1.科学技術理解増進活動の意義
歴史をふりかえるとき、我が国の科学技術は、第二次世界大戦後の非常に物資に乏しく困窮した状況の中から再起を図り、今日まで驚異的ともいえる発展を遂げてきたことに思い至る。 近年においては、国が平成7年に科学技術基本法と科学技術基本計画を策定し、以来、総合科学技術会議を中心に関係機関の努力により、各種プロジェクトの推進や競争的研究資金の拡充等、科学技術をめぐる環境は充実したものとなってきている。我が国の科学技術の発展やこれをとりまく環境の充実は、このような国の取組はもとより、民間を含め科学技術の振興に寄与してきた様々な人々の思いと行動の上に実現できたものであり、その尽力に深く敬意を表する。 こうした多くの人々の努力により、我々は科学技術による多くの恩恵を受けることが可能な社会に生きている。しかしながら一方において、地球温暖化、情報格差、生命倫理の問題など、科学技術がもたらす社会的課題も抱えている。また、我が国では、科学技術に対する人々の関心が低下したり、不安が示されたりしている現状がある。 このような状況の下で、科学技術が「社会のため」にあることを重視した取組が研究コミュニティ内外で進められつつある。すなわち、科学技術が単に科学者・技術者の好奇心を満たしこれを発現したものとしてのみ発展するのではなく、科学技術が人々の日々の生活とともにあり、人々のためにあることを再確認しようとする動きが強くなっている。科学技術活動は、人々から支持を得られる成果をあげ、その内容を説明し理解と共感を得ていくことを重視する段階へと進んできている。 我が国は、科学技術創造立国を目指す国である。21世紀において、自らの存在意義を世界にしっかりと示し、また、科学技術の負の面を克服していくためには、今後も、不断に科学技術を振興していくことが不可欠である。 これを確かに実現していくためには、まず、人々が「科学技術に対する関心と基礎的素養を高める」こと、そしてそのような基盤の上に、「科学技術をリードしうる人材層を厚く育む」ことを進めることが大変重要である。その上で、科学技術に関係する者の全てが、「社会のため」ということをあらゆる活動の基底におくことが望まれる。とについて、特に大切な視点は次のとおりである。
Copyright (C) Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology