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著作権分科会 契約・流通小委員会(第5回)議事録

1. 日時
  平成17年9月13日(火曜日)10時30分〜13時

2. 場所
  経済産業省別館10階1020会議室

3. 出席者
 
(委員) 荒川、池田、石井、上原、金原、児玉、駒井、佐々木、椎名、菅原、瀬尾、関口、寺島、土肥、生野、松田、三田、村上、森田、山本の各委員
(文化庁) 辰野文化庁長官官房審議官、甲野文化庁著作権課長、池原国際課長、川瀬著作物流通推進室長、千代国際課国際著作権専門官、木村著作物流通推進室長補佐ほか関係者

4. 議事次第
 
1. 開会
2. 議事
(1) 著作権契約のあり方等について
(2) その他
3. 閉会

5. 資料
 
資料1   日本民間放送連盟と各権利者団体との主な協定一覧(PDF:141KB)
資料2 映画の製作・流通に於ける契約について(PDF:91KB)
資料3 音楽出版社の著作権契約書に関して(PDF:139KB)
資料4 レコード製作に係る契約の概要
資料5 出版界における契約実態について(PDF:164KB)
参考資料 「著作権等管理事業法の見直しに関する報告書(案)」に関する意見募集について
(※パブリックコメント・意見募集へリンク)

6. 議事内容
 

(土肥主査) おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから文化審議会著作権分科会「契約・流通小委員会」第5回を開催いたします。議事に入ります前に、本日の会議の公開について決定したいと存じます。すでに傍聴者の方々に入場していただいておるところでございますけれども、予定されておる議事内容を拝見しますと、非公開とするには及ばない、こう思われますので、公開としてよろしいでしょうか。

〔異議なしの声あり〕

(土肥主査) はい、ありがとうございました。それでは、本日の議事は公開といたします。では、初めに事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

(木村室長補佐) それでは、恐れいりますが、お手元の資料の確認をお願いいたします。本日の議事次第の後に、この後の著作権契約等のあり方等につきまして、関係委員の先生よりご説明いただく資料、資料1から資料5まで配付させてもらっております。この資料のほかに、参考資料としまして「『著作権等管理事業法の見直しに関する報告書(案)』に関する意見募集について」という資料を添付させてもらっております。漏れ等ございませんでしょうか。ありがとうございます。

(土肥主査) それでは議事に入ります前に、「著作権等管理事業法の見直しに関する報告書(案)」等の取り扱いにつきまして、事務局から報告をお願いいたします。

(木村室長補佐) はい、恐れいります。すでに、委員の皆様にはメール等でご連絡させていただいたことでございますが、改めて報告させていただきます。
 著作権等管理事業法の見直しに関する報告書につきましてですが、本年4月26日開催の第2回の小委員会におきまして取りまとめまして、直近の著作権分科会に報告し、分科会の了解を得た後、分科会名で公表する予定としておったところでございます。しかしながら、その後、文化庁におきまして、報告書の取り扱いにおいて検討しました結果、最近の情報公開の流れを踏まえまして、法制度に関する検討報告については意見募集を実施した後、最終的な報告を取りまとめる必要があるとの結論に達したところでございます。
 このようなことから主査とも相談させていただきまして、本件の報告書につきましては、平成17年9月8日の著作権分科会で報告書案として報告しまして、その後、1カ月ほど意見募集を実施した後、この小委員会におきまして寄せられた意見を踏まえて改めて検討を行ないまして、だいたい12月頃の予定になるかと思いますが、最終的な報告書に取りまとめまして、再度著作権分科会に報告して公表することとしておりますので、よろしくご了承お願いいたします。
 なお、9月8日の分科会でございますが、この際に報告をしました報告書案につきましては、意見等はなかったところでございます。また、意見募集の実施についてですが、本日参考資料として配付しております資料をご覧いただきたいのですが、本年の9月8日から10月7日までの1カ月間実施することとしております。意見募集の対象となる報告書案及び参考資料としまして、報告書案の概要を添付しておりますので、後ほどご覧いただければ幸でございます。よろしくお願いいたします。

(土肥主査) ありがとうございました。この「管理事業法の見直しに関する報告書(案)」につきましては、いま報告ございましたような、そういう取り扱いにするということでございますので、どうぞご了承いただければと存じます。
 それでは議事に移ります。本日の議題は「著作権契約のあり方等について」の検討の第1回目でございます。本日は5名の委員の方に関係業界の著作権契約の状況等について、説明をお願いしております。各委員からの説明に先立ち、今回の検討課題につきまして、事務局から説明をお願いしたいと思います。それでは室長、お願いいたします。

(川瀬室長) それではご説明をさせていただきます。今回と次回で「著作権契約のあり方等について」ご議論を頂戴したいと思います。
 この問題につきましては、昨今コンテンツの利用の促進ということで、いろいろと制度に関する議論がされておりまして、最近ではこの問題を法律問題ではなく、契約問題ということでだんだん理解が定着してきたと私どもは考えておるわけでございます。
 そういう中で、コンテンツの利用促進、それに伴いまして、コンテンツ制作者も含めて権利者の権利保護が、1つの課題になっていると理解しているわけです。
 したがいまして、今後の著作権契約の方向性といいますか。そういうものについて、これは権利者と例えばコンテンツ制作者の著作権契約、例えば団体協約等による契約のルールづくり、また管理事業者とのルールづくり、それも含めまして、著作権契約に関する方向性について、ご検討いただければと考えております。
 それを踏まえまして、さらに今後私ども行政ないしは民間にかかわらず、さらに内容について考えるべきところは考えていただくというようなことで進めていきたいというふうに考えております。そういう意味で、今回はぜひ今後の方向性についてご議論をいただければというふうに考えております。以上でございます。

(土肥主査) はい、ありがとうございました。それでは続きまして、早速著作権契約の状況等についての説明をお願いしたいと存じます。池田委員、児玉委員、駒井委員、生野委員、金原委員の5名の委員に続けて説明をいただき、その後まとめて質疑応答、意見交換の時間を持ちたいと、こう考えております。それでは放送業界の著作権契約の状況等につきまして、池田委員から説明をお願いいたします。

