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著作権分科会私的録音録画小委員会(第2回)議事録

1. 日時
  平成18年5月17日(水曜日)10時30分〜13時

2. 場所
  経済産業省別館10階1020会議室

3. 出席者
 
委員: 荒巻、井田、大渕、華頂、亀井、小泉、河野、小六、椎名、津田、土肥、中山、松田、森、森田
文化庁: 加茂川文化庁次長、辰野文化庁長官官房審議官、甲野文化庁著作権課長、秋葉国際課長、川瀬著作物流通推進室長、千代国際課国際著作権専門官、木村著作物流通推進室長補佐ほか関係者

4. 議事次第
 
(1) 開会
(2) 議事
 
1 私的録音をめぐる実情の変化等について
2 ビジネスモデルと技術的保護手段の現状について
ビジネスモデルの現状について
技術的保護手段の現状について

5. 配付資料
 
資料1   私的録音をめぐる実情の変化等について(PDF:263KB)
資料2 第1回私的録音録画小委員会意見概要
資料3−1 音楽配信等を巡るビジネスモデルの現状と未来について(PDF:161KB)
資料3−2 日本における主な音楽配信(PDF:126KB)
資料4 著作権保護技術(PDF:389KB)
資料5 レコード会社から見た音楽のデジタルフォーマットにかかわる技術動向について(PDF:191KB)
参考資料 私的録音録画小委員会審議予定(案)

6. 議事内容
 

【中山主査】 それではただいまから、文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第2回を開催いたします。ご多忙の中、ご出席賜りましてありがとうございました。
 議事に入ります前に、本日の議事の公開につきまして、予定されている議事内容を見ますと、特段非公開とするに当たらないと思われますので、傍聴者の方々にはすでにご入場いただいておりますけれども、よろしゅうございましょうか。

【一同】 〔異議なしの声あり〕

【中山主査】 ありがとうございます。それでは、傍聴者の方々はそのまま傍聴をしていただくということにいたします。
 それでは、早速議事に入ります。まず事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

【木村著作権課課長補佐】 それでは恐れ入りますが、本日の配付資料の確認をお願いいたします。本日の資料の中に議事次第として1枚物を配付させてもらっております。この資料の下段、下のほうに本日の配付資料を列記させてもらっております。各々確認願います。
 まず資料の1といたしまして、私的録音をめぐる実情の変化等について、A4の横長の資料でございます。続いて資料の2ですが、第1回私的録音録画小委員会意見概要です。A4縦長の資料でございます。そして資料の3から資料の5でございますが、本日、ビジネスモデルと技術的保護手段の現状につきまして、関係者の方から説明をいただきます。それに関係します資料といたしまして、資料の3−1、音楽配信等を巡るビジネスモデルの現状と未来について、A4の横長の資料です。続いて資料3−2、日本における主な音楽配信、A3の資料、1枚物です。そして資料の4、著作権保護技術についての資料、これがA4横長の資料です。そして資料の5、レコード会社から見た音楽のデジタルフォーマットにかかわる技術動向について、A4横長の資料でございます。そしてあと、参考資料といたしまして、当小委員会の審議予定(案)でございますが、この資料を配付させてもらっております。
 資料の漏れ等ございませんでしょうか。ありがとうございます。

【中山主査】 それでは、初めに議事の段取りについて、ご説明いたします。まず、私的録音をめぐる実情の変化等につきまして、事務局より説明をいただきます。次にビジネスモデル及び技術的保護手段の現状につきまして、関係者にご説明をいただきます。
 最初にビジネスモデルの現状につきまして、株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング芸術・文化政策センター、太下義之主任研究員より説明をいただきます。続きまして、技術的保護手段の現状につきまして、1据え置き型録音機器、2携帯オーディオ機器・モバイルにつきましては、本委員会の河野委員より説明をいただきます。
 それから音楽ソフトにつきましては、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、コーポレイト・スタッフ・グループ、佐藤亘宏チーフ・マネジャー、社団法人日本レコード協会、高杉健二事務局長、畑陽一郎法務部課長より、ご説明を頂戴したいと思います。
 残りの時間につきましては、これらを踏まえて自由討議としたいと思います。
 それでは、最初に私的録音をめぐる実情の変化等につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【川瀬著作物流通推進室長】 それでは、事務局のほうからご説明をいたします。資料1をご覧いただけますでしょうか。
 この資料は私ども事務局のほうで、公開された資料や関係団体に実情をお聞きしまして、まとめたものでございます。1枚目をめくっていただきまして、目次でございますけれども、私的録音にかかる音源等について、それから2として私的録音に用いられる機器・記録媒体について、それから3、私的録音の実態についてということでございます。
 それでは説明は、まず3の私的録音の実態についてからしたほうがわかりやすいと思いますので、13ページを開けていただけますでしょうか。
 これからの資料は左の下にありますように、私的録音録画に関する実態調査につきまして、平成3年、平成10年、平成14年、平成18年とそれぞれの関係の団体で実施されておりますので、その資料に基づきまして、私どものほうでまとめさせていただきました。
 まず、私的録音の回数でございますけれども、アナログ、デジタルを含む全体の私的録音の平均回数は1991年から2001年で落ちておりますけれども、平成9年以降は13回弱ということで横ばいで推移している。これが左のほうの資料でございます。1人当たりの私的録音の平均回数ということで、黒抜きがアナログで白がデジタルですけれども、デジタルの機器の普及によりまして、デジタル録音がアナログ録音を代替しつつある様子が伺えると思います。
 内訳としまして、1年以内に私的録音の経験がある者の割合、それから私的録音経験者における平均回数ということで、これもデジタルとアナログに分けて内訳を表にしております。
  2の私的録音の音源でございますけれども、この表を見ていただきますと、デジタル録音の音源別総録音回数比率ということで、その総録音回数比率につきましては左下の備考欄でその算出のやり方が書いてあります。
 それでこの表の中で2005年の例を見ていただきますと、黒抜きのところが、これが自分の家族が所有する録音物からの録音、白抜きのところが他人が所有する録音物からの録音、それからその次がCDレンタルからの録音、それから放送からの録音、インターネットからの録音ということで、ただインターネットの録音につきましては平成17年、2005年に初めて調査項目としましたので、この調査しか出ておりません。それから以下、生演奏からのライブ録音等が続くわけでございます。
 それでこの調査から左の上からですけれども、2005年の調査においては、総録音回数の比率が最も高いCDレンタルからの録音ということで、28.6パーセントということでございます。それから、インターネットからの録音は先ほど言いましたように2005年からの調査でございますけれども、10.5パーセントということで、パッケージ全体から見ますと72.6パーセント、つまり所有する録音物から、他人が所有する録音物から、それからCDレンタルからを合わせると72.6パーセントなのですけれども、それと比べると割合としては小さいというものが見られます。
 また、1997年と2005年の調査を比較しますと、放送からの録音が極端に減少をしております。また、他人が所有する録音物からの録画が増えたのではないか、というふうに考えております。
 それから次、15ページですけれども、私的録音の理由ということで、4カ年の調査についてそれぞれ、ちょっと見にくいのですけれども、その理由のところに重ねて表として表してあります。
 その中でヘッドホンタイププレーヤー等で聞くため、好きな音楽を抜き出して編集して聞くため、市販のCD等を買うより安く済むためという3つの理由が、それぞれ4カ年の調査全体を見ましても高い理由として挙げられています。好きな音楽を好きな場所で聞くために録音を積極的に活用する一方で、市販のCD等の購入の代替手段として録音を行なうという人が相当数いることが伺えるということでございます。
 それから4番目が、これは参考ですけれども、私的録音補償金の総額ということで、黒抜きが機器の補償金、それから白抜きが記録媒体ですけれども、2000年をピークにして減少傾向にあるというのが伺えると思います。
 そういった私的録音の実態を踏まえて、念頭に置いていただいて、3ページから説明をしますと、3ページはオーディオレコード、音楽ビデオ、音楽配信事業の売り上げの推移ということでございます。ただ、音楽ビデオは私的録音の音源ではございませんけれども、参考までにという程度で記入しております。
 レコードの売り上げは98年6,000億をピークにして減少傾向で、2005年では3,700億円程度、40パーセントの程度の減ということでございます。ただ、2006年の1月から3月期につきましては、前年同期を上回ったというような報道もございまして、下落傾向に歯止めがかかったという見方もあるように聞いております。音楽配信につきましては、売り上げ別ではまだまだということでございますけれども、これから伸びてくるのではないかというのが関係者の見方でございます。
 この現象につきましていろいろと分析も行なわれているわけですけれども、例えば経済不況とそれによる可処分所得の減少ではないかとか、エンターテインメントサービスの多様化によりまして、それらの競争が激化した結果ではないかとか、携帯音楽の通信費などの支出が増加しまして、レコードの購入に回る金額が少なくなったのではないか。それからIT技術の進歩に基づきましてコピーが拡大して、P to P等の不正アップロードが拡大して、そういう原因があるのではないかというふうなこともいわれております。
 それから次が、これもパッケージの、先ほど見ましたように音源として非常に大きなレンタル市場の推移ですけれども、まず参考のところを見ていただきますと、CDレンタル店の開業、閉店の推移でございまして、店舗数はこの統計にはございませんけれども、1989年に6,000店をピークにしまして毎年減少を続けておりまして、2005年の7月末現在では3,247店舗ということで、対前年比2.9パーセント減、89年対比で48パーセント減の大幅な減少でございます。
 ただ、これはいろいろと原因があるといわれておりますけれども、1つは個人店舗中心だったものが大型店舗中心になって店舗数が減ったというような原因もいわれております。現在はカルチャーコンビニエンスストア、いわゆるTSUTAYAさんとGEOという大手のCDレンタル店で約半分、それから書店系の総合店で7パーセント、ビデオ系の総合店で8パーセント個人が36パーセントというような内訳になっていると聞いております。
 それでCDレンタル店は減少傾向にあるのですけれども、レンタル市場全体も、それは左の図でございますけれども、1998年の690億円から2005年で600億円に減少しているということで、これも関係の団体等に聞いてみましたら、若者が減っているのではないかとか、音楽の楽しむ時間が減っているのではないかとか、お小遣いの使い方の変化があるのではないかというようなことが理由としていわれているよというようなことを聞いております。
 次に5ページですけれども、これは著作権の管理している団体の日本音楽著作権協会における使用料の推移ということで、CD、ビデオ、貸しレコード、インタラクティブ配信について、その統計をとってみたわけですけれども、日本音楽著作権協会の全体の使用料については最近は1,100億円前後で推移しております。
 録音使用料につきましては、録音使用料は一番上の段ですけれども、これはレコードの販売不振に基づきまして、同じように減少傾向をしております。貸しレコードも一番下の三角のところですけれども、減少しております。それでインタラクティブにつきましては増加傾向にございますけれども、その右側のインタラクティブの内訳を見ていただきたいのですけれども、ほとんど白抜きの着メロが大きなシェアを示しておりまして、例えばiチューンズミュージックなどの配信につきましては、その他の音楽配信という横の線が弾いているところに入っています。今後の伸びは期待されるということですけれども、実際にまだ入ってきた収入としては、そう顕著な傾向が示されていないというのが現状でございます。
 それから次の6ページでございますけれども、これは配信事業によるコピー制限のルールの例ということでまとめました。これは次に太下研究員のほうからお話があると思いますので、参考ということで後ほどご覧いただければと思います。
 その次の7ページでございますけれども、これはファイル交換ソフトによる音楽の複製量におけます推定でございます。下の段の2005年の1月にコンピュータソフトウェア著作権協会と日本レコード協会が共同で実施されました、「2005年のファイル交換ソフト利用実態調査」に基づいた推定でございまして、「ファイル交換ソフトの利用者が無断でアップロードされた音楽ファイルから、2004年の1年間にダウンロードした数は1億900万ファイル(曲)以上と推定される」というデータも出ております。その1億900万ファイルの根拠は下のところに書いているような数字でございます。
 それから、8ページ以下が私的録音に用いられる機器の統計をとってみました。
 まず9ページでございますけれども、個人用オーディオプレーヤーの国内出荷台数でございますけれども、左のほうの図ですけれども、この黒抜きがヘッドホンステレオとかありますけれども、いわゆるカセットベースの携帯用のプレーヤーです。それからその次がポータブルのCDプレーヤーが横の、それから白抜きがポータブルのMDプレーヤー、それから最後のところが携帯デジタルオーディオプレーヤー、これはiPodなどの携帯用のものでございまして、ここ3年の間に携帯のデジタルオーディオプレーヤーの出荷台数は急速に拡大をしているというのが伺える資料だと思います。
 参考で、いわゆる据え置き型の機器でございますけれども、これも統計を見ましたところ、全体的に減少しているという傾向が伺えると思います。
 それから10ページでございますけれども、10ページはパソコンの出荷台数の実績、平均保有台数の推移とパソコンの保有率ということで、左のほうでございますが、パソコンの出荷実績でございますけれども、かなり大きな台数が出荷されているということがわかると思います。また右側でございますけれども、世帯別の平均保有台数は1を超えておりますし、世帯別のパソコンの保有率も世帯の77.5パーセントをパソコンを保有している、何らかのパソコンを保有しているというような資料も出ております。
 それから11ページが3の記録媒体の需要でございますけれども、これもMD、CD−R等の記録媒体の需要がオーディオカセットを上回って、アナログからデジタルの変換が最近行なわれているということが伺えると思います。この一番大きな右肩上がりのものがいわゆるデータ用CD−Rでございまして、右肩上がりですけれども、最近やや横ばい、または減少の傾向がこの録音用のMDでございます。もちろん、アナログベースのカセット等は極端に減少しているということでございます。以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。それでは5分程度時間をとっておりますので、今の説明についてご質問のある方はお願いいたします。はい、どうぞ、亀井委員。

