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5. 医療分野における規制
(1) 現状
     医療分野における放射線利用については、放射線障害防止法と医療法(医療法施行規則)・薬事法(放射性医薬品の製造及び取扱規則)により規制されており、一部は二重規制となっている。その状況は、次のとおりである。

放射性医薬品)
     薬事法に規定する医薬品については、放射線障害防止法の施行令で適用除外とされており、放射性医薬品については医療法及び薬事法により規制、管理されている。
   一方、治験薬や臨床研究に用いる薬剤は薬事法で定める医薬品ではないため、放射線障害防止法で規制、管理されている。このため、同じ医療機関で同じ放射性の薬剤を投与した場合であっても、治験・臨床研究である場合には放射線障害防止法に基づく規制が適用となり、廃棄物についても同様である。

陽電子放射断層撮影法(PET:Positron Emission Tomography)の薬剤)
   PETに使用される放射性の薬剤については、放射性同位元素の半減期が極めて短いため、現在は病院の施設内で製造されるものだけが用いられている。この薬剤は、放射線障害防止の観点においては、放射線障害防止法の規制を受けており、薬事法の規制を受けていない。
   また、製薬メーカーによる製造、販売も計画されており、これが薬事法の承認を受けると、製薬メーカーが製造したものは医療法・薬事法の規制、管理を受けることとなる。
   なお、政府が推進する構造改革特区において、PETで発生する廃棄物を、放射線障害防止法の廃棄物の適用から除外して扱うことにより、PETの利用を促進し、より高度な検診、研究を促進するという提案がなされている。
    文部科学省では、PETで用いられる核種はその半減期が極めて短いため、用いられる具体的な核種やその半減期、量などを調査した上で、一定期間以上保管した廃棄物については放射性廃棄物としての適用を除外する方向で検討を行っている。放射性廃棄物の合理的な管理に向けた取組として、着実に検討を進めるべきである。

医療用具)
   薬事法に規定する医療用具については、放射線障害防止法の施行令で、「文部科学大臣が厚生労働大臣又は農林水産大臣と協議して指定するものに装備されているもの」は放射線障害防止法の適用除外となるとされているが、現在のところ、この指定はなされていない。
   放射線発生装置など放射線障害防止法の規制対象となる医療用具については、放射線障害防止法の許可の他、医療法に定める届出も必要となるなどの二重規制が行われており、立入検査についても、放射線障害防止法に基づく放射線検査官による検査と医療法に基づく立入検査とが別個に行われている。

永久的に挿入される線源)
   局所的ながんの治療には、外科手術、体外からの放射線照射、組織内での放射線照射、ホルモン療法などの治療法があり、組織内での照射の一つとして、放射線源を人体に永久的に挿入する方法がある。
   特に、早期の前立腺がんの治療については、放射線源を永久的に挿入する治療が、高い生活の質を維持できる治療法として、欧米を中心に広く普及している。我が国でも、昨年末、ヨウ素125治療用密封小線源が薬事法の医療用具として承認され、今後普及していくことが予想されている。
   この治療に用いられる密封小線源については、放射性同位元素として放射線障害防止法で規制されているが、他の医療用具と同様に医療法との二重規制となっており、合理的な規制の観点からも、法令上の位置付けを整理する必要がある旨、これまでの検討を通じ、指摘してきたこれを受け、文部科学省において放射線障害防止法の適用を除外する方向で検討が進められてきた。
   なお また、放射線源を永久的に挿入する治療を国内で実施するために、一般公衆や自発的に介護する家族などの放射線被ばくを考慮した「診療用放射線照射器具を永久的に挿入された患者の退出について」(厚生労働省医薬局安全対策課長通知)が、平成15年3月13日に示された。ている。
    文部科学省の検討した評価結果について、当検討会でも検討した上で、文部科学省と厚生労働省の協議を経て、平成15年7月15日文部科学省告示第128号により放射線障害防止法の適用除外とされた。

(2) 今後の方針
     医療分野における放射線利用に対する規制について、文部科学省及び厚生労働省は相互に連携を取りつつ以下の方針で取り組んでいくべきである。
   ・対応の可能性の高い部分から段階的に取り組む
・二重規制の改善等に取り組む
・短半減期核種の固体廃棄物の取扱いに取り組む



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