科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」アドバイザリー委員会(第15回) 議事録

1.日時

令和3年8月17日(火曜日)13時~15時

2.場所

オンラインにて開催

3.議題

  1. SciREX事業第2期中間評価の結果報告について
  2. SciREX事業基本方針について
  3. 共進化実現プログラム(第Ⅱフェーズ)について
  4. その他

4.出席者

委員

   有信主査、伊地知委員、奥和田委員、狩野委員、小寺委員、小林委員、田辺委員、長岡委員、吉本委員

文部科学省

   塩田企画評価課長、中田企画評価課企画官

5.議事録

【有信主査】
それではただいまより、第15回科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」アドバイザリー委員会を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席いただき誠にありがとうございます。
早速ですけれども、事務局から資料の確認と出席者の紹介をお願いします。よろしくお願いします。

【中田企画官】
よろしくお願いいたします。
まず資料の確認等々の前に、私の自己紹介をさせていただければと思います。8月1日付で中澤さんの後任で参りました中田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私自身はいわゆる科技3局の部局で初めて配属されたのが、今の企画評価課の母体の一つであります調査調整課だという経験があります。ただ、その時は今回御議論いただく「政策のための科学」のような事業は行っておりませんので、言ってみればまさに初心者の状態でこちらに着任しております。皆さんの今日の御意見もお伺いしながら、少しずつ勉強していきながら、早くお役に立てるように頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは資料の確認に入らせていただきます。議事次第の2ページ目に本日お配りしてございます資料の一覧を載せてございます。皆様のほうで資料がおそろいかどうか今一度御確認いただきまして、不足等がございましたら、もう一度事前に資料をお送りしたメールを御確認いただきますか、あるいは事務局にお電話を頂戴できればと思います。
それから本日の御出席者ですけれども、長岡先生がまだ入られていないということでございますが、一応全員御出席の予定とお伺いしております。また、小寺委員と小林委員が所用によって14時頃途中退席と承っております。それから、NISTEPの菱山所長にも本日オブザーバーとして御参加いただいております。
本日の委員会ですが、通常どおり公開の会議となりますので、終了後に皆様に御確認いただいた後に議事録を公開させていただきたいと思います。
以上でございます。

【有信主査】
どうもありがとうございました。
ただいまの説明に特段の疑問点、問題点がなければ本日の議事に入りたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
特段疑問点はないということで、議事に入らせていただきます。それでは議題1に入ります。昨年12月から先月にかけて、事業開始から10年が経過したということで、SciREX事業の第2期中間評価を中間評価委員会にて取りまとめていただいています。この中間評価結果を基にし、議題2においてSciREX事業の基本方針案を御議論いただくことになっています。
それでは事務局から資料に基づいて評価結果の報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【中田企画官】
それでは資料1-1と1-2になります。1-1が本体になりますけれども、概要を1-2でまとめてございますので、そちらに基づいて本日御説明させていただきます。
前回、4月のアドバイザリー委員会でも、このような中間評価をやってございますということは簡単に御報告させていただいておりましたが、SciREX事業第2期の中間評価が7月に取りまとまり、既にホームページでも公開させていただいております。実際の中間評価に当たっては、有信主査からもこれまでの本事業の経緯について御報告いただいた後、各拠点大学・関係機関からのヒアリングを経て、評価を行っていただいております。
早速ですが、その評価結果を1-2に基づいて御説明させていただきます。今回の評価につきましては、一番左側の箱にある1、2、3ということで3つ、各大学の基盤的研究・人材育成拠点、それからRISTEXの公募型研究開発プログラム、それからNISTEPのデータ・情報基盤という3つのプログラムごとに評価を実施してございます。RISTEXとNISTEPについてはそれぞれ外部評価を実施した上で今回の事業としての評価を行ってございまして、各拠点大学につきましてはそれぞれ自己評価を行っていただいた上で評価をした形になっております。
各大学に個別の評価を付してございますけれども、GRIPSのSciREXセンターがB、東京大学がS、その他についてはAとなっておりますけれども、詳しい結果についてはパワーポイント2ページ目の結果を参照いただければと思いますが、今回は個別の大学の評価結果の詳しいところは説明を省略させていただきます。
それで実際にどのような評価がなされたかというところでございますけれども、まず、(1)の基盤的研究・人材育成拠点につきましては、ロジックモデルでこれまで整理してございましたネットワーキング、共進化、人材育成、研究・基盤という4つの柱ごとに評価をしていただきました。
その結果として、まずネットワーキングにつきましては重要な無形の資産として評価されるということでございますけれども、今後、維持・活用していくための取組が期待されるという評価をいただいたところでございます。
右に行っていただきまして共進化ですけれども、今回の評価で最も重視された項目の一つになります。政策の意思決定等に本質的に貢献ができた研究活動は限定的ということで、やはり共進化の実現に向けた状況は道半ばということで、政策と研究をつなぐ機能の実質化が必要だということを重要な指摘として頂戴したところでございます。
それから人材育成、研究・基盤につきましては、それぞれの拠点における成果が一定の評価を出しているということで評価をいただいたところでございます。
(2)のRISTEXの公募型研究開発プログラム、あるいは(3)のNISTEPのデータ・情報基盤につきましては、それぞれ外部評価を行っていただいたということを先ほど申し述べましたけれども、それに基づいておおむね着実に実施されているという評価を頂戴いたしましたが、こちらにつきましても、先ほどと同様に共進化という点ではさらなる取組が求められるという評価を頂戴したところでございます。
それから右に行っていただきまして、事業全体の総合評価です。事業全体の評価といたしましては、基本的に着実な取組が行われているということ、あるいはネットワークが蓄積されてきたという評価がありますけれども、先ほど申し述べたとおり、各拠点における研究成果が政策形成に直接に影響を与えた例は必ずしも多くなく、共進化が十分になされたとは言えないということでございます。
それから基盤的研究・人材育成拠点は補助事業でやっておりますけれども、こちらについては15年の補助事業でございますので、事業終了後に向けた取組が必ずしも十分とは言えないということで、最後のポツのところですけれども、今後の第3期の期間については、共進化により一層取り組むとともに、事業終了後に向けた取組を各大学はもとより政策当局にも求めると、そのような評価をいただいたところでございます。
下に行っていただきまして、今後期待される取組の方向性でございますけれども、4点挙げていただいております。1点目が事業全体のガバナンスの強化です。15年というかなり長い事業になりますので、最後のところに入ってくるということで、きちんと運営委員会を中心として、事業のガバナンスが形骸化することなく、事業終了をきちんと意識しながらビジョンを持って運営がなされることが重要、それから各拠点大学においてはそれに基づいた計画的な運営がなされることが重要だということで御指摘をいただいております。
2点目の共進化に関する部分の御指摘です。こちらはそもそも共進化というものを関係者が改めてしっかりと認識すべしということで、アカデミアだけではなくて、行政側においてもEBPMに関するリテラシーの向上の取組が必要だということ、それから、まさにこの研究と政策をつなぐ部分の機能につきましてはこれまで専らSciREXセンターでやっていただく形を取っておりましたが、文科省あるいはNISTEPにおいてもそういった研究と実際の政策検討をつなぐための機能の強化が必要だというお言葉をいただいております。
それから3点目、持続的なプラットフォームづくりですけれども、これについては人材や本事業を通じて生み出されたものが必ずしもネットワーク化されていないということで、きちんと事業終了後も見据えてどのようにネットワークを形にしていくかが問われているということで、例えばセクターの壁を越えた人材の流動性の向上といったものも論点として挙げられたところでございます。
4点目の学際的領域としての発展・深化でございます。こちらはこれまでもずっと目指してきたことではございますけれども、国際的な状況も踏まえまして、拠点終了後を見据えて学際的領域の発展を目指す取組が必要だということで、公募型プログラム等の実施を通じて、こういった「政策のための科学」分野への研究者の参画を期待しますということが言われているところでございます。
以上が今回の中間評価の概要でございます。次の議題で基本方針を御説明させていただきますけれども、今後の段取りといたしましては、この評価結果を受けて基本方針を改定していきたいと思います。それに基づいて各機関が計画を定めて、残りの期間、取組をしっかりやっていくような形にしていきたいと考えております。
私からの説明は以上でございます。

【有信主査】
どうもありがとうございました。
それではただいまの説明に関して御質問等ありましたら、よろしくお願いします。どなたからでも結構ですので、どうぞよろしくお願いします。
各拠点の評価の内容については、本文にも書いてあるようにAが当初計画を上回る成果を上げているということ、Bが予定どおりの成果、Sは格段に計画を上回る成果を上げていると、こういう評価になっています。

【中田企画官】
ありがとうございます。御発言の内容で少し補足を申し上げさせていただきますと、有信主査に補足いただいたとおり、それぞれ計画どおり、あるいはそれを上回るという評価でございますけれども、先ほど申し上げたように、やはり今回の評価の中で一番重きを置かれたのは共進化の部分で、しかもそれを共進化のために研究サイドと政策対応をきちんとつなげていくことが重要でして、そこの部分の橋渡しについて、先ほど申し上げたようにそれをSciREXセンターだけではなくて、今後、文科省やNISTEPも担うべきということで評価をいただいております。
これまでの取組を振り返ったところですと、やはりそこはこれまではSciREXセンターに専ら期待していた部分になりますので、そこの部分でSciREXセンターの取組が必ずしも十分ではなかった、あるいは各拠点大学との連携を全体にリードしていくことまでできていなかった、十分できたとは言えないということで、SciREXセンターの評価がほかの拠点と比較した際に少し低い評価になったところでございます。
以上です。