(池田委員) それでは民放各社と、各権利者団体との著作権、各権利著作物等の取り扱いについてのお話をさせていただきます。
 まず、NHKさんと民放、大きく分けますと、民放連というふうに、2つ分かれるわけでございまして、NHKさんはまた違った部分がございますけれども、基本的には放送する制作番組におきましては、いわゆる局制作、放送事業者が自ら作る番組と、それから外部の制作会社に一括して発注してお願いして作っていただく番組、いわゆる発注番組とがございます。
 局制作番組につきましては、放送事業者が各権利者団体、各権利者との契約になりますので、その主な権利者団体との協定等がございます。それから、発注番組につきましては、制作会社との向き合いになりますので、映画製作者としての制作会社との契約につきまして、これは先般、総務省の中で検討会がございまして、その場で契約見本というものが公表されておりますので、それは後ほどお話しさせていただきます。
 まず、日本民間放送連盟と各権利者団体との協定でございます。お手元の資料をご覧ください。
 まず、文芸著作物につきまして、現在ですと、日本文芸家協会、以前は日本文芸著作権保護同盟でしたけれども、もともと保護同盟と民放連との協定がございました。著作物使用に関する実務協定、これは平成13年4月1日に締結をされています。これはいわゆる文芸作品の放送での使用につきまして、まず使用料規程の第4章「一般放送事業者等の放送等」に則り、民放連会員社が協会管理の著作物を使用する場合の細則を定めたものとございます。ここに「一般放送事業者等」とございますのは、NHKさんとはまた別であるということです。NHKさんはNHKさんで、また別でございます。
 通常、よくありますのは、ドラマにおける原作の使用、それから舞台中継ですとか、小品と呼ばれる詩、短歌、俳句、川柳など、それからそれらの朗読等の使用につきまして規定を定めたものでございます。番組に使用させていただきました原作ですとか、それから小品利用等、放送事業者自らが放送する場合、それからそれをネット放送する場合、それから通常再放送といいますけれども、リピート放送ですね。リピート放送する場合、それぞれの取り決めについて組まれたものが、この著作物使用に関する実務協定でございます。
 これは現在、平成15年10月1日付で文芸著作権保護同盟から、文芸家協会へ承継されておりますので、現在は日本文芸家協会と民放連の協定であるというふうになっております。以上が文芸著作物に関する協定でございます。
 続きまして脚本に関しましては、日本脚本家連盟との協定がございます。ラジオ放送に関する団体協約書、それからテレビ放送に関する団体協約書と、ラジオとテレビで2つに分かれております。どちらも、平成16年12月1日に締結しております。
 これにつきまして、ラジオもテレビもだいたい同じでございます。使用料規程のラジオの著作物と、テレビの著作物で分かれております。その脚本を民放連会員社がラジオ放送に使用する場合、それから、テレビ放送に使用する場合、委嘱する場合、それから委嘱したものをさらに利用する場合というふうになっております。対象としておりますのは、オリジナル脚本、脚色の脚本、構成脚本、それから先ほど申しましたが、放送事業者による単独放送、ネット放送、リピート放送について定めております。
 続きまして、日本音楽著作権協会との協定書でございます。音楽著作物の放送等の利用に関する協定書、これにつきましては、平成13年の7月31日に締結しています。ちょうど5年間の規程を定めておりますので、現在今年度で平成13年に締結した協定が終わりますので、現在新しいお話し合いをさせていただいているところでございます。
 この協定自体は使用料規程、地上波放送を行なう一般放送事業者という部分に則りまして、民放連会員社が音楽著作権協会の管理する音楽著作物を利用する場合の細則を定めたものでございます。これにおきましては、利用する際の条件等、これにつきましては、使用料規程よりもさらに細かくいろいろな利用の方法ですとか、そういったものも含めてまとめて取り決めをさせていただいております。
 それから出演者に関するものでございますが、日本芸能実演家団体協議会、芸団協と、これは結構古いものでございまして、昭和55年の10月1日に基本的な協定を結ばせていただいております。これもラジオに関するものとテレビに関するもの、それぞれの媒体におきまして民放連会員社の番組に出演していただいた場合に、その後のネット放送、リピート放送等についてさまざまな利用の方法を定めさせていただいてございます。
 それから、商業用レコードの放送使用に関する協定書というものがございます。これは、後ほど申し上げます日本レコード協会も同じでございますが、商業用レコードの二次使用に関しまして、指定団体としての芸団協へお支払いする商業用レコードの放送使用料の規程でございます。これは、平成12年の3月1日に締結させていただいております。放送使用料につきましては、数度見直しを行なっておりますので、この後も細かい料率等については見直しをもしております。
 それから、日本レコード協会につきましては、いま申し上げました芸団協との商業用レコードの放送使用に関する協定書と同様、商業用レコードの二次使用料に関する協定書というものを平成11年11月20日に締結させていただいております。これも同じく、指定団体としての日本レコード協会に対して、商業用レコードの二次使用料をお支払いするというルールを決めたものでございます。
 以上が現在、各権利者団体さんと結ばせていただいております主な協定の一覧でございます。これ以外にも細かな協定というのは、いっぱいございますけれども、基本的なものはこのようなものでございます。
 以上、放送事業者が局制作番組を作る場合の権利者の権利について、お話を述べた次第です。
 続きましてページをめくっていただきまして、「放送番組の制作委託に係る契約見本」についてお話しさせていただきます。
 これは総務省が、平成14年の10月から「ブロードバンド時代における放送番組制作における検討会」というものを開催しておりまして、目的としましては、書いてございますように、ブロードバンド時代における放送番組の制作体制の公正性・透明性をより一層高めることを目的としております。この検討会には、松田先生も委員でご出席されておりますので、私が申し上げるのも何なのですが、構成員といたしましては、お手元の資料の一番最後に載ってございます。立教大学の舟田先生がこれは座長でございまして、法律の実務家といたしまして枝先生、松田先生、それから放送関係者のほうは放送事業者としてのNHK、それから民放連、それから在京のキー局5社、それから制作会社サイドといたしまして、ATP・全日本テレビ番組製作社連盟と、それから日本動画協会、そして映画製作者連盟、日本映画製作者協会が放送関係者ということで入っています。要するに、放送事業者側と制作会社側の向き合いでお話し合いをさせていただいているところでございます。
 この場ではいろいろ議論がございまして、基本的には放送番組の制作委託の場合、必要最低限必要であるという事項を羅列いたしまして、これを放送番組の制作委託に係る契約見本という形で、それを公表させていただきましたのがお手元の資料の3ページ目が、これは記者発表資料、4ページ目以降が、その契約見本の具体的な内容でございます。これはいちいち羅列することはいたしませんが、基本的にはいわゆるわれわれの業界では大きくいって完パケ発注と言いますけれども、1つの番組そのものを制作会社に作っていただくという番組を想定いたしまして、その場合のさまざまな契約項目をここに書かせていただいております。これによって番組を制作するに当たって、いかに公明に公正に番組を作られるようになるかということを目指しております。
 これにつきましては、制作会社さんとの間の規定でございますので、それぞれ契約と申しますか。お話し合いでございますので、これに則ってわれわれはやっております。その後、各放送事業者が制作に関する自主基準を作りまして、これを在京5社、当然NHKさんもそうですが、ホームページ等で公表させていただいております。
 また、放送事業者に限りませんけれども、下請法が昨年4月から改正されたものが施行されておりますので、その際において発注書というものの交付というものが義務づけられておりますので、その点におきましても、例えば著作権の譲渡を受ける場合はそれを明記しなければならないというふうな規定もございますので、その辺りも遵守することによって、より一層の契約上の著作権の帰属等についても、だいぶ明確になっているのではないかと考えております。簡単ではございますが、私のほうからは以上でございます。

(土肥主査) はい、どうもありがとうございました。それでは、続きまして、映画業界の著作権契約の状況等につきまして、児玉委員から説明をお願いします。

(児玉委員) それでは映画製作、流通における契約について、資料2をご参照いただきたいと思います。
 初めに、私自身、契約実務というのはかつて経験したことがないものですから、実際にこの映画業界の契約がどのように行なわれているかということを、このプレゼンテーションを行うに当たって、いろいろなところで調べてみました。主に今回この資料については、日本映画製作者連盟さんからいろいろ情報をいただいてまとめたものでございます。
 特に、この映画おける契約については、製作の場面と流通の場面と2通りあります。そういう意味で私が所属しております日本映像ソフト協会はどちらかというと流通段階の団体でございますので、今日のテーマでは、どちらかというと、製作段階での契約についてを、中心にご説明するべきではないかと思って、このような資料を集めたわけでございます。
 今まで、映画の製作における契約というのは、よく世間一般的にいわれていますように、力関係とか、口約束だけということで、あまり書面による契約がなされていないというような印象を受けながら、私自身もある程度そうかなと思って居りましたが、今回こういう形で実際に契約の状況を取材してみましたらば、昨今のいわゆる映画、劇場映画の製作会社では、かなり積極的に契約を交わすという行動に出ておりまして、そういう点では映画の製作に於いても、やはり、新しい近代的な、現代的な形で製作が進められてきているというふうに認識いたしました。
 契約の相手につきましては、相手側については、ここにありますように、原作、シナリオ、監督、出演者、それから、スタッフ、スタッフというのはいわゆるメインスタッフという、撮影や美術等の方々ですけれども、それに音楽、つまり、作曲、作詞の方々と、基本的には当事者間の個別契約をするという形でございまして、それぞれ契約の内容については、かぎ括弧で示した内容であります。 つまり、著作物の使用料ですとか、あるいは二次使用についての項目についての契約が行なわれるという状況でございます。
 この中で特徴的にご説明を加えなければいけないところが幾つかございますが、1つは、出演者さんとの契約ということです。これは、かねてから文化庁さんが主催されておりました「映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会」通称、「映像懇」で、WIPOで進められております実演家さんの権利の問題についての討議が行なわれておりまして、その席で、やはり契約問題というのがかなり重要ということがクローズアップされておりまして、我国でも映画製作者の代表の方も、やはりこれからは出演時にちゃんと契約をして行きましょうということになり、その後、実演家さんの団体と、映画製作者の団体との間で、契約のあり方についての話し合いが開始されました。
 実演家さんの団体はCPRAさんと芸団協さん、映画製作者側は、日本映画製作者連盟と私どもの日本映像ソフト協会で、多分、1〜2年は掛かったと思いますが長期間話し合って、昨年末に一応、確認書という形で文書の交換をすることが出来ました。その中では、当然、契約書を交わしましょう、また、契約の内容もこういう項目を決めておきましょうと言うことが織り込まれていました。
 それから、あといくつか問題がありますのは、この実演家の問題でもそうなのですけれども、契約をする当事者の範囲がどこまでなのかということが、一番大きな問題となりまして、例えば、映画業界の場合に特徴的にありますエキストラさんですとか、あるいはそれに準ずるような役者さんたちとは、実際に契約が交わせられるのかどうかということです。実演家さんの団体との協議の中でもございましたけれども、基本的にはエキストラさんとまでとは、とても契約ができないということで、現在は終わっております。
 また、音楽については、映画の製作時における音楽というのは、既存の楽曲を使用するということではなくて、多くの場合はその映画に関する音楽を、作曲者さんや作詞者さんに委嘱して、そのために作っていただくということになっています。 そういう意味での契約を交わすことなのですが、基本的には、この辺が、実務的に紙で契約を交わすところまで現状は進んでいないと、ちょっと実感しておりますが、音楽出版社さんとは、二次利用に関する契約は進んでいるようです。
 映画全体の二次使用については、すでに著作権等管理事業法においての管理団体との間で、許諾を得て二次使用料をお支払いする仕組みが確立されております。
 映画の製作というのは、こういったように契約する範囲がものすごく広い、相手が非常に多いということで、映画製作者の場合も組織的に、そういう契約実務ができる人材を有している企業の場合と、そうでない場合とございますので、今後の課題として、このような契約がすべての映画製作者とその各関係者との間で契約が交わせるように、人材の育成、契約範囲の拡大をしていかなければいけないということは、今回いろいろ調べてみて実感した次第でございます。
 なお、二次使用につきましては、下にあります、いわゆる流通というところでチャートに表しました。 現実的には、支分権ごとにいわゆる権利の譲渡、ないしは、その流通チャンネルの流通を委託するということで、使用料・数量、特にわれわれはMGというミニマム・ギャランティというようなことで契約をしたり、あるいは放映の回数ですとか、放映の各範囲についての契約をするという形で、それに基づいての原著作者さんに対する著作権等管理事業法に基づいた許諾あるいは支払いという実務を、現実には二次利用する者が行なうという形で進められているのが現状でございます。
 雑駁ではございますけれども、現状の映画製作・流通における状況等、いくつかの問題点についてご説明申し上げました。

