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著作権分科会 私的録音録画小委員会(第5回)議事録

1. 日時
  平成18年9月21日(木曜日)10時〜13時

2. 場所
  如水会館 松風の間

3. 出席者
 
(委員)野村分科会長、石井、井田、大渕、華頂、亀井、小泉、河野、小六、佐野、椎名、津田、土肥、中山、生野、松田、森、森田

(文化庁)
加茂川文化庁次長、吉田文化庁長官官房審議官、甲野文化庁著作権課長、秋葉国際課長、川瀬著作物流通推進室長、木村課長補佐、千代国際課国際著作権専門官ほか関係者

4. 議事次第
 
(1) 開会
(2) 議事
1 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会報告書(案)(私的複製及び契約利用ワーキングチームにおける検討結果)について
2 課題に関する検討について
(3) 閉会

5. 資料
 
資料1   私的録音録画小委員会における今後の検討事項(改訂版)
資料2 私的録音録画に関する検討を進めるに当たっての論点について
参考資料1 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(私的複製・共有関係及び各ワーキングチームにおける検討結果)報告書(案)(平成18年8月17日)
(著作権分科会(第20回)議事録へリンク)
参考資料2 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会契約利用ワーキングチーム検討結果報告(平成18年7月)
(著作権分科会法制問題小委員会(第6回)議事録へリンク)
参考資料3 私的録音録画小委員会審議予定

6. 議事内容
 

【中山主査】 それでは時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会「私的録音録画小委員会」の第5回を開催いたします。本日は、ご多忙中、ご出席賜りましてありがとうございます。
 いつもと同じでございますけれども、議事に入ります前に、本日の会議の公開について決定をしたいと思います。予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開にするには及ばないと思慮されますので、傍聴者の方々には既に入場をしていただいておりますけれども、この件、ご異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】 ありがとうございます。それでは、傍聴者の方々はそのままお残りいただいて傍聴をしていただくということにいたします。
 では、議事に入ります。まず、事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

【木村課長補佐】 恐れ入ります。お手元の配付資料の確認をお願いいたします。
 本日の配付資料の議事次第、1枚物の下の方に、配付資料一覧を示させてもらっております。資料は2点ございます。資料の1は、私的録音録画小委員会における今後の検討事項(改訂版)でございます。資料の2は、私的録音録画に関する検討を進めるに当たっての論点について。そのほかに、参考資料といたしまして3点ございまして、参考資料の1でございますが、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会報告書(案)、18年8月17日のものでございますが、これは、関係箇所を抜粋した資料でございます。そして、参考資料の2でございますが、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会契約・利用ワーキングチームの検討結果報告18年7月のものでございます。そして最後に、参考資料の3といたしまして、私的録音録画小委員会の審議予定でございます。配付資料に漏れ等はございませんでしょうか。ありがとうございます。

【中山主査】 それではまず議事の段取りについて、確認をしておきたいと思います。
 本日の議題は二つございまして、まず文化審議会著作権分科会法制問題小委員会報告書(案)につきまして、事務局から御報告をいただきます。次いで、「課題に関する検討」を行いたいと思います。
 それでは、まず最初に、法制問題小委員会において、「私的複製」及び「著作権法と契約法との関係」、(いわゆるオーバーライド問題)についての検討が行われまして、8月24日の著作権分科会に中間報告されましたので、その内容につきまして、事務局からご報告をお願いいたします。

【川瀬室長】 それでは、私のほうからご報告をさせていただきます。参考資料の1と参考資料の2を使いまして、ご説明を申し上げたいと思います。
 今、主査からもお話がございましたように、8月24日に開かれました著作権分科会に、法制問題小委員会から報告書の案という形で報告をされております。この案については、公表が了解をされまして、今、意見募集中でございまして、意見募集の結果を踏まえて、更に検討を加えた上で、今期の審議会の最終の分科会で公表という予定になっております。
 その案の内容についてですが、まず参考資料の1をご覧いただけますでしょうか。これが、法制問題小委員会の報告書の案の抜粋でございます。1枚めくっていただけますでしょうか。
 目次がありますが、法制問題小委員会では、私的使用の複製の見直し、それから共有著作権に係る制度の整備、それから契約・利用ワーキングチームの検討結果、司法救済ワーキングチームの検討結果について、報告されています。その内の、2の私的使用の複製の見直しと契約・利用ワーキングチームの報告(案)について、ご説明いたします。1枚めくっていただけますでしょうか。
 「はじめに」というところでございますけれども、その中ほどにありますように、法制問題小委員会では、「著作権法に関する今後の検討課題」ということで、これは平成17年1月24日に文化審議会著作権分科会でおまとめいただいた検討課題に沿って、私的使用の複製の見直しについて検討されました。
 2ページでございますけれども、問題の所在というところでございますけれども、この表を見ていただくと分かりますように、私的複製といいますのは、複製一般についてのことでして、その問題の中に、私的録音録画補償金の制度の問題が内包されているということでして、法制問題小委員会では、私的複製という大きな問題について、その範囲をどうするのか、また解釈をどうするのかという問題について、検討されたわけです。
 もう一度、1ページめくってください。(1)は解釈上の検討課題で、これが、私的複製と契約の関係のオーバーライドの問題でございます。それから、私的複製と著作権保護技術の関係、これは著作権保護技術のルールに従って利用者が複製をする場合の解釈の問題でございます。それから、立法上の検討課題として、私的録音録画関係の補償金の関係。それから4ページでございますけれども、違法複製物等の扱いについて。これは、特にファイル交換ソフトなんかの違法サイトからのダウンロードについて検討されております。
 検討結果としましては、まず解釈上の検討課題につきましては、法制問題小委員会に契約・利用ワーキングチームを置きまして、オーバーライドの問題について、検討がされております。この結果は別途、あとでご報告いたします。
 それから、次のページですが、私的複製と著作権保護技術の関係ですが、これも、最後の方の下から3行目、4行目辺りからでございますけれども、私的複製によって、権利者の利益が害されているかどうかは、これは実態に照らして別途検討される必要があるけれども、私的録音録画小委員会において、この点にも留意した検討が進められる必要があるということになっております。
 それから、立法上の検討課題については、これは、私的録音録画補償金関係につきましては、これも、その段落の下から2行目ですけれども、私的録音録画小委員会において検討を進めることが適切であるというようになっております。
 それから、違法複製等の扱いにつきましても、これは、6ページのその段落の下の所でございますけれども、私的録音録画補償金の在り方の議論と密接に関係することから、私的録音録画小委員会において、この点にも留意した検討が進められる必要があるということです。全体的なまとめが(3)ですが、私的複製の範囲にかかる立法上の検討課題につきましては、私的録音録画の在り方にかかる検討を避けて通ることができないので、私的録音録画の在り方については、私的録音録画補償金の在り方と密接に関係する課題としまして、一番最後の3行ですが、法制問題小委員会としては、私的録音録画に関する私的録音録画小委員会における検討の状況を見守って、その結論を踏まえて、必要に応じて、私的複製の在り方全般について検討を行うということで、当面は本委員会における結論を見守り、それを踏まえた上で、その他の利用についても含めて、改めて検討するということにしております。
 それから、参考資料2ですが、これは、先ほどのオーバーライドの問題ですが、まず1ページの「はじめに」を見ていただけますでしょうか。
 いわゆる契約・利用のオーバーライドの問題といいますのは、著作権法30条以下の制限規定があり、自由利用が認められているわけですが、その利用の態様とか範囲を、契約によって引っ繰り返すといいますか、オーバーライドすることが可能かどうかという問題でして、著作権法において、どのような場合でも、それをオーバーライドするような契約が無効であると言えるような権利制限規定、つまり強行規定が存在するかどうか。また、その契約の無効を判断する要素として、いろんな要素から判断して、一般的に無効となるべき契約について、どのようなものがあるかというようなことを踏まえた上で、契約の有効性に関する判断について、立法的対応が必要かどうかの検討をされました。
 2ページ目をご覧いただきますように、検討の手順としましては、実際に事例研究を行いまして、オーバーライドしている例が見られるかどうかということを踏まえた上で、その契約の有効性について、検討を行うということにしておりまして、その次の段落の所にもありますように、具体的には、ソフトウェア契約、音楽配信契約、データベース契約、楽譜レンタルという四つを取り上げまして、事例研究をした上で検討を進めたということでございます。
 3は、契約の有効に関する関連法規として、民法90条や消費者契約法の10条について解説をしております。
 それで、4からが個別条項の検討でございますけれども、その中で、6ページの(2)の音楽配信を見ていただけますでしょうか。そこに、契約条項の例として、「著作物等の利用、本サイトからダウンロードされた楽曲等の著作物は、会員本人の視聴に限り使用できるものとします。会員は、当社が個々のデジタルコンテンツごとに指定する複製回数等の利用制限を遵守し、許可のない複製、改変、転載等はできないものとします」という実際の例がございますけれども、これを踏まえた上で、検討を進めております。
 この中に見られますように、特に大きな問題は、楽曲の複製回数を制限するという契約条項が見られるわけです。その複製回数の制限につきましては、その最初の段落ですけれども、ビジネスの観点から一定の合理性が認められるのが通常であり、合理性が認められる限りにおいて、ユーザーに不当な条件を強いるものでない限り、基本的には、このような制限を無効とすべき理由がないと考えられるということにしております。
 それから、7ページの2の利用目的の制限でございますけれども、著作物の利用の目的を制限する条項についても同様に合理性が認められる限りにおいて、ユーザーに不当な条件を強いるものでない限り、基本的には無効とすべき理由がないと。それから、権利制限規定で認められている範囲の行為を制限する条項については、その制限規定の趣旨等を考慮して個別に判断されるものと考えられるというようなことになっております。
 9ページを開けていただけますでしょうか。これが、全体的な結論でして、著作権法と契約法の関係としまして、最初の段落の2行目ぐらいからですが、著作権法の制限規定に定められた行為であるという理由のみをもって、これらの行為を制限する契約は一切無効であると主張することはできず、いわゆる強行規定ではないと考えられると。これらをオーバーライドする契約については、契約自由の原則に基づき、原則としては有効であると。実際には制限規定の趣旨とか、ビジネス上の合理性とか、不正競争又は不当な競争制限を防止するという観点などを総合的に見て、個別に判断する必要があるというのが、結論でございます。
 また立法の必要性につきましては、1枚めくっていただきまして10ページでございますけれども、今までの検討結果から、現行著作権法において直ちに立法的対応を図る必要はないとされております。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。ただいまの説明に関しまして、ご意見、あるいはご質問がございましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、ご質問がないようでございますので、二つ目の議題、「課題に関する検討」に移りたいと思います。
 検討に入ります前に、前回ご議論いただきました小委員会における検討項目の改訂版の説明も含めまして、議論の進め方につきまして、事務局から説明をお願いします。