【有信主査】
それではちょっと私から事務局に、質問になるのかコメントになるのかあれですけれども。報告書の本文では研究基盤に関してもいろいろ書き込んであって、中でもこういう新しい、ここでは学際領域の発展・深化を図るべきと書いてありますけれども、こういう学問領域をきちんと確立しなさいと、こういう話もあって。つまり、単純に学際領域であるということからさらに一歩踏み込んでいるような書きぶりにもなっていたように思います。
この学際領域の発展・深化そのものが実は共進化にも大きく関わる話にもなりますし、公募型研究開発プログラムの展開にも関わってくるということで、この辺については何か事務局としてどうでしょうか。後でまた今後の方針のところで説明してくれると思いますけれども、私の個人的な印象はそういう印象を受けています。

【中田企画官】
ありがとうございます。資料1-1でお配りしておりますけれども、本体のほうです。例えば6ページ目を見ていただきますと、今、有信主査に御指摘いただいたとおり、単なる学問分野間の連携ではなくて、政策形成プロセスの深化と関連づけられた課題解決に向けた学際領域として発展することが重要であるということで、いわゆる一般的な学際といわれる、いろいろな複数の学問分野があり、それに関連しますということではなくて、きちんと政策と結びついたものにしていくべしということは御指摘として頂戴したと認識しております。
実際にそれをどうするかという部分は、この後、基本方針等々で議論させていただくことになりますけれども、基本的にはやはり、先ほども御議論がありましたように、例えばつなぐ機能をSciREXセンターだけではなくて文科省も担っていくといったときに、きちんとこういう活動を見える化していくといったところで、いわゆる研究者の方々から見たときにこういうものがあるんだということをしっかり分かりやすく示していくとか、そういったことも重要ではないかと考えているところでございます。

【有信主査】
ほかにどなたか質問等ありますでしょうか。
ここで挙げられているそれぞれの評価結果については、この後の今後の方針の中でそれぞれさらに関連して方向性が示されていますので、むしろそこでまとめて議論をしたほうがいいのかもしれないですね。それではそういうふうにさせていただきたいと思います。
それでは議題2ということで、第2期の中間評価結果に基づいて、事務局でSciREX事業の基本方針の改定案を作成していただいています。それでは事務局から資料の説明をお願いします。

【中田企画官】
御説明させていただきます。資料2でございます。こちらは先ほど御説明した中間評価を踏まえた基本方針の改定案となっております。
今回の改定では、先ほども御説明した中間評価の指摘事項の反映ということと、あともう一つ、先ほど申し上げた補助事業について残り5年という最後のターム、5年ごとでいうと第3期の最後のタームになりますので、事業終了を見据えた取組について言及するようにしてございます。
それから少し事務的な部分になりますけれども、これまで10ページということで結構分量があって分かりづらいということがありましたので、分かりやすくスリム化ということも併せてしてございます。
では、それぞれ御説明させていただきます。
1ページ目の1ポツ、事業の背景及び経緯です。これについては基本的にこれまでの基本方針に記載してございました事業の経緯に加えまして、3月に閣議決定されました第6期の科学技術・イノベーション基本計画における記載についても言及する形で記載してございます。こちらは基本的に事実関係の御説明になりますので、詳細は省略させていただきまして、2ページでございます。
まず2ポツの事業の目的及び目標でございます。これまでの基本方針に、事業目的として、「科学技術イノベーション政策のための科学」の深化と「政策形成プロセス」の進化によりまして、EBPMを実現するとともに、効果的・効率的に科学技術・イノベーション政策が展開し、第6期基本計画が目指すSociety 5.0の実現に寄与するとともに、次期の基本計画の検討に具体的に貢献することというものを追加で記載してございます。
また、その下に4つ、具体的な目標を書いてございます。こちらについては先ほども申し上げたロジックモデルと同じ構成ということで、人材育成、研究・基盤、共進化、ネットワーキングということで書かせていただいております。こちらについてはそれぞれ少し表現ぶりを変えてございますけれども、目標についてはこれまでの目標の内容を踏襲している形でございます。
それから3ポツから始まりますプログラムの構成の部分の御説明です。こちらの構成自体はこれまでと同じく、拠点大学への補助事業、RISTEXの公募型研究開発、それからNISTEPのデータ・情報基盤という3つのプログラムということで、そのままそれは維持してございます。それぞれの説明の中では、各プログラムにおいて共進化に資するような研究プロジェクトを実施することをしっかり書かせていただいております。
各プログラムで実施する内容につきましてはこれまでと基本的に大きく変えているわけではございませんけれども、例えば拠点事業のプログラムにおいては、先ほど申し上げた事業終了後を見据えた取組として自立化に関する記載を追記するなど、中間評価を踏まえて少し記載を修正しております。
3ページの一番下から始まります事業全体の運営体制につきましては、(1)でそれぞれの実施主体ということと、(2)のガバナンス体制ということで、本当に純粋なプレーヤーとそれをガバナンスする体制で分けて記載するようにいたしました。
(1)のそれぞれの実施主体に関する記載につきましては、基本的にこれまで取り組んできた内容をベースにするということでございますけれども、先ほど御説明しました中間評価において指摘されました共進化に関する取組といったところを随所に追記するようにしております。一例として申し上げますと、①の文科省のところですけれども、具体的には、働きかけなどを行い政策研究と政策プロセスをつなぐための役割を担うということ、それからこれは共進化ではなくて自立化のほうですけれども、支援の終了を見据え各拠点大学の自立に向けた取組を支援するという形で記載し、その他、少し共進化等々に関する記述を全体的に付記しております。
今度は5ページから始まります(2)のガバナンス体制のところです。先ほど申し上げた、ビジョンを持って取り組むべしという中間評価の指摘等々もございますので、運営委員会のところ、②ですけれども、こちらで長期的視点を持って取り組むべしということ等を記載させていただいたところでございます。
最後、6ページでございますが、事業の計画的な実施ということで、事業終了後を見据えた記載を中心に記載してございます。(1)でございますが、中間評価にもございましたように、きちんと今後最後の期の中期計画を各拠点において策定していただくこと、それからそれをきちんと毎年フォローアップしていくということを書かせていただいております。(2)で補助事業終了後ということで大きく柱立てを設けてございまして、各拠点大学の取組を踏まえた補助金の分配の仕方もあるのではないかということですとか、あるいは終了後のネットワークが機能するような方策について検討し、必要な対応を行うということで、こちらについては文科省及びSciREXセンターを中心にということで書かせていただいております。
最後、6の事業の評価でございます。これから15年間の最後の5年間に入るところですので、事業終了に向けた適切なタイミングで、もう一度今回の中間評価のような外部委員による評価を実施しますということを最後に記載してございます。
以上、簡単にはなりますけれども、大きな修正内容は基本的には共進化の部分、それから事業終了後を見据えて必要な取組があるだろうということで、その辺りを中心に追記させていただいたところでございます。こちらは本日皆様方に御議論いただきまして、その御意見も踏まえて、最終的には文科省で基本方針を固めていきたいと考えております。
以上でございます。

【有信主査】
どうもありがとうございました。
それではただいまの説明に関して、一応40分程度、質疑あるいは議論の時間が設けられていますので、ぜひどんな観点からでも基本方針案に関して議論をお願いしたいと思います。どなたか、どうぞ。

【田辺委員】
この基本方針で目的・目標が具体的に書かれているのですが、私はこの事業を通じて「政策のための科学」がきちんとした学際領域になるためには、文科省の政策サイドがそれをきちんと求める、あるいは利用することが必要だと考えており、ここに書かれた目的・目標は自分ごとになっていないような気がしています。
この事業を通じて政策サイドがエビデンスに基づいて政策をやる政策集団になるということが、この事業の本当の大きな目的だと思います。つまり、共進化プログラムをやり始めたのは、まさに一緒になって研究して、それで政策をやるという人たちの集まりに文科省がなるということです。だから具体的に政策をつくるかどうかというのは、そういう集団になれば政策は出てくるわけです。だから、重要なことは文科省自体がそういうふうに変わることだと思う。
つまり、エビデンスが与えられたら新しい政策をつくりますという意識ではなくて、自分たちはこういうふうに日本の科学技術・イノベーション政策やシステムを変えたいから、そのためのエビデンスを研究者と一緒になってつくるとか、一緒に研究するとかという意識を持つ集団になるのが一番重要です。それができなくて、受け身で政策をやるわけではない。霞が関の行政官というのは、自分たちがこういう社会にしたいというものがあって、それに対してエビデンスを求めに行くことが大切です。それがまさにこの共進化事業であって、研究者と一緒になってやっていくというのが、私はこの事業の本来の目的だと思う。
だから、コミュニケーションによって何かやるとかというのも重要ですが、文科省自体がそういう研究集団、エビデンスに基づいて政策をつくることを主体的にやっていくような人たちに変わるということが極めて重要だと思います。
私は研究者側です、私は行政側です、ではない気持ちが本当に重要です。まさに学問領域としての発展も、文科省の行政官がどんどん学会に参加して一緒にやるようなことが起きるような、そういう文科省自体の改革が必要だと思います。
実際、いい研究をしてください、いい研究成果が上がったら政策を変えますよと、そんなものではいつまでたっても共進化や、一緒に政策なんてできないわけです。この目的はいいエビデンスをつくってくれたら政策をつくるというように読めます。そう考えると、本事業の具体的な成果というのは、行政官の意識が変わり、行動が変わることが大きな成果だと思います。
具体的に共進化で何か政策ができますか、できましたかと問うこと、それはなかなか難しいことです。新しいことはなかなかエビデンスが得られないわけです。エビデンスがあったって変えようとしても反対する人が多い。つまり新しい政策をつくるのはイノベーションと同じです。いい政策ほど反対者が多いのです。これがイノベーションです。そのことも考えて、簡単に新しい政策ができるとかということを言ってしまうのではなくて、それを目指して行動する行政官が増えれば、私は大きな成功だと思います。
以上の観点からこの目的・目標が人ごとになっているのではないかと思った次第です。