【亀井委員】 JEITAの亀井でございます。いろいろな資料をおまとめくださって、まずは感謝させていただきたいと思いますが、拝見いたしますと、先ほど口頭でもご紹介をございました、例えば3ページのレコード協会さんが作られた資料からの抜粋でしょうか。データを取られているところがございますが、2005年に343億の値を音楽配信で売り上げられていることについて、例えばレコード産業さんが出されている元の資料を拝見しますと、前年度200パーセントの伸びというようなご説明であるとか、あるいはほかのところもそうですが、音楽メディアユーザーの実態調査をされていまして、そういうものを拝見しますといろいろな見えてくるもの、この背景、先ほどいろいろご説明ございましたけれども、いろいろ見えてくるものがございますので、こういうサマライズされたものでご判断いただくということもあろうかと思いますが、ぜひ原典をお配りしていただくようにしていただいてご覧をいただく、共有するということが大事なのではないかと思います。
 それから質問という点では、一番最後から2番目ですか。15ページの私的録音の理由というページがございますが、ここで挙げられております「市販のCD等を買うより安く済むため」というこの選択肢の意味が、少しわかりづらいかなというふうに思いますけれども、おわかりでしたら説明いただきたいと思いますけれども。これはCDを他人から借りてコピーをするということ、あるいは違法複製のようなものも入っているのかどうか。
 それからもう1つ、代替手段とサマライズされております。これは事務局でサマライズされたところではないかと思いますけれども、この背景、買う代わりに使うということは、例えばヘッドホンタイプのプレーヤーに録音するということについても、基本的に1つ買う代わりにそこにコピーをする。外で聞くためにCDを買うのではなくて、代わりに落とす。そういうふうにとらえることもできます。この代替手段という意味合いが、代替手段は常に1つ買うという前提で代替手段といわれているのか、ここの意味合いがわからないので、おわかりであれば、少し説明いただきたいと思います。
 それから、これは補足といいましょうか。今さら誤解される方はないかと思いますが、10ページのJEITAの統計でパーソナルコンピュータの出荷実績が挙げられております。これにつきましてはいわゆるビジネス市場と個人向け市場、すべての出荷総数でございまして、必ずしもそれがすべて私的複製に関わってくるかということはこの統計からはわからない、われわれでも把握できていないところでございます。
 ご覧いただきますように、2000年と2004年がピークですが、これは例えばビジネスユース、それから個人ユースがこれから期待されますけれども、数年に1度買い換え需要ということがございます。したがいまして、ピークはこういう形で恐らく波打ってくると思います。これはちょっと補足です。失礼しました。

【中山主査】 その点について。

【川瀬著作物流通推進室長】 はい。15ページの詳細については、質問項目自体が多分アンケート調査ですので、細かい説明を前提にしてされていないと思いますので、回答する方はいろいろな思いがあって回答されているんだと思います。したがって、市販のCD等を買うより安く済むからということで、その市販のCDを買うよりもコピーして買ったほうが安いという単純な理由で丸をつけられた方は丸をつけられたのだと思います。
 したがって代替手段というのが適切な言葉かどうかというのはありますけれども、私どもとしては、CD等のパッケージを買うよりも私的録音で済ませてしまうという人が相当いるのではないかという意味で代替手段という言葉を使っているわけです。

【中山主査】 よろしいですか。はい、どうぞ、小六委員。

【小六委員】 小六と申します。今のご質問とちょっと共通することで、14ページの表の、デジタル録音の音源別の総録音回数の比率についての質問です。他人が所有する録音物からの録音というのがここに入っているのですね。先ほどの代替手段に関しても、いま一緒に質問しようと思っていたところなのですが、私的録音というものの範疇が何か曖昧模糊としているような気がします。皆さんそのことについて合意をしているのかどうか、本来ならばはっきりしていて、私的録音補償金という名前がついていると思うのですが、その補償金で補償している範疇の意識が少しずれていて、違法行為の分まで補償しているかのごとくお互いに受け取っているように感じられます。そこら辺のことについては共通の認識が必要だと思われます。これから補償金について論議するにあたって、私的録音だけを補償するのだから、ほかの違法な部分はどうするのだというほうの論議が非常に曖昧になってくるような気がしています。
 例えば違法行為があるものに関してそれを補償するということが法的にどうかわかりませんけれども、そういうことまで含めてちゃんと考えていこうと思っているのか、あるいは私的録音だけのルールもきちっと考えるのか、そこら辺のこともちゃんと話をしていないと、先に進めないような気もしないではない。こんな印象を受けますのですが、いかがでしょうか。

【川瀬著作物流通推進室長】 これはアンケート調査ですので、多分消費者の方はそういう違法か、適法かという意識も何も考えずに、自分の実態経験から丸をつけられたと思うのです。今、ご指摘の点は、これから検討事項がまだ成立する場合において、いろいろなデータ類などもございますので、そういったものを踏まえた上で、実態の変化を踏まえた上で、検討事項が成立する場合に問題提起ということで改めてしていただいて、それをした上で問題点を抽出して、議論をする1つの材料というふうに私どもは受けとめております。

【椎名委員】 椎名でございます。亀井委員のご意見に反対なのですが、このデータというのはひとつひとつのディテールを見るよりも、私的録音に関係するさまざまな角度からのデータを総合的に見て、いったい補償金が何を補償しなければならないかということを考えていくべきだと思うのです。やはり配信において、配信の対価にそういうものが含まれるという議論もあるし、あるいは自分が購入したものをシフトして、場所をシフトして使うために私的録音があるというようなところで、その私的録音を正当化する議論もあるし、そういう中でやはり一番このデータから読み取るべきだと僕は思ったのは、今まさに質問されたCDを買うよりもコピーすることが安く済むということによって、逆にCDが売れなくなった。この3ページのCDが売れなくなったというカーブと、僕はスタジオミュージシャンという仕事をしているのですが、新譜の制作がこれとまったく同じカーブで、ちょっと大げさにいえは就労機会がなくなっていった感じがある。やはりそれと反比例して、データやCD−Rの生メディアが売れてきたというところを見えてくる。
 補償金制度というものが賛否両論ある中で、経済的損失が補償できないから補償金制度があるとするならば、その補償金制度が手当てしていくべきところをこの中から読み取るべきなのではないかな。細かいディテールの話ではなくて、まさにサマリーの中で大筋の傾向みたいなものを読み取っていくべきなのではないか、というふうに思いました。