【甲野著作権課長】 それでは、ご説明をいたします。
 資料1と資料2をご覧いただきたいと思います。資料1は、前回の会議で提出をした今後の検討事項を、前回、様々なご意見が出されましたので、改定をしたものでございます。
 改定の中身といたしましては、議論の順番として、具体的な対策等についてという部分でございますが、(1)から(3)までの方策があって、まず(1)をやって、その後(2)、(3)というような形で記しておりましたけれども、それ全体を通してやるものではないかということがありましたので、そうした部分を取り除いております。
 それから、前回(2)で書かれていた部分、これは、契約や技術的保護手段によって何らかの対応ができるのではないかという部分でございましたが、これにつきましては、このような形で対策を立てようと思っても、実際にはできないのではないかといったような意見も複数出たわけでございますが、しかし、やはり残しておいた方がいいのではないかというご意見もございました。
 そのようなことから、順番を変えまして、3にありました補償措置の方を前の方に出して、前回2の方で書かれていたところを下の方に出すというような形にいたしました。また、内容につきましても、必要な要件等々というふうに、いろいろなことが書いてありましたけれども、保護技術等のところにつきましては、前回いただいたご意見を踏まえまして、現状はいかなるものか、進展はいかなるものか等々という形で書き直しているわけでございます。
 そうしたことから、ここにありますような、(1)から(3)までの内容全体を通して、本日はご議論をいただきたいわけでございますけれども、議論をしていただくに当たりまして、ちょっと事務局の方でご提案といいますか、考えさせていただきましたことは、「抽象的にどうなのだ」というような形も、もちろん議論としては有効な面もあろうかと思いますけれども、具体的にこういう点についてはどうなのだろうかと、30条の範囲にすべきなのかどうか、あるいは補償金制度というものを仮に考えた場合には、それは妥当するのかどうか、そのような形で議論をしていった方が、イメージもつかみやすいし、また議論も建設的になるのではないかというふうに思いましたので、資料の2でご議論を進めれば、よろしいのではないかというふうに思っているところでございます。
 それで、この資料2について、ご説明をさせていただきたいと思います。
 仮に、何らかの制度的な対応が必要と考える場合、どういう対応をすべきかということでございまして、まず第1番目に掲げられておりますのが、やはり提案されております30条の権利制限の範囲についてでございます。30条でコピーできる範囲を狭めるということによりまして、私的録音録画がなされる余地を少なくして、そしてそれが制度的な対応というふうになるのではないかという観点もあるわけでございます。
 この30条の権利制限の範囲を狭めるということは、従来までも何回かの立法において行われてきたところでございます。参考までに、従来までの考え方を若干ご説明させていただきますと、これまで公衆が使うことができる自動複製機器、これによってコピーをするということは、30条で認められる範囲ではないことにしましょうという改正が、昭和59年に行われたわけでございます。また、その後、コピーガードを外してコピーをするというところにつきましても、これは30条の範囲外にしようというようなことが行われてきたわけでございます。
 これらにつきましては、背景となる事情といたしましては、自動複製機器にいたしましても、保護手段を回避するにいたしましても、自動複製機器を提供して営利で使わせるですとか、あるいは保護手段を回避するツールを売ったり販売したりする、そうした人たちに対しましても刑事罰を科すということとセットで行われていたという事情がございました。つまり、禁止する手段というものが、実際には手だてをされて、こうしたところについても30条の範囲外にするということが行われていたわけでございます。
 そして更に背景を申し上げますと、そもそも30条でコピーが認められるという形にする根本的な事情として、よくいわれておりますこととしては、家庭内で行われているコピーは、閉鎖的な家庭内で零細に行われているというものであるので、権利者が権利行使をしようと思っても、なかなかそれはできるものでもないし、禁止をするといってもなかなか大変ではないかと。そういうような事情があるから、30条のコピーというものは許されるのだという考え方があったわけでございました。そのような考え方に基づいて、30条の範囲でコピーができる範囲ということが決められてきているわけでございますけれども、これは、従来までの考え方ということでございます。
 したがいまして、今後検討するに当たって、まずはご紹介をさせていただいたわけです。
 ご議論いただく具体的な場面といたしまして、この資料にありますのは、1が録音についてでございまして、2が録画についてでございます。
  1の録音についてでございますけれども、様々な場合があろうかと思います。他人から借りた音楽CDを使って録音する場合ということがあろうかと思います。それからレンタル店から借りたCDを用いて録音する場合もどうなのか。それからウでございますけれども、違法複製物から海賊版等もありますけれども、私的使用のために複製をする、録音する場合、違法配信から録音する場合、適法な放送ですとか、あるいは配信、これを受けて私的使用をするという場合はどうなのか。様々な場合がありまして、これらにつきましても、関係の委員の方々からは、30条の範囲外にした方がいいのではないかという提案もされているわけでございますが、どのように考えるべきかということについては、議論になるのではないかと思います。
 録画源についても、様々な場面があろうかと思います。放送という形で流されたものについて録画をするという場面が非常に多いかと思いますけれども、そこはどうなのか。放送の中でも、特に加入者制という形で、一定の料金を支払う等々によりまして放送を受信するという形のものからの録画もありますが、これをどう考えるのかでございます。また、海賊版等々からの録画、違法な配信からの録画、適法な配信からの録画などがあろうかと思います。これらにつきまして、権利制限の範囲外とすべきかどうかということが、ご議論になると思います。
 もちろん、ここにあります録音・録画について、それぞれアからオまで例示を挙げましたけれども、これらに限定されるものではございませんので、それ以外にも、こういう場合はどうなのだということがありましたら、これは、ご議論をいただければありがたいと思います。
 そして、ページをめくっていただきまして、2ページ目でございます。補償措置の在り方でございますけれども、様々な複製の行為が行われる場合、そこに、現在の補償金制度ということを前提とするわけではありませんけれども、何らかの補償が何らかの形でされなければならないとするならば、それは、どういうような複製行為についてなのかということでございます。
  1ですが、契約で複製の対価を得られる場合がどうなのかという論点があるかと思います。契約等で対価が権利者側に払われているのだったら、そこの部分は補償措置というのがほんとに必要なのかどうなのかという問題意識があろうかと思いますので、それを踏まえてのことでございます。
 このアでございますけれども、契約に基づく対価の支払いは、契約上許容された録音・録画の対価を含んでいるのか。契約はもちろん、その辺で明示的に交わされた契約以外のものもすべて含むという趣旨でございますけれども、これは、この議論をするに当たりましてのそもそも論のところでございまして、録音・録画の対価が入っていると考えるのかどうかということが議論になろうかと思います。音楽配信の場合、レンタルの場合、パッケージの販売の場合、様々な点があろうかと思います。
 そして、イでございますが、もし対価が含まれているとした場合、その録音・録画というものは、30条に基づく録音・録画でいいかどうか、これが議論になってくるかと思います。契約で許諾を出して録音・録画をされているのだから、これは許諾を受けて行われたものではないかというふうに考えることもできるのかもしれませんし、あるいは30条に基づくものというふうに考えるのかもしれません。30条に基づくのか、許諾に基づくのかによりまして、補償措置が果たしてつくのかつかないのか、そういう議論になってくるのではないかというふうに思われるので、ここで論点として書かせていただきました。
 それからウでございますが、契約が前提としている保護技術が回避されて、想定していない録音・録画が行われた場合、これはどうなのかということでございますが、これは、2にも絡むわけでございますけれども、例えばコピーが3回までできるというようなガードがかかっている場合に、何らかの形でそれを回避して、4回目というようなコピーを行ったような場合、この4回目のコピーというものは、権利制限外の録画になるのかどうかという観点でございます。
 それから2番目、2でございますけれども、保護技術がかけられていて、その範囲内での録音・録画をどう考えるかという部分でございます。
 様々な技術の例を、このページの下の方から書いてあるわけでございますが、まず論点としては、アというものを挙げております。これはどういうものかといいますと、保護技術がかけられていることが権利者の意思に基づく場合は、その範囲内での録音録画については、権利者として、それは権利者の意思に基づいて付けたものですので、権利者が許容したもので、補償措置はそうすると妥当しないというふうに考えていいのかどうかということが議論になるのではないかと思います。コピーを許容しているというふうに取るのであれば、そこのところで、何でお金を取るのかというようなことかと思います。
 あるいは、保護技術の内容によっては、補償措置が妥当する場合があるのかということも論点になるかと思います。コピーが全くできないというような保護技術のものから、あるいは非常に広く、コピーができるまで、様々なものがあるわけでございます。全くできないという場合には、補償措置は、ほんとにコピーがないので必要なのかという議論もありますけれども、他方意志に基づくとはいえ、かなり広くコピーができる場合については、やはり補償措置というものはあってもいいのではないかという考え方もあろうかと思います。
 そのようなところが議論になりまして、制限の強弱は、補償措置の具体的な在り方に反映させるべきであるかどうか、諸外国におきましては、反映させるというような形の立法も進められているところもありますけれども、その辺が議論になるかと思います。
 そして、イでございますけれども、これは、保護技術をかけることができる権利者と、実質的にかけることができない権利者があろうかと思います。実際にパッケージとして販売したり、音楽を配信をするようなレコード製作者ですとか、あるいは配信事業者等々、これは、かけることができる、できないというものが、ある程度決められるかと思いますけれども、許諾をするだけといいますか、作詞家、作曲家あるいは実演家の場合ですと、なかなか自分の意志でかけるかかけないかを決めることができないという事情がございます。この辺の立場の違いを、果たして考慮すべきなのかどうかということも、論点にあろうかと思います。
 また、保護技術をかけようと思っても、実質的な選択肢がもうこれしかないという場合には、そこをどういうふうに考えるのかということも、論点になってくるのではないかと思います。
 そして、様々な保護技術の例がございますけれども、それぞれどうなのかということが検討をされてもよいのではないかと思っております。SCMS方式は、これはよくご承知のとおり、孫コピーを禁止するもので、現在、CDからMDにこれをコピーをしようとする場合に働くものでございます。現在、このSCMS方式を前提にして、補償制度があるわけでございますけれども、今後、それをどういうふうに考えていくのか、変更するのか、あるいは維持するのか、そこらも議論になるかと思います。
 また、完全に複製ができないというような形のものも、音楽配信等で広く行われているわけでございますが、ここでは、補償措置というものが必要なのかどうかが、ご議論になると思います。「コピーワンス」という、「1回だけ」ということはどうなのかということも、ご議論になると思います。また、ページをめくっていただきまして、10回までですとか、あるいは7回までという非常に広い範囲のコピーを許容するものがあろうかと思います。こうしたものについてはどうかということも、ご議論になるかと思います。
 それから、特定の圧縮技術を採用したもののみ可能という形で、それ以外の圧縮技術を採用しているものにはコピーができないという形のものもありますけれども、これは、コピー制限なのかという微妙なところもありますけれども、これについても議論になるかと思いますし、また、実質的には「アクセス制限」として分類されるような保護手段もございます。そうしたところについて、どう考えるかも、議論になってくるのではないかと思います。
 そして最後に3でございますけれども、契約や保護技術に基づく録音・録画でございますけれども、将来的には、ここに、かぎ括弧に書いてありますように、「契約と保護技術に基づいて、権利者が許容でき、複製の範囲を決定できるし、必要な対価を徴収できるという形に移行する」というふうになるのだろうかということでございます。ビジネスのことだから、そのようなことは判らないという議論もあるかもしれませんけれども、その辺も、ご議論していただいてもよいのではないかと思っております。そして、もし「想定される」とした場合には、より望ましい形になるように、何か対応すべきことがあるのかどうか、そうしたこともご議論になってくるのではないかと思います。
 例えば、以上のような形で、この資料2をまとめさせていただきました。資料の作り自体において、論理的にこっちとこっちがどうなのかというような点が、目につくところもあるかと思いますけれども、議論を進めていく上での課題という形で書かせていただきましたので、そういう目につく点につきましては、ご容赦いただければというふうに思っている次第でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。ただいまの甲野課長の説明を踏まえまして、「課題に関する検討」について、議論を行いたいと思います。これは、資料1の方で進めてよろしいですね?

【甲野著作権課長】 資料1ですが、ただ、具体的にこういう場合、どうかという形でやった方がいいかなと思いまして、資料2を準備させていただきました。

【中山主査】 それでは課題に関する検討は、資料2の方を中心に進めた方がよろしいですね。分かりました。
 それでは、今の甲野課長の説明を踏まえまして、資料の2につきまして、項目ごとに検討を行っていきたいと思います。
 まず第1番目の30条の権利制限の範囲で、1の録音の方でございますけれども、これについて、ご意見、ご質問がございましたら、お願いいたします。どうぞ、生野委員。

【生野委員】 1の1の私的録音の方に関しまして、考え方を述べさせていただきたいと思います。
 この私的録音で許容される範囲がどこまでかと考える場合、当然のことながら、ベルヌ条約第9条第2項の「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しない」という、その観点からまず押さえないといけないのかなと考えます。
 現在の私的録音の環境は、皆さん共通の認識を持たれていると思うのですが、オリジナルと同一品質の複製物が、簡易かつ大量に作成可能な環境になっているわけで、その複製のされ方によっては、市販CD等の商業用レコードですとか、適法な音楽配信の購入に代替するコピーが作成可能となっていることから、このようなコピーについては、ベルヌ条約の規定に照らし、著作者の正当な利益を不当に害することのみならず、著作物の通常の利用も妨げると考えられるわけです。
 よって、このアからオまでいろいろ書いておりますが、著作物の通常の利用を害するものがほとんど書かれていると思うのですが、この中で、適法な放送については、これが市販CDの購入に代替するとはあまり考えられない。ただ、音楽専門放送については、購入CDに代替するということも一部にはあるかもしれませんが、基本的には、一般の放送については許容されるのではないかと考えます。
 私の意見といたしましては、オの一部を除いては、基本的には私的録音として許容されない、そういうふうに考えます。

【中山主査】 他人から借りたCDのコピーも、これも違法になると、こういうご意見ですね。

【生野委員】 今後の話ですね?

【中山主査】 いや。生野さんのご意見としては、そういう?