【有信主査】
ありがとうございました。たしか中間評価の中でも、言わば人材育成に関してはキャリアパスの話だとか、相互に人材をローテーションさせるだとかというようなことも書いてあったような気がするのですけれども。今の田辺委員の御指摘に関わるような話につながっていくだろうと思います。
ほかに御意見等ありましたらどうぞ。

【奥和田委員】
これはちょっと全体的に基本方針をコンパクトにしたということで、落ちてしまったということもあるのかもしれないですけれども。経緯といいますか、そういうところがちょっとあっさりしてしまっています。最初の目的とか経緯があっさりしてしまったので、ちょっとそういう印象を受けてしまうのかもしれないです。
この事業は、科学技術・イノベーション政策のための科学が必要だということの概念としては、基本計画や何よりもむしろ先行して始めたという面があると思います。基本計画に書いてあるからやるというように読めてしまうような文章になっているのですが、そうではなくて、このプログラム全体がこういうものをリードしていく姿勢を見せないといけない、見せ続けなければいけないのかなと思います。例えば、5期と6期に書いてあったからやるというように読めるのですが。そうではなくて、これらを先行するかのように、では次はどうするんだという議論につながるように進める、というような気概がないと。何か書いてあるからやるというふうにどうしても見えてしまいます。そうしないと次の基本計画の議論なんていうものは、そこから湧いてこないわけですよね。現行のものに書いてあるからやるというのでは多分次の議論につながらないのです。やはり、科学技術・イノベーション政策のための科学というものを全体的に先行して推進していくんだ、という気概を、もうちょっと最初の部分で見せていただきたいなという感じがいたします。
その部分がコンパクトになったから薄まってしまったのか、消えてしまったのか、今はちょっと感じられないような文章になっている気がいたします。事実上なかなかそういうことを実行するのは難しいんですけれども、そういう気概で進めていかないと、何かビハインドみたい感じになると、今までのとおりでいいんだというトーンに、あるいは今までと同じようなことをやれば同じような評価が受けられるんだと研究側も見てしまうかもしれません。その辺を、この文章で見せていただきたいかなと思います。

【有信主査】
ありがとうございました。第6期からまた次期に向けての備えというような書き方も一部あったような気もするのですけれども、その辺をもっとしっかり、6期の基本計画に従ってやっているという感じではなくて、もう少し主体的に書きなさいという御意見だったと思います。
ほかに御意見はありますでしょうか。

【小林委員】
今までの話とも関連するのですけれども、この事業を歴史的に振り返ってみると、当初は基本計画の原案の作成を文科省がする権限というか、そういったものが一応法律上規定されていたわけですよね。それが2014年に総合科学技術・イノベーション会議ができたときにそれがそちらのほうに回って、そういう意味で言うと、政策形成におけるこの事業の位置付けがおそらく変わってきたのではないかと思うんです。この文章の中では基本計画の話が陰に陽に出てきていて、できればそういう計画作成・策定に貢献するようにというような感じの書きぶりだと思うんです。ただ、現実問題としては総合科学技術・イノベーション会議が独立に議論する形になっているわけですし、そこに結びつけることがなかなか難しい現実もあるのではないかと思うんです。その辺りをどういうふうに考えるのかということが一つ大きい問題だろうという気がします。
それとともに、今度は文科省の立ち位置の問題ですけれども、学際的な活動としてやっていくためにはやはり問題を共有していくことが重要で、それで共進化という話にもなったとも思うんです。問題を共有するにしても、今の政策の進め方について文科省が何らかの形で方向性を決めるかというと必ずしもそうではなくて、科学技術・イノベーション基本計画があって、その下で文科省のいろいろな事業が行われるような形になっていて、ここが多分スタートした時点とはかなり違ってきているのではないかと思うんです。そうすると、文科省と大学・研究者等がどうやって協力するかという点についても、文科省の立ち位置が従来とは変わってきている、当初と変わってきたことを考えると、結構厄介な話ではないかなという気がします。
つまり、文科省として課題を共有しながらいろいろな活動をしても、必ずしもそれが政策に結びつかない可能性も出てきている。それを今後5年間でどういうふうに解決していくのかというのは結構厄介な問題かなと思って聞いておりました。どうしたらいいのかという答えがないんですが、この辺りの歴史的な経緯も踏まえないと難しいのかなという気がしました。
以上です。

【有信主査】
結構厄介な問題ですよね。

【小林委員】
そうですね。

【有信主査】
これは確かに、もともとは科学技術・学術審議会の中で検討されていたのが、完全にそこを離れたということ。ただ、科学技術政策そのものは実はかなりの部分がまだ科学技術・学術審議会の中で議論され整理されて出ていっていると思います。最初にあった田辺さんの御指摘は、そういう中で文部科学省としては政策形成の主体として一体どうするんだということ。こういう状況を全体としてしっかりリードする立場で引っ張っていくような姿勢を鮮明にしろという立ち位置でのお話だったと思います。

【田辺委員】
一言いいですか。今回の第6期科学技術・イノベーション基本計画を読んでも、大きなところは確かに内閣府ですけれども、具体的なところは全部各省の持ち寄りでもあり、本当に寄せ集めです。だから具体的な政策になると、やはり各省で考えておかないと、基本計画自体も私は中身がなくなると思いました。

【小林委員】
それには賛成で、その中でどういうふうにこのSciREXなり文科省が方向づけしていくのかを考えていかないといけないということだろうと思います。どんどんリードするというのは、僕は個人的には賛成なんですが、なかなか難しい状況だなという気もしています。
取りあえず以上です。

【有信主査】
どういう形で立ち位置を明確にすればいいかということですよね。
ほかに御意見ありますでしょうか。

【長岡委員】
大きく2点ですけれども。一つは共進化について、中間評価を見ますと、短兵急といいますか、短期に成果を狙うことを求めているように思います。政策の科学を含めて、もともとサイエンスというのは、時間がかかるものですし、進化という言葉自体、そういうことも当然意味しています。例えば現実にエビデンスを集めるにしても、エビデンスの有効性を判断するにしても、時間がかかりますよね。政策と研究が非常に短期間にうまく共振して物事が実現するのは、稀な例外はあるかもしれませんけれども、実際にはなかなかそれはできないのではないかと思います。
ですからそういう意味で、共進化を求めるのは最終ゴールであって、そのためにはかなり時間がかかる過程であると認識する必要があると思います。私はこのプロジェクトでいろいろなエビデンスが集められるようになってきて、それは長期的にいろいろな資産として活用できるのではないか、それは長期的に政策形成の方にも非常に役に立つものになっていくのではないかなと思います。そのために、やはりエビデンスが吟味されて、有効であることについての理解も進まないといけませんよね。誰もが納得できる、まさに客観的エビデンスの構築ということです。
また、政策とサイエンスがあまりにも近づくと、ためになるエビデンスをつくってしまうという、そういう危険性も逆に出てくるんですね。ですから、やはりサイエンスとしてのインテグリティー、これはきちんと守った上で共進化を進めていかないと客観的なエビデンスにはならないところがすごく重要です。政策担当者としてはすぐに効果を出してほしいということになっていくんだと思うんですが、私は、そこは少し我慢していくことが、政策当局にも、本プログラムを支援していただいている財政当局にも求められるのではないかなと思います。
ですから、最終的なプログラムの評価ということもあるんですけれども、共進化で短期的な成果をどんどん出していくことよりは、長期的であっても政策形成に役立つようなエビデンスがきちんと集積して行く仕組みができる、それを推進するプログラムになっていくことが一番現実的でいいのではないかなと思っているのが第一点です。
それから2番目は、ポジティブに評価されているのがネットワークですけれども、現状は5拠点の大学が主になってやっていて、しかも学内の拠点の部署の方が主な担い手です。ただ、当初はRISTEXは公募型でたくさんの人がアプライして、研究に参加していたんです。私はそういう意味では、この15年の後はやはりコンペティティブ・ファンディングが中心になっていくのではないかと、そうすべきではないかと思っております。そういう意味でコミュニティーというのも、実際、現時点では狭いコミュニティーです。やはりいろいろな分野の人が、若手も含めて、あるいは世界のコミュニティー、そういうところとのリンクも含めて、もっとコミュニティーを広げていく、リサーチに参加する人を広げていくことがすごく重要ではないかなと思います。
拠点は核としてもちろん重要でありますが、拠点のほかに、経済学でも法律学でも社会学でも、サイエンスとイノベーションは非常にたくさんの問題提起をしており、そのリサーチの機会は多様で、いろいろな専門性を持った人が活躍できる分野だと思うんです。ですから、リサーチコミュニティーを拡大していくというのが、やはりすごく最終的なゴールとして重要ではないかなと思います。
世界的には、例えば米国では基本的にはコンペティティブ・ファンディングでやっているんですよね。国際的なカンファレンスとかそういうものをやって、過去の成果を国際的な場で相互に検証し、今後の在り方も検討するといったことも一度必要ではないかなと思っている次第です。

