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第3章  国際免除レベル取り入れに関連する事項

1. 放射線取扱主任者制度
(1)    現状
   放射線取扱主任者は、放射性同位元素等の取扱いによる放射線障害の発生を防止するために放射線障害防止法上求められている監督者である。該当する放射性同位元素等を取り扱う事業所では、必ず1名以上の放射線取扱主任者を選任することが義務づけられている。放射線取扱主任者には、担当し得る範囲の広さの順で、第1種放射線取扱主任者と第2種放射線取扱主任者(一般)とがあり、取り扱う放射性同位元素等の形態、数量など放射線影響の可能性の程度を勘案して、選任の区分は下表のように定められている。
   放射線取扱主任者免状は、法令に基づく国家試験に合格し、講習を受講した者に交付され、平成13年度末までに第1種放射線取扱主任者免状は20,593名に対して、第2種放射線取扱主任者免状は26,846名に対して、それぞれ交付されている。

表   放射線取扱主任者(第1種、第2種(一般))の選任の区分
区      分 放射線取扱主任者に選任できる者
第1種 第2種(一般)
非密封線源、1事業所当たりの総量が370 GBqを超える密封線源又は放射線発生装置を使用する事業所等  
非密封線源を販売する又は賃貸する販売所又は賃貸事業所  
廃棄事業所  
1事業所当たりの総量が370 GBq以下の密封線源のみを使用する事業所
密封線源のみを販売又は賃貸する販売所又は賃貸事業所
表示付ECDのみを使用する事業所等 不要 不要
※   ECD: ガスクロマトグラフ用エレクトロン・キャプチャ・ディテクタ(Ni-63を装備しているもの)

(2) 国際免除レベル取り入れに伴う新たな放射線取扱主任者の選任のあり方
   国際免除レベル取り入れにおいては、放射線取扱主任者の選任を次のようにすることが適当であると考えられる。
1    非密封線源を使用する事業所(販売事業者及び賃貸事業者も同様)及び放射線発生装置を使用する事業所
   これらの事業所においては、第1種放射線取扱主任者の有資格者から選任することが必要であると考えられる。
2    規模の大きい許可対象の密封線源を使用する事業所
   施設検査と定期検査を必要とするような、規模の大きい密封線源を使用する事業所においては、第1種放射線取扱主任者の有資格者から選任することが必要であると考えられる。
3    上記2以外の許可対象の密封線源を使用する事業所
   この事業所においては、第1種放射線取扱主任者又は第2種放射線取扱主任者の有資格者から選任することが必要であると考えられる。
4    新届出対象の密封線源を使用する事業所
   国際免除レベル取り入れの際に、線源の密封性の定義を厳格かつ明確に定義した上で、密封性の確保をより確実にすることが適当である。また、新届出の対象となる線源は、国際免除レベルの1,000倍以下の線源であり、BSSの評価のシナリオ上10 mSv/年以下の機器となるが、10 mSv/年以下であれば、ICRP Pub.82が示す「長期被ばくを考慮して規制当局の介入が正当化されるレベル」以下となる。このようなことから、新届出対象の密封線源を使用する事業所においては、放射線取扱主任者の資格条件をある程度緩和することが可能であり、かつ適当であると考えられる。
   具体的には、この線源を使用する事業者においては、第1種放射線取扱主任者、第2種放射線取扱主任者又は第3種放射線取扱主任者の有資格者から選任することが必要と考えられる。
   ここで第3種放射線取扱主任者とは、密封線源の取扱いに関する所要の講習を受けた者(ただし講習中に行われる基本的な知識に関する試験に合格した者)に与えられるものとして新たに設ける区分である。