【生野委員】 はい。

【中山主査】 ほかに。どうぞ、小六委員。

【小六委員】 「通常の利用を害する」というこの考え方は、いろんなとらえ方があると思いまして。
 私たち著作者の立場としては、これを見た限りでは、例えばレンタル店、他人から借りたCDを私的な使用というのは、倫理の問題と突き詰めていくと、非常に正直な感想を言えば、この範囲ではないのではないかと考えられる、られなくもないと。ただし、実質、この今の現状から考えますと、このようなことを範囲外としたとしたら、いかにそれを、それに対して対処するかというのは、非常に難しい。
 それから、レンタル店から借りたCDに関しても、これは、借りたCDに対しては対価を払っていて、それに関しての利用も、アのものなのか、イのものなのか、いろんなことを判別するのが非常に厄介で、現状としては難しい。
 ウとエの違法なものに関しましての複製、これに関しては、この範囲から外れるのであろうと。
 適法な放送は、これは、私的使用に当たるのではないかいうふうにと考えまして、アとイとオは、この利用の範囲内、権利制限の範囲内と、ウとエは外してもいいのではないかというのが、私の考えでございます。

【中山主査】 ありがとうございます。ほかにご意見がございましたら。どうぞ、亀井委員。

【亀井委員】 分かりやすいところから申し上げますと、ウとエにつきましては、多分ここは仮に私的複製でないとしても、致し方ないのではないかと。
 ただ、ウの括弧の中の「権利制限規定に基づき許諾なく作成された複製物を含む」、この意味が少し引っかかるということです。
 それから今、お話をずっとお伺いしていまして、アの、例えば他人といったときに、その範囲も少しいろいろあるのではないかと。例えば、同じ家庭を営む親が買ったCDを子供がコピーするという場合も、これは他人と言うのかというような極端な例。あるいは友人、今まで例に出ている友人といってもいろんな範囲があるのではないかと。したがって、単純になかなか出ない。
 それから「私的使用のために」というこの言葉自体が、今の30条の「個人的に又は家庭内のこれに準ずる範囲」ということになりますと、そこもかなり広がりがございますので、その範囲によっても、これは価値判断が違うのではないかというように申し上げておきます。
 それから図書館なんかも、どう評価するのかということもあります。
 それからレンタルと、アとイの違いにつきましては、いま小六委員がご指摘になりましたが、借りた対価を払うかどうかといった辺りで価値判断が違うということではないかというふうに考えるところでございます。

【中山主査】 ありがとうございます。ほかにご意見は。どうぞ、椎名委員。

【椎名委員】 小六委員の意見と似ているのですが、他人から借りた音楽CDを私的使用のために録音することは権利制限の範囲じゃないですよと決めた場合に、一体じゃあどうするんですかというところで、全くナンセンス。
 やっぱり、僕も意見陳述の時に申し上げたように、やはり文化的な環境ということを考えた場合に、ここら辺を、その範囲の外にして、他人からもう二度とCDを借りてはいけませんという法律にするのか。そんなばかな話はないわけで。
 イの問題についても、例えばレンタル店から借りてきたCDを、「私的使用のための録音」と書いてあるけれど、私的使用のためにもし、またそこで友達にも貸したりということも生じ得るわけですよね。
 だから、このアとイについて、仮に私的利用の範囲を明確にしましょうと言って範囲から除外したとしても、何の実効性もない。このことを議論する意味があまりよく分からないですね。
 ウ、エ、オ、これに関しては、当然ながら、私的利用の範囲ではない、権利制限の範囲には納まらないものだというふうに思います。

【中山主査】 ありがとうございます。ほかにご意見はございませんでしょうか。どうぞ、佐野委員。

【佐野委員】 使う方としましては、まさに1枚のCDを、友達から友達にすべてコピーして使えば、それは非常に利便性があり、私たちにとってはいいことかもしれませんけれど、著作権を守るということに関しては、やはりある程度、制限をする必要があると思います。私はこの30条で言われているように、家庭内その他、それに準ずる限られた範囲内においては、まさにこの中に入れて、それ以外のものは、きちんと対価を取るべきだと思っています。
 ただ、先ほどありましたように、他人というのは、家族の中のどの他人なのかということになると非常に難しいこともあり得るかと思いますが、できる限り、私はデジタルとかアナログそれ以前に、30条で一番最初の家庭内、まさに私がCDを買って、それを私の家族が複製コピーして使いたいというときに、特に補償金も払わずに使用できるという形が望ましく、それ以外の者はきちんと対価を払うという方が、分かりやすいのではないかなというふうに考えます。

【中山主査】 それは、具体的に言いますと、例えばレンタル店は?

【佐野委員】 レンタル店も、これは一応お金を払っているわけですから、その契約の方法というのもあると思います。どういう形で契約するかによっても、コピーを私的使用のためにしていいのか、悪いのかということも、両方考えられますので、ただ一概にここに書かれたのをイエス、ノーと言うのは、ちょっと難しいかなというふうに思います。

【中山主査】 ほかにご意見はございませんでしょうか。どうぞ、松田委員。

【松田委員】 アの件ですが、家庭内をどの範囲内にするかということは、確かに難しいことだろうと思います。しかし、家庭を超えて貸与して、その先の借りた側が、また借りた側があくまでも個人的使用であるから、それが適法だということになりますと、ベルヌ条約違反の問題になるのではないかと思っています。
 しかしながら、30条は既に「個人的ないしは家庭内」という概念を使っておりまして、それは、家庭内で使用すること、その複製を許すということになっておりますから、もし規制の仕方をもしこのように変えるならば、この概念を使ったまま、アの録音については30条の範囲外と言うことができるのではないかと思います。
 個人的、家庭内で使用することを目的とするときは、複製を許容する形で規定されていますが、なおかつ、その複製をする者も同一家庭内の者と規定することによって二つの歯止めをすれば、アについては、従前の概念を使ったままでも、大体、規範性は求められるではないかなというふうに思います。現行30条1項の規定の仕方では「私的使用」なら良いという利用者側の勝手な解釈を導き出す原因になっています。同一「家庭内…の者」に限定するべきです。CD、DVDを借りてコピーということを許容して良いはずがありません。これを許容することは、この市場がなくなると考えて良いでしょう。私は、アについても、明確に30条から外すべきだという意見を持っております。

【中山主査】 ありがとうございました。ほかに何か。どうぞ、生野委員。

【生野委員】 家庭内の私的複製の範囲がどこまでかという先ほどの亀井委員のお話につきましては、私は、生計を同一にする家族は許容されるべきだと考えております。
 また、実効性について、仮に厳しくしても実効性がないではないかと、そんなの決めてどうなるのだという話もございましたが、そうではないと考えます。家庭内で行われることというのは分からないから、どんなことが行われても、それは許容されるという、そういう結論というのは、少し乱暴なのではないかなと考えます。
 少なくとも、法律というのは規範であって、今の著作権法ができた1970年当時に比べたら、著作権意識は国民においてかなり進んできたところがあるし、「かくあるべき」という規範の意味、意義というのは、法律としてあると思いますので、著作物の通常の利用を妨げる状況にあっても、「それは、家庭内で行われるからしょうがないね」というのは、少し乱暴な意見じゃないかなと思います。以上です。

【中山主査】 ほかに何か。どうぞ、椎名委員。

【椎名委員】 アとかイを権利制限の範囲外とするべきでないと言っているのではなくて、そういうふうに仮に決めたとして、じゃあ制度をどうするのですかということを申し上げているのです。その意味で、実効的な議論になるのですかということを申し上げているので、その書きぶりとして、こういうふうに書いたはいいにせよ、実際、制度をどうするかということを、我々は責任を負っているわけですね。そこのところで、こういう議論をして、一体どういう方向に行くのかを、じゃあ逆に伺いたいと思います。

【中山主査】 生野委員。

【生野委員】 確かに、実効性の問題もあって、権利制限の内容 がこうなっているという側面はあるのですけど、先ほど申しましたとおり、法律ができた時と今とでは全くコピー環境が違うというところで、現実論として、これがベルヌ条約の規定に抵触するようであれば、これは何とかしないといけない。
 その方法論というのは、先ほど言いましたとおり、きちっと規範として国民一般に啓発活動などを行って、法律を遵守していただかなければいけない。
 「こうやったら全部完璧にコントロールできますよ」という答えはないのですが、例えば家庭内で、親が子供に酒を勧めるとか、未成年だとしたら、これは法律違反ですよね。家庭内で行われることであっても、だめなことはやっぱりだめなんですよね。どのようにきちっと法律が守られるようにしていくかというのは、やはり啓発、教育ですとか、そういったものをしっかりやっていく。
 ほかのアイデアがあったらお聞かせ願いたいのですが、そういうふうに思います。

【中山主査】 ほかにご意見、ございましたら。どうぞ、小六委員。

【小六委員】 アとイの問題ですが、他人から借りたということをどうとらえるかという、この倫理的な問題で言えば、生野委員のもので、人の物を自分の物にしてしまうような行為であると、その意味はよく分かります。
 それで、著作者の意見としましては、私は、一番最初の時も申し上げましたけれども、私も一消費者でありますので、自由にコピーをするというこの状況を手放したくはないといいますか、歯止めは必要だとは思いますけれども、ある程度の規制、厳しい締めつけの中でいろんなことをやるのは、やっぱり消費者にとっても著作者にとっても、あまりいい社会ではないと、文化的な意味も含めて、あると思います。ですから、がんじがらめに、この権利制限の範囲を取っ払ってしまって、全部数字で決めるとか何とかというよりも、ある許容範囲を決めてやると。
 先ほど松田委員がおっしゃいました、今の中でこれが、他人から借りたCDをどうとらえるかというのは、そういうとらえ方もあるのではないかというのは、含みがありまして、それはそれでよくて、これを、「他人から借りたCDもオーケーですよ」と書く必要はないと僕は思うのですね。その中で、我々の意識としては、違法的な行為かもしれないけれども、「今はこれは許容範囲だ」と認めて、なおかつ自由さを確保しながら、補償金の制度でそれをきちっと補っていくというような考え方はできないものか。そういう意味合いで、アとイのものを範囲外とはしないということで、我々はその意見を言っていると考えていただきたいのですけど。

【中山主査】 ありがとうございました。どうぞ。佐野委員。

【佐野委員】 この家庭内というのは、確かに難しいかもしれませんが、1枚のCDを家庭の中で、なぜコピーして使ってはいけないのか。家族の中で同じCDは何枚も買わなきゃならないのかって。
 それは、あまりにもおかしな状況であるわけで、これは、法律で複製できるときちんと補償されています。それ以外は、きちんと対価を払うという形で検討したいと思います。
 何でもかんでも自由にコピーできるからいいじゃないの、じゃあ補償金で全部やってしまいましょうというのではなく、きちんと払うものは払う、それから私たちがコピーしてもいいものはいいというような形で、是非考えていきたいと思います。

【中山主査】 ありがとうございます。どうぞ、河野委員。

【河野委員】 先ほど松田委員がおっしゃった複製行為を行う場所を家庭内に限定するというのはどうかというご意見に対しての意見です。
 私は、先ほど佐野委員がおっしゃったように、個人あるいは同一生計を営む者が使用するという目的であれば、複製をする場所というのは、特に物理的に家庭の中というふうに限定される必要はないのではないかというふうに思っています。
 そういうふうに考えている理由ですけれども、例えば私自身がPCとモバイル機器を持っていて、私自身が使用するために外出先でコピーを取るということもあり得るわけで、そういう行為も規範として止めてしまうというのは、必要がないのではないかというふうに考えています。

【中山主査】 ありがとうございます。ほかに何か。どうぞ、津田委員。

【津田委員】 僕としては、椎名委員が先ほどおっしゃっていた意見にすごく近くて、現実にこのア、イ、ウ、エ、オの話をして、どれが、どういった実効性という意味で意味があるのかなというのがまず疑問であるというのと、やはり例えばじゃあ実効性があるのにこれを議論していくとなったときに、じゃあ例えば他人から借りた音楽CDを私的使用にするのが、これが範囲外になったというものを、例えばじゃあ何らかのDRMなのか、監視システムなのかは分からないですけど、そういったものがきちんと、じゃあ法律の私的複製の範囲外になったというようになったときに、例えばじゃあそのときに、音楽を聴いているユーザーが、消費者がどう思うかといったら、「もう、ふざけんな!」という話だと思うのですね。
 それは、聴いている方からしてみれば、普段はやっているし、ある種の環境みたいになっているものですから、そうなったときに、逆に法律は置いておいて、感情としては、まずやはり、そんなに音楽の権利者、レコード会社というのは、音楽を聴いてほしくないのかというふうに思われてしまうのですね。
 それで、今は音楽だけではなくて、いろんなコンテンツというのがあるわけですから、当然、そうしたら、消費者の興味というのは音楽ではない、ほかの録音・録画とは違ったコンテンツに行ってしまう可能性もあるわけで。
 そうなったときに、権利者にとっては、そうなったときに消費者からそっぽを向かれてしまったら、当然収入は減りますし、そうなったら実演家とか、アーティストの人はもちろん食えなくなってくる人もいるでしょうし、こういったものを強化していくことで、何か結局、全員が損をしてしまうのではないのかなというのが、まず根本的にあって、じゃあどうすればいいのかというときの話で言えば、先ほどの小六委員がおっしゃったみたいに、どっかでの歯止め、歯止めというのはラインをきちんと決めて明確にやっていくというのが、こういったものを議論するのであれば、おそらく必要なのではないかなと僕は思っていて、このアからオの中で言えば、例えばウとエというのは除外するですとか、あとは、他人から借りた音楽CDを自分の私的録音のために使うのはオーケーだけれども、じゃあそれをコピーして、ヤフーオークションですとか、そういったその他不特定多数のインターネットで流すとか、そういったものは逆に経済的な実害が大きいものは規制していこう。そのかわり、家庭内、自分のために使う複製であれば、それは、もう本当にフェア・ユースとして認めていけばいいのではないかみたいな、そういった議論をしないと、印象の個別のケースだけ話してもあまり意味がないのではないかな、というような思いがします。

【中山主査】 ありがとうございます。松田委員。

【松田委員】 私の意見は決して、コピーする場所の問題、どの機器を使うかということで意見を言ったわけではございません。アの「他人」という概念をどのように扱うかということは、「個人的又は家庭内」という、既にある概念を使えば、その当該複製物を持っている個人的、家庭内の者が複製するということで限定できるという趣旨で言ったのです。現行法でも実は、個人的、家庭内って、そんな厳格な法概念ではありません。解釈する者にとっては、多少の幅があるような概念だろうと思います。
 例えば「何親等内の親族」と書けば、法概念、規範として明確にできるわけですけど、家庭内というのは、甥も姪もいるかもしれないわけですよね。だけどそういうのはおそらく許していて、そして、若干あいまいな概念だけど、ここで、行為規範性としては維持できるだろうということで立法をしているわけだろうと思います。
 そうすると、当該コピーをする者が他人でない。その他人でないというのは、複製物を所有している同一の個人又は家庭内の者がやる場合、そのコピーをする場所が、たまたまほかの家のデッキを使ったってそれはかまわないと私は思いますけれども、そういうことで限定はできるのではないかと発言したのです。
 アについて、私は30条からの制限から外すべきだという基本的な考え方は、他人から借りたCDをコピーしていいというふうに、もう法規範として認めるとすれば、その複製物がまた他人に行き、また他人に行きと、そういうことになるわけで、これはもう、権利者としては市場性を大きく奪われるのではないかなという危惧を持っているからです。