(土肥主査) はい、ありがとうございました。それでは次に、音楽出版業界の著作権契約の状況等につきまして、これも駒井委員、お願いいたします。

(駒井委員) 音楽出版社協会の駒井でございます。私ども音楽出版社の契約に関しては、大きく分けて2つございます。1つが著作権の契約書で、もう1つが隣接権、いわゆる原盤の契約書です。
 原盤の契約書等に関しましては、後からレコード協会さんのほうからご説明がございますので、私は著作権の契約書に関してご説明をいたします。
 私どもが契約書というものを使用したのは結構早くて、戦後すぐ音楽出版社ができた段階でそれなりの契約書がすでに存在して使われていたというふうに考えます。この資料に書いてありますように、1973年音楽出版社協会が設立されました。その時の最初の事業が、今まで、ばらばらに使用していた契約書を、統一した著作権契約書として作り直そうという事業で、76年に21条からなる「著作権契約書統一フォーム」というものを完成させました。それを、いろいろと紆余曲折があったり、手直し等ございましたけれども、ほぼずっと使ってまいりました。
 2000年に著作権等管理事業法に対応する著作権契約書のあり方ということで、文化庁さんの仲介で新しい著作権契約書の検討会を作家8名、出版社8名、それに文化庁さんが入っていただいて、JASRAC(ジャスラック)の方もオブザーバーでお見えになって、約7回丁々発止議論を重ねて、新しい契約書を作成して現在に至っております。今のところ、こちらの見直しと同じように、3年後の見直しということで作家の先生方と検討会を重ねております。特段大きな問題はないということで進んでおります。
 では、いま使っております契約書に関して簡単にご説明します。契約書は29条からなっておりまして、その主だった項目について説明します。
 まず、第1条の目的というところでは、著作物が譲渡されて、著作者から音楽出版社に権利を移転しているということを明確にしてございます。
 第2条、保障ということでは、その著作物が完全な創作物であって、何ら出版社に支障、損害を与えないという保証であります。これに関してはこう記してありますが、問題が発生した場合に出版社がスルッと抜けちゃうという事は出来ませんが、一応保障ということで2条に明記されてあります。
 それから、第3条は地域及び期間ということで、日本をはじめとして全世界ということがうたわれて、どのくらいの期間契約をするか。その後に支障がなければ、自動更新でこういうふうにするということを明確に記入できるようにしてあります。契約期間というのはその時代によって移り変わりますけれども、短いもの3年くらいから10年契約、それから著作権保護期間という広い範囲にわたる期間がございます。ここは著作者との間で一大争点になった点でもあります。
 それから、第4条は、その譲渡の範囲ということで、ここは細かく記してございますけれども、著作権法27条及び28条の権利を含みまして、現在及び将来にわたって著作者が有する一切の権利を譲渡するということが明記されてございます。
 それから第6条、著作権管理の方法、これが今回改正する一番の目玉でございましたけれども、4支分権と7つの利用形態というものがございます。これを自由に選べるように契約書が作ってございます。これは非常に専門的になりますけれども、資料を1枚めくっていただき、著作権契約書書式概要というところです。ここに書いてあるようにAタイプとBタイプとございます。Aタイプというものは個人と契約する場合です。作詞者誰々さんと契約する。作曲家誰々さんと契約する。Bタイプの場合はグループです。あるグループがいて、そのグループの名前を全部羅列して、誰々誰々誰々誰といって同じ条件で契約する場合にBタイプの契約書を使います。
 そして、下のほうに自己管理なし、自己管理ありという形で、4タイプに分けて選択できるようになっています。1は、すべてを1つの管理団体に委託するという場合であります。それから、2はこの権利はここに、この権利はここに、またはもう1つはここにというような複数にわたり契約する場合です。それから自己管理しつつ、この部分はこっち、この部分はこっちというような形でいくつかに分ける場合がこの3ページの3Aの4という形にしてあります。ここで明確にいろいろな形から自由に選べるということができる契約書になってございます。
 6条では支分権、演奏権、録音権、貸与権、出版権、それと7つの利用形態が明記してあり、それが自由に選べるという形になっています。
 それから次の10条は著作権使用料についてです。これは著作者から譲渡されましたその対価で、作家に対して著作権使用料の何パーセントを支払いますということを定め規定です。
 それから17条では第三者への権利譲渡等ということで、音楽出版社が格段の理由がない場合に勝手に譲渡していただいた権利をよそ様に売れない、売ってはいけない、そんなことはできないという禁止条項でございます。ここできちっと著作者の権利が守られるようになっております。
 それから20条は契約の解除等です。これは大変ややこしい契約でございまして、先ほど申し上げましたように、契約の年数が短いものから長いものもございますけれども、長いものに関して永久に手が出せないのかという著作者の方の提案等々がございまして、いろいろ議論をした末、10年を超える契約の場合、ですから、10年契約は含めませんけれども、11年以降の契約という場合に当てはまる条項でございます。それは全然その作品が動いていない場合。われわれの業界用語で「塩漬け」といいますけれども、動いていない作品に関して、もう何も動いていないから、その楽曲を返還してほしいという申し出があった時に、出版社はそのテーブルに着かなければいけないという条文です。
 ただ、その申し入れがあったからといってすぐさま返還するということではなくて、申し入れがあたらもう1度企業努力をして、また世の中に出るように頑張ります。それでもまだなおかつ動きが見えなかった場合、いくつかの検討を重ねた結果、解約ができるという形をとってございます。
 したがいまして、この契約書においては、著作者がわれわれに権利を譲渡するものの、いろいろな条件で縛るようにしてお互いにうまくいくような形を目的に作ってございます。これは契約をする側の作家の先生方とわれわれとじかに議論し検討して作られた契約でございますので、現在順調に使用されて、特段問題も出ずに進んでおります。
 ざっとでございますけれども、音楽出版社の著作権契約に関してのご説明でございます。