【有信主査】
どうもありがとうございました。知的基盤と知的インフラのネットワークをどういうふうに整備していくかという話と、これを最終的には田辺さんの御主張のような部分にうまくつなげていくことができるといいかなという気がします。
小寺委員は2時までということになっているそうなので、もし御意見があれば今のうちにどうぞ。

【小寺委員】
ありがとうございます。
ちょっと中身に入って意見を述べると、人材育成とか3つのプログラムが動いていたのですけれども、やはりたくさん育成されて社会に出ていった人たちが今どういうふうに動いているのか。こういうプログラムの中で10年間育ってきた人、それとかそこで議論されたことがちょっとずつでも政策の形成または研究の現場へちゃんと反映されているかどうかというところを、ちゃんとフォローアップしていく。そのフォローアップしたものを対外的に発表していくことが重要ではないかなと思います。
3つのプログラムが動いていましたけれども、その部分は小さいのですけれども、それぞれ小さい中でも効果は徐々に出てくるはずで、少しずつでも予兆が見えていくところをどういうふうにこのSciREXの事業として文部科学省がつかんで、それを外へ出していくか、外へ発表していくか。そういう視点でいかないと、やはり動いてきたそれぞれの機関・拠点は次への持続性を持って展開できなくなるということです。
ですから、やはりこういう長いプロジェクトで、考え方を変えるプロジェクトですので、その部分のフォローアップをどこがするのかということを、することも書かれていないし、やはり誰がするのかということも書かれていないので、その部分を明記していく必要があるのではないかと思います。
以上です。

【有信主査】
ありがとうございます。確かにそこの部分は重要だと思いますけれども、この辺に関して文科省サイドは何か考えているんでしたか。

【中田企画官】
お答えします。今、まさに小寺先生がおっしゃっていただいたところは、現時点では書かれていないと思いますので、何かしら書かせていただくのかなと考えます。
また、先ほど申し上げたように、我々、最終的にはまた外部評価をやりますということは書かせていただいておりまして、その中できちんとそれらの成果がちゃんとどこに出てきたのかを含めて見ていくことになるのだろうとは思っております。ただ、書きぶりが多分足りないところはあると思いますので、その辺りは検討させていただければと思います。
それから、せっかく発言の機会を頂戴しましたので少し戻りますけれども、先ほど、内閣府と文科省の関係が変わったというところでいろいろ御議論があったかと思うのですけれども、そこら辺はまさに御指摘のとおりですが、最後、田辺先生におっしゃっていただきましたが、結局最後の具体策は各省の施策がベースとなるというところは、我々文科省としてそこは重要な、我々の立ち位置として重要なよりどころになるだろうとは思っております。やはり基本計画の中で書いてあるところの一つ一つを見たときに、どこの省庁が中心的な役割を担うのかというところで見たときには、やはり文科省の担う役割は大きいと思っておりますので、確かに基本計画の執筆権限は内閣府に移行したかもしれませんけれども、それだけをもって我々が、基本計画で、内閣府の方針の下に単なる一部隊だということでは必ずしもなくて、そこはもう少し気概を持ってやっていきたいなとは思っております。
以上です。

【有信主査】
ありがとうございました。今の点も踏まえて御意見等ありましたら、どうぞ引き続きお願いします。

【狩野委員】
先生方の御意見も伺いながら、どういうものが理想かなと思いながら伺っておりました。
まず一つには、文部科学省の皆様方の中に、研究は研究機関や研究者がするもので、行政側はそれをサポートするのが役割である、という頭の整理が今までおありかと思います。それがこの書面にもちょっと引き継がれているのかなということを思いました。他方、実際、この共進化を本気でやるとすると、官側の皆様もエビデンスが必要な課題を研究側にインプットし相互作用しに行くことが継続的に起こらないといけないという面があると思うところです。ですから、「自立化」という文言は昨今よく聞くわけですが、「共進化」という枠組みの「自立化」の裏側に含まれている、しなければいけないことの中に、官側で、エビデンスが必要な課題を見いだして研究側にインプットし、また研究側と相互作用するという仕組みについても、自立してもちゃんとそのまま回っていかないといけないことが入っていると思われるわけです。
これをどういうふうにして、現時点ではそういう状況にない、あるいは、なかった、行政側をはじめとする方々も御一緒になって回っていかせるか、についても検討の必要があるかと思います。それがないと、この「共進化」の「自立化」とは言えないのかもしれなくて、ここをどうつくるのかという疑問がまず一つあるのかなと思っております。
さらにその時に、いわゆる「研究拠点」といわれるところだけが支援されればいいのかというと、多分そうはいかないかもしれません。例えば、課題と研究側のマッチングの機能も要るかもしれません。あるいは、私どもが今、果たさせていただいているようなアドバイザリー機能ももしかすると引き続き要るのかもしれません。でもそういうものに対して必要な予算であるとか、自立化というのは一体どういう意味なのかというのは、これまでのスキームですと、すぐには分かりかねるところもあるので、検討が要るかなということは思いました。
もう一点、この自立化に関係して申し上げます。新しいプレーヤーの参入はどうするのかとか、あるいは人事交流についての議論も今までにもあったところです。特に新しいプレーヤーの参入ということを考えると、どうしてもこういう活動を経験し身につけた人材は、一体どこで働けるのかとなります。先ほどちょっと議論がありましたが、こういうことについても大学側だけが、あるいは研究機関だけが考えればよいかというと、そうもいかない感じもいたします。例えば今日はNISTEPの皆様も御一緒ですけれども、そういった枠組みの中で何か回していけることがあるのかとか、あるいはそういう機能を拡張していくような形での自立化があるのかどうかとか、こうした検討も要るのかもしれません。NISTEPだけではなくて、いろいろなシンクタンク的な活動や試みがあると思います。こういう取組との関与などについても検討しないと、多分今回の中間評価で言われている、いわゆる共進化の拡大と自立化が進んでいかないのかなということを思いながらお伺いした次第です。
いろいろ難しいことを申し上げたかもしれません。誤解のないように申し上げると、難しいからやめたほうがいい、という意味では全くありません。この取り組みは、大事なことだからぜひやろう、続けたほうがいいと思っているのです。けれども、なかなか今申し上げたようなことが、今までの研究側と行政側の果たしてきた役割構造とは違うところとしてあると思いますので、これを十分に留意しながら進めていく必要があろうかということを思った次第でございます。
まずは以上です。

【有信主査】
ありがとうございます。だんだん話が核心で難しいところに来ているような気がします。最初に田辺委員の御指摘にもありましたけれども、やはり共進化という意味では、政策側の仕事もある意味創造的でなければいけない。創造的な仕事は当然リスクを含む仕事になってきて、その創造的な部分で研究側の創造的な部分との間での共進化があり得るだろうということで話を進めていく中で、役所サイドが役所の従来のやり方にとどまっていては困るというような意見もいろいろ出てきたのだろうと思います。そういう意味では、文科省にとってはかなり厳しい宿題を背負わせるような御意見が多かったような気がしますが。
伊地知委員、今日は発言がないんだけれども、何かありますか。