【中山主査】 ほかに何か。どうぞ、森委員。

【森委員】 民放連の森でございます。内部で少し議論いたしました。結論だけちょっと言いますと、うちの体制としてはア、イ、オはいいだろうと、ウとエはだめというような雰囲気でございました。
 ただ、個人的には、その中でオの、ネットを使って、交換ソフトを使ってやり取りする私的複製というものを、これから認めざるをえない状況になっていくと思うのですが、それを従来の私的複製という範疇の説明で、十分な説明ができるのだろうか。
 場合によっては、このネットを用いた私的複製というものについて、法律的にも、何かもう少し言及するようなことが必要なのではないかと、こんなふうに考えています。
 以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございます。では、森田委員。

【森田委員】 この権利制限の範囲外とすべきか否かという問題を抽象的に議論するというのも、一つの行き方かもしれませんけれども、やはり何のために議論しているのか、そこからどういった法律上の効果を導かれるという前提で議論しているのかというのが、必ずしもよく分からないところがあります。
 先ほど、そういうことは度外視して、行為規範として考えるという考え方も示されましたが、そのような前提で議論するならば、それは一つの行き方ですけど、そういう前提で皆さんは議論されているのかどうかという点を、まず確認しておく必要があるのではないかと思います。
 法律上の効果としては、補償措置との関係がどうなっているかという点が重要なのだと思いますけれども、権利制限の範囲外となるというのは、要するに補償措置の対象外になる、すなわち、30条の権利制限にかかるから、補償措置が講ずることができるという制度の前提を維持するのであれば、この権利制限の範囲外とすべきだという主張は、そういった行為については違法行為なのだから、補償措置は講じないという、そういう前提で議論をしているのか、それとも、その前提も動かすということなのか。
 先ほどの資料1の(2)の補償措置というのは、「30条で可能とされる複製のうち一定のものについて、何らかの補償措置を講ずる」という整理に立っていますので、そこは動かさないということであれば、今、先ほどから議論されている中で、権利制限の範囲外とすべきだとご意見は、そういう問題については、もう補償措置とは切り離して考えるという前提で、それがよいかどうかを議論しているというふうに受け止めていいのかどうかということをはっきりさせる必要があるかと思います。もし、単に行為規範として考えているだけであって、そのような効果を与えるつもりでないということだとしますと議論がずれてきますので、確認したい点です。この点は事務局に確認すべき問題なのかどうかは分かりませんけど、その点をちょっとはっきりさせてから議論をした方がいいのではないかというのが、私の意見です。

【中山主査】 では、生野委員。

【生野委員】 私の意見は、著作物の通常の利用を妨げる複製行為はどういった複製行為なのかという考え方からお話ししているわけで、それは、補償金で救済されないものだという考え方で議論しています。

【中山主査】 30条に、立法理由がいろいろ複数あるわけで、そのものについて考えていかなければいけないと思うのですけれども。
 一番最初は、まず何と言っても権利者の利益がどのくらい害されているか、どのくらい大きいかという問題はもちろんありますけれども、それだけではなくて、例えば「法は家庭に入らず」という、法格言がありますけれども、あまり細かいところまで家庭内に法は入ってこない。
 特に今度は10年の懲役になりますので、これはものすごい犯罪でして、家庭内を捜索して、複製機器を押収してという話にもなりかねないわけで、そういうことが果たして家庭に入ってきていいかどうかという問題もあります。
 また、あまり議論されていませんけれども、トランザクションコストは、これは非常に大きな問題ですね。これは当然、先ほど森田委員もおっしゃいました補償金との絡みも入ってくるわけです。トランザクションコストがもし非常にかかるならば、そんな法律を作ったって、無意味でしょう。
 それからもう一つは、先ほどから議論が出ている執行可能性の問題ですね。法律を作っても、全く執行可能性がないのでは、これは法が弛緩する、モラルハザードが生じるるだけであって、立法する以上は何らかの執行可能性というものも考えて作らなければいけないという。
 このように、30条はいろんなこの要素が入っていますので、いろんな要素を全部つぶしていくというか、議論をしていかなければいけないのではないかなと思いますし、その中で、かなりの部分は今、議論が出ていますけれども、今後もそういう点を留意して議論していただきたいと思いますけれども、ほかに何かご意見がございましたら。
 どうぞ、森田委員。

【森田委員】 そうしますと、ここでは、権利制限の範囲外になって違法行為であるということになると、そういう行為をおこなった個人を、場合によっては捕まえてひどい目に遭わせるぞということで、そういう行為規範の実効性を維持するということを前提に、権利制限の範囲外とすべきかどうかという議論をするということなのでしょうか。あるいは、こういう問題は補償措置の範囲外の問題なので、契約で対価を取るかどうか、あるいは違法行為として損害賠償を取るか、そういう形で議論をすればいいのであって、補償措置とは切り離して、この問題を議論するということになりますでしょうか。
 しかし、そうなってきますと、今まで私的制限の範囲内に含まれていて、それゆえに補償金の対象に含まれていた行為が、今後は、違法行為として補償措置の対象から外れてどんどん出ていくわけですから、補償金というのはそれだけ少なくなってくるという方向に当然なるのだと思いますけれども、そういう前提で範囲外とすべきだという議論をされているという理解で、よろしいわけですかね。

【中山主査】 両方あるように思うのですけど。大渕委員。

【大渕委員】 先ほど、森田委員が指摘された点は非常に重要だと思うのですが、ただ、これは毎回同じことになってしまうのですけど、この30条の話と補償金の話は全体として相互に関連しているものですから、あまりこの30条の前提となる問題についての結論を決めてしまうような形にするのがいいのかという点は慎重に考える必要があろうかと思います。うまく関連する論点を組んでいかないと、結局、一つの論点だけを議論しても、関連するほかの論点が落ちてしまっては、全体として正しく把握することができないことになります。各論点につき賛成するにせよ、反対するにせよ、やっぱりトータルとして見なくてはいけないところがありますので、あまりここの論点だけに深入りするよりは、ここでの論点を念頭に置いた上で、他の論点も併せてご議論いただいて、最後にまとめてトータル的に考えた方がいいのではないかという気がいたします。

【中山主査】 小六委員、どうぞ。

【小六委員】 森田委員のご発言の中で、どこをベースに置くかと。
 私の発言は、基本的にやっぱり補償金を念頭に置いておりまして、この範囲から外れるものは補償金から外れるであろうと。残るものはきちっとそこで補償をしていただくのがいいであろうということで、これを範囲の中に入れるというふうに考えております。

【中山主査】 考え方としては、30条を外してしまい、10年以下の懲役に処すという、そちらの方に回してしまうか、あるいは今の補償金制度を広くして中に入れるかとか、その他いろんな考え方があり得ると思いますけれども、それは先ほど大渕先生がおっしゃったように、最後にいろいろ整理すればいいと思いますけれども、とりあえずはいろんなアイデアといいますか、考え方を出していただければと思います。
 では、他に、亀井委員、どうぞ。

【亀井委員】 すみません、先ほど少しはっきりと言わなかったものですから、補足させていただきます。
 アの「他人から」というこれなのですが、まさに森田先生が言われる行為の規範として見たときにどうかということで申し上げますと、私は、生野委員、あるいは松田委員がおっしゃるようなご意見に非常に近い意見を持っております。家庭の中で親が買ったものを子供がコピーするというところにまで立ち入るべきではないと。
 しかし、他人から借りるということ自体、あるいは友人でもいろんな、人によって定義が変わってしまいますが、そういう、例えば10年の懲役というようなものが、あいまいなままに置かれるということ自体が、少しどうかという意見を思っております。
 「私的使用のために」というところも、先ほど言いましたように、「これに準ずる範囲」というのであいまいなところがついておりまして、これは、私どもが参考にする、例えば著作権逐条講義なんかを見ますと、社内であれ、個人的な関係の強いサークルであれば、10人程度であればコピーしてもかまわないというようなことまで書いてあります。果たして、そういうものが認められるべきなのかというのは、常々疑問に思っているところでございます。

【中山主査】 はい、どうぞ。

【石井委員】 この問題について、NHKの中で議論したわけでもありませんので、個人的な意見として述べさせていただきますけれども、今1点、主査の方から10年以下の懲役というようなこともおっしゃいましたけれども、私としては、特にア、イの問題としてですが、許諾権を与えて、その許諾の対価としてお金を取るのか、それとも一種報酬請求権として補償金を取るのか、どちらの方が実効性が高いというか、より録画の実態になじむのではないかなというような観点もあるのではないかなと思います。
 そう考えていきますと、やはりあくまでも私的使用のための録音という範囲ですと、これは補償金として扱った方が実態に合うのではないか。つまり、ここは30条の範囲内として、権利制限の範囲内として、それで私的録音録画補償金の制度で経済的な補償をしていくというのがいいのではないかなというふうに考えております。

【中山主査】 ありがとうございます。現実問題として、現在のCDでは、個別的な対価を徴収するというのは技術的には不可能で、もし金を取るとすれば、10年以下の懲役をちらつかせて、個別的にトランザクションコストを無視してやるか、何らかの補償金をやるかということになると思うのですけれども、それでいいかどうかという問題は、もちろんあるわけですけれども。ほかに何かご意見がございましたら。
 それでは、今、録音の問題をやりましたけど、録画の問題も近いようなことになっていると思うのですけれども、録画の問題について、ご意見がございましたら、お願いいたします。どうぞ。華頂委員。

【華頂委員】 今、1の部分でも議論がなされたのですけれども、様々な著作物がある中で、著作物それぞれにいろいろ性格とか、構造化の特色とかいうようなことがあると思います。
 それで、そういうふうなことを踏まえて、僣越ですけれども、映画の著作物の特性というものをお話ししながら、2の問題をお話ししたいと思います。
 映画は、映画製作者が多額の製作資金を投入して製作するものなのですけれども、その投下資本は、必ずしも回収が約束されていないリスクマネーということを、まずご理解いただきたいというふうに思います。映画は、企画、それから撮影、編集などの製作段階を経て、一つの原版、オリジナルのネガフィルムですけれども、そういう形に収束して完成するわけなのですね。
 映画のビジネスは、そのたった一つのこの完成原版を元に、投下資本のリクープを目指してスタートします。その根幹は、すべてにおいて複製行為となります。まず、劇場での公開なのですけれども、これも、上映するスクリーン分のプリントを複製して、各劇場に頒布して始まります。それから次にDVD等のパッケージ商品の発売ですけれども、これも言うまでもなく、原版から複製して製造販売する。それからテレビ放送ですね。これも、原版からテレビオンエア用の媒体に複製して、テレビ局に納品して放送するというふうなことで、音楽のコンテンツとは、そこら辺でちょっと違うのかなと思います。音楽は、ライブとか様々なシーンでの利用がありますけれども、映画は、原版を利用するしかないというふうなことになっています。
 最近、ちょっと話はそれますけれども、地上デジタル放送において、総務省の情報通信委員会でEPNを採用するような結論がでたようですが、要するにネットへの出力を禁止して、コピーフリーというようなことが公表されましたけれども、劇場用映画のビジネスは、今言ったような複製というその行為が基本になっていますので、非常に困るわけです。
 ですから、コピーワンジェネレーションのタイムシフトによる視聴までは何とか容認できても、EPNが採用された場合のコピーフリー、これはもう、とても容認できないと考えています。というのは、パッケージ商品と同等、それからそれ以上の高画質の複製物が無制限に作り出されるというようなことになるので、映画製作者としては到底、容認できないことです。本来のテレビ放送は、テレビの視聴を目的としていまして、保存視聴したい消費者の方には、我々が販売しているDVDのパッケージ商品を購入していただきたいというようなことが、少し話はそれましたけれども、あります。
 繰り返しになりますけれども、映画のビジネスは、完成原版を複製して、マルチユースすることで成り立っています。複製行為によって海賊版が作成される場合はもちろんですけれども、家庭内で複製物が保存視聴される場合であっても、映画の著作者である映画製作者の通常のビジネスを阻害するというふうに考えていますので、あらゆる局面において、劇場用映画はコピーガードが必要不可欠というふうに考えています。
 どうしても複製行為が行われる場合には、その対価を徴収するのが、映画製作者としての生命線であるというふうに考えておりますので、この2のことで言えば、エの適法なネット配信から私的使用のために録画というのが、これがDVDにダウンロードする、パッケージ商品の流通の代替ということであれば、これは、このままでもいいのかなと思います。ただ、コピーフリーの状況では、ア、イ、ウ、オは、権利制限の範囲外としておくのが妥当かなというふうに考えています。以上です。

【中山主査】 コピーガードで守ることにプラスして、エはちょっと問題とするけど、それ以外は出すというか、30条外にするという、こういうご意見でしょうか?

