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2.   放射線障害防止法に基づく検査
(1)
  事業所に対する検査の現状
(立入検査と施設・定期検査)
   放射線障害防止法における事業所に対する検査には、国が直接行う立入検査(法第43条の2)、指定機関が行う施設検査(法第12条の8)及び同じく指定機関が行う定期検査(法第12条の9)がある。それぞれの対象事業所、検査の内容などは、下表のとおりである。

表   放射線障害防止法における検査
  対象事業所 時 期 実施者 検査の内容
立入検査 全事業所 法律の施行に必要な限度で随時
(平成13年度実績356回)
(放射線検査官)
法律の遵守状況全般
(使用状況、書類検査、施設の検査)
施設検査
密封 37TBq以上
非密封 740MBq
以上(1群換算)
放射線発生装置
新設又は大規模な施設変更後、施設使用前
(過去5年の平均114回/年)
指定検査機関
(原子力安全技術センター)
使用施設等の許可又は変更許可の内容への適合
定期検査
密封 111TBq以上
非密封 740MBq
以上(1群換算)
放射線発生装置
密封、放射線発生装置  5年ごと
非密封   3年ごと
(過去5年の平均230回/年)
指定検査機関
(原子力安全技術センター)
使用施設等の技術上の基準への適合

  検査には、施設が許可などの内容に適合しているかどうかを確認する施設基準に関する検査と、被ばく管理、教育訓練、記帳、測定などが適切に行われているかどうかを確認する行為基準に関する検査とがある。
   現行法令の立入検査は、施設基準及び行為基準の両方にわたって法令の遵守状況全般にわたって検査するものになっているが、施設検査と定期検査は、施設基準に関する検査に限られている。なお、立入検査は、大規模事業所でも10年に1回程度の頻度で行われている。
   一方、放射線障害防止法における過去の事故事例をみると、最近5年間(平成10年〜14年)に発生した23件の法令報告事故のうち、18件が不適切な安全管理など行為基準に関する不備が原因となっているものである。

(密封線源取扱施設の施設検査・定期検査対象範囲)
   現行の密封線源については、核種に関係なく貯蔵能力が一律111 TBq以上の施設が定期検査の対象となり、その1/3の37 TBq以上の施設が施設検査の対象となっている。定期検査対象事業所数は、約230(非密封線源、放射線発生装置との重複を含む)、施設検査対象事業所数は、約380(非密封線源、放射線発生装置との重複を含む)である。
   現行の検査対象範囲は、以下のとおり。
  1    施設検査制度の導入当時1,000〜5,000 Ci(37 TBq〜185 TBq)の医療用照射装置が多く存在し、また、万一の事故時にはかなりの被ばく線量を受けるおそれがあることから、1,000 Ci(37 TBq)以上の施設が検査の対象とされている。
2    定期検査は、インターロックの設置が義務づけられている3,000 Ci(111 TBq)以上の施設が検査の対象とされている。

(非密封線源取扱施設の施設検査・定期検査対象範囲)
   現行の非密封線源については、種類及び数量により4群(第1群から第4群)に分けられており、その貯蔵能力が定義数量の20万倍(第1群の定義数量3.7 kBqに換算すると740 MBq)以上の施設が、施設検査・定期検査の対象となっている。検査対象事業所数は、約240である(密封線源、放射線発生装置との重複を含む)。

(2)
  新たな検査のあり方
(定期検査)
   核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)においては、施設や設備中心の検査を実施していたが、過去の事故などの教訓を踏まえ、事業者が実施する保安規定の内容を検査するなど、行為に関する基準に重点化した規制が順次導入されつつある。
   放射線障害防止法においても、国際免除レベル取り入れの改正において、前述のような事故の状況なども勘案して、定期検査に行為基準に関する検査を追加することが適当であると考えられる。
   行為基準に関する検査の内容は、放射線障害予防規定の遵守状況も含め、使用等に係る放射線障害防止法全般にわたる遵守状況を検査することが必要であると考えられる。

(立入検査)
   国が直接実施する立入検査については、事故発生時や、書類未提出などの問題と考えられる事業所に対して抜打検査などの手法も用いて、定常的業務でない内容に重点化し、検査を実施することが適当と考えられる。

(3)
  新たな検査対象範囲
(密封線源)
   密封線源では、使用される機器によって、その使用法や機器の構造、遮へいなどが大きく異なるとともに、同種の機器については生産国やメーカー、機種によらず、構造などが似ており、同様の安全への配慮が必要になる。このことから密封線源では、使用する核種の安全性、放射能などを考慮し、万が一遮へいが失われた場合の人体への影響の観点で機器を特定して検査の対象とすることがより合理的であると考えられる。具体的には以下のような機器が想定される。
  ・γ線照射装置(滅菌、血液照射など)
  ・遠隔治療装置(回転照射装置など)
  ・ガンマナイフ   等
  国際免除レベル取り入れ後は、これらの装置を設置している、又は新たに設置する事業所に対し、施設検査及び定期検査を実施することとする。このように設定した場合、現行規制から大きな変更はなく、安全上重要な機器を検査対象とすることができる。
   なお、このような考え方は、国際原子力機関(IAEA)における線源のカテゴリー分け(Categorization of radioactive sources (IAEA-TECDOC-1344,2003年))においても採用されている。それによると、安全に管理されていない線源が人体に与える影響を基に、線源を5段階にカテゴリー分けしており、最も高いリスクを与える線源として数分から数時間近づくことで死又は永久的な損傷を与える線源がカテゴリー1とされている。カテゴリー1には、放射線熱電発生装置、照射装置、遠隔治療装置、ガンマナイフが該当している。今後、IAEAにおける放射線源の安全管理、セキュリティ確保の取組が、このカテゴリー分けを基準に実施されることから、我が国の検査対象の設定の際もこれを参考にすることが適当である。
   以上の内容を別紙12にまとめる。

(非密封線源)
   現在は、定義数量の20万倍が基準となっているが、現在までの規制経験から判断し、国際免除レベルに20万倍と同じオーダーの倍数をかけた値に設定することが適当と考えられる。今回の国際免除レベル取り入れにより非密封線源では多くの核種で規制が緩和されることや、今回検査の内容に行為基準に関する検査が追加されることを考慮し、国際免除レベルの10万倍を基準として設定することが適当と考えられる。このような基準の設定により、現行の検査対象事業所と、国際免除レベル導入後の検査対象事業所は、大きくは変動しないと判断される。
   なお、複数の核種を使用する事業所では、従来と同様、各核種の国際免除レベルの10万倍の値に対する使用数量の割合の和が1以上の場合に検査の対象となる。




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