【伊地知委員】
ありがとうございます。いろいろと各委員のお話をお伺いしていて重複するところもあるかと思うのですが、5、6点簡単に申し上げたいと思います。
まず、奥和田委員がおっしゃったところでいうと、たぶん現行の基本方針の最初の2段落が落ちてしまったというのが、今回の改正基本方針案のおそらく一番もったいないところではないかと思います。そういう御趣旨なのかなと思いました。
その後は小林委員がおっしゃったところで、私もそう思ったのですけれども、実際の政策形成の現場あるいは内閣府と文科省のありようが変わってきた中でどうかということですが。この事業がやはり基本は公募型研究開発も含めて人材育成と基盤的研究、あるいはデータ・情報基盤というところにあるので、それはどうであったとしても、例えば研究や教育と関わっているということになるので、文科省としてそういうところを今後も展開していくということはできるのかなとは思いました。
その後に、共進化に関する議論が非常に出てきていると思います。私、例えばRISTEXのプログラムにも関わらせていただいて、いろいろとお手伝いをさせていただいていますけれども、そちらでも新規に共進化枠というものが入ってきました。いろいろあるのですが、一つには非常に研究者は政策あるいは政策形成に関してナイーブであると思います。政策担当者の側も実際に、これも非常に大ざっぱに言いますけれども、担当しているところは対応できるけれども、それを超えたような幅広い観点までは持っていない。非常にそこに幅があって、そこを埋めることを、例えばRISTEXであるとすればプログラム運営側が行い、それから人材育成拠点を含めた中でされているところでは政策科学推進室がされていると思うのです。そういった取組をする中で、今、狩野委員もおっしゃったと思うのですけれども、単に両方がコミュニケーションするというのではなくて、本当に共に研究をするということが行政側にも求められるし、それから逆に言うと研究者の側も共に政策をつくるというぐらいでないと、まずはなかなかかみ合ってこないのかなと思うのです。
ということからすると、ここの今ある文言の書き方としては、双方向のコミュニケーションによるというのではなくて、今申し上げた、もう少しお互いがお互いに染み込んでいくような、そういった書きぶりもあるのかなと思いました。
あと、RISTEXのところと人材育成拠点に関して併せて言うと、RISTEXのほうはかなり人材育成拠点とは違った機関に所属される方が応募されて、実際活動されてきていると思います。特に第2期の場合は重複排除があって、人材育成拠点の方が基本的には応募できないような形にはなっていると思うのですが、そういうこととは全く別に、実態としては人材育成拠点とは違った方がかなり入ってきています。
それから、STI政策というように狭い意味で限られずに、政策の科学ということでそこに関心がある方が入ってきているということで、そういった広がりは出てきていると思います。ただそのことは逆に言うと、現状の人材育成拠点の方はもしかしたらあまり御存じでないところもあるかと思いますので、これは既に検討されているところかと思うのですが、この事業全体の中でいうと、RISTEXの事業と人材育成拠点の中の相互のつながりをもう少ししておいてもいいのかなと思った次第です。
私からは取りあえず以上になります。ありがとうございます。

【有信主査】
どうもありがとうございました。
それではまだ発言されていない吉本委員は、もし御意見があればどうぞよろしくお願いします。

【吉本委員】
6ページ目の最後に学際的領域としての発展・深化とございますが、今後についてもうちょっと踏み込んでいただいたほうがいいかなという気がいたします。学際的というのは10年以上前から言われていることで、現状、政策も学際的でなければほとんど意味をなさない状況にあります。学問分野の連携ではなく課題解決に向けた学際領域として発展するというのは、今後の宿題というよりも、既に現在進行形のことではないかと思うんです。
最初に田辺先生からございましたように、「政策のための科学」は行政の方の積極的なアクションが重要だと思います。最後の学際的領域のところで、引き続き研究者がそういう姿勢でコミットするのを期待する、といった書かれ方をしていますけれども、むしろ行政のほうから研究者に強く働きかけていくところが重要ではないかと思っています。
そして、有効な施策を打つには、今はもう省庁横断的でなければまともなイノベーションには取り組めないのかなと思います。一番できていないところが、学際的というよりも、むしろ省庁横断的な取組であって、そういったところに本格的に「政策のための科学」は踏み込んでいきます、ぐらいのことを文科省として書いていただき、できればそういった取組姿勢を示していただきたいなと思っています。
一方で、これからはNISTEPさんが取り組まれているデータ・連携基盤がとても重要になると思います。NISTEPではこつこつと、なかなかないようなデータ基盤をつくってくださっているわけですけれども、こここそ、使えるデータ基盤にしていくためにも、文科省内にとどまらず、まさに省庁横断的に踏み込んでやっていくところだと思います。文科省が率先してそのような取り組みを示しながら、こうやって「政策のための科学」を実行していきましょうと働きかける意味があるのではないかと思います。
シンクタンクとしていろいろな省庁と付き合っていますと、かなり政策や事業が重複しているように感じます。シンクタンクにとっては仕事になっていますけれども、財政がこれだけ厳しい中で同じようなことをこんなにいろいろな省庁でやっていていいんだろうかと思います。政策のための科学についても、今さらこのテーマをやるのかなと思えるようなテーマがあることも否めないです。限られたリソースでもっと大きなイノベーションにつなげるためには、こうした無駄を省き、まさに省庁横断的なところに踏み込んでいただきたいというのが一点です。
もう一つ、エビデンスを集めることはすごく重要だと思います。でも、先ほどどちらかの先生方からもお話があったように、今はエビデンスがないようなところにもどんどん政策を打っていかなければいけないと思います。社会実装型イノベーションという言葉があるように、どんどん市場に出してPDCAで高速に回していって、市場の反応を見ながらスピーディに進めていくべきものもあります。政策も同様です。エビデンスにこだわっていると次の政策が打てず、市場ニーズに迅速にこたえられません。
今後の課題としては、そういう形で今はエビデンスが取れないのだけれども、でもやはり政策を打ち込んでいかなければいけない、社会実装型で、高速でPDCAを回し、市場と対話しながら進めていく必要がある、そういう領域において、どうやって「政策のための科学」が貢献できるのか。そういうテーマを今後の課題として取り上げていただけるとよいのではないかと思います。

【有信主査】
どうもありがとうございました。最初の話はいかにもそのとおりかなと思いますけれども、対応は極めて難しいかなということで、これはどういう形で書き込んでいくかということだろうと思います。ありがとうございました。
専ら今、内容の議論になっていますが、特にガバナンスとかそういう点でも指摘があって、それに対しては基本的にはあまり今の体制は変えずに、その中身を変えていきましょうと、こういう話だったんだけれども。中間評価の結果では今のガバナンス体制が形骸化するのではないかというような危惧もあって、この点については何か十分書き込まれているのかなという気はしたんですけれども。何か御意見のある方はいらっしゃいますか。

【狩野委員】
例えば行政側の皆様が何か研究側に尋ねたい疑問をお持ちになったとします。また研究側も、もっと人材層が厚くなった状況を想定します。そうすると、行政側の疑問を、不特定多数の研究者に対して示して、何か研究側から答えの提案を待つ、というタイプのやり方になるかと思います。この場合は、これまでの公募研究と変わらないといえば変わらないところもあるのだと思います。けれども、でも、それによって「共進化」したい、ということは、そこで行政側と仲間になった研究側の人々を、一緒に政策形成にも関わっていってもらうというふうに立てつけていく発想も一つあるとは思います。そういう発想で、このガバナンスをつくっていけるでしょうか。
あるいは現状ですと、そういう意味でいうと、研究側の参加プレーヤーは限定されていて、その中で行政側がうまくつながれそうな研究側の人がいたらつながっていく、というやり方になっているわけです。そのほうが信頼形成は、しやすいのかもしれません。が、こうした限られた研究側集団を中心にしたやり方というふうにガバナンスを考えていくのか。こうした点は、例えば共進化において考えられる視点かもしれません。
それから今、吉本委員のお話を伺いながら思ったことですけれども、エビデンス形成をどの程度の範囲に求めるのかということについても、実は行政側の皆様からのお題が、そのまま研究側で意味があるお題になるとも限らないときがあります。いわば現場のクエスチョンと、研究のためのリサーチクエスチョンの違いです。それらが違う場合の公募は、一体どういうことにするのか。公募ということは、選ばれる・選ばれない、つまり勝ち負けを決めるわけですけれども、どういう基準でどんな人だったら勝ちの範疇に入り、どういう人だったらそうでないほうに入るのかということも、一緒に考えていかなければいけないことだなと思いながら伺った次第であります。
ちなみにエビデンス形成が必要なもの、未来に関してというところで申し上げれば、エビデンスが存在する範囲における現状認識あるいは過去の認識について正しいかどうかはエビデンスで固めるけれども、その結果として導かれてくる未来へのシナリオは、未来そのものにはエビデンスはないことを両方がよく分かった上で政策形成をしていくことも必要かと思われます。例えばこういう思考枠組みみたいなことについても官と学で一定程度共有できなければ先に進めないわけです。
こういうところの、今、有信先生がおっしゃった言い方で言うと、ガバナンスをどうしていくんだろうかというのは、恐縮ですが、ちょっとまだ良い御提案ができないまま、今のコメントではあります。ただ、今みたいなことは考えながらガバナンス体制は考えていく必要があるであろうと思ったもので、インプットとさせていただきます。
少々長くなりました。失礼しました。

【有信主査】
ありがとうございます。今の話は極めて重要で、エビデンスが未来を語るということはないんですね。おっしゃるとおりで、エビデンスは常に今までの関係あるいは事実を語るだけで、それから先の未来に関しては言わば創造力の部分で、そこの部分は新しい手段が必要。何ていったらいいんですかね、現在が未来を語ることはない。そこはトラジェクトリー、ある種の言わば理論なり論理展開なりというようなことが必要になってくる部分になるので、そこはやはりエビデンスベーストというときに一番きちんと押さえておかなければいけないところだし、データを山のように集めたところで、そのデータが未来を語るわけではないこともよく自覚しておく必要があると思うんです。ありがとうございました。
ほかに御意見がありましたらどうぞ。