(土肥主査) ありがとうございました。それでは次にレコード業界の著作権契約の状況等につきまして、生野委員からご説明をお願いいたします。

(生野委員) それでは、資料4に基づいて説明いたします。まず1.の書面による契約の有無ということですが、レコード製作契約では書面による契約が一般的に行なわれているということがいえるかと思います。
  2.のレコード製作に係る契約の概要、一般的な事例と書いてありますが、レコード会社から見ての契約実態を前提として記載しております。
 まず、1.のレコード会社と著作権者との契約でございます。レコード会社は作家本人と契約を行なうということも中にはあるわけですが、一般的にはJASRAC(ジャスラック)さん等の管理事業者と著作物の録音使用許諾契約を締結して使用料を支払う、そういった権利処理を行なっているわけでございます。
 2.のレコード会社と著作隣接権者、実演家及びレコード製作者でございますが、その契約でございます。契約当事者としては、レコード会社、アーティストといった実演家、プロダクション、プロダクション以外にも音楽出版社の場合がございます。
 その契約内容のポイントですが、(1)から(6)まで記載してございます。ここら辺が主なポイントになるかと思います。まず、(1)のレコードの原盤契約の種類ということで、1から4まで記載しております。これは原盤制作を誰が費用負担して行い、レコード製作者になるのかということで、こういった1から4までの分類がなされます。この原盤契約は原盤制作を誰が費用負担して行なうかといったことの決定と合わせて、実演家、レコード製作者の著作隣接権の帰属、それから原盤の所有権の帰属ということが決定されることになります。
 まず、1のレコード会社原盤の契約でございますが、これは読んでとおりのレコード会社が100パーセント制作費を負担して原盤を制作するということで、実演家の著作隣接権をレコード会社に譲渡してもらい、その見返りとして、レコード会社は発売したCD等に関し、プロダクションを通じて、実演家にアーティスト印税を支払う、そういった契約でございます。欧米では、この1の契約が一般的だということを聞いております。
 それから2の共同制作原盤譲渡契約。これはレコード会社とプロダクションが、制作費を共同で負担して原盤を制作する契約でございまして、できた原盤に関わるプロダクションが有するレコード製作者としての権利、それから実演家の権利、その著作隣接権をレコード会社に合わせて譲渡するという契約でございまして、レコード会社はプロダクションに共同原盤印税を支払うとともに、実演家にはプロダクションを通じてアーティスト印税を支払うという契約でございます。
  3の原盤独占譲渡契約でございますが、これはプロダクションが100パーセント制作費を負担して原盤の制作を行い、レコード会社に実演家及びレコード製作者の著作隣接権を譲渡する。レコード会社はプロダクションに原盤印税を払うという契約で、その原盤印税の中には、アーティスト印税も含まれるという契約でございます。
  1から3の契約に関しましては、原盤の所有権はレコード会社に帰属するという契約内容でございます。それが一般的でございます。
  4の原盤供給契約、いわゆるライセンス契約でございますが、当然のことながらプロダクションが制作費を100パーセント負担して原盤の制作を行い、実演家、レコード製作者の著作隣接権に関しましてはプロダクションに留保される。原盤の所有権に関しても同様の扱いとなるということでございます。印税に関しましては、3と同様でございます。
 それから(2)の原盤の利用の範囲でございますが、CDの発売、複製、頒布に関する権利あるいは送信可能化権等、行使できるのはどの範囲までかということが決められるわけでございますが、当然のことながら(1)の4の原盤供給契約に関しては、その利用の範囲が限定的になることが多いということでございます。
 (3)の対価でございます。アーティスト印税あるいは原盤印税という形で支払われるわけですが、中には一括払いもございます。ただ、レコード製作契約の場合は印税、ロイヤリティという形で支払われるのが一般的であると考えます。
 (4)の契約期間に関しましては、よく専属契約ということがいわれますが、アーティストが特定のレコード会社に何年専属契約を結ぶかということで、だいたい2年から3年が一般的だと思います。ライセンス契約の場合は、例えば2年間原盤を利用してCDを複製、頒布できる、そういった契約の仕方でございます。
 (5)のテリトリー。(1)の1から3に関しましては、全世界という契約が多いかと思います。4に関しましては海外のレコード会社から日本のレコード会社が原盤のライセンスを受ける場合が多いわけですが、その場合、テリトリーは、通常日本のみという形になります。
 (6)その他でいろいろ詳細があるわけですが、例えば印税の支払い対象数量をどうするか、あるいはアドバンスがあるのか、ないのか等、そこら辺の詳細が決められるわけでございます。
 それから契約の単位等ということで、単発契約、専属契約、レーベル契約、こういった種類がありますので、ご覧いただきたいと思います。以上でございます。

(土肥主査) はい、どうもありがとうございました。それでは最後になりますか。書籍等の出版業界の著作権契約の状況等につきまして、金原委員からご説明をお願いいたします。