【華頂委員】 いや。要するに、アとイは、ある一つの条件が加わればオーケーなのですけれども、総務省さんがおっしゃっているEPNが採用された場合、コピーフリーになりますので、そういうことを想定してということです。

【中山主査】 それでは30条としては、どういうふうに変えてほしいというご意見なのでしょうか?

【華頂委員】 映画製作者としては、もう根本的に、極端に言えば、コピーネバーですから。複製物を販売して、ビジネスが成り立っているので、私的複製といえども、家庭で、先ほど申し上げましたけれども、家庭内での私的複製といえども対価を徴収したいというのが一つの考え方です。

【中山主査】 分かりました。ほかにご意見がございましたら。

【松田委員】 今のは、アもだめだという意味でいいですね。

【華頂委員】 ある条件がつけば。要するに、デジタル放送でコピーワンジェネレーションということであれば、タイムシフトという視聴がありますので、それは容認できるのかなということです。

【中山主査】 コピーワンスならばいいということですね。

【華頂委員】 はい。タイムシフト視聴ということです。それを想定してのコピーワンス。

【中山主査】 ほかに何かご意見がございましたら。どうぞ、井田委員。

【井田委員】 ちょっと今までの議論が、先ほど森田委員から言われましたように、前提がみんな同じ前提で話されているのかなと思いまして、ちょっと疑問に思いだしてきまして。
 今、お話をされましたけれども、どうも、今回の30条の権利制限の範囲うんぬんというのは、いわゆる補償措置の要否、必要か必要でないかという議論とは別に、この30条で規定している内容が私的複製の範囲内かどうかという議論だと、私は理解していまして、そういう意味で言いますと、先ほどのアとかイとかエというのは、範囲内なのかなというふうに考えています。
 その範囲内の中で、更に補償措置が必要なのか、必要でないのかという議論があるのかなと考えていました。ちょっと理解が違っているのかどうかは、分かりませんけれども。

【中山主査】 おっしゃるとおりで、非常に複雑に絡んでいる問題でして、一方を取れば一方がなるというものではなくて、一方を取ったけれども、補償金はあるとかないとかで、いろんなことが絡んでくる可能性があると思います。
 どうぞ。椎名委員。

【椎名委員】 ちょっと1の方に戻っちゃうのですけれども、オの適法な放送・ネット配信から私的使用のための録音というのを、僕はさっき、老眼が激しくて、「違法」と読んじゃったのですね。だから、「オは私的使用の範囲から外れる」と言っちゃったのですけど、ごめんなさい、訂正をします。

【小六委員】 おかしいなと思った。

【中山主査】 アとイですね、要するに。分かりました。

【椎名委員】 はい。だからウ、エが外れると、ウ、エ、オって言っちゃった。

【中山主査】 分かりました。ほかに何かございましたら。どうぞ。

【石井委員】 ここでは、録音と録画に分けて書いてありますけれども、まず私は基本的には録音と録画で30条の権利制限の範囲というのは違ってこない、同じではないかというふうに考えております。例えば1の方のアでも、他人から音楽CDを私的使用のために録音というのがありますけれども、類似の例としては、例えば他人が録画した放送番組をまた借りてきてだれかが別の所でコピーをすると、そういうふうな問題もあるのではないかと思います。それは場合によっては、その文でありますように、権利制限規定に基づき、許諾なく作成された複製物を含む、このコピーをどうするかというような問題になるのかなというふうに思います。
 それから1のオの所で、適法な放送とネット配信というのがありますし、それから2の所で、放送をア、イで分けていますけれども、一般の、従来型の放送と、それから加入者制の放送に分けていますけれども、それは、やっぱり音のところでも言えるのではないかなと思います。
 そういう点でいきますと、基本的に、1で言いましたところの、ウ、エを権利制限から外す、「そもそもそういうのは許諾が必要なのだよ」ということにしてしまうというのは、録画についても当てはまるのではないかなと、そういうふうに考えております。

【中山主査】 石井委員のおっしゃるとおりなのですけれども、おそらくこれは、課長からお話がございましたとおり、例示ということですね。細かく考えますと、12でも、いろんな問題が出てくるし、問題があるのですけれども、いずれ条文にするときには、こんな細かくはできないわけですから、こういう代表的な例示で一応議論をしていただくという、そんなようにお考えいただければと思います。
 ほかに何かございましたら。だから、おそらく録音と録画というのは技術状態が違うので、こう分けてあるのではないかと思うのですけれども、根本的な考え方は似ている面もあろうかと思います。どうぞ、華頂委員。

【華頂委員】 くどいようですけれど、先ほど冒頭に申し上げた著作物も、ほんとにその性格というのですか、特質というのですか、そこら辺の違いをきちんと分析しないと、これはすべて同じというわけでは決してないと思うので、そこら辺の分析をしつつ話を進めていくのもやっていかないと、まずいのではないかなと思いますが。テレビ番組と劇場用映画は全然違いますので。

【中山主査】 どうぞ、松田委員。

【松田委員】 多分、映画製作者レベルの立場で言えば、ビデオグラムになった映画、映像がどんどん個人的な使用の範囲内だからといってコピーをされていったとしたら、影響力がすごく大きいのではないかという危惧があるのではないかと思います。
 私もそれはあると思うのですね。1本の価値、市場価格が、多分、他の著作物から比べると比較的高い。だから、1の例で言うならば、他人から借りたという場面が、もしそれが適法だよということが確定すれば、どんどん行われる可能性が、私はあると思います。
 だから、著作物の性質に従って、30条の要件を変えていこうというご意見だとすれば、私はその点については、どうも同意できないのであります。そういう性質があるかもしれないけど、30条の限りにおいては、著作物共通のルールで、私はいいのではないかなというふうに思っています。
 というのは、私は基本的には、個人的、家庭内というのも、皆さん方よりもかなり狭く解しているからだろうと思います。そういう影響がないだろうということだから、そういうふうに言えるのかもしれません。
 今の例で言いますと、少なくとも2の録画を今は議論していますが、1の他人から借りたという物も録画の点ではあるわけでありまして、もしビデオグラムが、DVDがどんどんそういう形で、なおかつコピーができるような形でコピーされて、友達から友達にということが、30条の規範を作るときに、「いい」というふうに解釈できるように作ってしまいますと、この影響はあまりにも大きいのではないかと私は思っております。DVD市場はなくなります。

【中山主査】 華頂委員の、1本から複製をして商売をするというのは分かるのですけれども、それは、レコードも1個の原盤からでありますし、本だって、一つの原稿から複製をして、アナログじゃない時代だって、それから多数の複製をされてしまい、高くて売れなくなって困るとか、ほとんどの著作物は基本的には1個の元があって複製していくという点では、同じではないでしょうか。

【華頂委員】 同じだと思うのですけれども、音楽などの場合は、楽譜があって、ライブとか、そういうふうな様々なシーンでの利用が可能で、もちろんレコード製作者で、原盤をお持ちの方はそれを利用していくしかないのですけれども。
 映画の場合は、シナリオを、ほかに利用するのかといったら、そんなこともまずありえませんし、とにかくオリジナル・ネガフィルムに収束しているものですから、それを使っていくしかない。それがもしも破損したら、終わってしまうわけですね。だから、ちょっとほかのコンテンツとは、著作物とは違うのかなとは思いますが。

【中山主査】 映画については、特殊な規定もあり、他の著作物と違う点もあると思うのですけれども、30条という観点から見た場合に、条文に、「映画だけはこうである」という条文になるのでしょうか。

【華頂委員】 映画だけ特別扱いしていただければ、それに越したことはないですが。複製が本当に生命線なので、最初のスタートから最後に至るまで、すべてそのオリジナルを複製することで商売が成り立っていますので。ですから、もう複製のことになると、非常に敏感になって。これが自由にできるようになると、非常に困ってしまうというふうなことがあります。
 先ほどから申し上げているEPNで、デジタル放送がコピーフリーになったら、もちろん補償金はいただきますけれども、補償金制度の限度を超えるような無尽蔵なオリジナル原版と同じクオリティーの物がどんどんできていくので、これはもう、補償金とかそういう問題ではなくなってくると思います。

【中山主査】 ほかにご意見がございましたら。どうぞ、小六委員。

【小六委員】 松田委員の、他人から借りたということと、この他人から借りたというふうに、確かにこの状況があるから書いてあるのですが、ここですね、私は、「アは制限の範囲内」というふうに先ほど申し上げているわけです。
 でも、その行為自体が、他人から他人だということが、完全に違法な感じでほんとに認識してしまいますと、先ほどからも申し上げていますけれども、音楽を自由に使用する、聴く、聴取する、こういう自由度が損なわれるなと。だから、この「他人から借りた」というような表現ではなくて、家庭内という限定される状況、30条の権利制限の表現の仕方で、その自由度を保障しますよと、その中の使用というふうな考え方はないものかと。
 その辺がちょっと難しいと思いますけれども、私自身の気持ちから言いますと、他人から借りたCDを私的使用のために複製することは、完全に違法だなという認識は持っております、よくないなと。我々の友人にそのリサーチをしましても、そういう意見で、「あれは、ほんとはいけないんだよ」と言っている人もいます。でも、大体の一般の人は、「いや、でも自由にコピーできちゃったら楽しいじゃない」っておっしゃる。そこら辺の間を取る表現方法で権利制限の範囲をくるんで、範囲内にくるむというような意見で、私はアを、アというものを範囲内におきたいなというふうに考えております。

【中山主査】 松田委員。

【松田委員】 それは、純粋に友達から借りてコピーして、友達がまた借りてコピーするというふうになったのは、委員の場合にはノーなのですか、イエスなのですか。

【小六委員】 困ります。

【松田委員】 ですよね。私も同じ意見なんですよ。改正するとして、30条1項に「他人から借りた物をコピーしたらだめ」というふうには、多分書かないと思います。
 それで、先ほどの、個人的に私は家庭内だけでもいいのかなと思っていますけれども、個人的又は家庭内という概念を、「その当該複製物を持っている個人的又は家庭内の者が複製する場合に」というふうな書き方をすれば、今の小六委員が「困ります」という行為を止められると、私は思っているのです。

【小六委員】 これは、制限速度が40キロと書いてある所を60キロで走って、すぐ捕まるかというふうな感じだと思うんですね。捕まるのは実はある、ある場合は。でも、大体はみんな50キロぐらいで走ろうよと、特に年を取ってきて目が見えなくなると、そういうふうにしますね、倫理的な問題が含まれているものです。
 だから、締めつけをしすぎるということが、逆に逆効果ではないかと。それをいわばちょっと柔らかくして、何度も申し上げますが、補償金という制度が、制度自体の問題を考えなきゃいけませんけれども、それで柔らかく包んで文化を守ろうじゃないかというふうな考え方でございます。

【松田委員】 基本的に同じだと思うのですね。

【中山主査】 松田先生は弁護士さんですけれども、これは、エンフォースメントは、どのようにお考えですか。

【松田委員】 実は、著作権法の中にエンフォースメントが全部可能な条文がどれだけあるのでしょう。私的複製の問題にだけエンフォースメントを問疑するべきでないと思っています。
 著作権法は、多分に行為規範性を求めているという部分があると思います。そして、この範囲内は適法だ、この範囲を超えると違法になるよということを、日本国内の国民にアナウンスすることによって、その範囲内を守ってもらうという効果が大きいのです。勿論規範を外れたときに、エンフォースメントが必要であることは言うまでもありません。これがなければ、行為規範性もくずれてしまうからです。
 エンフォースメントが必要な場合も生じることがあると思います。例えば個人的な範囲内では適法だけれども、その適法なことをサポートするようなビジネスやツールを専用機器で造るような場合については、それをどうするかという事案が起こります。30条外の問題として、違法な部分に入る行為について、さらにこれをビジネス的なサポートをするようなことが起これば、それは個人をエンフォースメントで訴訟等を提起する場合でなくたって、そのビジネスとしてサポートする側を、訴訟で訴える、こういうことだってあるのです。
 行為規範性は、各人には行為規範性としての公平な法意識を形成させる意味を持ち、それから、それを超えた場合、裁判規範としての意味も持つ場合があります。著作権法上に行為規範として機能する規範というものがあり、30条1項もその一つです。著作権法はこの性質の強い法律ではないかなというふうに思っております。全く無意味ではないと思っています。

【中山主査】 松田先生が担当された『ときめきメモリアル』事件のことを念頭に置かれているのではないかと思いますけれども、確かに条文の中には、そう100パーセント執行可能なものばかりではないことは事実だけれども、仮に今の状態でこれを入れると、ほぼ執行不可能な条文になる。そうすると、逆にモラルハザードという、まあいいんだと、違法だけど、これは大丈夫だというモラルハザードが起きるという問題も当然ありますし。
 それにしても、サポートする事業者だけを何とかするというわけにはいかないので、やっぱりその場合は、サポートされる、つまり侵害している方を、やはり10年以下の懲役ということでもっていかざるをえないわけでして、なかなか難しいのではないでしょうかね。つまりサポートする業を、それ自体を何らかの犯罪とするというわけではないわけですよね。

【松田委員】 「行為規範性の意味がある」と私は言いましたけれども、裁判規範性が個人に対しても向いていないというわけではありません。場合によっては、裁判をせざるをえない場合だってあるのだろうと思っています。そのときに、常に刑事罰で処理する必要は、もちろんないわけです。事案によるわけです。万一刑事罰で処理せざるを得ない場合であったって、起訴便宜主義もあれば、量刑の問題もあるわけですから、司法制度全体としてご指摘の不都合が生じないようにすでに制度が設計されていて、調整が図られているわけです。このことは、著作権法固有の問題というべきではありません。ことさら「10年だから」ということを、刑事罰のことだけを言って、そして個人の部分がみんなそのようになるのだという議論に誘導するのは、いかがなものかと私は考えております。

【中山主査】 ほかにご意見がございましたら。どうぞ。

【生野委員】 罰則関係でちょっと。技術的保護手段の回避によって個人が複製した場合は、これは、刑事罰はついてなかったのでしたっけ?