【奥和田委員】
ガバナンスについてのことですけれども、ガバナンスの体制が、この事業の継続の中で一定でなければいけないということは、私は基本的にはないと思っております。事業が進展していくに従って、あるいはその事業の置かれている状況が変わることによって、ガバナンスの役割が変化しても、それは当然のことかなという認識が私にはございます。
それで、例えばですけれども、このアドバイザリー委員会が各プロジェクトに対してアドバイスをするという役割が非常に増しているように感じておりますけれども、それもむしろ好ましいことかもしれない、と私は思っております。
例えば先ほど長岡先生の御懸念にありましたように、EBPMをやっているはずが、特定の考えを持った政策に非常に都合のよいものになってしまったりするという御懸念とかもあると思います。そういうものを、監視していくといったら語弊があるかもしれませんが、その公正性や正確性みたいなもの、あるいは妥当性みたいなものを、このアドバイザリー委員会のような、あるいはそのほかでも構わないのかもしれませんけれども、ガバナンス体制がしっかり見ていくことも、ガバナンス体制に新たに求められていることなのかもしれないと思います。
ですので、例えばそういうことをしっかり見ていく、というようなことをここに書き込んでいただければ、ガバナンスの新たなというか、本来持つべきものであったのかもしれませんけれども、役割の一つなのではないかなと思われます。それだけではないかもしれませんけれども、ガバナンスの役割を新たに増やしていくこともあるかとは思います。

【有信主査】
ありがとうございました。中間評価で指摘されているのも、ガバナンスがきちんとしていないという指摘ではなくて、将来にわたって形骸化しないようにという御指摘だったように思いますので、今の御意見はそのまま承ることになると思います。ありがとうございました。
ほかに御意見はありますでしょうか。
随分いろいろ御意見をいただいて、文部科学省にとってはかなり厳しい御意見もあったような気がして、これをどういう形で書き込んでいくのかなというのは多少心配になることはありますが。今のような御意見を踏まえつつ新しい基本方針を改定版としてつくっていただくということで、文科省のほうはそれでいいですか。とてもこんなものには対応できないというような話があれば、ぜひ今のうちに議論しておいたほうがいいと思いますけれども。

【中田企画官】
今の段階でどれが確実にとてもじゃないけれどもできませんというのは、なかなか具体的に申し上げるのは難しいですけれども、いずれも重要な御指摘だと思っております。ただ、今回、基本方針はあくまで15年の残りの5年の基本方針という形になりますので、そのスパンの中でどこまで書き込めるかという問題はやはりあるのかなとは正直思います。ただ、いずれにせよ、なるべく取り込めるものは取り込んでということで今後改定作業は進めさせていただきたいと思っております。

【有信主査】
それではそういうことで改定を進めさせていただければと思います。何か御意見はありますでしょうか。
それではいろいろ貴重な御意見をありがとうございました。
それでは続いて次の議題に進ませていただければと思います。今年度から開始されています共進化実現プログラムの第2フェーズについて、先日アドバイザリー委員の皆様方には各プロジェクトのメンバーとの意見交換会を行っていただいています。意見交換会における質疑応答の様子を踏まえて、12月の進捗報告会に向けてプログラム全体の運営について議論いただければと思っています。それでは事務局から資料の説明をお願いします。

【中田企画官】
今度は資料3でございます。こちら、6月から7月にかけまして、アドバイザリー委員の先生方に多大な御協力を賜りまして、意見交換会を開催させていただきました。本日はその意見交換会の状況を踏まえて、今後どういうふうにプログラム全体の運営としてやっていったらいいかということを、ざっくばらんな御意見として頂戴できればというのが趣旨でございます。
一応、私から資料3に沿って御説明させていただきますけれども、別途机上資料といたしまして、それぞれの意見交換会でどのようなコメントが出たかを整理したものをお配りしてございますので、そちらも適宜御参考にしていただければと思います。
資料3ですが、1枚めくっていただきまして2ページでございます。今後のスケジュールを一番下に線表のような形で書かせていただいております。次のイベントといたしましては、11月から12月にかけて今回と同じような意見交換会を実施させていただければと思っておりまして、その上で年内に次回のアドバイザリー委員会を開催させていただきまして、進捗の報告のほか、次の年度に向けてどうしていきますかというものを御議論いただければと考えております。それからまた3月には成果報告会も考えております。
こういう全体のスケジュール感がある中で、今回、各プロジェクトに担当の先生方を張りつけて御担当いただくやり方を初めて実施した形になりますので、次に3ページになりますけれども、そういう新しい運営手法を取り入れたところでもございますので、先ほども申しましたけれども、今回は今後どういう進め方がいいかということをざっくばらんに御意見としていただければというところです。
特に論点(案)と書かせていただいて、あくまで案ですけれども、1ポツで書いてあります研究プロジェクトの状況ですと、それぞれ共進化のためにどういうふうにさらにやっていくことが望ましいのか、あるいは研究者、行政官、ここをどこまで明確に本当に区別するのかという問題も先ほどの議論だとあるのかもしれないですけれども、その中でそれぞれにどういうことをより期待したいということがあれば、御意見として賜れればというところでございます。
それから2ポツの事務局の運営についてということです。先ほども申し上げたように、今回初めて担当のアドバイザリー委員を決めさせていただいて、意見交換会をやらせていただいたのですけれども、それを踏まえて、今後の運営としてどういうところを改善できるかとか、個別のプログラムの進捗により有意義な形で反映していくためにどういう取組があったらいいかとか、それから事務局にもっとここら辺を頑張れとか、そのようなことがあれば御意見を賜れればと思っております。
最後、※印のところに書かせていただいておりますけれども、個別のプロジェクトについてああすべき、こうすべしというのは少し脇に置いていただいて、なるべくプログラム全体に普遍的に言えるような御意見を中心に賜れればと思っております。個別のプロジェクトに関する御助言については、今回のアドバイザリー委員会のような場に限らず、随時事務局に御連絡いただければ、それはそれで事務局で対応させていただきたいと思っております。
簡単でございますが、私からの説明は以上になります。

【有信主査】
どうもありがとうございました。
それではこの件に関しても少し時間を取って議論していただければと思います。御意見、御質問等がありましたらどうぞ、どなたからでも。

【狩野委員】
まず研究側、行政側、それぞれにさらに期待したいことがあるかという御質問について考えを少し述べます。私は行政側ではないので行政官の皆様に対する期待をまず申し上げると、「エビデンスを必要とする内容は何なのか」ということについて思考を進める教育というのは、一般に多分我が国ではあまり初等中等教育ではないのかもしれなくて、その辺りの思考を共有できる方々のプールが、行政側でも必要なのかなということを思ったりはいたします。
要は、役割でその部署にお越しになる制度だと思いますが、お越しになってすぐに、前の担当であったかたが興味を持って進めようとしていたことまでも引き継げるかというと、拝見しているとなかなか難しいかなと思うときもあるわけです。つまり、これまでの行政の立てつけが、個人ではなくて役割で皆様動いてこられたわけですけれども、若干、この個々人という要素を引っ張るような仕組みにもしていかないと、今回の枠組みは回りが難しいときがあるのかもしれないと思っております。
これが、行政側におられるどなたも同じように、エビデンスを使い、あるいは尋ね、そして一緒に育てる方法を、一種のリテラシーとしてお持ちであれば、また役割だけで回っていくかもしれません。ですが、その状態に達していない段階では、そういうことをよりよく理解しておられる方のプールみたいなものがもしかして必要かもしれないと存じます。そうするとそのプールにおられる方々が、場合によっては他省庁に御異動になることも役割としておありかもしれないのだけれども、それを上手にかえって活用して他省庁連携みたいなものが広がっていく可能性も考えてみていただけるのがいいのかな、というのは一つの期待であります。
他方、研究者側はそういう意味で言うと、こういう進め方に慣れておられる方々が多いので、もしかするとあまり大きな期待というわけではないのかもしれません。けれども、行政側の皆様の熱意のポイントを上手に拾えるかという点では、もしかするとインタビュー研究などを手法として普段しておられない方々は、相手の話を熱意のポイントを探るようにしてはお聞きになっていない場合がありうるかと思います。行政の相手がたが一体何を大事に考えていて、だからどんな展開をすると研究側として応えられるようなものになって、なおかつ研究側の自分の興味にも合うようなものになるのか、ということを考えていけるような人々の集団も、今後必要になるのであろうと思います。そういう人々が増えて行くということを、期待したいと思っております。
2番目は簡単に申し上げます。このアドバイザーの役目はなかなか微妙でありまして、私などは例えばこうした「政策研究」の専門家というわけではありません。そういう意味での専門家ではない人間として、一体何を「アドバイス」するのかという点です。これについてはあまり明確でないこともあって、先生によってはもしかして非常に頑張って、こうしたほうがよいというコメントをされているかもしれませんけれども。
この段階でアドバイザリーは、「こうしたほうがよい」というようなことを言うためにあるのか、あるいは何か、研究をやっている、研究の素養がある第三者として内容を聞いていて思いついたことを、こういう点はどうですかと、問いかけることがアドバイスになるという立てつけがあれば、それもよいかもしれません。つまり、「こうしなさい」と言うようよりは、「ここはこういうふうに聞こえたんだけれども、意図に対して適切さはどうですか」とか、「方法はそれでよさそうですか」とか、「どうして、よいのですか」とかということをお伺いするのが、もしかすると、「アドバイザー」とは書いてあるけれども、「伴走者」みたいなものとしての役割と規定されていると、よりその役割を果たしやすいということはあるかもしれないということを思って、提言させていただきました。
以上です。