【中山主査】 ほかに何かご質問はございませんか。

【井田委員】 日本記録メディア工業会の井田でございます。今おっしゃられたように、大筋を見ていくということは大切なのですけれども、先ほど亀井委員の言われたのは、ここに現れたものだけではなくて、見えてないところで誤った見方をしないように、全体をやはり統一すべきではないかなということだと考えます。
 それからそれと関連しまして、今CDの売り上げが下がってきているというお話がありましたけれども、それがコピーによってというイメージが、このグラフの中にはちょっと見て取れる部分もあるのですけれども、実は先ほどちょっとおっしゃられたように、可処分所得がどう動いているかとか、人口動態がどうなっているかとか、そういった部分の資料も含めて、実は別の要因もあるのではないかという論もあるのではないか。そういうものも含めて、幅広く公平なデータということで出していただけたらいいかなと考えております。
 それからもう1点、インターネットからの録音というのはまだまだ微々たるものだというイメージがこの中にあるのですけれども、これはまだ始まったばかりですので、まだ小さいのは当然だと思うのですけれども、欧米とかそういうところがどういうふうに動いているかとか、そういったことも含めて参考にしてはどうかなと考えます。
 それからもう1点、私どもに関連したところで11ページに記録媒体の需要ということで出ておるのですけれども、若干念のために申し上げておきますと、ここに出ていますのは単位が100万とか出ていますけれども、これは数量でございます。それから、出所としてAVメディアの国内需要推移とありますけれども、これは事務局のほうでAVメディアの国内需要と、データ用の国内需要というものと合わせてこのグラフにされていると思うのですけれども、ぱっと見ますと、カセットがずっと下がってきているのをデータ用のCD−Rが代替しているかのごとくちょっと見てとれるのですが、実はそれぞれのデータを並べますと、フロッピーディスクが下がってきた分がちょうどデータ用CD−Rが代替しているというのが、データ用の資料の中に現れています。AV用だけで見ますと、カセットテープが下がってきたものが録音用MDとか録音用のCD−RとかDVDとかというものに置き換わっていっているというのが正しい姿ですので、念のため申し上げたいと思います。

【椎名委員】 いきなりホットにいろいろしゃべるのはあれなのですが、数字は数字です。おっしゃることも確かに正しいと思うのですが、この前提として、皆さんご家族、ご自分、CDをPCで焼いてませんか?ということなのですよ。その実態を数字であれこれいじくって、その実態ははないのじゃないかというふうな話に持っていってこの話を始めると、すごくひしゃげた話になると思うのですね。PCで皆さんCD焼いてますよ。だから、こういう数字が出るのですよ。そのことを前提にDRMとか配信のこととか考えていくべきなのであって、数字を間に挟んでぐしゃぐしゃになっていくのは、好ましくないと思います。

【中山主査】 ありがとうございました。いろいろなご意見を踏まえて、これからは本論に入っていきますので、時間の都合もございますので、次に移りたいと思います。
 続きまして2つ目の議題、ビジネス問題及び技術的保護手段の現状にかかる意見聴取に移りたいと思います。初めに「ビジネスモデルの現状」につきまして、三菱UFJリサーチ&コンサルティング芸術・文化政策センターの太下義之主任研究員にお越しいただいておりますので、ご説明をいただきたいと思います。

