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3. 国際展開に対応したビジネス・スキームへの転換

(1) 問題意識
1 国際展開に向けた「ルール」への転換
 日本コンテンツの国際展開をアジア地域において促進していくうえで大きな障壁となるのが、日本国内におけるコンテンツ・ビジネスの様々な商慣行がアジア地域のスタンダード、もしくは相手事業者のニーズと乖離していることである。
テレビ番組の場合日本のコンテンツは2年・2回の放送を基本条件として販売されることが多いのに対し、アジアの事業者からはそれ以上の放送回数を求める要請が強い。
日本のテレビドラマは1シリーズ10エピソード程度が一般的となっているが、アジアでは最低20エピソードが要求されることも多い。
一方、アジアの事業者が拠出できる購買価格帯を前提とした場合、放送回数の上限緩和やエピソード数を増やすための複数作品パッケージ化などに関して、我が国著作権保有者からの了解が円滑には得られにくい状況がある。

 文化産業輸出を1990年代後半から積極的に推進している韓国では、海外市場にコンテンツを輸出する場合に、現地の商習慣に即した弾力的な条件を提示することによって急速にアジア諸地域への輸出を伸ばしている。本WG委員の指摘によれば、韓国はテレビ番組の放送回数無制限やビデオグラム化権をセットで譲渡するなどの柔軟な条件提示を行うことにより成果をあげている。
 テレビ番組に限らずコンテンツ産業の各分野において日本国内の商慣行スタンダードとアジア地域のそれとのギャップは存在している。国内におけるコンテンツ・ビジネスのスタンダードに拘泥していては国際展開を成立させることが極めて困難であり、国際事業を国内事業と切り分けて捉え、国際展開に対応したルールへの転換を図っていくことが不可欠である。

2 国際展開に向けた「低コスト構造」への転換
 著作権処理のようなルールの問題に加えて、コンテンツ国際展開の障壁となる大きな要素が、日本のコンテンツ産業の高コスト構造である。アジア地域のなかでは日本のコンテンツ・ビジネスにかかるコストが突出して高いことは明白であり、日本におけるコスト構造と同じ尺度で測っていてはアジアにおける国際展開を推進することは不可能である。
 既に、各コンテンツ・ジャンルの事業者が国際展開に向けてコストダウンの努力を行っているとはいえ、それはあくまで日本における高コスト構造の同一平面上での相対的な低コスト化に他ならず、国内事業からの利益によって補填する形で展開されているのが実状である。
 特に日本国内市場で制作コストがリクープされている場合には、日本国内のコスト構造の延長線上で人件費や出張費用をかけ、そのコストに見合う利益が得られないために事業拡大・利益拡大が困難となる悪循環が見受けられる。こうした状況は、日本国内市場で制作コストがリクープされている場合にはとりわけ深刻な問題である。
 アジアにおいて日本コンテンツの国際展開を推進していく過程では、まず利益獲得よりもシェア獲得を目指すべきであり、ある程度の市場シェアが確保されてはじめて収益逓増メカニズムを創出することが可能となる。従って、まずはコンテンツ国際展開に向けた「低コスト構造」への転換が必要である。
 抜本的にコスト構造のあり方を見直していくためには、各種コンテンツホルダーの傘下組織が国際展開を単独で行っているビジネス・スキーム以外に、各事業者から独立した専門のサービサーを設置し、それを介して国際展開を行うことも検討すべきである。

(2)提言
−提言9 国際展開に対応したビジネス・スキームへの転換−
海外事業者に対して付与する権利内容の弾力的運用を図ることが必要であり、そのためには国際展開事業を国内事業とは分離して捉え、国際展開に対応したルールを適用することが重要である。
コンテンツの国際展開に向けた「低コスト構造」への転換が必要であり、日本国内の高コスト構造と分離した形で国際展開を行うべきである。そのためにコンテンツ国際展開専門のサービサーを設置することを具体的に検討する必要がある。


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