(3) 医療機関における放射線取扱主任者の選任の取扱い
1    現行法制度の状況と問題点
   現行の放射線障害防止法では、放射線取扱主任者免状を持たない場合でも、医療現場において、診療の目的であれば医師又は歯科医師を放射線取扱主任者として選任できる(薬事法に規定する医薬品などの製造所であれば、同様に放射線取扱主任者免状を持たない薬剤師を放射線取扱主任者として選任できる。)。これは制度設立当初、以前より放射性同位元素や放射線発生装置を利用していた医療機関などに対し混乱を起こさないための移行措置としては有効であった。しかし、医師等は放射線の人体への影響などの知識を持つが、必ずしも放射線管理そのものに関する専門的知識が十分でない場合があり、さらに、最近の医療機関では医師が放射線取扱主任者としての管理・監督の業務に専念し難くできず、その意義が失われているとの指摘もある。また、次のように医療分野での事故の割合は相対的に高く、医療機関における放射線管理の充実が求められている。
   ・ 事業所中の医療機関の割合 :16.6%    (H14.3.31現在)
法令事故中の医療機関の割合    :38.9% (H14.12.1までの累計)

   なお、昭和56年以降、医師の第1種放射線取扱主任者試験合格者は457人、医療現場における放射線関係の国家資格である診療放射線技師の第1種放射線取扱主任者試験合格者は1,230人にのぼり、両者を合わせれば医療機関の許可事業所数のおよそ1.5を超える(人数は、いずれも受験者の申告ベース)。となる。医療技術系大学や専門学校生の受験人数も多い。
2    改正の検討
   今回の放射線障害防止法改正の際に、上述の医師等を無条件に放射線取扱主任者に選任できる制度の意義・必要性については、後述の一連の施策の効果も見た上で改めてを廃止し、医師等を選任する場合にも放射線取扱主任者免状所有者から選任させることを検討することが必要である。
   その場合、今後は、放射線取扱主任者免状を有していない医師、歯科医師及び薬剤師並びに診療放射線技師を放射線取扱主任者として選任する場合には、第1種放射線取扱主任者免状の試験や講習のうち、法令や放射線管理に関する科目を限定して義務づけ、合格後、第1種放射線取扱主任者免状(医療用に限定)を交付することなど含めて検討することが必要である。

(4)
新たな放射線取扱主任者制度の概要
   以上のような、新たな放射線取扱主任者制度をまとめると、下表のようになる。

表   新たな放射線取扱主任者制度(案)
新  区  分
放射線取扱主任者に
選任できる者
第1種
第2種
第3種
第1種
(医療用)
非密封線源、施設検査・定期検査を必要とするような密封線源又は放射線発生装置を使用する事業所
     
施設検査・定期検査を必要としない密封線源のみを使用する事業所
   
密封線源のみを販売し、又は賃貸する販売所又は賃貸事業所
   
非密封線源を販売し、又は賃貸する販売所又は賃貸事業所
     
廃棄事業所
     
新届出対象の密封線源のみを使用する事業所
 
放射性同位元素等を診療等のためにのみ用いる使用事業所   (長期的に検討)
(○)
 
(○)・・・使用する装置、機器によっては可能な場合がある。


(5)
   放射線取扱主任者の技術的能力の維持・向上
   社会情勢や時代とともに放射線の利用や管理に関する技術的事項は変化し、それに合わせて関係法令も適宜大幅な改正が行われている。しかし、現行の放射線障害防止法では、放射線取扱主任者の再講習・再教育に関する規定がないため、免状取得後の専門的知識の維持・向上や必要な情報収集は放射線取扱主任者自身の自発的な研修参加などに任されている。
   今後は、放射線取扱主任者の技術的能力の維持・向上のため、事業所において放射線取扱主任者として選任する際には、以下の条件のいずれかを満たすことを義務づけることが適当であると考えられる。
  1    放射線取扱主任者免状取得後、一定期間内であること
2    指定された講習の受講後、一定期間内であること
   あわせて、放射線取扱主任者として継続して選任されている者についても、一定期間ごとの定期的な講習による再教育を義務づけることが適当である。
   また、放射線取扱主任者の技術的能力を維持するため、放射線取扱主任者の責任と罰則の明確化についても検討することが必要である。



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