【太下主任研究員】 はじめまして。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芸術・文化政策センターの太下と申します。
 私自身はこの部署名からもおわかりのとおり、芸術文化政策を専門にしておりまして、その観点から音楽コンテンツ産業に大変関心を持っております。また、その延長線上で音楽配信等についての論文等も書かせていただいておりますので、恐らくそういった視点から今回この場にお呼びいただいたのではないかなと考えております。
 さて、ビジネスモデルの現状についてというお題をいただきまして、ご用意いただきました資料が2点ございます。お手元にあろうかと思いますが、1つがこちらの資料3−1というカラーの資料です。それからもう1つがA3版の3−2というちょっと文字が細かいものですけれども、日本における主な音楽配信という、この2つの資料でございます。
 まずこちらの資料3−1のほうでご説明をさせていただきます。ビジネスモデルの現状ということでお話しするためには、日本における主な音楽配信の一覧の整理が必要であろうということで、1ページにあるような項目について、日本の主な音楽配信の状況を調べてみました。名称、特徴、楽曲数、ユーザー数、ダウンロード数、開始年月、価格、デバイスがPCなのか携帯なのかということ、Digital Rights Management、ファイル形式、コミュニティ機能の有無、運営会社、アドレス、こういった項目を把握してみました。これを一覧表として整理したものが、先ほどご紹介した3−2という資料でございます。
 ご覧いただいてわかるとおり、かなりの数のサービスがございます。もちろん、これは主なということで把握させていただいたもので、これ以外にもいろいろなサービスを提供されている事業者さんは沢山ございますが、ちょっと時間等の制約もあり全部は捕捉しておりませんが、だいたいの傾向をまずこれをご覧いただくだけでもご理解いただけるのではないかなと思っています。これだけの数がありますので、いくつか視点を設けて類型化させていただいております。
 資料3-1の2ページをご覧いただけますでしょうか。ここでは4つの視点でビジネスモデルというものをとらえてみました。
 2ページにありますとおり、1つ目が1次的なデバイス、これがPCなのか携帯なのか、という類型化です。2つ目が課金方法による類型化。ユーザーから見てどんな払い方をするのかということです。それから、3つ目が事業の特徴による類型化です。そして4つ目がDRMとファイル形式による類型化。この4つで全体を整理してみましたので、順にご説明したいと思います。
 ではもう1枚めくっていただいて、3ページ目をお開きください。
 まず、1次的なデバイスによる類型化です。サービスを最初に受ける機器はどうなっているのかということで大きく類型化しますと、3つくらいに分けることができるのではないかと思います。この辺は非常にわかりやすい部分ではないかと思いますけれども、1つがPCモデルと名付けましたけれども、パソコンを1次デバイスとする音楽配信、これは非常に事例は多数ございます。それから2つ目が携帯モデルというふうに名付けましたけれども、携帯電話を1次デバイスとする音楽配信で、今回の調査では着メロは把握していませんけれども、着うたフルなどは音楽配信の一種というふうにとらえていいのではないかと思っています。それから3つ目が専用機器モデルということで、専用機器を1次デバイスとする音楽配信ということで、any musicさんなどがやられていますけれども、それ専用のオーディオ機器で受信するという仕組みになっております。
 日本の状況はこのうち2番目の携帯モデルというものが非常に発達しているというところが特徴ではないかなと思います。アメリカなどを見ますと、PCでの音楽配信が主流で、ようやく最近になって携帯電話が注目されているという状況です。日本では着メロで火がついたということがありますけれども、携帯モデルが大きな潜在力を持っているというところが特性だと考えています。
 それから次の4ページ目でございますけれども、課金方法による類型化というものも試みてみました。これも3つくらいに分けて考えることができるのではないかと思っておりますが、1つがコンテンツごとの課金モデルです。これが一番わかりやすいかと思うのですけれども、iチューンズミュージックストア、1曲ファイルをダウンロードすると、その1曲の値段が例えば150円とか200円とか、そういうふうになっていく仕組みです。
 ただ、これだけではないということで、あと2つほど書いてございますが、2つ目がサブスクリプションモデルということで、サブスクリプションというのは会費という意味ですけれども、日本では例えばナクソスさんというクラシック専門の音楽配信などがございますけれども、これが会費制をとっております。これはファイルのダウンロードではなくて、ストリーミングという形で聞き流すような形ですけれども、会員になっている間は何曲でも聞くことができるというサービスです。ただし、一言で「サブスクリプション」と言っても、当然事業者によって違うサービスが考えられます。
 それから3つ目が無料モデルというものです。例えばmf247さんとか、まだ日本ではサービス開始はしておりませんけれども、米国でのNapsterとかいったサービスがあります。何で無料なのかといいますと、それぞれ理由があるわけですけれども、mf247のモデルでは、音楽配信というものをアーティストのプロモーションという位置づけにしている意味合いが非常に大きいというふうに考えております。あとNapsterについては、後ほど触れたいと思います。
 それから次の5ページなのですが、3つ目の類型化ということで、サービス内容の特徴、事業の仕組みといったもので類型化しております。
 ここでは4つに大きく分けて考えておりますけれども、1つがレコード会社さんによる直営モデルということで、日本ではBitmusicとか、@musicとかがそういったカテゴリーに該当するのではないかと考えております。
 また、2番目がIT系企業による音楽配信専業モデルで、iチューンズミュージックストアなどがそうです。アップルコンピュータという異業種が音楽配信という新しい業態に参入したということです。異業種ではありますけれども、かえって自らのコンテンツを抱えていないということで、いろいろなレーベルを取り扱いやすかった。そういう要因もあったのではないかと考えております。
 それから3番目がポータルサイトによる音楽配信プラス情報提供モデルということで、例えばgooとかヤフーとか、いろいろなポータルサイト、検索エンジン等があろうかと思いますけれども、これらが音楽を提供するポータルということで、特徴としては音楽配信だけではなくて音楽関連のさまざまな情報も併せて提供していくようなモデルです。
 それから4番目がSNSコミュニティモデルです。SNSというのはSocial Networking Serviceの略で、名前を聞いたことがあるかもしれませんが、ミクシィとかに代表される、ネットで友だちを仲間に入れていくような、そういうサービス形態がございますけれども、これと音楽配信と組み合わせた、そういったモデルです。レコミュニがその代表例というふうに考えております。
 またもう1枚めくっていただいて6ページでは、4つ目の類型化ということで、Digital Rights Managementとファイル形式による類型化があります。
 ここでも大きく4つに分けています。1つがマイクロソフトモデルと名付けてみましたが、Windows Media TechnologiesのDRM、それと対応するファイル形式としてWMAを使っている形で、これが現在では最も音楽配信では採用されているものです。
 当然、別のDRMとかファイル形式もございまして、例えばソニーさんなんかはOpenMGというDRM、ファイル形式はATRAC3というものを使っており、Bitmusic等ではこういった形で展開されています。
 それと案外ご存じない方が多いのですけれども、最大手のiチューンズミュージックストアはDRMもファイルも特有のものを使っており、DRMがFair Play、ファイル形式はAACというものを使っております。
 それから4番目はフリーモデルと書きましたけれども、DRMがない形です。主にファイル形式としてはMP3で配信されていますけれども、何でDRMがかかってないのにビジネスモデルとなり得るのかというところで、ちょっと補足説明させていただきます。前のページでSocial Networking Serviceと音楽配信を組み合わせたサービスがあるということで、レコミュニというサービスをご紹介をいたしましたけれども、Social Networking Serviceというものは多くのサービスがメンバーの紹介がないとそのコミュニティに入れないという形になっておりまして、そういった意味ではいわゆるネットの特性である匿名性といいますか、誰が相手なのかわからないという、そういう状態とは異なったコミュニティとなっています。言い換えると、基本的には信頼ができる人たちの集まりだと、そういう前提がありますので、DRMをかけないでも、そこから違法なコピー、または違法にピア・トゥ・ピアで流すとか、そういった行為は行なわれないのではないかという、そういう性善説に立っていて、ある意味一種の社会的な規範といいますか、社会的なDRMがかかっているという状況を作り出しているものです。
