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重点的支援と幅広く多様な支援をバランスよく,メリハリをつけて】 国が行う舞台芸術創造活動への支援については,それぞれの支援の事業の目的を明確にし,それにふさわしい活動に対して厳正な審査の下,重点的に支援を行っていくべきである。
一方,水準の高い創造活動は幅広い多様な活動の中から生まれてくるものであり,様々な芸術的価値の創造に挑戦する機会を多くの団体に多様な形で提供することが必要であり,このような点はこれまで文化芸術振興基金を中心に対応してきたところである。
文化庁では,舞台芸術創造活動を国全体としてより一層活性化するよう,芸術文化振興基金の在り方も含めて,上記の二つの趣旨の支援を国全体の立場から今後ともバランスを取りつつ,よりメリハリをつけたものとしていくべきである。
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中長期的な観点から創造活動が活性化するように】 国の支援事業は,毎年度の予算により措置されるものであり,舞台芸術創造活動に対する支援についても,基本的には毎年度の手続に則って行われるものである。
しかしながら,舞台芸術創造活動は他の文化芸術活動と同様,単年度での成果を求めることが適当でないものが多い。
国が行う舞台芸術創造活動への支援については,我が国の文化芸術の将来的な発展という中長期的な観点に立って,創造活動がより一層活性化していくよう留意すべきである。
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東京中心の視点から地域重視の視点へ】 現在の国の舞台芸術創造活動への支援においては,文化芸術団体の多くが東京周辺に集中しているため,採択団体も東京周辺に集中する傾向があり,他の地域の文化力が全国に発信されにくい状況にある。こうした状況を看過すれば,我が国の文化芸術の全体的な活力も薄れ,また,それぞれの地域の特色ある文化が衰退していくことにもつながる。
我が国の文化芸術の健全な発展を図っていく上では,このような文化の一極集中という状況を改善し,東京と地域との構造的違いにも配慮し,地域において優れた舞台芸術創造活動が活発に展開されることをこれまで以上に重視していくべきである。
また,様々な地域における舞台芸術創造活動が全国的に発信され,相互に影響を与え合うよう,各地域における取組み,活動状況が全国に周知されるような方策についても配慮していくべきである。
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人材育成をはじめとする基盤形成への支援の充実】 舞台芸術創造活動が今後とも充実・発展していくためには,中長期的な観点からは,何よりも,才能ある人材がその能力を最大限に発揮できるような環境を整備することが最も重要である。また,より安定した活動を展開していくためには,舞台芸術創造活動に関する資料の収集,保存,調査研究とともに,この分野の様々な情報が円滑に入手できるような情報網の整備も重要であり,このような舞台芸術創造活動を支える基盤を形成するための事業への支援は,創造活動への支援と両輪を成すよう進めていくことが必要である。
特に,人材育成策については,将来的に我が国の舞台芸術創造活動の振興に果たす役割が極めて大きいことを考慮し,我が国の将来の舞台芸術創造活動を担う若手の養成,プロデューサーなどのアートマネージメント担当者の研修,現場の舞台を作り上げていくために必要な人材の養成・研修などの充実に取組んでいくことが必要である。
また,現在の舞台芸術創造活動を後世に伝えていくためには,資料,情報を体系的に収集し,保存・活用していくことが必要であり,そのための仕組みについても検討していく必要がある。
さらに,我が国において舞台芸術創造活動が一層活性化されるためには,民間企業・団体等の果たす役割が大きいことに鑑み,このような民間企業・団体等が主体的に舞台芸術創造活動を行い,また,様々な支援を充実していくことができるような環境を醸成していくことも重要であり,そのために必要な税制上の措置などについても検討していくことが必要である。
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鑑賞者の動向への配慮】 国による舞台芸術創造活動への支援は,文化芸術団体が行う創造活動に対するものであるが,それと同時に,支援の効果が最終的に享受者の広がりを導くとともに,享受者の豊かな文化芸術体験の実感となり得ることに,留意しなければならない。このため,文化芸術団体においては自らの創造性を保ちつつも,鑑賞者の動向を踏まえ,享受者の広がりにも十分配慮するとともに,鑑賞者の動向を将来の活動に積極的に反映させていくことが望まれ,国としてもそのような取組を促進していくべきである。
ただし,国の支援は,市場原理のみに委ねていては活動の継続が難しく,文化の多様性の確保の観点から重要であるものを中心に行われるべきであり,鑑賞者の動向への配慮という観点を重視するにしても,単純に鑑賞者数の競い合いに陥ることは避けなければならない。また,先駆的・実験的な舞台芸術創造活動など,現時点ではこれを支持する鑑賞者数が少なくても,将来的に我が国の文化芸術の振興に資する活動については,積極的に支援していくべきである。
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子どもたちの教育の中における文化芸術活動の重要性を認識した取組】 文化芸術は人間に人間らしさを取り戻させるものであり,子どもの時から舞台芸術創造活動などの文化芸術活動に触れる機会を充実させていくことが重要である。
音楽,舞踊,演劇などの舞台芸術創造活動は,創造活動を体験することによって,子どもたちに他者の価値観の尊重やコミュニケーションの重要性などを学ばせることができ,また,鑑賞活動を通して,学校の生活では体験できないような感動を味わうことにより,いのちの大切さ,生きることの意味など人生において重要な価値を率直に伝えることができる。
子どものうちから,舞台芸術創造活動に触れる機会を多様な形で提供していくとともに,学校教育の中においても,子どもたちの表現活動により一層積極的に取り組むことが望まれる。 |