【甲野著作権課長】 ついてないです。30条の範囲外で民事的には違法ということにはなりますけれども、罰則はこの場合はかけないという形で、立法的には整理しております。

【生野委員】 そういった考え方もあるのかなと思います。

【中山主査】 どうぞ。大渕委員。

【大渕委員】 これはまた、他へのいろいろな波及効果などにも関わってきますけれども、これで30条の範囲外としたときに、どのようなインパクトがあるかということについて考える必要があります。先ほど言われたような刑事罰の対象に一般的にしてよいのかのいう点、あるいは、一般的に差止め、損害賠償の対象にはなるけれども、実際はエンフォースできないという状態が類型的に生じてしまうということがいいのかという点については、十分に考えていく必要があるのではないかと思います。
 先ほどのそういうものの専用のツールを提供する業者云々というのは、また別途そういうものを考えるという可能性もありますが、いずれにせよ、30条の範囲内か、範囲外かという問題は、補償金のところにも関わってくるものですけれども、ただ、やはりここで30条の範囲外ということにしてしまった場合に、どういうような法的状態になるのか、それはただ単に赤信号を出すというのにとどまる話なのかというところを十分に考える必要があろうかと思います。

【中山主査】 では、石井委員、どうぞ。

【石井委員】 先ほどの華頂委員の発言に戻りますけれども、私、先ほど、録音と録画が一緒だと申しましたけれども、華頂委員の発言は確かに重要なポイントがあるかと思います。
 すなわち、やっぱり映画ですとか、あるいはCDですとか、そういうような著作物というか、あるいは媒体と言ってもいいかもしれませんが、そういうものによって、それぞれビジネスモデルというものは違ってきているだろうと思います。これを、例えば私のところでいくと放送でございまして、あるいは私的な使用の複製、そういうところで、そのビジネスモデルを阻害するということは、やはりなるべく避けなければならないことであるというふうには思います。
 ただ、それが30条の範囲内、範囲外というところで規定してしまうのかどうかということについては、ちょっと私もまだ結論は出ていませんけれども、いろいろな考え方がある、必ずしも適当でない場合もある、例えば30条の条文で著作権の目的となっている著作物から映画の著作物を除いてしまうのかということになりますと、必ずしも現実的ではないような気もしますので、またそれは、例えば補償金制度ですとか、そういうところで現実的な解決を図っていく必要があるのではないかなと感じております。

【椎名委員】 ここでの議論に直接は関係ないかもしれないのですが、適法なネット配信といった場合に、もちろんダウンロードするもの、ストリーミングするものというふうにあるわけですけれども、通常ストリーミングというのが、保存できないものであるという理解の下に権利者がコンテンツを出していたりする場合に、今、ストリーミングを保存できたりするという状況があるのですね。それは、必ずしもコピーガードの回避ではなくて、何かよく分からないのですが、コンピューターでそれを再生するときに、モニターに行く直前のビットマップを取ったりするようなことによって、それが保存できてしまうというようなことを前提に、You Tubeみたいなものが隆盛を極めているという現実があるらしいのです。
 それは、技術的保護手段の回避というところで、必ずしも押さえることができない問題として、別な問題としてあるということを1点、ご指摘しておきたいと思います。

【中山主査】 どうぞ、津田委員。

【津田委員】 アップルコンピューターが、先週、新しいiPodとiTunesツールの「7」というバージョンを発表しているのですね。それで、新しいまたコンテンツ配信のサービスをスタートさせたのですけど、そのシステムでは、5台までのパソコン、もしくはiPodみたいな、音楽とか動画を再生できる機器に、自動的にiTunes上で購入したコンテンツとか、バックアップが自動コピーされる仕組みも入っているんですよね。それは、その購入したコンテンツが、例えばパソコンのハードディスクのクラッシュとかで、買ったコンテンツにアクセスできなくなってしまうのを回避するために、例えば複数のパソコンに自動的に、購入した権利と引き換えに、自動的に私的複製がアカウントで同期されるみたいなシステムになっていて、それはなかなか面白いなと思うのですけど。
 ただ、アップルの買ったコンテンツに関しては、DRMがかかっているので、ネット上で購入したコンテンツを無制限に配付するということはできないですし、iPodから許可の動画を抜き出して、ほかのiPodにというのも、今のところ、一応名目上はできないようになっていると。
 こういうシステムを音楽業界が認めてきたというのが、2003年からの流れなのですけど、先週発表されたiTunesでは、いろんなハリウッドの方の映画も提供されるということのサービスがスタートしていますし、テレビ番組の配信というのもスタートされていて、ある種、購入したコンテンツを自動的に5台のパソコンですとか、iPodみたいな機器に自動的にコピーするような仕組みというのは、ある種、ハリウッドも認めたという部分があって、これは一つ大きなポイントかなというのは僕は思っていて。
 それは実際、この1週間始まって、ディズニーの映画がiTunesで買えるようになったのですけど、これがもう1週間で100万ドルの売り上げというのを上げているという意味でも、消費者にとっても非常に便利なシステムとして認知されているという状況があるのかなと。
 何が言いたいのかというと、やはりデジタル時代になってきて、コンテンツとか、ネットとかブロードバンドというのは、非常に進化が速いのですから、非常にそのコンテンツを視聴する状況というのは常に変わっていますし、当然その視聴するシーンというのも、家で聴くだけではなくて、リビングだったり、書斎のパソコンだったり、車の中だったりと、非常に多様なシーンで自分用にコピーして聴くというようになっている状況で、ある程度やっぱり、法律でこういった、どこまでコピーしていいのか、だめなのかというのを決めていくと、その状況に追いつけないのではないかという気が、僕はあって。
 だから、アップルがある種、こういった5台までは自動コピーして、ネットとかそういうところへは出せないよという、DRMで管理するみたいな、法律ではなくて、ビジネスルールである程度規範を作っていく。もしくは今後は、再生する機器と本人の認証システムみたいなものができれば、もしかしたら家族、家庭内のコピーというのをもうちょっと厳格に管理して運用できていくのかもしれないというのが、今後の可能性としてはあるでしょうし。
 当然、今アップルがやっているものというのは、購入する、ダウンロード購入はビジネスですけれども、例えばじゃあこういったデジタルコンテンツの購入システムというのは、非常に消費者に支持されたときに、例えばもしかしたらオンラインとレンタルビジネスを始めるということがあるかもしれない。もしくは、アップル以外の企業、日本企業かもしれないし、ほかの企業が、新しいネットで、コンテンツをレンタル、やはりもっと違った概念のコンテンツを消費者に提供するシステムが登場してくると、こういった権利制限の範囲のア、イ、ウ、エ、オとは、また全く違った項目というのが出てくるかもしれないとなったときに、ある程度これを、権利制限を決めていこうとなったときに、現実には、アップルみたいなものが消費者に受け入れられているのに、法律では全然遅れているみたいな、ねじれ現象が存在していくのではないかなという感じがしています。

【中山主査】 ありがとうございます。今の問題は、3ページの3.でも出てくる問題でして、将来的には非常に大きな問題になってくるのではないかと思います。どうぞ。

【華頂委員】 今の津田委員のお話なのですけれども、ディズニーとかハリウッドが、映画のネット配信を積極的に進めているのですけれども、これはあくまでもパッケージ商品の流通の代替ですから、そのつもりでやっていますので、私もそれはそれでいいと思います。あくまでもパッケージ商品の流通の代わりというふうに認識しています。

【中山主査】 だいぶ意見を活発にありがとうございました。
 時間の問題もありますので、次の2.の問題に移りたいと思います。当然、前の問題とも関連はしてくると思いますけれども、補償の在り方と、補償措置の在り方という問題に移りたいと思いますけれども、この点についてご意見がございましたら、お願いいたします。どうぞ、松田委員。

【松田委員】 補償の関係で、先ほどの30条の広い、狭いの関係では、補償金の方に影響するという、森田委員の発言がありましたけど、私も、それは影響すると思っております。
 30条をできるだけ狭くもし立法したとしたら、それは、それから外れる部分は違法になるわけですから、それはエンフォースメントが十分にできなくても、少なくとも行為規範として違法になるわけですから、これはもう、権利者にその後の対処は委ねるべきだろうと私は思います。30条の範囲内で、現行法と同じく許された範囲内で第2項を使うべきだろうと思います。この意味を超えて違法な行為にエンフォースメントしにくいということを補充するために補償金制度を導入することは、現行法を改正しなければなりません。
 しかし、多分、経済的効果といいますか、権利者に及ぼす影響というのは、今の30条を少し狭めて、デジタル的なコンテンツを家庭内に限定して、例えば一つだけならオーケーというふうにした場合の経済的効果は、とてつもなく大きなものが、私はあるだろうと思っております。補償金制度でわずかな金額をうんぬんするよりも、その方が大きいだろうというふうに思ってはおります。

【中山主査】 それは、計算上大きいのですけど、どうやって取るのでしょうか。

【松田委員】 それは、CDが売れるという効果になります。

【中山主査】 なるほど。

【小六委員】 もうちょっと詳しく説明をしていただけます? 今のご発言の。

【中山主査】 つまり、聞きたいことは、確かにそれが守られれば、みんなCDを買うから売れるんですけれどもね。

【小六委員】 つまり、それを実効性と、先ほど申し上げたことは、他人の物ということも含めてそうですが、それを決めて実効性があれば守られて、非常に範囲が狭いところで限定的な効果が生まれるので、我々に、権利者にとって有利だろうとおっしゃっているわけですか。

【松田委員】 はい。先ほども、友達から借りたCDをコピーする、DVDをコピーするということが規範上許されるというふうにしてしまった場合に、それは、私は友達から友達というのは、かなり影響するだろうと思っております。もしそれがノーということで前述のとおり行為規範性の効果を有する立法ができるのであれば、友達は友達から借りないでCDを買う、DVDを買う、ないしは我慢をする、こういうことに多分なるだろうというふうに思っています。
 2項というのは、補償金制度というのは、その違法な部分について、補償金をカバー、でリカバリーしようというのではなくて、30条で本来は適法だけれどもリカバリーしようという制度です。ですから、その部分を小さくすれば、2項の範囲内も小さくなるのは当然だろうというふうに思います。

【小六委員】 よろしいですか。

【中山主査】 どうぞ。

【小六委員】 了解いたしました。補償制度は、もちろん違法ではない部分に対して、適法な部分のことの部分に関して補償しているのはよく承知しておりまして、ですから、逆に、厳しい使用形態の規制というものが、ほんとに自由な利用を妨げるのではないかと。
 私どもの意見としましては、自由な利用を妨げないように、ある程度法律を緩やかにといいますか、今現在の様式ですよね、の状況でよろしいですから、補償制度の拡充をお願いしたい、その方が自由になれるのではないかというふうな意見でございます。

【中山主査】 生野委員、どうぞ。

【生野委員】 自由度というのは、コピーの自由度という面でおっしゃられていると思うのですが、基本的には、音楽に対するアクセスという意味では、お店で買おうと思えばどこでも買えるわけですよね。地方で、お店が近くになければアマゾンだとかそういったところで購入できるわけだし、レンタル店からも借りられるし、ラジオからも音楽は大量に降ってくる、音楽配信でも購入できる、このように音楽にアクセス可能な環境がここまで多様化している中で、なぜコピーにおける自由度をそこまで許容する必要があるのかというのが、私はちょっと理解できないです。

【小六委員】 先ほど申し上げましたが、ある程度といいますか、「ある程度の歯止め」と申し上げました。この「ある程度」というのはどこまでの歯止めかは、ちょっとまだ議論をしなければならないと思うのですが、全部フリーでオーケーなんて、このデジタル時代にそんなことはまずありえないわけです。ですから、著作権保護技術との協力関係は是非必要だと思います、ある意味で。
 しかし、私的使用との範疇は、補償措置の在り方で、1番のアにも書いてありますが、契約に基づかなくても、対価の支払いが済んでいるものもコピーするという。私的利用は法律で認められていて、なおかつ私的利用が非常にこういう状況になったから補償金があるのだという原点に立ち返った論で論議をしないと、あくまでも利用というものを対価としてとらえるのではなくて、私的利用は適法でありながら、なおかつ補償金を払う理由はどこにあるのかということを、もう一度皆さんに認識をして、私ももちろん認識をして、この論を進めたいと思っております。

【中山主査】 ありがとうございます。どうぞ。佐野委員。

【佐野委員】 30条に書いてある私的利用とは、私たちが複製できるということであって、それに対しては補償金を払う必要はないと、私は思っています。それ以外のものに対して、きちんと払うべきであると。
 多分2項を否定していくようになってしまうのかもしれませんけれども、認められているものに対して、なぜ補償金を払わなければならないのでしょうか。ですから、そこの部分をきちんと決めていただきたいと思います。それ以外のものに対価をきちんと払うという形、実効性の問題もいろいろありますが、これだけ技術が進歩していく中で、それを見ながら検討を進めていけたらと思っています。
 それから皆さん違法コピーをしているようですが、一般的、普通の人たちは、そんなにここで言われるような複製をしているのかなと。私はそうは思っていないのです。ヘビーユーザーの方は、いろんな形でやってらっしゃるかもしれませんが、一般の方は、普通にCDやDVDを買って家庭内で利用していると、私は理解しています。

【中山主査】 生野委員。

【生野委員】 今、手元に資料を持っていませんので具体的なデータがないわけですが、私も、自分が購入したCDを、例えばプレイスシフトでハードディスク内蔵型機器やMDにコピーするだとか、それは許容されると思います。ただ、レンタルから借りたものですとか、友達から借りたCDからのコピーですとか、それから違法配信からのコピー、それらはもう厳然たる事実として多くあります。その資料は、今は持ってないので。ありますか?