 もう1枚めくっていただいて7ページ目なのですけれども、現状の音楽配信のビジネスモデルで考えますと、だいたいこんな感じかなというふうに思うのですが、実際この資料を作っている過程でも、毎日のようにいろいろな新しい動きが起こってきておりまして、恐らくこの委員会で今後の新しい社会的な仕組み等をご議論いただく上では、現状のことだけ押さえていてもなかなか厳しいのかなと考えております。そこで、近未来のことといいますか。今後起こり得ることも念頭に置いてぜひご議論いただきたいというふうに考えておりまして、その意味では近い将来、登場が期待されるビジネスモデルのことなども触れておいたほうがいいのではないかということで整理いたしました。
 未来のことを考える前提として、1つの仮説を設定しておりますけれども、それは「音楽ユーザー」という視点です。こちらの委員会の場では権利者の方、または事業者の方、そういったお立場の方々はいらっしゃると思いますけれども、音楽ユーザーの立場から考えるという視点も非常に重要ではないかと考えております。
 音楽ユーザーから見た場合、非常に大事なことというのは、現在とか将来にわたってさまざまな選択可能性がある、オプションがあるということだと考えています。iチューンズミュージックストアが日本だけではなく世界的にヒットした1つの背景として、現在260万曲以上という非常に多くの楽曲が提供されて、その中には実際のリアルな市場では廃盤になって、手に入らないような曲数も多数あったというところが、1つ大きなポイントだったのではないかと考えております。
 そういった意味では、音楽のリスナーというのは非常にいろいろなオプションを行使できる状況にどんどん流れていく傾向があります。逆にいうと、そういうビジネスモデルが今後多数出てくる期待があるというふうに考えています。
 そういった観点からいくつか見ていきますと、まず8ページ目なのですけれども、1次的なデバイスとしては、現状ではPCなり携帯なりがあるというふうに冒頭でお話ししましたけれども、音楽ユーザーの立場からすると、ある意味で当たり前なのですけれども、いつでもどこでもどのようなデバイスでも音楽を楽しめるほうが当然いいわけです。
 実際、それに対応するように、9ページ目になりますけれども、iチューンズミュージックストア、またはBitmusic、goo Music Storeとか、mf247等々の現状ではPC向けの音楽配信サービスが、携帯電話向けのサイトもオープンする予定等々新聞等では報じられておりますし、また一方でちょうどこの資料を作っているタイミングで、ソフトバンクさんがiPodを内蔵した携帯電話を発売するという報道もされており、こういったPCと携帯の融合のようなことが起こってくるのはほぼ間違いないということではないかなというふうに考えています。
 そういった意味では、現状、PCなのか、携帯なのかという形でビジネスモデルの類型化はできるわけですけれども、もしかしたら今後はそういう類型化は意味がなくなってくるのではないかと考えています。
 また、次の10ページ目でございますけれども課金方法、これでもいくつか類型化させていただきましたけれども、これについても音楽ユーザーの視点からいいますと、無料のモデルも含めて、多様なオプションを行使できたほうが当然いいという考え方が成り立ちます。
 その1つの例として次の11ページ目ですけれども、米国のNapsterの事例をお話ししたいのですが、まだ日本ではサービスを開始しておりませんが、米国のNapsterはいろいろな料金メニューがあるというところが1つの大きな特徴になっております。左側のほうに基本的な3つの料金モデルを書いていますけれども、Napster Light とNapster、それからNapster to Goという3つのレベルがあるのですけれども、Napster Lightは会費制ではなくて、1曲当たりのダウンロードを99セントという、そういうiチューンズミュージックストアなんかと同じようなサービスモデルなのですが、これが中段のNapsterという形で9.95ドル払いますと、月額制で、会員になって曲をダウンロードし、それをPC3台まで転送可能というオプションがつくわけです。さらにNapster to Goという形でもう月額14.95ドルを払うと、PCとMP3プレーヤー3台まで転送可能とか、あとプレイリストの一括転送とか、いろいろとオプションのついたサービスが享受できるという形になっております。
  Napsterの面白いのは、単にこれだけではなくて、さらに2つのモデルがある点です。例えば広告を導入することによって無料モデルを併用しており、5回まで無料で聞き放題だというモデルも展開しています。また、ユニークなのは大学と提携して料金を低廉化するというモデルも実践します。これはどういうことかというと、アメリカの特有の事情があるのですけれども、アメリカのほうでピア・トゥ・ピアネットワーク等で違法に音楽のをファイル交換が行なわれていますが、その主な主役というふうに想定されているのが若年層、特に大学生であったりもするわけです。そういう状況があると一方で大学側にとっては、自分のところの学生がもしかしたら違法なファイル交換で検挙されてしまうというというリスクも抱えるわけです。
 そこでNapsterは大学と提携して、大学側が一定の費用を出す形で、その大学の学生はその代わり安いNapsterのサービスを受けることができるというサービスを展開しています。これはどういうことかというと、学生から見ると、逮捕されるリスクを負って違法なファイル交換をするよりは、大学生という特権を生かして低廉なNapsterのサービスを受けたほうがいいという形になりますし、大学側からすると、自らの学生が違法なファイル交換なんかで捕まるリスクが減る、そしてNapster側としてもビジネスが拡大できるというので、3者がウィン・ウィンになるというビジネスモデルです。
 これは一例ですけれども、恐らく楽曲の課金方法なり、価格というのも今後はさまざまなオプションが出てくるのではないかなというふうに考えています。
 それから次のページ、12ページ目ですけれども、サービス内容を見ましても、これは今後いろいろ変わってくるのかなというふうに思っています。A3の表のほうでもございますけれども、多数の配信サービスがあるわけですが、音楽ユーザーの視点から見ますと、メジャー、マイナーの区分なく、より多くの楽曲とか楽曲情報を簡単に入手できるほうが当然いいわけです。この楽曲はこのサイトだったっけという状況は、ある意味でとても不便なわけです。
 そう考えますと、次の13ページ目ですけれども、今後どんなビジネスモデルが登場する期待が成り立ち得るかというと、さまざま出てきている音楽配信をつなぐプラットホーム的なサービスが非常に重要ではないかなと思っております。
 さらにいいますと、音楽メディアというものは、かつて30センチの塩化ビニールのレコードからCDへ変わり、CDから音楽配信という新しいツールがまた出てきているわけですけれども、メディアが変わるたびに実は過去のカタログの中で新たなメディアに移っていかないもの、再発されないものが出てくるわけです。そういう廃盤の存在は音楽文化の継承という意味では、非常に残念なことであって、せっかくデジタルコンテンツという新しいフィールドができたわけですから、音楽遺産のアーカイブみたいなものがあってもいいのではないかな、というふうに私は考えております。
 また一方で、実はインターネット空間上でいろいろやりとりされている楽曲の数というのは、米国の会社の調査によると2,500万曲以上あるというふうにいわれてます。例えば、iチューンズが提供している楽曲数は250万〜260万曲ですから、iチューンズでさえも全体の10分の1しかビジネス化できていないわけです。恐らく今後、楽曲数というのはまた飛躍的に増えていくと考えているわけですけれども、仮に数千万曲水準のアーカイブがあったとした時、リスナーは逆に非常に戸惑ってしまうと思います。その膨大なアーカイヴの中から自分の好みの曲を見つけるというのは、至難の業になってくるわけです。そうなると、恐らく今後登場が期待されるビジネスモデルというのは、そういうアーカイブとリスナーをつなぐ中間支援的なモデルではないかなと考えていまして、ごく簡単なイメージとしては現状の音楽ジャーナリズムとウェブが合体したようなサービスとなります。
 こういった空想めいたお話をしましたのも、現状のビジネスだけではなくて、今後登場し得る可能性があるビジネスモデルも含めて、ぜひこの委員会の場で望ましい社会的な仕組み等ご議論いただければという観点でご報告させていただきました。ご清聴ありがとうございました。

【中山主査】 はい、ありがとうございました。それでは、ただいまの説明につきまして、何かご説明ございましたらお願いいたします。

【土肥委員】 一次デバイスの話をご紹介いただいたのですけれども、ほとんどがPC、パソコンということになっておりますけれども、パソコンから先は自由という理解でよろしいのでしょうか。あるいは、パソコンから先も制限があるのかどうか、そこのところを教えていただければと思います。
 それから、近い将来こういうビジネスモデルですね。ユーザーにとって選択肢のある、オプションのある、そういうビジネスモデルが今後どんどん開発されるということでありますけれども、おっしゃるとおりだと思うのですけれども、利用者にとっても、利用者というのでしょうか。提供者、コンテンツをマーケットに提供する側にとっても、そういう選択肢があるということが恐らく望ましいのではないかと思うのですけれども、そのビジネスモデルなるものは非常に短い時間の中で出てくるのか。あるいは、つまりこの議論をしていく上で一応挙げておいて、挙げておいてというか、考え方としては引用しておいていいのかどうか。あるいは、もうすぐにこういうことは考えておかないといけないということなのか、その辺の見通しを1つ、2点ほどお尋ねしたいと思います。