(金原) それでは、ご説明申し上げます。資料の5にまとめてありますが、出版といってもさまざまな形態があるわけですが、大きく分けて書籍と雑誌、あるいは単行本と定期刊行物、その2つに分けられます。
 まず、書籍のほうですが、1番ですが、基本的には、出版社も著作者と出版契約を締結をしております。しかし、実態はなかなか協会としてはつかめない要素が多いわけですが、ここに書いてあります調査結果、だいぶ古いもので1997年ですが、今から8年ほど前になりますが、この時、調査した結果をここにまとめてあります。
 書籍協会の会員社は約500社ですが、それを対象にしてアンケート調査を行なった結果が下記のようになっております。分野別に見てみますと、領域によっては著者との契約の比率が高いもの、あるいは非常に低いもの、さまざまであります。
 このサンプル数が実はそれほど大きくない。ここに書いてありますが、回答してきた社が146社ということでございます。日本には出版社と称するものは多分3,000社ほどあると思いますが、それほど比較では非常に低いパーセンテージですので、必ずしも実態を表していないかもしれないということがいえると思います。
 その上で、文書としての書面で契約をしたというのがこういう比率になっておりますが、実際にはこれはあくまでも契約書という形で署名捺印をしたという結果でありまして、そのほかにも手紙の往復、あるいは口頭での契約というのは沢山あると思いますし、またそのようなものがないと実際には出版できないというのが実態だろうというふうに思います。
 その2番で、今度は契約の方式ですが、書籍協会としては出版契約書というひな型を作成しております。会員社あるいは日本の出版界、広く利用して貰っているわけでありますが、必ずしもこのひな型にはとらわれないで、各出版社がそれぞれ独自の契約書を作成したり、あるいはこのひな型に改変を加えてそれぞれ独自の形式を作っているということであります。いずれのケースも著作者と出版社個々の契約でありまして、団体として、あるいは著作者の団体として、特定の出版社と契約を結ぶというケースはほとんどないだろうというふうに思います。
 ひな型について若干説明をいたしますが、契約の種類としては出版権設定契約であります。著作権の譲渡契約というのもないではないと思いますが、一般的ではないだろうというふうに思います。
 そんな中で、出版物の発行について、独占的な排他的利用を出版社に認める。つまり、出版権の設定については出版社がそれを行なうということについての承諾をいただくということになります。
 それから類似出版物の出版禁止条項ですが、同様の出版物を他社から出版しないということを盛り込んであります。これはひな型ではなくて、通常ほかの独自の契約書を作るこういう場面においても、ほとんどのケースにおいてこのような条項は入っているであろうというふうに思われます。
 著作権使用料ですが、いわゆる印税方式、つまり印刷物あるいは発行部数に応じて支払うという形式がほとんどである。買い取り方式というのは、ここでいう買い取りというのは著作権の買い取りという意味ではなくて、印税を一括払いする。つまり、販売部数にかかわらず一括で払ってしまうという形式もないではないということでございます。印刷した部数、発行した部数に応じてすべて払ってしまうというのと、実売部数に基づくという2つの方式があるということです。
 複写ですが、委託出版社に複写にかかる権利の委託をするというのが、一般的でありますが、ひな型においては、このような形式をとっています。その他、独自の契約書を作成しているところでは、複写にかかる権利を譲渡するというケースもあるであろうと思います。同様に、電子的使用についても同様で、出版社に対して優先権を認めるという契約になっています。二次的使用についても同様でありまして、翻訳あるいはほかの場面で利用されるということについては、出版社に委託するというケースもありますし、それにかかる権利を出版社に譲渡しているというケースもあります。
 契約の有効期間ですが、一番多いケースとしては3年間の、それからは1年の自動更新という形で契約書を作っております。
 2枚目にまいりますが、雑誌でありますが、雑誌についてはあまり出版契約を締結するということは行なわれておりません。これは雑誌というのは発行されている期間、販売されている期間だけが販売できる期間でありまして、継続出版の可能性が非常に低いということで、いわゆる書面での出版契約というものは締結しないということが一般的であろうと思います。
 ただし専門書、学術関係の専門書につきましては、それから一般雑誌におきましてもまったくの契約という形がないかというと、そういうことではなくて、当然口頭による依頼はありますし、場合によっては書面に基づく依頼というものもありますし、多くのケースの場合は著作者がどこどこの雑誌に掲載を引き受けますという文書を交わしているというケースも沢山あるであろうと思います。
 それから学術専門雑誌におきましては、通常の場合は原稿料となります。雑誌の場合は印税方式というのがほとんどありませんで、原稿料一律いくら、あるいは原稿用紙何枚について、1枚についていくらという方式が一般的でありますが、その契約内容を示した上で執筆依頼状あるいは執筆要綱というようなものを送付して引き受けていただく。その後、書面で引き受け状というものをいただくというのが通常であります。
 ただし、原著というのがありますが、投稿論文をつけている専門雑誌につきましては、投稿規定というものを制定いたしまして、それに基づいて投稿していただくというのが一般的であります。
 雑誌におきましても当然ですが、その発行期間内においては独占的な使用権を出版社に与えていただくということになっております。複製についても、取り決めを書面によるか、口頭によるかは別といたしまして、複製にかかる権利も出版社に委託をしていただくというのが一般的であります。当然、先ほどの書籍の場合と同様に、複製にかかる権利を出版社に譲渡するというケースも沢山見受けられます。
 先ほどの学術・専門誌はかなりバックナンバー、書店店頭でも販売される、それから複製の対象になるというケースが結構多い商品ですので、複写にかかる権利については出版社に長期にわたって委任委託をする、あるいは譲渡するというケースが一般的であります。
 次にコミックですが、コミックも出版物の種類としては書籍、単行本の扱いでありますが、ほとんど出版契約というものは締結されておりません。それで出版社によっては、漫画家がほとんどですが、専属契約を結んでいるケースもあります。そうなりますと、年間の契約によって執筆をしていただくということで、個々の出版物については契約を交わさないというケースが多いであろうというふうに思います。
 それから、これはちょっと戻りますが、最初の黒ポツのところで、今年より貸与権を認めていただきましたので、貸与権の取り扱いについて、特にコミックについてはその使用料の支払いについて規定する必要がありますので、最近ではコミックについても出版契約を締結するというケースが出ているであろうというふうに思います。
 それから3つ目の黒ポツですが、コミックはまず雑誌に掲載されることになりますが、そこでは非常に評判がよければ単行本化されるということになります。単行本化する時には、通常は出版契約を締結するということになりますが、最初の段階で雑誌に掲載されるという段階ではあえて契約書は締結しないで、その売れ行きを見た上で単行本化する時に作家の方と改めて契約を交わすということが一般的であります。
 最後の黒ポツですが、そのような場合においては当然キャラクターがほかの場面で利用されるというケースもありますので、その時には出版契約にそこまで最初から記載するということはなかなか難しいわけですが、出てきた時には、その都度作家の方と協議をして取り決めるということになるわけです。
 一般的な話としては、文書における契約というものを締結しているというケースは少ないわけですが、それはここにも三田先生をはじめ著作者の方が沢山いらっしゃいますが、著作者の方に出版社を信頼していただいている。また、出版社も著作者の方を信頼申し上げて、編集者と著作者の間で常識的な線で話し合いが進んで、口頭はもちろんですが、文書によるいついつまでにどういうものを書こうじゃないか、先生、書いていただけますかということを簡単なメモ、あるいは手紙をくれて取りまとめて著者の方に執筆をお願いする。それで実務的にはかなり動いているということになるのであろうというふうに思います。そういった文書のやりとりでも出版契約、出版契約書という形ではありませんが、出版にかかる取り決めをするということについて、契約をするということについては十分であろうかなというふうに思いますが、かなりしかし大きな企画になりますと、当然締め切りの問題、原稿料や印税の支払いについて、支払い条件もありますし、どのような状況において絶版にするとか、そのような細かい取り決めもしなければなりませんので、そのような企画の場合には当然出版契約というものを締結するということになるわけであります。以上、ざっと出版物についてのご説明を申し上げました。

(土肥主査) はい、どうもありがとうございました。ただいま5名の委員の方から説明をいただいたわけでございます。このご説明につきまして、ご質問や今回のテーマであります著作権契約のあり方についてのご意見を頂戴したいというふうに考えております。冒頭、室長のほうから話がありましたように、コンテンツの利用促進と、こういう観点から方向性を検討してほしいと、こういうことでございます。恐らくコンテンツの創作、コンテンツの保護というような側面もあろうかと思いますけれども、利用、流通、そこを川瀬さん、そういう観点からの方向性ですね。そういうことでございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 全体でもよろしゅうございますけれども、まずご質問等ございましたら、全体にわたりまして頂戴できますか。1から5まで5名の方に報告いただきましたけれども、ご質問はございませんでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは全部というふうに申しましても、なかなか出ないようなこともあろうかと思いますので、最初の放送業界の著作契約の状況につきまして、これはコンテンツの利用促進とこういうことでございますので、恐らくご意見等も多々あるのではないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。寺島委員。

(寺島委員) ちょっと私、流通促進ということでいいますと、それは放送局さんも流通することによってメリットがあるのならお売りになるでしょうけれども、いま一番のあれはあまりメリットがないということなのですね。ですから、いつも私、この委員会で何やってらっしゃるのだろうなと正直思っちゃうのですよ。われわれ著作者も流通を邪魔しようと思ってないし、それからもちろんコンテンツを持っている人たちもいい商売ができるのなら、いい商売がってそんなうんと儲けようと思っていないけれども、やってメリットがあるのだったらやろうという姿勢はあると思うのですよ。それを何か文化庁さん、この審議会はどうもわかってらっしゃらないように思いますね。

(土肥主査) 申し訳ないと思っているのですけれども、勉強させていただいて、ご趣旨に沿うようにしたいと思っておりますけれども。ほかにご意見はございませんでしょうか。

(瀬尾委員) よろしいですか。コンテンツの利用促進という面からということで、今、1から4までご説明をいただいて、非常に考えるところがあるのですけれども、今までのいわゆるB2Bの企業間でのコンテンツの流通というのは、実はかなり今でき上がっていて、非常にその契約も浸透してきているし、かなり順調に契約が進んでいるのではないかというふうに思っております。また、その中にある問題点に向けても、かなり改善されてきているというふうに考えます。
 ただ、私が一番考えますのは、実は著作物を作っている方というのは、単なる個人である場合が非常に多いということです。例えば絵を描く人、文章を書く人、それから写真を撮る人、みんな個人なのですね。その個人の持っているコンテンツをどうやって世の中に出していって流通させるかということ、そういうことが一番促進のテーマになるのではないかというふうに考えております。
 そしてB2Bのいわゆる企業間での流れとはまったく別に、個人が適正に契約をして、そして個人の作品をいかに世の中から、もしくは海外にまで発展させていけるのかというテーマが一番重要だろうと。そして、今までは著作権法という括りがありましたけれども、多くの実務の中では、法律よりも契約のほうが優先されてしまう。こういう契約をしたのだからということで、著作権法よりもそちらの契約が優先されてしまうという場合が結構あるというふうに聞いております。
 その場合に企業さんの大きな、いわゆる法務部を持ったような企業さんと、まったく作ることに専念してきた個人が同等の立場で契約を結べるのか。著作者の反応を見ますと、やっぱり怖いから証文を取られるようだから書かない。見てもわからないからハンコが押せないとか、契約というレベルで考えると、個人と企業が適正に公平な状態で契約することはだいぶ難しいというのが今の一番の問題ではないかというふうに思います。ですので、今回は法律上の問題ではなくて、流通ということになりますけれども、いかに個人の持っているコンテンツ、非常に優秀なコンテンツが多いと私は思っております、さまざまな分野で。それをいかに世の中に出して適正に契約をして、流通させるかということが、今回のコンテンツの流通ということの一番のカギになるというふうに思っております。例えばそれの解決策、それは文化庁さんだけではなくて、例えば公正取引委員会さんかもしれない、さまざまな関連の省庁さん、もしくは団体で例えばガイドラインとか、もしくは簡単に個人でも契約、自分の思いどおりの契約書が作れる簡単なソフトを作って利用できるようにするとか、いろいろな手だてはあるかと思うのですが、やはり著作者は概ね個人である場合が多いと、一般の著作物について。その人たちに契約と流通をどうしていくかということに私は絞って考えていくと、今回のテーマは意外と見えてくるのではないかなというふうに思います。以上です。