【有信主査】
ありがとうございます。確かにアドバイザーの立場は難しいですよね。
ほかに御意見、御質問等がありましたらどうぞ。
結局は、今のアドバイザーの方々はどちらかというと研究者の立場に近い方がほとんどなので、基本的には行政的な視点で考える考え方ではないわけですよね。だからその中でどういう形でアドバイスをしていけるかというので、言わば研究側のアドバイスをしていくというスタンスでいいのか。あるいはそこにどういう立ち位置を入れて検討していけばいいのかということはかなり考えなければいけない話です。どうなんですかね、その辺のところは。行政のプロとして文科省側は何か意見がありますか。

【中田企画官】
すみません。私は個々個別の実際の意見交換会がどのような形で進められたのかというのは、一つの例もまだ見ていないものになりますので、直感的なお答えにどうしてもなってしまうのですが、やはりアドバイザリー委員の方にアドバイスいただく立場というのはどうしても研究者側の立場、あるいは研究指導のような立場になるのは致し方ないことでありますし、そもそもやはりそれは我々が期待している部分の大宗であろうとは思っております。
一方で、では行政サイドのフォロー、あるいは行政サイドから見たときの進捗をよりよくするためのフォローアップとして適切なのかというところにつきましては、別途、先ほどお話があったように、例えば人が替わったときにどうするのかというところと一緒の問題でして、結局、組織的に、今回共進化プログラムでやっている課題が、確かに形式としてはある人に張りつけてプログラムとしては採択してございますけれども、その中でその人の問題意識がそれに対応するということで終わりではなくて、そこに対してやはり組織として共通の課題認識が裏打ちされていて、そこが継続的にインプットされる、あるいはその政策を実施する現場の政策サイドを取り巻く状況の変化に応じて、問題意識の適切なアップデートというようなものが打ち込まれる、そういう体制をいかにつくっていくのかというところに収れんされていくのかなとは感じております。
ほとんどまだこの分野に携わったことのない身のものではございますけれども、やはりアドバイザリー委員の先生方の御専門、あるいは専門的な知見を越えてアドバイスをいただくということはできないし、その足りない部分は文科省側で補っていくべきものだろうとは思います。

【有信主査】
ありがとうございます。別に専門性にこだわってアドバイスをするとか、それを越えてアドバイスをするとか、そういうあまり大それたことではなくて、私たちが心配しているのは、我々がどういう観点でアドバイスができるのかなということです。個別の研究課題に関しては、アドバイザリーの委員の方々はどちらかというと研究サイドとはいえ、個別の研究アイテムに関してのプロフェッショナルではない側面もまた別途あるわけですね。したがってより俯瞰的な立場から、あるいは自分が研究開発をやったり、研究開発のマネジメントをやったり、あるいはそれをある意味評価したりという、様々な経験に裏打ちされた中で、具体的なアドバイスをどうしていけばいいかと、こういう問題だろうと思います。
どなたでも結構ですので自由に御意見をいただければと思いますが。どうぞ、伊地知委員。

【伊地知委員】
ちょっとまた別のところでお話しさせていただきたいと思います。
今日はプログラム全体への共通的なコメントということで、実は難しく。個別のプロジェクトをお伺いして、やはりそれぞれのプロジェクトごとに特徴というか、あるいは課題とかそういうものがあって、それについてお話をさせていただきました。なので、それぞれに応じてやっていただくのがいいのかなと。
もしこの場で申し上げるのだとすると、あるプロジェクトに関していうと、どうも課題が、これは研究者の方が非常に、まだこれは1年目、半年ぐらいだと思うのですけれども、そういった中でもいろいろ取り組まれていて、その担当課の所掌を明らかに超える、しかし非常に重要な課題に当たりつつあるのです。そうすると、これをうまく進めるかどうかというのは、担当課を超えてどう行政サイドが、その見いだしている課題、将来的な政策イシューになり得るものをつかまえていくのかというところかと思います。そうすると、その部分はやはり事務局の方の役割が大きいのかなと思いますので、そういったところを既にされているのかと思うのですけれども、うまくサポートしていっていただくといいかなと思って見ているところです。
私からは以上になります。

【有信主査】
確かに。ほかに御意見はありますでしょうか。奥和田委員、どうぞ。

【奥和田委員】
ちょっと伊地知先生のお話にプラスアルファみたいなことになってしまうかもしれませんけれども、特にこの事業が非常に難しいのは、文科省の事務局の方ではないかなと私は思っております。というのは、要するに、運営といっても、プロジェクトの中を見るだけではなくて、それが妥当な組合せなのかとか、進展はどうなのかということを、そのプロジェクト内ではなくて、特に行政の方々がどうなのか、あるいは深化しているのかというところまでウオッチしなければいけない。ほかのプログラムではほとんどないだろうと思われることを要求されているのではないかと思います。
ですので、非常に難しいことを、御本人であったら大変難しいことだということは重々承知で申し上げますけれども、やはりそういうプログラムなのだということをちょっと意識していただく必要があります。そこにフリクションを起こすほどのことはなさらないで結構かと思いますけれども、ある程度は、介入まではいかないまでも、何かその内容に踏み込むところまで、運営側で見ないといけないのかなと思います。
同じ運営といっても、SciREXセンターはそういう役割は担えないと思います。こちらは、もし運営といっても、やはり研究者のネットワークですとか研究者と研究者外とのネットワークとか、そういうところをもっと担っていく運営をすべきなのかなと思われます。

【有信主査】
ありがとうございます。今回提案されているテーマも様々で、ある意味極めて直接的に政策に結びつきそうな課題設定になっているものから、実際に課題設定そのものが具体的にどう政策に結びつくんだろうというような感じのところまで、幅広くあったと思うんです。だから、これに対して我々がどういうふうにアドバイスをしていけるかということを考えていかなければいけないんだろうと思います。
続いて御意見、御質問等があればどうぞ。

【小林委員】
今後の運営とかを考えて、やはり去年今年のコロナの影響をつくづく感じるんですね。もし一堂に会して、あるいはそれこそ合宿形式で従来いろいろな活動もされたようですけれども、そういうものがあればもっといろいろな広い立場で議論ができて、細かいプロジェクトが縦割りにならずに、お互いに持っている知識を出し合って、もっともっといろいろな協力ができるのではないかなという気がするんです。
今の段階でそれを諦めてしまうのはもったいないので、今後の進め方に関しては、できるだけ何かそういうようなネットワークという言葉で言うと簡単なんですけれども、実際にはやはりそういう時間を共に過ごすこともとても重要なので、そういう運営の仕方をもう一回何かできないかなということを一つ感じます。
それともう一点、ちょっと余計な話ですが、これをどこで言おうかと思って考えていたんですけれども。直接はここと関係ないかもしれませんが、やはりいろいろな人に理解してもらうためには、今までもSciREXセンターでいろいろなものを見せたり公開したりということをしているんですけれども、そろそろ例えばこういうふうに政策に役立った例があるとか、そういうある種のインパクトレポート的なものをつくっていって、それを材料にしながらみんなに理解してもらう、あるいはそういうものをヒントにしてまた参加してもらうというようなこともしていくほうがいいのではないかという気がするんです。
従来型のプロジェクトの評価はある意味ではやはりちょっと収まらないときもあるので、内部でやるのか外部でやるのかよく分からないところがありますし、SciREXセンターがやるべきなのか、運営委員会がやるべきなのかよく分かりませんけれども、そういうようなアプローチもそろそろ考えないといけないのかなと思いました。
以上2点です。

【有信主査】
ありがとうございます。特に後半のお話に関しては結構いろいろな成果が上がっていて、それを言わば歴史的にきちんと整理し損なっている部分があるんですよね。だから、代替わりをしてしまうとそこの部分が忘れ去られてしまっていてというようなことがあって、多少もったいないなと思いつつ、何度かその指摘はさせていただいていたんだけれども、なかなか難しいですよね。結局過去の成果をまとめようとすると、成果を具体的にやった人はもういなくなってしまっている事情があるので、文科省側でそういう言わば過去の部分の成果の生かし方を継続的にやっていくのは、やはり結構難しいのかなという気がしますけれども。これはぜひ考えておいたほうがいいと思います。
ほかに御意見があればどうぞ。

【長岡委員】
SciREXだったと思いますけれども、従来行政官研修をやっておられたと思います。エビデンス・ベースト・ポリシー・メーキングの基本的な考え方とか、データでどんなことができるかというのを、もしこのプロジェクトに参加される担当課の方が研修を受けられる機会があると、多分コミュニケーションがかなり楽になるのではないかなと思いますので、そういう要素をもし可能なら付け加えられるといいかなと思いました。