【太下主任研究員】 2点ご質問いただきましたけれども、1点目の1次的なデバイス、PC等からその先での転送なりコピーなりということにつきましては、資料3−2の、ちょうど真ん中辺りに、DRMという項目を設けて、DRMの形式とオーディオ機器への転送、それからCD−Rへの書き込みということで、わかる範囲の情報を整理させていただきました。DRMについては本日、別の方よりお話しがあると聞いておりましたので、特にその点については触れませんでしたので、ご参照いただければと思います。
 それから2点目のお話で、今後登場が期待されるサービスのお話をさせていただいたのが、これがどのくらいのタイムスケジュール、タイムスパンの中で実現されるのかということですけれども、これはまったくの私見ですけれども、恐らく私どもの想像よりもはるかに早くさまざまなサービスが登場するというふうに私は考えています。 以上です。

【土肥委員】 1次媒体のパソコンの件なのですけれども、このパソコンというものが一般のユーザーの使われ方として、さまざまな1回蓄積をしておいて、それからそこがいわばストアになっていて、それから携帯用のそういう媒体に適宜出し入れされて、常にそこにパソコンの中にその音源というものは置かれている。蓄積されているという理解でよろしいのかどうか。あるいは、出したものは消えるものかどうか、そこも含めて教えてください。

【太下主任研究員】 全部のサービスを試したわけではないのですが、基本的にはPCに蓄積されているというふうに考えています。ただ、これもいろいろなケースが出てくると思っていまして、例えば先ほど紹介しました米国のNapsterについては、いわゆるサブスクリプションといって会費制で、ダウンロードもできるのですけれども、会員でなくなったら再生ができないとも聞いております。ご質問の点につきましても、恐らく各サービスによっていろいろ違っているのではないかなというふうに考えています。

【中山主査】 ほかによろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 それでは時間もございませんので、続いて技術的保護手段の現状について、1据え置き型録音機器、2携帯オーディオ機器・モバイルにつきまして、本委員会委員の河野委員より説明をお願いします。

【河野委員】 電子情報技術産業協会の河野でございます。お手元の「著作権保護技術」という表題がついております資料を元に説明させていただきたいと思います。
 「著作権保護技術」というふうに書いておりますけれども、これはコンテンツ保護技術と読み替えていただいてもかまわないと思っております。ここで申し上げたいのは、技術を使って利用をコントロールできるようになり、それによって、さまざまなビジネスモデルができていて、コンテンツの対価回収のポイントがさまざま広がっているということでございます。コンテンツ市場で技術がどのように使われているのかというところに着目をいたしまして、技術の活用状況をご説明しようと試みてみました。
 いただいておりますお題は音楽ということになっておりましたけれども、保護技術について音楽、ビデオときれいに分かれているわけではないので、ビデオの話、映像に関係するコンテンツ保護技術の話も出てきておりますので、そこはご了承いただければと思います。
 では1枚めくっていただいて、早速お話をさせていただきます。まず、著作権保護技術には大きく分けて2つのタイプがございます。1つは暗号技術を利用しているもの、もう1つはそうでないものということになります。
 後ほどご説明をしますけれども、時間軸としては、暗号技術を利用しないもの、ここで書いてありますAですね。平文、暗号化されていないコンテンツにフラグがついていて、それを検出して記録を制限するという記録制限型のタイプの技術が先に開発・採用されました。
 この絵のところを見ながら聞いていただければと思うのですけれども、音楽プレーヤーやビデオプレーヤーでは、もともとの媒体に乗っている、あるいは入力端子から入ってくる音楽や映像データを、人間の目で見たり聞いたりできるように機器側で処理をして再生をしています。これに著作権保護を加えようとすると、通常見たり聞いたりするために必要な情報処理のほかに、追加的にコピー制御をするフラグ、コピー制御する信号の情報を機械が見に行って、その信号がどういう意味であるか、その信号を検出したら機器はどのように反応するか、ということを、機械にわかるように予め設計しておく必要がでてきます。そうしないと、この場合のコピー制御情報は、映像や音楽データを見たり聞いたりするために不可欠なものではないので、機器は反応しないわけです。こういった仕組みの著作権保護技術は、ここに書かせていただいておりますような比較的昔に導入された機械に採用されています。
 もう1つは暗号技術を利用した技術。これは最近、最近というか、ここ10年くらい非常に多くなっている技術でございますけれども、まず、コンテンツを暗号化し、それを複号する鍵をもらう時のライセンス契約によって、再生とか出力とか記録とか、そういうものを制限するといったタイプの技術でございます。
 これも絵のほうを見ながら聞いていただければと思いますけれども、先ほどと違いまして、コンテンツそのものに暗号がかかっていますので、そのままの状態では見たり聞いたりするという、そもそもやりたかったことができません。なので、その暗号を解くための鍵をライセンスしてもらう必要があります。このライセンス条件にはいろいろなものがくっついてきまして、例えば、相手先の機器を認証した上で、コンテンツを渡す先の機器が著作権保護技術に対応しているものであればコンテンツのデータを出力してよいがそれ以外のものには出力不可、ですとか、記録をする場合には再度暗号化して記録をせよ、といったような細かいルールがついてきます。コンテンツが暗号化されていますから、まずはそれを複号する鍵をもらわないことには始まりません。その鍵をもらうためのライセンス契約の内容で、その後のコンテンツの利用をコントロールするタイプのものが、このBになります。
 これはその下のところに採用例で書いてございますけれども、DVDビデオほかパッケージものでもありますし、配信サービスのようなもの、それから昨今ではデジタルテレビ放送について、このような仕組みが採用されてきているといった状況にございます。
 1枚めくっていただきまして、いま申し上げたような2つの大きなタイプについて、現在使われている著作権保護技術の中から、いくつか例になりそうなものを挙げてみました。
 左側がビデオ、右側がオーディオ、上のほうから、Pre-recorded、DVDビデオとか、スーパーオーディオCDとかDVDオーディオとか、そういうパッケージでコンテンツが市販されているもの。その次の段のところがEMDなど配信物です。その下は放送。それからRecordingというのは記録機器や媒体が採用している技術。それからInterfaceというのは、機器と機器を結ぶ間の線だったり無線だったりしますけれども、そこのところで採用される保護技術。
 といった順番で並んでいますが、先ほど申し上げた暗号化されていなくてフラグを検出するというタイプのものは、下のほうにありますCGMSやSCMSのようなものだけで、著作権保護技術のほとんどが暗号技術を利用して、その後の利用をコントロールするタイプのものになっています。
 すみません。これ略語がとても多くなってしまって、略語表みたいなものを付ければよかったのですけれども、今日ここに来るまで全然気づきませんでした。後日、略語表は改めて配らせていただきたいと思いますけれども、左側に書いてあるCSSというのが著作権保護技術の名前、これはContent Scramble Systemの略で、括弧の中に書いてあるのがそれを採用しているフォーマットの名前です。
 では、お時間の関係もありますので、4ページの「著作権保護技術とコンテンツのユースルールの関係」の説明に進みます。今まで保護技術のタイプの説明を申し上げましたけれども、先ほど来お話が出ていました、どういうふうにそれが使われて、例えばPCまでなのとか、その先のデバイスはどうなっているのとか、メディアへの書き出しはどうなっているのでしょうといったようなご質問がありましたけれども、そういう利用のルールと保護技術の関係ということについて整理をしてみました。
 ある特定の技術を採用するということは、1つのユースルール、コンテンツを利用できる範囲を示すということには必ずしもなりません。特に暗号技術を利用しているタイプのものについては、その下にユースルールの例というふうに書かせていただきましたけれども、複製のコントロールであったり、転送や出力のコントロールであったり、あるいは再生のコントロールがあったりとさまざまでございます。
 ここで注目していただきたいのは下の囲みの中です。著作権保護技術を採用するということは、必ずしもコピーを禁止・制御するといった不正利用の防止・抑制といった守りの姿勢だけで使われているものではないということを、ぜひご理解いただければと思います。
 著作権者の方であるとかコンテンツプロバイダーの方が、各々の著作権保護技術の中で設定可能なユースルールを選択していただくということによって、コンテンツの利用可能な範囲というのをあらかじめ承知いただくことができますので、その前提でコンテンツを市場に提供していただける。そうすることによって、先ほどのお話にもありましたように、ユーザーの方があらゆる選択肢を持ちたいと思っていることと対応して、さまざまなビジネスモデルを立てることができる。さまざまなビジネスモデルを立てることができるということは、そこで行なわれる利用の対応、すなわち複製物の量が多いとか少ないとか、そういう一律の基準ではなく、予定した範囲で利用してもらえるビジネスモデルの設定が可能ということですから、コンテンツプロバイダが予期しない利用が出てくるという蓋然性を格段に低くすることができる。そういう攻めの姿勢に技術を使うことができるのだということを、ぜひご理解いただければと思います。
 次のページをご説明させていただきます。いま見てきたのは著作権保護技術のタイプとそこで用いられるユースルールという観点でお話をしましたけれども、少し歴史を繙いてみたいと思います。
 大きく左側から80年代、90年代、2000年、最近ということで、非常に概念的にざっくりとイメージをしていただければいいなと思って作った資料でございます。記録されるソースと、記録する機器、媒体、そういうことで大分けしております。
 80年代初頭、82年に音楽CDというものが世の中に出ております。その後、87年頃だったと思うのですけれども、DATDigital Audio Tapeというデジタルからデジタルに記録をする媒体や機器が世の中に出てきて、その後、MDやオーディオCD−Rというようなものが出てきました。
 このデジタルオーディオの出現は、著作権関係の委員会では釈迦に説法なので申し上げるまでもないことですが、デジタルからデジタルにコピーができるということは、瞬時に大量の複製が可能になるので、そのままでは著作権者に損害を与えるかもしれないということで、何らかの対策が必要ではないかという話が長い間ありました。それではどういうふうに著作物、コンテンツを保護しましょうかというところで、保護技術という概念が出てきたわけでございます。
 そこで、SCMSというデジタルからデジタルへのコピーを1世代に制限しましょうという技術が開発されました。それを採用したものとして87年以降、DAT、MDなどが出てきたという流れになっております。
 少し目を映像のほうに転じていただいて、その後の流れがどうなっているかを見てみますと、90年代の半ば以降になりますと、家庭での利用環境にパーソナルコンピュータの普及が加わってきておりました。今までベータやVHSのような磁気の記録メディアだったものを、DVDビデオのような光ディスクに置き換えましょうという話になり、デジタルビデオの世界ではどのような保護技術を採用するのがいいでしょうかという話になったわけですが、その時点でパーソナルコンピュータの存在は無視できないものだったのです。
 そこでPCの特性が問題になりました。PCというのは、皆さんご存じのように、オープンアーキテクチャーの世界です。なので、一番最初にご説明をしたように、映像とか音楽のデータそのものではないところに何かビットやフラグがくっついていて、それを機器で検出して反応しましょう、こういう意味で反応しましょうということをやろうとすると、AV専用機器の場合は開けて中を改造することはなかなか難しいですから、そういうふうに設計しましょうといって設計すれば保護技術を機能させることがある程度できますが、、コンピュータの場合はあとから自分でプログラムをし直すことができますので、いくらこういうフラグはこういう意味を持っているので、ここにあるフラグを検出してそのように反応してくださいと最初に作ったとしても、それをあとから変えてしまえば、著作権保護技術は機能しなくなってしまう可能性があるということで、技術のタイプとして、そもそも平文、暗号化されていないものにフラグが重畳されているというタイプのものではなくて、コンテンツを市場に置く時に、まず暗号化をすることで、強制力が働く形でその後の利用をコントロールできる仕組みにしましょうという大きなコンセプトの変化がありました。
 よって、90年代の半ば以降出て来ているものは、基本的にコンテンツが暗号化されて出てくるということが前提となっていて、その後の利用をどういうふうにコントロールしていくかといった、先ほど一番最初にご説明をした後者のほうのタイプの技術が、技術の種類は沢山ありますけれども、タイプとしてはそういうものがずっと導入されてきているということになっております。
 この辺の流れについては、恐らく平成14年だったと思いますが、法制小委員会のほうでもお話があって、報告書の中にも、音楽についても映像のDVDで採用されているような強いタイプの保護技術を権利者自身が早急に導入拡大することを促すべき、といったような一文があったというふうに記憶をしております。
 それでは6ページ目のご説明をしたいと思います。そのようなさまざまな種類の保護技術を活用して、音楽関係の市場がどのようにに形作られているかを概念的にまとめてみました。
 ソースは大きく3つ。従来からある音楽CD、ニューパッケージ、配信です。
まず、一番右側の配信の四角から見ていただきたいのですけれども、こちらはソースである音楽データが暗号化されて送られ、、端末としてPCや携帯電話、その先の記録先として、ポータブルデバイス、メモリーカード、CD−Rなどがある、というビジネスモデルです。端末での利用の仕方というのは、先ほど資料3−2でご説明をいただいたように、それぞれの権利者さんあるいはコンテンツプロバイダーさん、サービス事業者さんのお話し合いの上だと思いますけれども、さまざまな利用が前提とされたビジネスモデルがございます。そのさまざまなビジネスモデルを実現するために、必要な技術を開発し、提供させていただいております。
 次に、左側の音楽CDのところを今度は見ていただきたいのですけれども、先ほどご紹介しましたように、音楽CDというのは歴史的に古い時代に導入されておりますので、そちらに対応した著作権保護技術も、フラグ検出型、古いタイプのものとなっています。そして、このタイプの保護技術に対応しているものに、MDレコーダーやオーディオCD−Rレコーダーがあります。ただし、MDやオーディオCD-Rについても、著作権保護技術に対応することについて法律的に強制があるわけではありません。
 また、その後出て来たPCやその周辺機器での利用については、一律のルールが存在しているわけではなくて、まちまちというのが多分現状だと思います。
 音楽CDについては、、ご自分がお買い求めになったCDを好きなものをそこから編集して、いつでも聞けるようにメディアを変換しましょうという聞き方もありますし、レンタル店から借りてきたものを同じように使うという場合の両方あるのではないかと思います。
 ビジネスモデルというと、どうも配信みたいなものを皆さんすぐ念頭に置かれるのですけれども、基本的には冒頭申し上げましたように、技術を使ってその後の利用がどうなるかということがあらかじめ承知できるのであれば、お金を回収するポイントもいろいろと工夫できるのではないかなというふうに思います。
 なので、音楽CDの記録といった場合でも、お客様がお買い求めになったCDをどうするかという話と、レンタル店というポイントを経由して行なわれるそれとでは、補償の必要性という観点で考えた時には意味合いが違うのではないかというふうに思っております。
 真ん中にあります新パッケージというのは、レコード業界、音楽産業に関わる方たちも、周りのものがどんどんどんどん暗号化されていくといった世界の中で、ずっとそのままでいいと思っておられたわけでは決してないわけで、利用のコントロールができるものということで、新しいパッケージなどもご相談しながら作ってきているところです。DVDオーディオ、スーパーオーディオCDなど、すでに開発されて世の中に出ているものがいくつかございます。
 この後ろには参考資料で技術の概要と、それをどういう形で契約あるいは技術的保護手段の回避規制でバックアップをしているかということを参考までに付けさせていただいております。本日のご説明はこれで終わりにさせていただきます。