(土肥主査) ありがとうございました。ほかにご意見、ございませんでしょうか。今、放送ということでお話をしておりますけれども、映像も含めてよろしいかなと思いますので、1、2、両方の分野にまたがって、放送よりコンテンツ、映像、その辺りのところでご意見があれば。はい、関口委員、お願いします。

(関口委員) 意見というよりちょっと教えていただきたいのですけれども、この前の情報通信審議会、総務省のほうで、地上デジタルの普及に向けて、地上デジタルの放送番組を通信でもブロードバンドでも流せるようにしようという方向性が出たと思うのですが、それは総務省サイドでは特に問題なしということになっているのですけれども、著作権のほうについてはその位置づけをどうするかというのがまだよくわからない。その辺がどうなのかというのは、文化庁のほうで決めてほしいみたいな形で玉が投げられていると思うのですが、その辺の契約関係とか、どういう手続きが必要になってくるのか、その辺をお聞きしたいと思うのですが。

(土肥主査) これは事務局でいいのでしょうか。

(川瀬室長) 先般の総務省から発表されました情報通信審議会の中間答申につきましては、基本的には放送事業者としては地上波放送でエリアをすべてカバーするのが原則だと思っております。それから、どうしても受信できない地域につきましては、IRマルチキャスト放送を使う、では、衛星を使うなどのことが考えられているのだと思いますが、著作権法上の取扱は、これからの課題であると思っております。

(土肥主査) 上原委員、お願いいたします。

(上原委員) まったく今、池田委員のほうから出たとおりなのですけれども、総務省の情報通信審議会中間答申の放送の再送信の話の中で、コンテンツとブロードバンドに関するところで総務省のほうでは問題がないのだけれども、著作権法のほうでの解釈が曖昧であるのでという、そんなようなことが実際総務省の審議会の文章の中にも、中間答申書の中にも書いてありましたのですが、私が理解している限りでは、要するにこの審議会あるいはかつて法制審議会に出ていた時の理解からいいますと、少なくとも現在著作権法制上、いわゆるウェブサイト上にコンテンツといいますか、著作物を流す際においては、著作物の送信可能化権、あるいは公衆送信権が働くので、これは放送の権利とは別のものとして当然処理しなければいけない。それはですから、総務省さんのほうが放送の再送信の規定を通信法制の中で考えているものとはまったく別の規定として法律が動いているというふうに考えておるのですが、どうもそこのところがちょっとごっちゃになった話が出ているように思うのですけれども、ちょっと1度そこについては事務局のほうも含めて解釈について整理していただけたらと思うのですが。

(土肥主査) はい、お願いします。

(川瀬室長) 私どもは、総務省の中間答申の中身を拝見しましたが、基本的には著作権法という立場から見ると、法律問題と契約問題が内在をしていると考えております。著作権法の位置づけにつきましては、これは平成9年に公衆送信、自動公衆送信、送信可能化関係の法律改正をいたしまして、そこで利用者の求めに応じてその利用者に送信をするという利用について、経済的な価値を認めて、公衆送信に関する権利を、それから隣接権者である実演家、レコード製作者については、送信可能化権を賦与したわけです。
 ただ、特に平成9年の法律改正の時の実態と、現在のいわゆるITマルチキャスト放送の実態が違うのだというようなご指摘もございますので、その辺は関係の業界の方からお話も聞き、その解釈につきましてはその実態を踏まえた上で改めて検討したいと思います。
 ただ、別の問題の契約の問題がございますけれども、これは法律問題につきましてどういうふうに解釈しようとも、そこで流れるコンテンツにかかる著作権、著作隣接権については権利が働くわけでございますから、これは当然そういった新たな利用形態で地上波デジタル放送を流す場合には、現行の地上波のアナログ放送やBS放送の場合と同じように、関係の権利者の了解がないと駄目だということになりますから、そういうルールづくりは今後行なわれると私どもは考えているわけで、できるだけ円満な形で契約問題が解決することを希望しています。

(土肥主査) ありがとうございます。

(関口委員) 確認なのですけれども、法制度上はとりあえず変更をしなくても、今の枠組みでOKだと。あと、その契約の部分だけを何らかの形に整えていけば可能だと、そういうことでよろしいのですか。

(川瀬室長) 先ほど言いましたように、法制度上の問題につきましては、平成9年に法律を改正した時の状況と現在の状況はもう変化しているというようなご指摘もございますので、総務省の中間答申もございましたので、これから変化しているという実態について、よく勉強してみて考えていきたいというふうに思っております。

(土肥主査) 一方でデジタル放送の開始というデッドラインもありましょうからね。今おっしゃるところの検討というのは、どのくらいのところをお考えなのか。

(川瀬室長) 先ほど言いましたように、契約問題につきましては、これは再送信については関係権利者の権利が働くということは間違いないわけですので、その場合についての関係権利者との契約のルールといいますか。これは例えば地上波アナログ放送や、BS放送の同時再送信については、現にあるわけでして、そういうルールを踏まえながら、送信事業者の方と関係の権利者とは今後協議をされて一定のルールを作られるのだと思っているわけです。私どもの理解は、まだ正式な申し出というものが関係権利者にはないようですので、近々にそういうお話があると思いますが、その内容を踏まえた上で協議が行なわれるものと承知しておりますので、その協議ができるだけ早急に円満に解決されるということがまず重要かと思います。

(土肥主査) はい、どうぞ、石井委員。

(石井委員) 今、川瀬室長さんがおっしゃったことは、そのとおりでありまして、この問題はまだ火がついたところといいますか、問題が顕在化しているところではないかと思います。私どもとしても、これから各権利者団体の方とお話をしながら、その中で何か問題が出てきたら、それは法制度面も含めて、場合によっては解決法を考えていかなければならないというふうに考えております。
 ただ、権利者といいますのは、これは日本国内だけの問題ではなくて外国の権利者ですね、例えば映画会社ですとか、それからスポーツの試合とか、そういうものが入ってまいりますので、そういうものも場合によっては無視できないのではないかなと、そういうふうに考えております。以上、私のいま考えている個人的な意見でございます。

(土肥主査) ありがとうございました。関口委員、よろしゅうございますか。
 ほかに、はい、村上委員、お願いいたします。

(村上委員) 私は希望だけ申し上げておきたいと思います。著作権法というのは非常に難しい法律だと私は認識しておりまして、それで今、流通関係で問題になっているのは、もっぱら映像絡みだと思います。映画とか放送番組、それからコマーシャルとかゲームソフトみたいなものについてが、問題ではないかと思います。
 それで問題になっているのは、1つには、制作段階かもう1つが流通段階があって、制作段階というのは著作権法上の解釈として実際に作ったもの、制作段階で、誰にどういう権利がまず発生しているのかというのを、これはしっかり教えていただきたいということと、もう1つがその権利を、例えばその著作権を管理するとか処理する場合に、譲渡させる形で集約化したり、一元管理するような、そういうことまで許されるのか。そういう意味で著作権が発生したものを、どういうふうに制作段階で管理ができるのか。
 それから、その次が流通で、それをもう1回流通させるとき、一番大きいのは二次使用料について、どういう取り決めができて、どういう処理が許されるのかという、その二次使用の場合のルールみたいなものはきちんとしてもらえれば、誰もこれは著作権法だけの問題ではないのですが、これはこういうことならいいのだ、こういうことは悪いとかというルールがわかれば非常にありがたいのだということです。
 それで最終的には、ある意味では公平なルールというか、こういう条項なら問題ないというのが、よく法律はわからない人でも、一般的にこのくらいの条項でやるならば、世の中的には通っていくのだという、そういう契約約款みたいなものまでできるならば、一番理想的だという気がします。ただ、非常に難しい点はあるかなという気はしております。

(土肥主査) 今のご質問に対しては、コンテンツの領域については特におっしゃりませんでしたけれども、放送とか映像とか、そういったところでのご質問ということでもよろしいのですか。

(村上委員) 権利関係が錯綜しているというか、そういう意味では放送番組とか、コマーシャル、ゲームソフト、それから映画とか、いわゆるいろいろな権利がまとまっているものが一番問題になってくると思います。