【有信主査】
ありがとうございます。具体的に何かこういう研修はありましたっけ。ちょっと私もうっかりしていましたけれども。

【中田企画官】
今年も研修の実施は予定してございますので。

【有信主査】
ああ、そうですか。分かりました。
ほかに御意見はありますでしょうか。

【田辺委員】
私は、今回のプロジェクトの早い段階でアドバイザリー委員がコメントできる機会を設定してもらったのは非常によかったと思います。専門の研究者と担当分野の行政官だけの視点ではない、いわゆる世の中の一般的な視点とか、他分野のことも含めた視点からサジェスチョンが早い段階でできたのがよかったと思います。
行政官に対する期待として、私はこの共進化プログラムを通じて、政策をつくっていくというマインドを高めることや、データやエビデンスに対する問題意識高めることがあります。以前の共進化プロジェクトにありましたが、統計がそもそもなかなか十分ではないとか、あるいは使おうとしても使えないとかを行政官が認識したことがありました。
この共進化プログラムでそういうデータ自体、つまり統計自体の問題を早く理解して、逆に、統計を改善していくことが重要だと思います。例えば、私は科学技術・イノベーションに関する重要な統計として科学技術統計がありますが、政策官庁がこの統計を利用して、時代に合わせて変えていくことが必要だと考えています。

【有信主査】
ありがとうございます。今の話はすごく重要な話なんだけれども、なかなか実現しないですよね。各省間のデータに関する壁の高さはそれぞれの各省庁の御事情があるんだと思いますけれども。これを本当は打ち破って言わば共通のデータベース化をしないと駄目なんだけれども、これは全く進んでいないんだけれども、これは一体ではどこがやるんですかねという話になりますよね。

【田辺委員】
データを一番使う役所が発言しなければいけないと思います。だから、私は研究開発や大学を所管している文部科学省がその役割を担っていると思っています。

【有信主査】
ありがとうございます。

【吉本委員】
よろしいでしょうか。今、ちょっと田辺先生から統計の話が出たので。省庁の壁を取り払ってビッグデータにしていくのは政府の方針として決まっていて、取りあえず一部内閣府とかでやっているとは思うんですが、現実的にそこが進んでいないのは、私も先ほど指摘させていただいたところです。
もう一つ、政策を立案していく上で今すごく重要なのは、政府統計だけではなくて、民間データの活用です。例えばCOVID-19においても、携帯の位置情報で人流を測ったりとかしているように、政府統計ではなく、人々の行動データが使われています。携帯の位置情報や、キャッシュレスの購買データなども科学技術と無縁ではなく、人々のこれから行動様式をいかに変えていくかみたいな大きなイノベーションを起こす上での重要な材料になっています。そういった意味で、政府統計だけでクローズしていると大きなイノベーションにはつながらないので、ここのところをちょっと考えていく必要があるのではないかなと思います。ちょっと今回のテーマとはずれてしまいますが。
今後について議論していただきたいことという本筋のほうに話を戻させていただきますと、まだスタートして半年ぐらいですけれども、次回12月ぐらいの時に可能であれば、プロジェクトごとにある程度仮説を出していただければと思っています。こういうことがインパクトファクターになっているのではないかとか、こういうデータが取れるのではないかとか。私がコミットしているプロジェクトの中には、人々の行動変容といいますか、モチベーションに何が効いているんだろうかというような研究テーマがございますが、少し仮説が出せるところは仮説を出していただくとディスカッションが進んでいくのではないかなと思います。
以上です。

【有信主査】
ありがとうございます。全くそのとおりだと思いますし、最初の民間データの話に関しても、今の携帯に埋め込まれている様々なセンサーが膨大なデータを提供する状態になっているのは全く確かです。随分以前にバークレーの工学部長だったニュートンさんがそれを随分昔から言っていたのを思い出しました。どうもありがとうございます。
ほかに御意見はありますでしょうか。

【奥和田委員】
度々申し訳ございません。これも、もうある意味、3期目ということで、最後になって言うことかどうかはちょっと悩むところもあるんですけれども。
このプログラムで、今、吉本委員がおっしゃったような、広くどんなものまで考えるべきかというところまで、もしこのプログラムの範疇として考えるならば、やはりRISTEXの公募プログラムをもうちょっとみんなで見ていかないといけないのかなと思います。つまり、拠点がやっていることだけのフォローを我々このアドバイザリー委員会がやっているわけですけれども、それでは、今おっしゃったような、それ以外のプロジェクトの動き、世の中の動き、みたいなものをどう捉えるかという議論には、なかなかつながっていかないと思うんです。
このプログラムの現行の中で、ちょっとでも外に可能性が広がるという点では、公募プログラムでどんなことをやっているのかとか、毎年どういうものが採られているのか、あるいは公募プログラムにどういうものがアプライされているのか、などをもう少し見ていかないと、今のような御議論には私たちは応えられないと思います。そこをどの程度まで見ていくか、つまり公募プロジェクトをやっていますということだけで済ませるのか、というところは、一つ考えどころかなと思います。
これは初期の頃は、もっと重要性が高かったように思うので、第3期になって、そろそろ店じまいではありませんけれども最終的なところを見据えて言うことではないのかもしれませんけれども、そこをどう考えるのかは、もう一度認識しておいたほうがいいのかと思われます。

【有信主査】
ありがとうございます。RISTEXの公募プログラムをどういうふうに見ていくかは結構難しい話だろうとは思いますけれども。どういう見方ができるかですよね。これは今、文科省サイドで何か考えはありますか。もし見るとしたら。

【中田企画官】
我々としては、すいません、断片的な回答になるかもしれませんが、やはりRISTEXの取組の中で、課題設定のところでより関与するような枠組みも設けておりますので、そこの部分でしっかりとした課題を打ち込んでいくことが一つあるのだろうということ。
あと今後に関して申し上げると、今日のアドバイザリー委員会でも途中御発言があったかと思いますけれども、やはり補助事業が15年という区切りで一応やってございまして、恐らくこの15年という、言ってみればかなり異例の長期の補助事業を認めていただいている裏腹として申し上げると、やはり15年で一区切りというものは財政当局からすればかなり強い要請として我々は認識しないといけないというのはあるところでございますので、それが自立化とかそういった基本方針の表現にも出てきているわけです。
そうしたときに、やはり今後の15年が終わって皆さんが自立した後のところ、後の姿としての行政ツールとして見たときに、公募型事業の担う役割は今よりも恐らく増していくだろうとは思われますので、そういったところでより有効な活用をより考えていかないといけないのだろうとは思っております。
以上です。

【有信主査】
ありがとうございました。
奥和田委員の今の御指摘の、RISTEXの公募プログラムの内容を私たちもできれば知ったほうがいいということは全くそのとおりなんだけれども、難しいなと言ったのは、公募プログラムそのものは言わばRISTEXの側で領域統括が決まっていて、領域統括が言わば課題設定を受けて、その課題を具体的に展開して公募し、その公募に対してまた選定委員が別途組織されてその具体的なテーマを採択しているわけですよね。その採択されたテーマを私たちアドバイザリーサイドが見ることが何を意味するのかというところが難しいなというところを感じたのです。ただ見るだけだったら何の問題もないと思うんです。そこで何らかのコメントを打ち込んだりすると、これは具体的に言うと、実質的に運営されているプログラムの遂行に対してまた横から別の意見が出るというので、公募プログラムではそういうスタンスは全然取っていないわけです。だからその辺を考えつつ、ちょっとできれば私たちも公募プログラムでどういう研究課題が遂行されているのかということぐらいは分かったほうがいいという気はしますので、今後に向けて検討していただければと思います。

【中田企画官】
かしこまりました。

【有信主査】
奥和田さん、そんな感じでいいんですかね。何かやはりコメントを入れたい?

【奥和田委員】
有信先生がおっしゃったように、中身まで介入することはほとんど不可能です。吉本委員がおっしゃったような、そういうことまで、皆の視点に入っているのかどうかを検証していく、程度のことがせいぜいかなと思われます。

【有信主査】
分かりました。ちょっと御検討いただければと思います。
ほかに御意見はありますでしょうか。
それでは大分いろいろ様々、建設的な意見をいただきました。今後の運営に関して、今いただいた御意見等を反映させていただければと思います。事務局サイド、こういうまとめ方でいいでしょうか。何か結論を出すのでしたか。

【中田企画官】
いや、このような形で結構です。あとは我々のほうでしっかり受け止めて検討させていただきたいと思います。

【有信主査】
今日の議論を踏まえて今後の進め方を検討していただくというか、今後の進め方の参考にしていただくということで進めていきたいと思います。ありがとうございました。
それでは本日の議事は以上となりますけれども、今後の予定等の連絡事項について、事務局から連絡事項があればよろしくお願いします。

【中田企画官】
今後の予定ですが、先ほど資料3の中で少し御説明させていただきましたが、次、同じような意見交換会を11月、12月に行わせていただいた後、次回会合としては年内に進捗報告を兼ねた、あるいは次年度の研究の実施に向けた意見を伺うような形でアドバイザリー委員会をまた開催させていただきたいと思っております。日程調整等々はまた近づいてきましたら、事務局より御連絡させていただきます。
本日はどうもありがとうございました。

【有信主査】
どうもありがとうございました。
それでは本日の議題は以上となりますので、これで第15回の科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」アドバイザリー委員会を終了させていただきます。本日は御多忙中のところ御参集いただきまして、本当にありがとうございました。では閉会にさせていただきます。

 

 ――了 ――
 

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