【中山主査】 ありがとうございました。引き続きまして、技術的保護手段の現状の音楽ソフトにつきまして、ソニー・ミュージックエンタテインメントの佐藤亘宏チーフ・マネージャー、レコード協会の高杉健二事務局長、畑陽一郎法務部課長にお越しいただいております。それでは、10分程度で説明をお願いいたします。

【佐藤チーフ・マネージャー】 ソニー・ミュージックの佐藤と申します。それでは10分程度で終わるように説明させていただきます。
 まず説明をする前に、私、今日はソニー・ミュージックの肩書で出ておりますが、レコード協会様からの依頼ということで、今回の資料はSMEJの視点から客観的に一般論をまとめております。SMEJとしての意見はできるだけこの中では差し控えた形でまとめさせていただいております。ただし、後でご説明するCCCD等については個社によって意見の違う部分もあるということをご了解いただければと思います。
 まず、表紙をめくって2ページ目にいきまして、まず技術動向についてということなのですが、パッケージの現在のコピーコントロールを語る前に、それに至るまでの歴史についてご理解いただくためそれを簡単に話させていただければと思っております。
 まず1998年まで、先ほど河野委員のご説明がございましたように、Serial Copy Management Systemと呼ばれている1世代までのコピーのもの、CDからMDへのコピーのような世界がございました。私どもの視点から見ると、パソコンでのコピーが存在しなかった時代にできたものであって、オーディオ機器メーカー、レコードメーカーが参画し、基本的にそこの中では必要十分な関係者が合意しているという点では、ある意味では漏れが少ないもので、ルールが決まれば、皆ほぼすべからくそのルールに従う世界でした。
 その後、パソコンで簡便に音楽ファイルを使える時代になりました。それはなぜかというと、音声ファイルの圧縮技術と呼ばれている、できるだけデータを小さい量にしてパソコンで簡単に扱うための技術が進化しました。また、保存する側のハードディスクやメモリーも大容量化しました。更に、情報のやりとり、インターネットの普及が進んできたということで、コンピュータで音楽というコンテンツが非常に扱いやすくなり、一気にそういう環境が出ました。
 次に3ページ目ですが、日本というよりは世界レベルでの話なのですが、1999年2月にSDMI、Secure Digital Music Initiativeと呼ばれる組織が世界規模で設立されました。ここにはいわゆるAV機器メーカー、パソコンメーカー、マイクロソフト等のパソコンソフトのメーカー、レコード会社5メジャー等、当時約150社が集まって、パソコンを中心とした音楽のデジタルフォーマットについて検討が行われました。
 検討の内容は、CDからパソコンへどのようにコピーするか、パソコンに蓄積した音楽を携帯オーディオプレーヤーにどのようにコピーするか、又は音楽配信サービスはどのようなフォーマットで行うべきかということでした。意外と早く第1段階の技術仕様は決定されました。検討の中心はアメリカであったものの、実装は、日本での当社の実装が第1番目となりました。これは必ずしもレコード会社だけの努力ではなくて、パソコンで取り込むほうのソフト、これはソニーのOpenMG Jukeboxでしたが、同じくメモリースティックの記録媒体を使ったウォークマン、私どもの音楽配信サービスbitmusicという三位一体の構成でやっと実装ができました。
 では、これでハッピーエンドかというと、次に4ページ目ですが、その後、準拠したソフト・ハード等の導入については、ソニーグループ系、及びSDカードを導入された松下様等のSD/EDジュークというソフトウェア、ないしは携帯プレーヤーであるSDカードのプレーヤー等がありますが、普及は限定的な範囲に留まり、その後、失敗に終わって雲散霧消してしまったものもあります。
 これほどいろいろな企業が集まってどうしてこういう結果になったかという理由は、私どもの見解では、SDMIの仕様に準拠しなくても音楽をパソコンで扱うことが可能であったということです。先ほど河野委員がおっしゃったように、「平文」であるCDからのコピーを何らか対策しようとすると、例えばCDのデータに旗とか道路標識をいっぱい立てるのですが、結局、道をよく知っている人は旗も道路標識も無視すれば道は走れてしまうというのがパソコンの世界でございまして、そのような環境が存在してしまっているパソコンにおいて、SDMIは絶対守らなければいけないフォーマットではなく、強制力は持ち得なかったことが要因と考えています。
 また、あえていうと、ちょうど本日の席にいらっしゃるような日本のメーカーはともかく、海外のパソコンソフトのメーカーはSDMIのような面倒な対応はしなかったということです。なぜかというと、仕様上、コピーをしようとすると、いちいち標識を見ろ、旗を見ろという決まりがあって、CDをパソコンに取り込む時に非常に時間がかかってしまいます。その時、非準拠製品に比べて遅い、使い勝手が悪いという評価を受け、また、後から制限をかけるという方法のためどうしても複雑な構造になってしまうということで破綻したと考えております。
 その上で、私どもレコードメーカーは何か考えなければいけないということで、音楽配信とパッケージからの取り込みについて別々に独立した対応をとることになったという歴史があります。
 1番目、音楽配信です。これは、新たなフォーマットですので、複製回数の設定等により複製行為を制御する技術としてDigital Rights Managementと呼ばれる何らかの技術を採用して、先ほどの音源使用ルールを個々に決定して音楽配信サービスを始めました。日本では携帯電話向けには「着うた®」、「着うたフル®」など、パソコン向けには「iチューンズミュージックストア」、「mora」というサービスが存在しております。
 2番目はパッケージからの取り込みで、これは2つの方向性があります。一つは、DVDオーディオ、スーパーオーディオCDないしはUMDオーディオ等の新メディアです。これらはCD以後のフォーマットであり、パソコンの世界があることを前提として、先ほど河野委員がおっしゃった暗号化という技術をもともと押さえております。ただ、頭が痛いのは普及すればということが前提であり、現状は、諸般のいろいろな事情で普及しておらず、およそパッケージのほとんどすべてを占めているCDに関する課題が残ってしまった。そういう状況になっております。
 そこでCDについて、いわゆるコピーコントロールCDといわれる技術の導入に至ったというのが経緯です。
 次に7ページ目から2ページは技術の話です。いわゆるコピーコントロールCDと申しましても、実はコントロール技術は大きく2種類ございます。一つは、パッシブ・コピー・コントロールという技術で、さきほどの道路標識等を立てるCDのデータ領域の一部を操作することによりPCでの扱いを制御するというものです。これは、2002年にエイベックス様ないしは当社、東芝EMI様等、当時の技術を用いて導入いたしました。
 ただ、これについては、CCCDを扱えるようにパソコンのドライブで対策をとることが容易で実効性が薄れやすいという課題がありました。つまり、CDプレーヤーで使用できるということは、パソコンが先ほど言った道路標識を見なければ、CDプレーヤーと同じようにCDを使えるわけです。これはいたちごっこになってしまったので、現在の主流はアクティブ・コピー・コントロールと呼ばれている技術で、パソコン上で動くプログラムにより、パソコンでのCDの扱いを制御するという方法に進化してきております。
 次に、使い勝手の観点から見た場合、これは大きく3つの視点に分かれると思います。2001年以前に関していうと、パソコンで一切再生複製不能、再生も複製もできない。要はパソコンはいやという世界ですね。これについては、日本での導入事例はないと思います。
 2002年頃から、パソコンで再生のみ可能という技術が出てきました。この技術以降、日本で大手レコード会社が導入を開始しました。また、2005年頃からは、パソコンで再生も複製も可能という技術が出てきております。特に日本で導入されたバージョンは「セキュアCD」と呼ばれておりまして、いったんパソコンに複製された音楽は、そこから後はいわゆるDRMで保護されており、携帯プレーヤーへの転送や、CD−Rバーニングに対応するものになっております。
 ちなみに、この資料は全体をまとめたものですので割愛しておりますが、当社では2003年から「レーベルゲートCD」と呼ばれるものを派生的な仕様としてやっておりました。あえて全体の潮流には書き入れなかったのですが、そこで試みたのは、パソコンへの複製については個別に課金をするというモデルでした。このレーベルゲートCDについては、課金モデルの問題ではなく、コピーコントロールCDの全体の位置づけの中で現在当社はやめておりますということを一言申し上げてさせていただきます。
 次の9ページは、セキュアCDのイメージです。基本的にはCDはパソコンであろうが、何であろうが、機器に拘わらず普通に聞けますよということなのですが、CD−Rに1回焼いたものはあくまでも聞くだけであって、そこからのコピーはできないというコンセプトになっております。この範囲であればユーザーにとっても問題はないだろうということで、このような制限をつけています。
 それで10ページ、11ページですが、これらの技術が究極かといいますとそうではなくて、実際CDはオーディオ機器に関してはSCMSという技術で守られている一方、パソコンにおいてはフリーで扱えるように規定されているフォーマットでございますので、いろいろCDに工夫はすれども、パソコンがよりCDプレーヤーの振る舞いに近づくほど制御がきかなくなるという限界がございます。
 また、対応していない商品が存在する限り、あくまで対応商品はマイノリティとなり、もともとできることに何らか制限があるというハンデを持っております。
 更に、先ほど申しましたように、何らかのプログラムがパソコン上で走るわけなのですが、プログラムと申しますと、当然OSに依存するということで、現状ではマッキントッシュに関しては基本的に非対応という状況です。ただ、非対応とは、マッキントッシュでは何でもできるという逆の意味になってしまい、非対応であることがアドバンテージになってしまうという問題もございます。
 それでは最後、簡単にまとめさせていただきます。音楽配信や新規パッケージなど、あらかじめ暗号化されているフォーマットについては、今後の課題として、フォーマット、DRMが共通化していないので、異なったフォーマットを利用するユーザーの利便性をどのように図っていくか、どのようにつないでいくかというのが、次のステップの課題だと考えます。
 一番頭が痛いものは、パソコンの世界が出現する前にフォーマットが構築されたCDです。これは、必ずしもハードメーカーだけではなく、パソコンメーカー、パソコンソフトメーカー、AV機器メーカー及びレコード会社が一体となって、ユーザーの利便性を図りながら、どのように一律に適用する手段があるかという検討をしないと、CDに関する課題の解決はやや困難であると思います。もしそれが無理であれば、それとは違う形で解決する方向に向かわざるを得ないのではないかと、私どもは考えております。

【中山主査】 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、ご質問がございましたらお願いいたします。はい、どうぞ、小泉委員。

【小泉委員】 河野委員の資料においては、AとBの2つの著作権保護技術というものが挙げられております。このうち、Bのほうのプロテクトにつきましても、2条2項20号の技術的保護手段の定義に当たるものであるとお考えでしょうか。というのは、この定義の最後のほうでは、機器が特定の反応をする信号を持っているものという定義がなされていて、Aのほうはすっきりと当てはまると思うのですが、Bについてはどうも当てはまらないような気がしてくるので、この法律ができた時と現在の技術的なタイムラグもありまして、お伺いした次第です。

【河野委員】 ご質問ありがとうございます。それをご説明するのにぴったりした資料がついていなかったのであれなのですが。
 まず暗号化技術については不競法では読めるけれども著作権法では読めない、と理解しています。次に、Bのタイプの技術で暗号とは別のレイヤーにある、CCI、Copy Control Informationという信号、
 先ほどの私の説明ですと、ユースルールをどういうふうにしてほしいかという信号があるのですが、その信号は技術的保護手段の定義で読み込めると思います。技術によっては、暗号化されているということをとらえて何かをせよというふうになっているもの、メディアに固有のIDを付与してそれを利用するものなどさまざまですので、精査してみないと一概には言えませんが、CCIを使っているものについては、暗号化の有無にかかわらず、技術的保護手段にあたるのではないかというふうに、私は理解をしております。

【小泉委員】 難しいですけれども、かなりわかってきました。4ページの中で、一部については当たるものがあるという話ですね。
 ということは、そのコントロールがかかっているとコピーも基本的にはできなくて、仮に外されたとしても30条1項2号で私的複製にはならないのだから、われわれがいま論じている私的補償金との関係では、より課金しなくてもいい方向に行くと考えていいのでしょうか。

【河野委員】 コピー禁止のビットがたっているものについてはそのとおりだと思います。もう1つの論点としては、保護技術を採用した上で、一世代コピーはOKといったようにある一定のコピーを許しているもの、あるいは、コピーは制限しません。ただし、記録・出力する時には暗号化してください。そうすることによって、インターネット等ネットワークにコンテンツが無制限に出ていっちゃうということだけを防止してくれればいいですよ、といったタイプのもの、そういった
 ユースルールに則った私的な領域でのコピーをどう考えるのか、ということだと思います。

【中山主査】 ほかに何か。よろしいでしょうか。それでは意見聴取はこれで終わりにしたいと思います。どうも貴重なご意見をありがとうございました。
 なお、残りの時間を使いまして、委員の間で自由討議を行ないたいと思います。説明をしてくださった方々には、もし時間があれば、もし質問があるかもしれませんので、お残りいただければ幸いでございます。
 それでは、今日のすべての問題につきまして何かご意見あるいはご質問がございましたら、お願いいたします。はい、どうぞ、亀井委員。

【亀井委員】 JEITAの亀井でございます。今日のお話の中で1つ不思議に思いますのが実演家の方々の、例えばこの配信のモデルにおいて、実演家の方々はどういうお金の還流を受けられているかという辺りの事実についてのご説明がないというところでございます。
 それから音楽配信の、先ほどご説明いただきましたこの例の中の、こういうサイトに音楽、楽曲を提供される際の感覚といいましょうか。考え方として、例えばiチューンズミュージックストアは100万曲以上集められているというふうに書かれていて、DRMは各サービスで違いがある状況だということなのですが、配信を許諾される際に、当然こういうDRMの状況というものをご承知の上で出されているのではないか、認識した上で提供されていると思うのですが、そこがどうされているのか。
 その際に、多分レコード音源を提供されるレコード協会の立場、レコード会社の立場と、それからJASRAC(ジャスラック)の立場ということで少し違うのではないかというふうに思われますので、その辺りが何らかお聞きできないだろうかということがございます。
特にJASRAC(ジャスラック)さんは、ダウンロード配信とストリーミング配信と使用料規定を分けてらっしゃるということがあって、ダウンロード配信という使用料規定を作られているということは、当然その先に複製があるということを認識して許諾をされているのだと思うのですが、そこで配信される際の柔軟性といいましょうか。iチューンズミュージックストアズに提供される、このDRMで提供される場合の使用料と、それからもう少し制約的なものがあると思いますが、それに提供される時の使用料ということについて柔軟に対応できるのかという辺りもお伺いしたいと思います。

【中山主査】 それはどなたに伺えば。最初は実演家、ちょっと何かご意見がございましたら。

【椎名委員】 配信ビジネスにおける実演家への配分という話ですよね。それはレコード会社と実演家の私契約上の配分率に基づく場合もあるし、契約が存在してない場合もありますよね。やっぱり配信というビジネスが新しいものであるというところで、実演家は配信というものに限らず、送信可能化権というミッションを与えられて、その部分のスキームを作っていくところであって、必ずしも現時点で配分されていない、あるいは配分される可能性がないとか決める話ではなく、現在進行している話だと思います。
 さっきも申し上げたのですが、補償金制度というのは埋められない部分を埋める必要があるから在る制度であるというところで、議論はさまざまあると思いますけれども、配信コスト等で埋めていけない部分があるならば制度は必要なのだろうという話になっていくと思うので、配信だけ取り上げて云々という話にはならないのではないかというふうに思っています。