(土肥主査) それではすみません。今のご質問に対してお願いできますか。放送及び、児玉委員からコンテンツのほうに関して、どうでしょうか。お2人にお答えいただいたらいいと思うのですけれども。

(児玉委員) 何かとんでもない誤解があるような感じでいまお伺いしていたのですけれども、確かにいわゆるブロードバンド上でコンテンツが流通しないということについて、確かに現状スムーズに流通していないことは確かなのですけれども、われわれ映画製作者の立場で見ますと、決して契約が複雑であるからだとか、何かあるいはシステムがうまく働いていないから流通できないのだという、そういう理由はまったくないのでありまして、もし何か誰かがそういうことを言ったら、それは何かちょっと表現の仕方が違ったことによってそういう話が出てきちゃったのではないか。
 例えば、コンテンツがブロードバンド上で流通しない理由に、「著作権の問題がありまして、使用料が決まっていないのですよ」みたいなことを言った人がいて、それがもとにああいう話になったのではないかと思うのですけれども、このような話がもし契約ということでそれをブロードバンド上で流通しない理由に挙げたとしたら、これはとんでもない間違いだ。
 じゃあ逆に何で流通しないのかということについては、さっきもちょっとしゃべられたけれども、基本的にまだわれわれがブロードバンドでコンテンツを供給することについて、ビジネスとして成り立たないと思っているのが一番の理由であります。だから、むしろそっちのほうを解決しないと、われわれとしてはブロードバンド上にコンテンツを供給することができないのではないかなという、ビジネススキームの問題。
 あるいは、もう1つは、やはり基本的には映像の場合はコピーされてしまうというか、そういう問題があるから出しておくという。

(土肥主査) 先に池田委員。

(池田委員) 先ほどの村上委員からのご質問でございますが、まず権利が誰に発生しているかということでいいますと、むしろ映画製作者であると思いますので、局制作番組につきましては放送事業者が、それから発注番組につきましては制作会社に発生していると思っております。で、それを誰が管理するかということでいいますと、先ほどお手元にお配りした資料の1の5ページ目のところに二次利用というところがございます。その中で許諾窓口を決めましょうというふうに書いてございます。正直申しますと、放送事業者が窓口になっていることが多うございます。これをもとにしまして、実際に二次利用するということです。実際放送番組というのは基本的には流通しております。もちろん地上波の放送もそうですし、衛星もそうですし、CSでもそうですし、それからビデオもございます。それから出版もございます。いろいろなものに実際には流通しておりまして、その担当ごとに窓口の放送事業者や制作会社がそれぞれのライセンス先と契約いたしまして、これはビデオ会社と契約することもありますし、出版社と契約することもございます。放送事業者と契約することもございます。これはもう基本的には日常的にやっておりますので、実際にはそういうふうにして流通しております。
 そこに入っております権利の権利者との間では、基本的には使用料規程がございますので、それに則ってお支払いをするということでございますので、流通はしております。ただ、今もお話ございましたように、放送番組のブロードバンドでの配信についてはまだそんなに流通はしておらないのだと。それはいろいろな理由があると思っております。もちろん、それほど需要がないではないかということもございますが、実際には放送事業者の中でも先般報道されましたように、ブロードバンド配信を積極的にやっていくということを考えている社もございますので、これはビジネスとしてはこれからどんどん広がっていくのだと思います。
 やはり二次利用につきましては、技術の上ではやはり変化がございますので、その部分で出版、ビデオ等にはどんどん出ている。ただ、ブロードバンドは残念ながらこれからのメディアなのだということであろうと思います。

(土肥主査) どうもありがとうございました。よろしいですか。寺島委員が先に、はい、どうぞ。

(寺島委員) 要するに、お客さんが買うか買わないかという問題なのですよね、要するに。放送だけはそこがちょっと、視聴率という問題がありますけれども、わりに気楽なところでしてね。映画だってお客が見に行くか、見に行かないかという問題なのですよ。それを何か著作権のこととか何か言っても私、せんないと思いますけれどね。
 それとブロードバンドになるとか、デジタル化されるという時は、当然私どももそれはどういう形で出ていくのか。契約も違うということがあると思います。私どもはもちろんNHKさん、民放連さんと契約を結んでいますけれども、それは放送の契約だけで、NHKさんなんかはいわゆる地上波の契約、BSの契約というふうにいくつも結んでいるのですよね。そうせざるを得ないのです。私どもはCATVもありますから、実際に契約の数は200くらい持っています。それは権利者団体がおやりになるよりしょうがないのですね、誰もやってくれませんから。だから何か私、皆さんは何を考えてらっしゃるのか、どうもよくわからない。

(土肥主査) はい、どうもありがとうございました。おっしゃることは重々承知しておりますけれども、その上でコンテンツというものが大所高所から考えて、より利用が促進されれば、それは確かにいいことですので。
 テーマとしては、まだあるわけでございまして、後で一括してまた検討させていただきますけれども、せっかく本日ご報告をいただきましたところの音楽出版業界、あるいはレコード業界、こういう分野についてのまたコンテンツの利用促進、こういうことについてご意見いただけませんでしょうか。その後で書籍等、出版業界をいただいた上で、もう1度全体に戻ろうと思っておりますので。いかがでございますか、音楽出版業界、レコード業界、先ほどの説明ではかなり興味深いご説明を頂戴したのではないかなと思っているのですけれども。はい、駒井委員、お願いいたします。

(駒井委員) 特段質問はないみたいですけれども、先ほど瀬尾委員が言われたことに関連して、私どもは実体験を持っておりますので、それをちょっと報告したいと思います。
 委員が言われたのは、著作者が個人で言うところの弱い立場に立っている、こちらは企業として法務部を持ったり、弁護士の先生たちがいたり完璧な形で、それとの交渉事ということが非常に難しいというご意見。それはごもっともな話で、その際、どれだけ著作者個人の意見をどこまで聞けるかというのが問題でありました。
 私どもも文化庁さんがお入りになる以前に著作者の方とお話をして、議論をして、契約書を作った経緯があります。その場合には、本当に徹底的に議論しないと、中途半端なところで妥協して作ってしまうと、結局その後使用することができない契約書になってしまいます。
 したがいまして、お話し合いをするのだったら徹底的に。今回は文化庁さん、特に川瀬室長をはじめとする皆さんに入って頂き、その中でお互い思い切り議論をして、できないことはできない。ですから、我慢することはしていただく。でも、われわれが譲歩するところはしていくということを徹底的に詰めていきました。これが一番のポイントだったと思います。著作者のいわゆる弱いといわれる個人の方が束になっていますから、いろいろと意見を言われる。それをどこまでわれわれは企業体として聞けるか。
 その聞ける範囲というのがあって、ご希望どおりには、いかない部分もいっぱいあります。その辺をどれだけお互い理解をし合って契約書という形に落とし込むか。それはやはり年々変わっていくでしょうし、見直しも必要でしょうし、そういう動きの中でよりよい姿を追い求めていくというのが、先ほどの委員の意見からいうと一番いいかな。実体験として、われわれは2回個人と云いましょうか、著作者の方と話し合いをした結果、こういうのが一番私どもの場合にはよかったと思っておりますので、ちょっとご披露しました。

(土肥主査) ありがとうございました。先ほどからいろいろ委員の方からご意見が出ておりますけれども、要は民民の話で、ビジネスの話である。そういうことでございましょう。創作者の側からすれば、しばしば個人としてコンテンツをお作りになる。そういう場合にどう対抗するかというと、そのコンテンツに力をつける、コンテンツ力をつける。多分、そうすればビジネスの上で言うことを聞かざるを得ないわけでありますから、そういうコンテンツ力をつけるか、あるいは団体となって1つ協力していくか、そういう話になるのではないかなと思うのですけれども。じゃあ瀬尾委員、どうぞ。

