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第1章   国際免除レベルの法令への取り入れ

1. 国際免除レベル取り入れの基本方針

(1)
国際免除レベルの概要
   国際原子力機関(IAEA)は、国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告を踏まえ、国際労働機関(ILO)、世界保健機構(WHO)などの国際機関と共同して国際基本安全基準(Basic Safety Standards)の一環として、「電離放射線に対する防護と放射線源の安全のための国際基本安全基準」(以下「BSS」という。)を1996年に刊行し、その中で規制免除に関する具体的な基準である国際基本安全基準免除レベルを提示した。
   国際免除レベルは、通常時では実効線量を年間10 μSv、事故時では実効線量を年間1 mSv、かつ、線源の1年間の使用による集団線量が1 man・Svを超えないとする線量規準を定めた上で、一定の被ばくシナリオに基づく被ばく計算により核種ごとに設定された規制を免除する具体的数値基準であり、核種ごとの放射能(Bq)、放射能濃度(Bq/g)からなる。
   BSSでは、295核種について放射能(Bq)、放射能濃度(Bq/g)が定められている。また、英国放射線防護庁(NRPB)が1999年に刊行した免除レベルに関する報告書(以下「NRPB-R306」という。)において、BSSの295核種以外の核種の免除レベルを計算し、合計765核種分の免除レベルが示されている。

(2)
国際免除レベルの法令取り入れの目的、必要性
   国際免除レベルは、国際機関により合意された科学的根拠に基づく線量規準を用いて、核種の特性を反映し核種ごとに計算されている。
   国際免除レベルの我が国の関連法令への取り入れについては、放射線審議会基本部会で科学的な検討がされた結果、免除した放射性同位元素からの被ばくに対する国民の安全性を担保する観点から問題はなく、放射性物質の国際間の移動に伴う国際的整合性などを考慮すれば、IAEAなどが提案した国際免除レベルを国内法令に取り入れることが適切とされている。
   国際免除レベルを法令へ取り入れ、我が国の放射性同位元素に対する安全規制の体系をより科学的かつ合理的なものとすることが必要である。
   また、国際免除レベルは、国際機関で取りまとめられたものであり、欧州を中心に取り入れが進んでいる。
   放射性同位元素の貿易や国際輸送の円滑化、安全性の向上のためにも、世界共通の基準を取り入れることが必要である。

(3)
対象となる核種数
(放射線障害防止法における現状)
   放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下「放射線障害防止法」という。)では、放射性物質の定義数量が以下のとおり告示で示されているが、いずれも核種ごとに定められてはいない。
      密封線源 :核種に関わらず一律   3.7 MBq
      非密封線源 :核種を4群に分類   3.7 kBq,37 kBq,370 kBq,3.7 MBq
   なお濃度については、密封線源、非密封線源に関わらず、一律74 Bq/g(自然に存在する放射性物質で固体状のものについては370 Bq/g)とされている。

(国際的に免除レベルが検討された核種)
   BSSでは295核種について免除レベルが提示されている。さらに同じ考え方に基づく免除レベルとして、NRPB-R306に示されている765核種があり、両者の数値について2002年10月に放射線審議会基本部会が国内法令への取り入れについて検討し、両者ともに妥当であるとの結論を出している。

(国内法令取入れの核種の取上げ方)
   我が国で利用されている主要な放射性同位元素(密封線源:18核種、非密封線源:41核種)についてみると、BSSに示されている295核種には、密封線源として利用されている3核種(Ge-68、Sn-119m、Yb-169)、非密封線源として利用されている3核種(Ga-67、Ge-68、Tc-95m)がそれぞれ含まれていない。一方、NRPB-R306に示されている核種を含めた場合には、我が国で利用されている主要核種の全てが含まれている。別紙1に主要核種に関する国内の利用実績とIAEA,NRPB免除レベルとの関係を示す。
   このため、今回の法令取り入れに当たっては、基本的にBSSに示されている295核種を取り入れることとするが、BSSに示されていない核種についてはNRPB-R306に示されている免除レベルを用いることとし、合計765核種を採用することが適当であると考えられる。
   以後、この報告書では、この765核種の免除レベルを「国際免除レベル」と呼ぶこととする。
   なお、765核種以外の核種については、我が国でもほとんど利用実績のないものであるため、個別核種ごとではなく、放出する放射線やその核種の半減期を考慮するなど何らかのグループ化により取り扱うことが適当であると考えられる。    



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