【甲野著作権課長】 お手元に、「持ち出し禁止」と書いてあるファイルがありますけれども、ここの所の第2回のところで、インデックスがついていないのですけれども、第2回の配付された資料の中に、「私的録音をめぐる実情の変化等」というものがございます。資料1というふうに肩番号が付いておりますけれども、このページで言うと、15ページというふうにしてあるところが、「デジタル録音の音源別の総録音回数比率」というふうになっておりまして、この帯グラフの中の他人が所有する録音物からの録音というところが、私もちょっとよく見えないのですが、白の所がそうですので、2005年でしたら24.3パーセント、1997年だったら12.4パーセントということだったと思うのですが。

【中山主査】 要するに、2005年は、自分の所有物から録音したのが約2割と、こういうことですね。そういうふうに読んでよろしいわけですね。あとは借りてきたり、その他ということらしいですね。

【小六委員】 よろしいですか。佐野委員がおっしゃったところですが、補償金制度は、ヘビーユーザーを対象にした制度ではなくて、あくまでも一般の人がデジタル時代に複製を行うと、つまり一人の人間が1回コピーすれば、全国でみんながコピーをする、みんながそれだけコピーをしているという状況がございます。そういう状況の中で、補償金制度ができてという認識でできた制度だと解釈をしております。

【佐野委員】 私も別に、補償金制度がヘビーユーザーのためにできたというふうには、別に思っていません。それとは別に、違うことを申し上げたつもりなのです。
 ここのアンケートの結果も、何回か拝見はしてきています。この委員会に出席するに当たり、私の周りの人に意見を聞いたりなんかしてきておるのですが、ヘビーユーザー以外の方は、特に他人から借りてとか、どこからか借りてきた物をコピーして自分の物にして、更にまただれかに貸してというような行為をしているというような方はいらっしゃらないのです。
 ですから、そこを非常に問題になさっているわけですが、そうではない人も多いということを申し上げたかっただけです。

【中山主査】 ありがとうございます。ほかに何か。特に2.補償措置の在り方の問題で、何かご意見がございましたら。どうぞ、土肥委員。

【土肥委員】 いろいろとご意見を伺っておりまして、確かに30条の私的使用、いわゆる私的使用の範囲については、当然、法改正の対象の一つだと思いますので、ここが変わるということは当然あるのだろうと思います。つまり、ベルヌ条約のスリー・ステップ・テストが変わるということは当然ないわけですけれども、それを受けて30条があるわけですし、私的使用があるわけですから。したがって、この私的使用が所与のものであるということは当然ないはずであります。
 その前提で、30条の外に出した場合にどうなるかということでございますけれども、これは当然、そこに直接侵害の問題が起きてくるわけですね。つまり、教唆幇助では済まなくなるわけでありまして、そうすると、そこの部分が直接侵害を回避しようとすると、当然契約で対応すると、こういうことになります。
 そうすると、契約で対応するということになりますと、補償金の方が外れていますので、当然その対価のコストは上がります。多分上がるというふうに考えるのが、素直な経済の理屈ではないかと思います。そうすると、対価が上がりますと、当然、消費者の方は、そこは上がらないというようにお考えなのかもしれませんけれども、レンタルレコード一つを取っても、当然レコード会社は上げてくるはずであります。従来から入ってくるものが入ってこないわけですから、当然その額を上げようとするのだろうと思います。
 そうすると、対価が上がってくるわけでありますから、一般のユーザーとしては、それをそのまま払うということであれば、もちろんハッピーエンドなのですけれども、そこを回避しようとするのではないか。つまり、それは、おそらくそこを承知で知りながら、いわゆるモラルハザードの問題がありましたけれども、その問題が必ず起きるというふうに思います。それを、どうも消費者の方は歓迎されておるかのように聞こえるのですけれども、そこが私にはよく分からない。それは分からないという点であります。
 したがって、私の意見ということは、つまり、そういう今のような議論をたどっていって外に出してしまうと、当然それは経済の論理からすると、上がる。上がるとすれば、消費者は嫌だから、そこを回避しようとする。そうすると、侵害の問題が起こる。そうすると、当然それは、主査もおっしゃるように、これは10年の話になる。これは、そうしないはずはないわけでありますから。そうすると、それでいいということになるのかどうか。そこを十分お考えいただきたいというような意見でございます。

【中山主査】 大渕委員。

【大渕委員】 これは、以前申し上げたとおり、まさしく30条だけを議論してもしょうがない場合なので、一つ一つ議論を進めてきて、今、補償金まで来ているのですが、やはりすべてをトータルとして考えていく必要があると思います。先ほど30条の範囲外とした場合に刑罰をどうするのか、差止め、損害賠償が実際に行使できるのかという話がありましたが、それに加えて、最終的には私としては、個別に議論するだけではなくて、幾つかある可能性を具体的に組んでみて、かつ、それを単に抽象論にとどまらずに、実際には難しいのかもしれませんけれども、シミュレーションのような形で検討してみるべきではないかと思っています。
 例えば、補償金であると、どのような経済的なインパクトがあって、個別の課金でやるとどういうインパクトがあるかという数字に関してある程度入らない限りは、多分地に足がついた議論ができないのではないかと思います。
 そうすると、資料の作り方等は実際難しい面があろうかとは思いますけど、それをしない限りは、議論が結局抽象論で終わってしまい、実のある議論はできないのかなというふうに思っていますので、いずれかの段階で、法的インパクトと経済的インパクトの両方ともが分かるような形でのシミュレーションをもとに議論をしてみて、初めて実のある議論ができるのではないかと思っております。

【中山主査】 おっしゃるとおりで、数値まで入るかどうかは別として、そこは分かるような図式とか何か整理をしていただきたいと思います。それはおっしゃるとおりだと思います。森田委員。

【森田委員】 この補償措置の在り方というところで、具体的な問題が設定されていますけど、それについて、もう少し議論をしないと、今の数値を入れる前提も確定できないのではないかという感じがします。
 このように問題設定した中で、完全な複製禁止の場合に補償金が取れるのかというのは、現行制度上は取れるということになっている、つまり、現行制度上はそういう区別はしてないから取れることになっているわけですが、完全な複製禁止でありながら補償が取れるという場合というのは、いったい何に対する補償なのかということを考えると、複製はできないけれども補償を取るというのは、どうも筋が立たないような気がしますし、また、完全な複製禁止で提供している権利者と、そうでない権利者とが補償金制度上の分配の点ではまったく同じく扱われるというのも、おかしな気がします。
 そう考えてきますと、複製禁止とか、あるいは複製の程度によって補償金の内容が変わってくるというのが理論的には素直なように思います。もっとも、そうなると、補償金制度が非常に複雑になって、運用上コストが増大するので、大ざっぱにやるのだということは、選択肢として残るとは思いますけれども、理屈の上では、やはり完全な複製禁止でありながら補償金を取るというのは、どうも筋が立たないのではないかという気がします。
 それと、仮に複製が一定の範囲で許容されている、あるいは30条の私的複製が許容されている場合であって、なおかつ契約等で対価の支払いがなされている場合に、なお補償金が取れるかどうかという問題があって、先ほど議論があった点は、この2の1のアの解釈問題にかかっているのではないかと思います。
 つまり、例えばCDを買ってきた場合には、それで30条が定める私的複製はすべてその対価でカバーされているという前提でCDの対価が設定されているとすれば、もうそれ以上、補償措置は講ずる必要がないという考え方も理論的には成り立つわけであります。この2の1のアというのは、契約に基づく対価の支払いは録音録画の対価を含んでいるのか、というのは、含んでいるというふうに解するのか、あるいは含んでいないというふうに解するのかという問題になりますが、これは実際上は、それぞれの権利者が、契約に基づく対価を定めるときの主観的な意図というのは多様である可能性があるわけですけれども、そうだとすると制度は動きませんので、これはどういうふうに解釈すべきなのかという規範的な問題に還元されるのだと思います。その辺りを確定しませんと、その次の議論に進まないのではないかという気がいたします。

【中山主査】 ありがとうございました。その点も含めて、ご意見がございましたら。
 これは、理屈の上ではかなり難しいのですね。30条で自由としておきながら、例えば契約で3回と決めた場合、その3回分の金は何だと、自由なことをやった対価のお金かって、その理屈はおかしいですしね。言葉の問題のような気もしますが、理屈としては非常に難しいわけですけれども。どこかで何か、決めなきゃいけないのだろうとは思いますけれども。どうぞ。森田委員。

【森田委員】 法律の方から考えていくのか、契約から考えていくのかといえば、論理的な先後関係の問題でありますが、両方によって許容されている行為をどちらで対応するのかについては、それぞれ別個に対応すればいいのか、それとも実質的な対象が重なっているので、両者の間で何らかの調整が必要なのかとか、そういう問題だと思います。この点で、私的複製については補償金という措置が講じられていて、それで、本来は対価を払わずに私的複製ができるはずなのに、契約で対価を取っているということは、本当は私的複製の対価ではなくて、払う必要がないものを払っているのだという説明になりますから、これは、普通の人の理解をなかなか得にくいのではないかと思います。つまり、それは本来払う必要がないものを、だまされて払っているということになってしまいますから。
 そうではなくて、これは何かある行為が許容されたということの対価として、一定の金額を支払っているとすると、対価の支払の対象となっていない部分については補償金の支払いなくしては許容されない行為ということになりますから、それゆえ補償金でカバーするのだということになります。このような、契約上の対価と補償金との間に何らかの相関関係を認めないと、消費者には理解できないのではないかという気がいたします。
 理屈の難しさのほかに、契約に基づく対価と補償金というのは、法的には全く別のものであって、それぞれ別個に取りますよというのは、なかなか一般の理解を得られないのではないでしょうか。

【中山主査】 そうですね。強いて言えば、30条の範囲であっても鍵をかけて、秘密に売ることはできます。しかし3回分だけは、秘密を解除してあげますよという、その対価であるということになると思うのですけれども。それでは、それは30条との関係はどうかと−−問題が起きますけれども、とにかく秘密を解除してあげる対価ですよと、私は日記をだれにも見せませんけど、あなたには1回だけ見せるけど、お金をくださいというのと似ています。読む行為は別に著作権侵害ではないのだけれども、1回見せるからお金を取りますよということと似ているのではないかと思うのですね。
 どうぞ、椎名委員。

【椎名委員】 補償措置の在り方に対して、契約等でカバーできるのではないか、技術的保護手段でカバーできるのではないかというところで、補償措置をどう考えるのかという議論の立て方だと思うのですけれども、結局、例えばCDはどうなのか、配信はどうなのかという個別の議論にしていかないと、その契約の中に権利者が全部そろっているのか、あるいは技術的保護手段を施すに当たって権利者が全部、合意してるのかというふうなところで見ていかないと、漠然と、補償金制度に対して契約・技術的保護手段がどうなのかという議論をしていても始まらないような気がしていて、やはり個別の、メディアとは言わないですけれども、例えばノン・セキュアーなCDはどうするのですか、配信はどうするのですかという議論をしていかないと、始まらないのではないかというふうに思うのです。

【中山主査】 そうですね。ここに書いてある契約等で対価を得られる場合というのは、やはりそれは、契約が可能な場合を前提にしているわけで、できない場合は、また別の議論になるだろうと思うのですね。したがって、これは例えば音楽配信のように契約が可能な場合を議論しているということだと思うのです。可能であるとしても、その次の問題として、では権利者がやった場合はどうか、レコード会社がやった場合はどうかとか、いろんな問題が出てくると思うのですけれども。
 ほかに何か、ご意見がございましたら。生野委員。

【生野委員】 契約によっては、同じ行為であってもその内容が変わる場合はあるのですけど、少なくともレコード会社、これはビデオの製作会社も同じだと思うのですけれども、今、DVDからはコピーできないということですが、複製が仮に可能であったとしても、その複製の対価を含んで商品を発売しているメーカーというのは、およそ考えられないと思うのですが。
 音楽でいえば、市販CDにしてもCDレンタルにしても、明示的な契約はありませんし、特にCDについては複製が無限に可能ですが、だからといって、無限に許諾しているわけでも何でもないわけですし。
 基本的に、明示的にきちんと書いてある物以外については、コピーが対価を含んでいるというようなことは、現状では考えられないと、そういうふうに思います。

【中山主査】 どうぞ、華頂委員。

【華頂委員】 補足ですけれども、映画のDVDに関しては、全くその複製というのは想定していません。個人視聴を目的にして、販売しています。

【中山主査】 そうすると、生野委員のご意見は、契約で、例えば3回なら3回コピーするというふうになっている場合でも、対価、補償金は取れるということですか。そういう話ではなくて?