【中山主査】 じゃあ、あとはレコード協会のほうで、先ほどの質問で、レコード協会が音楽を出す時にどういう条件で出しているのかという話ですね。

【高杉】 ちょっと質問がよくわからなかったのでお願いします。

【亀井委員】 さまざまな配信サイトに出される際にDRMの状況を、先ほどソニー・ミュージックエンタテインメントさんのご説明では意識をされているように伺ったのですが、そこは本当に各社さん、そういう形で意識をされていて、ダウンロードした先で複製が行なわれるという意識の下に出されているという理解でよろしいかということです。

【佐藤チーフ・マネージャー】 ソニー・ミュージックの佐藤のほうから、お答え申し上げます。音楽配信というのは、先ほど河野さんの資料に書いてありましたが、あくまで送信と複製の複合的なサービスであると考えています。これは、ダウンロードの配信サービスについては、あくまで複製が伴わないと、それはストリーミングですので、まったくそれは別次元の問題であるというふうに考えております。

【椎名委員】 河野さんに質問なのですが、3ページ目の著作権保護技術の例ということでいろいろ挙がっているのですが、左側にPre-recordedとかElectric Distributionとか、いわゆる左側にあるのがメディアといいますか、経路みたいなことを言っていると思うんですね。機器という意味でいうと、このSCMSから下が専用機器で、そこから上はパソコンが絡んでいると考えれば、違いますか。

【河野委員】 いえ、そうではなくて、機器とか媒体ごとに何かということではなくて、上3つ、Pre-recordedElectric DistributionBroadcastというところについては、送り手側でかけてもらうというふうに考えていただければいいと思うのですね。市販されているパッケージを作る時に、そういう技術を埋め込むといったものですね。配信だったら、送出する時に出してもらうというものです。RecordingInterfaceという下側は、Recordingと書いてあるのは機器だったり媒体だったり、それを記憶する時に使われる技術なので、ここから下は機器や媒体が採用している技術になります。なので、音楽の場合ですと、ソニーがやっているメモリースティックとかHighMDというのはMG-Rという技術を採用しておりますし、松下さんほかがやっておられるSDカードといったものはCPRMという技術を採用しているといったように見ていただければと思います。

【椎名委員】 じゃあ逆にいうと、送り手側が仕込んでおく技術というのは、それを受ける機器を問わないといってもいいわけですか。

【河野委員】 いえ、そうではなくて、9ページ目を見ていただけますでしょうか。たとえば、フォーマットによって、あるいはプラットフォームによって、暗号の方法や鍵の仕組み、認証のしかたなどが、少しずつ違っています。どのような保護技術にするかは、市場での使い勝手も考慮した上で、ビジネス関係者間の交渉になります。そうやってできた保護技術を採用するかしないかは、コンテンツを出す人、コンテンツを流す人、機器を作るメーカー、のビジネス判断です。
 パソコンの場合はそういうソフトウェアを組み込む。そういうソフトウェアを使えば、そこから先はそのソフトウェアに対応した端末であればそのルールに従ってやるということになるので、暗号がかかっていればですよ、その暗号を解いて見たり聞いたりするために鍵をもらわなきゃいけないので、どういうルールでやっておられるかというのが理解できて、それを理解した人が機器を作ればいいですよね。暗号がかかってないと、これだと出してもらっても、どこへ何を見に行って何していいか、機器やパソコンはわからないということが起こります。

【椎名委員】 要するに、復調のためのソフトウェアをパソコン上でやればパソコンで復調できるし、それを専用機器に入れればセットトップボックスになるということですか。

【河野委員】 おっしゃるとおりです。

【椎名委員】 わかりました。

【中山主査】 ほかにご意見、ご質問ございましたら。

【小六委員】 もうすごく難しい話で、なかなか理解をするのが難しいです。小六でございます。河野さんの4ページのところの下の括弧のところです。理想的な著作権保護技術を採用するということは云々という、ここのコピーですけれども、つまりこれを使うことによって、私たち著作者側も、ユーザー側も利益を得ることができるのだということをおっしゃっていると理解をします。
 ただ、これにかかる、いま椎名さんも言いましたけれども、鍵の問題はお互いに合意しなければいけない。使用者側にいろいろな選択肢があって、いろいろなシステムがどうなるかわからないような状況で、この四角に書いてあることを実現化するためには、どのくらいの時間とどのくらいの金銭的なものと、実際に使用するための合意等、諸々のものがかかるかということがここには書かれておりません。もちろんなかなかそこら辺のことを書くことは難しいのではないかと思いますが、われわれにとって簡便な、すっきりとした使用形態を実現するためには、この理想形態はいいとは思いつつ、機器メーカーさんとの合意とか、この技術の開発とか、使用のルールとかというものまで、どの程度になるのかということがちょっと読みにくいなと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。

【河野委員】 6ページ目の絵を見ながらお話を聞いていただければと思うのですけれども、先ほどの太下さんのお話、コンテンツコピーの話とか、サブスクリプションサービスモデルの話とか、無料の話とかいろいろありましたが、技術を使うことによって、いろいろなビジネスモデルを作ることが可能になります。例えば映像の場合ですと、まず劇場で流し、その後、有料放送でのペイパービューや飛行機内での上映、パッケージで販売して、地上波、と細かくウィンドウを切ってビジネスをしています。、しかもそれぞれのウィンドウで、コピー可能な世代数など利用のコントロールもあわせておこなっていますこれは技術を使うことで可能になっているのです。
 なので、小六委員がおっしゃっていたことをちゃんと理解できているかどうか、少し自信がないのですが、ここに書かせていただいたような保護技術、いろいろなタイプの保護技術があり、その中で選択できるユースルールのタイプがいくつかあるわけで、そういったいくつかの技術とユースルールを組み合わせることによって、コンテンツ市場全体で見てどういうウィンドウを切り、どうやって回収するか。そういうようなビジネスモデルの展開を技術を使ってできるのではないか、ということを申し上げたかった提示でございます。

【小六委員】 もう1度だけよろしいですか。河野さんがおっしゃることはよく理解しているつもりです。中身が理解できたかは別としまして。いろいろな技術が開発されて、いろいろなふうに使われる。ここで問題は多様性ではないかと思います。音楽の使われ方、受け取り方というのも多様性があって、選択肢が多いほうが豊かになるというふうな考え方があって、これも理想形かもしれません。しかしそればかりを見ていると、実際に使う場合に多様性が全部良いかというと、その多様性を収斂させる時にまた別のシステムがいるというようないたちごっこになっているような気がします。
 一番最初のレクチャーにございましたね。検索エンジンがまた必要になってくる。そういうことになることが本当にいいことかどうか。そこら辺のことをちょっと疑問を持ちながら質問を終わらせていただきます。

【中山主査】 ほかにご意見ございましたら。どうぞ、森委員。

【森委員】 資料4の6ページの絵のところなのですが、音楽CDをパソコンに取り入れて、その後、携帯とかPDとかメモリーカードに渡そうとするのですが、この場合、別のPDをいくつも持ってきて、次から次へと複製物を作るということはできるのか、できないのか。その辺、ちょっとご説明いただければと思うのですが。

【亀井委員】 亀井でございますが、先ほどの太下さんのご説明のA3の資料のCD−Rへの書き込みという欄があるかと思います。あるいは、ポータブルオーディオ機器への転送という欄がございますけれど、ここにあるようにいろいろな、先ほど河野委員のおっしゃられたユースルールという形によって、提供される音源ごとにコピーがどこまでできるかというようなルールを持ったサイトが沢山あるということです。したがって一般論でいえば、制御される、できるというお答えになろうかと思います。

【椎名委員】 今のご質問はCDということでご質問があったと思いますが、CDでお答えいただけます?

【河野委員】 左の系のところのお話、音楽CDから、いわゆるリッピングといわれているところについてどうなっているのかという話ですね。そこでの対応は各社まちまちでございます。そのパソコンが使用しているソフトウェアによっては、音楽CDの取り込みや、その後の扱いについてコントロールしているものもあれば、そうじゃないものもあるというお答えになるかと思います。

【椎名委員】 要するに、制限を加えていないソフトを使えば、もう先ほどのご質問にあったように、違うPDをどんどん持ってくれば無制限にコピーができるということですよね。

【河野委員】 音楽CDをCD-ROMとして認識し、音楽データを他のデータと同様に扱い、PDをデータストレージとして認識すれば、そういうことが技術的には起こると思います。

【中山主査】 よろしいですか。ほかに何かご意見、ご質問ございましたら。よろしゅうございましょうか。
 それでは、今日はだいぶ時間も予定より過ぎましたので、今日の議論はこのくらいにしたいと思います。最後に次回の小委員会の内容を含めまして、事務局から連絡事項がありましたら、お願いいたします。

【川瀬著作物流通推進室長】 本日は長時間ありがとうございました。第3回目となる次回につきましては、6月の28日の水曜日の10時半から1時を予定しております。場所等については、改めてご連絡させていただきたいというふうに考えております。
 なお、次回の小委員会につきましては、私的録画に関する実態の変化等について少し勉強したいと思っております。また、その実態の変化等を踏まえまして、その評価と今後の検討事項を整理するに当たっての論点について、ご議論をいただきたいというふうに考えております。
 なお、関係の委員には改めてお願いはいたしますけれども、特に権利者、消費者、機器・機材メーカーなどのこの補償金制度の利害にかかる委員につきましては、それぞれのお立場を踏まえた上で、ご意見、ご発言していただいて、それを踏まえた上で論点を整理したいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 なお、本日は昼食の用意をしてございますので、お時間のある委員におかれましては、そのままお待ちください。どうもありがとうございました。

【中山主査】 はい、ありがとうございました。本日はこれで文化審議会著作権分科会の第2回私的録音録画小委員会を終わりにさせていただきます。長時間ありがとうございました。

  〔了〕


(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)

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