このSciREX事業全体、15年の振り返りをしようということでこのようになっているのかと思います。人数の点で、パネルと会場参加者とが対応しているかといったことはあるのですが、細かい話は置いておきます。せっかくこういった貴重な時間、機会をとって行うのであるとすれば、何かこれをうまく活かせたほうがいいだろうと思います。つまり、単にフォーラムを行うということではなくて、これについてある種の見立てをする。どういう見立てをしたらいいか、それから、参加者からすれば、あるいはこれを行う側からしたときに、やはり、「takeaway(お持ち帰り)」となるものがあったほうがいいかと思っています。そのときに多分、行わなければいけないのは、この事業、プログラムとしての一種の自己点検かと思います。
つまり、そのための素材をこの中で集めていただく。実際、そういうことのための情報を集められるということだったのですが、それを自己点検に使うということと、それだけであると全然面白くないので、やはり今後に向けて、どういった知見が得られて、どういったことをしていかなければいけないのか、そういったことが浮かび上がるような、要するに、今回行ったことについての将来に向けたアセスメントになるようなことが、目的なり、個々に行われる、特に例えばパネル討論といったところにあるとよいのではないかと思います。

【有信主査】全体の基調として、今のようなものをベースに置いて、それぞれの企画をうまくそれに載せていくと。そういうことですかね。
ほかに御意見ありますか。こういうことはやっぱり必要だと思うのですよね。それと、ポイント、ポイントで具体的にやったことをきちんと形にして残すということと、それなりの費用、予算も使ってやったことですから、その成果物をきちんと残すこと。ただし、その成果物の残し方として、今、伊地知委員が言われたように具体的な問題点を含め、これを将来に向けてどう橋をかけていくのか、こういうことを1つの基調として、それぞれの項目の設計をやっていくということですかね。準備される方は大変かと思いますけれども、いろいろそういうことを含めて具体的に議論しながら進めていければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
ほかにはないですか。多分、誰も反対していないので、今の伊地知委員の御意見が一番基本的な方向性だと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございます。
それでは、議事の3に入りたいと思います。これからは非公開議題となりますので、事務局は傍聴者に退出を促していただければと思います。よろしくお願いします。

【(事務局)松浦専門職】それでは、これから非公開議題になりますので、一般傍聴の方は退出をお願いいたします。

(傍聴者退出)
 
<【議題3,4】非公開議題>
「政策科学に関する今後の検討について」「その他」について意見交換を行った。
 
【有信主査】どうもありがとうございました。それでは、これで第22回の科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」アドバイザリー委員会を終了したいと思います。本日はどうもありがとうございました。御退室ください。

 ―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究開発戦略課

(科学技術・学術政策局研究開発戦略課)