【生野委員】 3回までコピーが可能というのは、現実的には、技術的保護手段などを伴った形でしか行使できないわけです。無限に可能となるコピーを3回までに制限しただけの話で、そこにおける複製というのは、特に許諾コピーということではない。ですから、補償金を取ることは、一応可能だというふうに考えます。

【中山主査】 どうぞ、森田委員。

【森田委員】 今の場合、3回までというのは、複製の許諾に対する対価を含んでいるという契約を締結することも、これは自由だと思います。つまり、対価を含んでないという契約と対価を含んでいるという契約は、いずれも当事者が自由に締結することができるものです。そうしますと、いずれの趣旨で対価が合意されたかが明示されてない場合に、この契約はどちらのタイプに当たるのかということを決めなくてはいけない。そのときに、それは契約の趣旨の問題ですから、当事者の意思解釈によって決まるというのでは、実際上うまくいかないので、何らかの制度的な定めをしておくことが考えられます。つまり、「こういう場合には、明示の約定がない限り、普通は対価を含んでいるものと解する」というような契約の解釈に関するルールが必要になってくると思います。
 したがって、先ほどの点は、現在、権利者がどのような主観的な意図で対価を設定しているのかというよりは、そういう契約がなされた場合に法的にそれをどのように解釈・評価するルールを設定するのかという問題とセットでないと決め手に欠けるところがあります。契約としては両方ともありうるところで、3回分のコピーの対価も含んでいるという契約は許容しないということは、契約自由を否定するものであって、これはありえないと思います。その契約解釈をどうするかという問題をどうするかという点から検討を進めないといけないのだと思います。

【中山主査】 どうぞ、小六委員。

【小六委員】 まさに今、森田委員のご指摘のとおりで、ここをどういうふうに解釈しようかと一生懸命悩んでおりまして、考えれば、もう全くそういうことで、複製の対価ではなくて、いわゆるあるものの対価とだけ書いてあれば、一体どっちだか分からないので、我々としては、含んでいないと考えます。
 ただ、「複製の対価」と書かれると、それだけなのかと思いますので、これはまた違った解釈になるので。だって、複製の対価だけ払うのだったら、確かに補償金制度はおかしいなと思いますし、じゃあすべて含んでいるのだったら、じゃあどうなのだということになりますし、ちょっと分かりにくかったのだと思います。

【中山主査】 大渕委員。

【大渕委員】 この2の1の契約等で複製の対価を得られる場合には、どう考えるかにつきましては、二つ問題があって、まずは、ある契約があって、それが対価を含んでいるのか否かについての解釈問題というのは当然ありますが、これを回避したければ、明文で明確に規定してしまえば、それは、よほどのことがない限り、回避が可能となると思います。
 次に、仮にそのような対価が含まれている場合に、これを補償金の対象にするかという二つ目の問題があって、ここでは、複製の対価が得られる場合について個別の形で処理していくべきなのか、もう少し抽象的というか、そういう個別の話というよりは、もっとバスケット的に考えて、あとは料率等で調整していくかということが問題ではないかと思います。
 第1の問題に関連しますが、先ほどお聞きしていると、実際そのような対価は入っていないとか入っているとか、いろいろな認識の違いがあるようですが、いずれにしても、ここでは、これらの2点を明示的にもう少し詰めていく必要があるのではないかと思います。

【華頂委員】 劇場用映画の場合は、先ほどお話ししましたが、基本的にはコピーネバーです。
 それで、また地デジの問題に戻りますけれども、今は、テレビ放送から複製した場合は補償金をいただいていますけれども、地上デジタルになった場合には、コピーフリーというのはちょっとありえないのでコピーワンジェネレーションを要望したい。これは、タイムシフトという視聴があるので容認できますけれども、コピーワンスでも複製が行われることに違いはないので、同じく補償金をしっかりいただきたいというふうに思っています。
 もしも、コピーネバーになるのであれば、補償金は必要ないのかなというふうに考えています。

【中山主査】 甲野課長に伺いたいのですが、時間ですけど、もうちょっと延長してもよろしゅうございましょうか。ここで打ち切るには、せっかく議論が白熱していますので。

【甲野著作権課長】 もし、皆様に議論をしていただけるのであれば、もうちょっとやっていただければありがたいと思います。

【中山主査】 では、もう少し時間の延長をさせていただきたいと思います。
 ほかにご意見はございませんでしょうか。どうぞ、河野委員。

【河野委員】  2のイ、「保護技術」の考え方に関する質問なのですが、ここでは、権利者の意思が関らしめられる場合とそうでない場合があるとの整理になっています。一方、著作権法の技術的保護手段の定義のところを見ますと、「著作権者等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く」というふうにありますし、利用のところでも、著作権者等の同意を得ないで行ったとしたならば、侵害となるべき行為を云々と規定しているところがあります。この論点ペーパーでの整理は、著作権者等の意思に着目し、あえて「技術的保護手段」ではなく「著作権保護技術」というふうにおっしゃっているのでしょうか。ご説明いただければと思います。

【川瀬室長】 「著作権保護技術」という名称を使っておりますのは、基本的には著作権法に規定しております「技術的保護手段」よりは広い概念を使っておりまして、先ほどから議論していますようなアクセスコントロールも含めた、いわゆるコピーを何らかの形で制限をするという技術全体を含んで使っております。
 それから、今の著作権法に規定している「技術的保護手段」につきましては、権利者の意思に基づき使用されているものということになっておりまして、これは法律上規定しておりますが、この場では、著作権法上の「技術的保護手段」に限定しているわけではなく、そこは幅広に考えていただければいいと思います。
 また、今、私どものペーパーで問題提起をしておりますように、権利者の意思といいましても、コンテンツには関係権利者がたくさん含まれておりますので、全員一致でそういった意思表示をしているのかどうかという問題点も、議論としてはあるのだと思いますので、そこはあまりこだわりなく、自由に議論を進めていただいて、議論を集約するときに、今の技術的保護手段との関係はどうなのかというのは整理していきたいと思っております。

【中山主査】 よろしいですか。ほかに何かございませんでしょうか。
 生野委員に伺いたいのですが、この契約で、1回だけコピーしていいという契約をした場合と、10回だけコピーしていいという契約をした場合と、恐らく配信業者は権利者に払うお金が違うのでしょうね。その場合でも、補償金というのは同じに取れるのですか。

【生野委員】 コピーをどの程度許容するのかということについては、その配信業事業者によって異なります。例えば、iTunesは比較的広めな形で許容している。一方、当然レコード会社の考え方もあったり、配信事業者の考え方もあったり。
 ただ、基本的には、複製枚数、複製数量が多いからその価格に反映するというビジネスではありません。通常であれば、1枚のコピーと10枚のコピーというのは、価格としては違ってしかるべきなのでしょうけど。
 そういったところで、複製枚数と価格がリンクしていないというのは実態ですし、価格に複製枚数を反映させるという考え方も、現時点ではないというところです。

【中山主査】 対価という点では、ユーザーとの関係じゃなくて、権利者と配信会社との関係で、権利者が1回だけという許諾をした場合と、10回だけ許諾した場合と、同じ対価なのですかという。ユーザーではなくて、権利者と配信会社の関係ですね。

【生野委員】 配信事業者と、例えばレコード会社との関係ですか。
 これは契約の問題なので、詳細は承知しておらないのですが、配信事業者とレコード会社との契約で、その複製許容枚数に応じて、その対価が違っているということは聞いておりません。それを反映させている契約というのは、聞いていません。

【中山主査】 どうぞ、小六委員。

【小六委員】 著作権保護技術というものに、今いろんな問題が出ているのを、この著作権保護技術というものが、現実的に一体どういう形のものなのか、我々の、2のアで書いてありますが、権利者の意思に基づくと。その権利者の意思というのは、権利者というのは多様性があります。だれかが何回コピーしてほしいとか、だれかが何とか複製を許可するとかということは、一体どう、だれがどう管理して、どう決めて、それをまた著作権保護技術がどういうふうに管理するのかと、そのシステムすら見えてない状況で、この論議が今ここでこうやること自体が非常に難しいのではないかと、今、そんなふうに感じております。
 それで、そのことでもって、その補償措置の在り方というのは、そういうことは、著作権保護技術が非常にまだ明確でない状況で補償措置が必要であるということであれば、私はよく分かりますが、そこら辺の論点がどうもはっきりしませんので、ここはちょっと難しいなと思っております。

【中山主査】 私も、かねてから今の技術の状態が中二階にあるという話をしていまして、中間段階では処理が非常に難しいのですけれども、ただ、問題は中間段階にあるから何もしないということがいいか、あるいは中間段階にはあるのだけれども、将来を見据えて何か中間段階なりの処置をすべきか、あるいは現状のまま、当分様子を見るかという、こういう選択になると思うのですけれども。それはやはり現状のままでいいというお考えですか。

【小六委員】 私は、著作権保護技術は絶対だめだとは言ってません。ただ、現状、我々著作者は、現在、これは2年間の会議ですね、これを、あと5年も6年もほっておかれた場合に、我々は一体どうなるんだろうという危惧は感じております。そういう意味合いでもって、著作権保護技術の現状を今判断して。
 実は逆にいいますと、期待はしております。やっぱり両輪となって補償措置もあり、こういう管理の形態もあり、なおかつ技術が進んでいけば、そういうことは絶対必要だというふうには感じております。

【中山主査】 技術の進歩は早いですから、仮に今、何か措置を講じても、そう遠からず、また見直さなきゃならないだろうと思います。補償金制度も盤石かと考えられていましたが、10年ちょっとでもうほころびがでてきました。
 したがって、おそらく今の中二階段階で何か決めても、これは絶対だと、不滅だとは言えないので、中二階なりの何らかの措置というものを考えざるをえないのではないかとは思うのですけれども。
 ほかに。どうぞ、亀井委員。

【亀井委員】 中山先生がおっしゃるとおりだと思います。今の小六委員のご指摘は、JEITAということで第2回だったでしょうか、現状のその中二階の技術のご紹介をさせていただいておりまして、しかも先ほどの河野委員のご指摘のとおり、これがその権利者の意思に関らしめていないものだとすると、現状の回避規制が働かないということになってしまうと。これは非常にかえって大問題ではないかというふうに思います。ですから、これは前提として議論しておいたほうがいいかなと思います。

【中山主査】 分かりました。ほかに何か、ご意見はございますでしょうか。今日のところは、この程度でよろしゅうございましょうか。問題があまりにも大きいので、なかなかそんな1回で決着は着くはずもない問題なのですけれども、よろしいでしょうか。
 だいぶ時間も過ぎましたので、本日の議論はこの程度にしたいと思います。
 最後に、次回の小委員会の内容も含めまして、事務局から連絡事項をお願いいたします。

【川瀬室長】 本日は、長時間ありがとうございました。
 今後の審議予定でございますけれども、参考資料の3をご覧いただけますでしょうか。今日が9月の21日でございまして、課題に関する検討をしていただきました。次回は、10月の17日、それから11月の15日に、第7回ですけれども、ここは日程が決まっておりまして、次回につきましては、今回の議論を踏まえて、更に議論を深めていただくと同時に、この5月に海外調査が行われております検討結果がやっとまとまりましたので、その検討結果を報告をさせていただくのと、あと、事務局の方で、関係団体が調査いたしました国内の実態調査の結果をまとめて報告しておりますけれども、それ以降、一体型の携帯用の録音機器、携帯用の複製機器が急速に普及したというような実態の変化がございましたので、改めて今年の夏に実態調査もしておりますので、その実態報告もさせていただきたいと考えております。
 15日は、更に議論を深めていただくと同時に、12月でございますけれども、12月は、その課題に関する検討と同時に、今期の審議会が終わりに近づきますので、審議経過報告、これは状況報告ということだと思いますけれども、これをまとめていただくということと、それから10月に、5月に行けませんでしたアメリカ、イギリス等の調査を行う予定ですので、その報告をしていただくということにしております。
 来年度につきましては、前回のとおりでございます。
 なお、次回は、今申し上げましたように、10月の17日の火曜日でございまして、10時から12時まで、場所はアルカディアの市ヶ谷6階会議室を、予定をしております。
 それから、次々回の7回は11月15日で、これも10時から12時、同じくアルカディア市ヶ谷の6階の会議室で開催を予定しております。なお詳細につきましては、改めてご連絡をいたします。
 本日は昼食のご用意がございますので、お時間のある委員は、そのままちょっと。

【中山主査】 次回は市ヶ谷だそうですので、お間違いのないようにお願いいたします。市ヶ谷のアルカディア、私学共済組合の会館でございますよね。ぜひ、間違いのないようにお願いいたします。
 本日は、これをもちまして、文化審議会著作権分科会第5回私的録音録画小委員会を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

〔了〕

(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)

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