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(2) ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定について

1 ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定に関して,実態を踏まえて検討する。

○問題の所在

 著作権法施行令第1条及び第1条の2は,補償金の支払いの対象となる機器・媒体を指定しており,例えば,録音用記録媒体としてはMDやCD-R,CD-RWなどが,録画用記録媒体としてはDVD-RW,DVD-RAMなどが指定されている。一方,最近は,従来のMDレコーダーやDVDレコーダー等のほかに,新たに登場したハードディスク内蔵型・フラッシュメモリ内蔵型録音機器,ハードディスク内蔵型録画機器等(以下,「ハードディスク内蔵型録音機器等」という。)が急速に普及しつつある。これらハードディスク内蔵型録音機器等について,私的録音録画補償金の対象として追加指定して欲しいとの要望がある。

【携帯オーディオ機器の国内出荷の推移】

携帯オーディオ機器の国内出荷の推移のグラフ
上記2品目について,各年の合計出荷数を100%とした場合の市場推移を表す。
上記数字は,社団法人電子情報技術産業協会,主要メーカー資料等により電波新聞社が作成したもの。
出典:平成17年4月8日電波新聞

○審議の状況

 ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定については,賛否をめぐり,現時点では,特定の結論に意見を集約するには至らなかった。したがって,この問題について,引き続き検討する必要がある。

 ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定に関して,すみやかに補償金の対象に追加すべきものであるとの意見の概要は,次のとおりである。
(1) 音楽のデジタル録音等を主たる用途として想定して開発・設計されており,主として音楽のデジタル録音等を目的として販売・購入され,現実にもその目的に使用されている。
(2) 補償金の対象となっているMD録音機器等を市場において代替する機器と捉えられることから,課金しないことは公平性の観点から妥当ではない。
(3) 現時点でも,技術の発展に伴い個別の課金が可能なケースは次第に増える傾向にあるように見受けられるが,それが可能でないケースも依然として残っており,現実問題として一種のきめの粗い課金方法である補償金によらざるを得ない。
(4) どのような機器も,100%専用のものはなく,また二重課金にならない範囲では課金する合理性はあるから,利用実態を踏まえ,それぞれの機器・媒体において私的録音録画が行われる割合に応じた料率を設定すべき。
(5) ハードディスク内蔵型録音機器等を追加指定せず,コピープロテクション等のDRMの強化により対処した場合,消費者への制約・負担を考える必要がある。また,追加指定せず,かつ,何らの補償的措置等がとられない場合には,国際条約上の問題が生じかねず,第30条第1項(私的複製)などの制度的な部分への影響を考える必要がある。

 他方で,標記の機器を補償金の対象に加えるのは不適当であるとの意見の概要は,次のとおりである。
(1) 私的複製については,使用許諾料の額の回収がコスト面で困難であることから,権利制限及び権利制限を前提とした補償金が正当化されているが,DRMによって個別課金が可能である以上,それらに正当性はない。。
(2) 制度導入時点と技術環境が変化していることから,補償金制度自体は,補償金返還制度の実効性の低さ,消費者の認知度の低さ,徴収・分配の公平性や共通目的基金の妥当性,そもそも許容される私的複製の範囲が明確でないことなど,多くの基本的問題を内包しており,制度の根本的見直しについて議論することなしに,機器等の追加により制度を肥大化させることは不適切である。
(3) 補償金制度には本来自由に複製できるものにまで課金し,自由利用行為を抑制するという副作用があるが,ハードディスク内蔵型録音機器等では,利用料を支払ってダウンロードした音源の録音にまで課金するという二重課金の問題もあるため,その副作用は明らかに無視し得ないものとなる。
(4) ハードディスク内蔵型録音機器等は汎用機器であると考えられるので,補償金の対象とすべきでない。
(5) DRMによる課金が消費者への制約・負担となるかならないかは,市場で消費者が選択することであるが,DRMによる課金が普及しつつあるという現状にかんがみれば消費者への制約・負担となるとの主張には明らかに根拠がない。
(6) 国際条約上,補償を必要とするのは権利者の正当な利益が不当に害される場合であるが,この場合にはそもそも個別課金が可能である以上,その部分については,通常の利用による権利者の正当な利益が不当に害されていないのであるから,補償金制度を掛けなくとも国際条約上の問題を生じない。

 この他,法技術的な問題として,ハードディスク内蔵型録音機器等を規定することができるのか,機器と記録媒体の分離を前提としている現行法の改正が必要になるのではないか,といった指摘があった。また,審議会で仮に結論が出なかった場合でも,それを理由として行政としての判断を先送りすべきではないとの意見,結論とは独立に,現行の補償金制度の運用の実態について著作権者及び消費者に周知を図るべきとの意見等があった。


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