(瀬尾委員) たびたび申し訳ございません。今の駒井委員からの話で、そういうふうな形で本当にできていけばいいのですけれども、例えば定評のあるコンテンツを持っている人は強いのです。定評がありますし、プライスがついていますから。個人でも経済的に基盤がしっかりしている、評価がしっかりしている。もしくは、先ほどおっしゃられたような、団体を通じている。そういう力をつけている個人というのは、いま言ったように比較的適正な契約が行われていると思います。
 しかし、いま日本の実際団体の組織率というのは分野によって違うと思うのですけれども、新しく出てくる人がいきなり大きな組織に入るということは、あまり私の経験上少ないような気がします。野にいるといったらおかしいですけれども、組織化されていないわけですね。そういう個人に対して、やはり団体に入れとか、いいものを作れば必ず売れるぞとかいうのではなくて、みんながフェアでなければいけないと思います。
 ただ、具体的に申し上げますと、例えば送信可能化権とか、いろいろな支分権まで丸ごと譲渡するような契約。もっと突っ込んで言ってしまいますと、これを受けなければ仕事にやらないよという、非常に優越的な立場に基づいて契約を強要する。こういうふうな真摯ではない、フェアではない契約というのも実はあることが、それで著作者を育てにくくしている要因の1つではないか。そのような契約の状態が広がることを危惧しております。
 もっと言ってしまうと、やはりコンテンツの流通ということを頭に入れたら、私は膨大な量の個人コンテンツがいろいろな意味で、そういった契約の難しさ、もしくは発表の場、いろいろな意味で出てきてない、大変もったいない話だというふうに思っておりますで、こういうお話をしました。
 ただ、いま駒井委員がおっしゃられたような形にならずに、非常に今の厳しい経済状況の中で安く仕入れたい。そういうことによって、これは私から見ますと、かなり悪質と思われるような形で契約が結ばれる。例えば簡単に、時間がないので具体的に申しますと、例えば写真家が契約をする。そうすると現場に行って、フィルムを渡される。費用もアゴも足も持ちます。終わると、もうそのフィルムごと持っていってしまう。本人は何が写っているのかさえわからない。もしくはデータでそのまま持っていかれてしまう。本人には何もなく、日当としてわずかな金額を払う。後で聞くと、著作権から何からそんなものは全部取るのだ、それはうちの会社にあるのだ、いやだったら仕事をやらない。そういうふうな形の、私からすれば、非常に悪質な契約によって若いクリエーターたちが育たない環境が作られているから、大変これは流通の時代に由々しい問題だというふうに考えておりますので、そういうこともあるということを、皆さんの念頭の中に少し置いておいていただきたいなと思ってあえて申し上げますということです。

(土肥主査) これについてはちょっと難しい話になりますので。私、駒井委員にちょっとお尋ねをしたいのですけれども、私の純粋に個人的な質問なのですが、ご報告いただいたいわゆる譲渡契約ですね。これはいわゆるおっしゃるように地域とか期間を限ってなさる場合もあるというようなことで、いわゆる利用許諾ということでは一切お考えにならないという。こういう譲渡の形を、実質的には利用許諾であってもということになるわけでしょうね。

(駒井委員) はい、その辺もいろいろと議論をした部分であります。われわれとしては、いったん権利を全部譲渡していただいて、あらゆる責任を持っていわゆるプロモーションから、不法使用、そういったものに対処します。そのためにはすべての権利を譲渡していただきたいというような話し合いをして、それはご理解をいただいた。したがいまして、利用許諾ということではありません、まったく違います。

(土肥主査) 管理をされる上でも、著作者の方といろいろ協議をされてという、そういう運用になるわけでしょう。

(駒井委員) そうです。

(土肥主査) わかりました。ありがとうございました。音楽、レコード等について、何かご質問、ご意見、ございませんか。はい、森田委員、お願いします。

(森田委員) 質問なのですけれども、10条の著作権上の対価というのは、対価の支払い方式というのは一括方式なのですか。印税方式なのか、その対価の支払い方式について、お伺いしたいと思います。

(土肥主査) お願いいたします。

(駒井委員) これは印税方式でございます。それで著作権使用料そのものは、それぞれの管理団体の規定で決まっておりますけれども、それをどうやって分けるかということで、通常の場合、作詞家3分の1、作曲家3分の1、音楽出版社3分の1というケースですとか、作詞家25パーセント、作曲家25パーセント、音楽出版社50パーセント、そういうような組み合わせが複合的に行なわれます。いずれにしても、すべてこれは印税契約であります。

(土肥主査) 森田委員、よろしゅうございますか。ほかに、じゃあ松田委員、お願いします。

(松田委員) 私も印税契約だと見たことあり、承知しているのですけれども、そうすると作家の先生方は3分の1を出版社にとられてしまうメリットというのはいったい何なのかというふうに考えるのですね。
 というのは、例えばJASRAC(ジャスラック)との関係だけ考えると、JASRAC(ジャスラック)から100パーセント取得すればいいわけですけれども、この契約を結ぶと、入ってくるたびに計算書ができて、それで3分の1取られて3分の1取得することとなるわけですね。だとすれば、やはりプロモーションしてくれるから取られてもしょうがないのだ、そのほうが結果的には作家としては、男鹿かとしてはメリットがあるのだ、そういうことのメリットですね。多分、そういうことが??動機としてあろうかと思いますが、そうなった時、実は複数のアーティストというか、作家の先生方と契約を結ぶと、プロモーションが平等に行なわれるか、ないしは自分のところで一番効率的にやってくれるのか、こういう心配が起こったりしないでしょうか。

(駒井委員) その心配そのものは、作家の先生方を含めて、それはあると思います、事実。プロモーションと一概にいいましても、すべて結果でございますので、どんなにプロモーションをやってもそれが結果に結びつかないことがございます。結果に結びつけば、多少のプロモーションでも大成功、もう数千万、億単位かけても結果が結びつかない場合は失敗というのが原点でありますので、ですからプロモーションというのはどうやったら、どうすれば納得するかというのは非常に難しい部分ではあります。
 ただし、音楽出版社としては発注をしたり、または作家の先生がこういう楽曲があるのだけれどと持ち込まれて、これをどういうアーティストに、どうやって歌わせて、どういうふうにするかということをすべて考えたり、もちろんあのアーティストに、こういう形態の歌を歌わせたいのだけれども作ってくださいというケースもあります。ケースによっていろいろ違います。ただ、結果、それが成功しなかった場合に、多少なりともそういったプロモーションの不満というのが残っているのかもしれません。ただ、いろいろと積み重ねてやっていって、この音楽を売る難しさというのを作家の先生もご存じですから、それはお互いの信頼関係の中できちっとやってもらっている、やってくれているという判断はされていると思います。ですから数学的とか、例えばここでそういう心配はないのですかと問われると、それはあるかもしれませんと答えざるを得ませんけれども、実態の中ではそういうことはないし、その時はもっといろいろ議論したり、お願いしますといわれたり、いろいろなケースでもって乗り切っていくというのが現状でございます。これでよろしゅうございますか。

(土肥主査) どうもありがとうございました。もう1つ、書籍の分野もあるのですけれども、書籍の分野について何かご質問、ご意見等ございませんでしょうか。よろしいですか。はい、池田委員、お願いいたします。

(池田委員) 書籍のほうで質問なのですが、コミックにおける契約の、コミックに限らないと思うのですが、貸与権の部分で、委任を出版社さんが受けるということがございますけれども、その場合、これは管理事業法の対象となるのでしょうか。つまり、出版社さんが管理事業者として登録をするということにつながるのでしょうかということを、ちょっと教えていただきたいのですが。

(金原委員) 貸与にかかるところの権利につきましては、出版界として貸与権管理センターを設立しております。したがいまして、作家の方が権利を権利の委託を出版社に委託し、それを出版社は貸与権センターに再委託という形をとっております。したがいまして、貸与権管理センターが管理事業者として機能するという形になります。

(土肥主査) よろしいですか。ほかに、なければ全体を通じてご意見いただいていいと思うのですけれども、それでは村上委員、全体を通じてどうぞ。

(村上委員) 先ほど私の意見に反論をいただいたので、将来のコンテンツ流通ということだけでなくて、今の著作権処理の問題でも結構大変だという話は聞いていますので、それはなるべくきれいな形にできるならばしたほうがいいのではないかと思っているわけで、先ほど瀬尾委員からも言われたように、契約が基本的には中心になって、そこできちんと契約すれば、それでおしまいという問題だと思います。ただ、優越的な地位の濫用の問題があると聞きます。それから何よりも、大量の著作権者、利害関係者がいるので、そこの処理というのは結構大変だというふうに聞きます。
 それと例えばテレビ番組の話で、私もきちっと最初の著作権の帰属がはっきりしている事例はいいのですけれども、最近は著作権自体がいろいろな分野で共有関係になっているところが多くなっていると聞いています。そういう場合にはかなりその間の調整というのも難しくなるという感じがしますので、そういう意味である意味で契約ですが、その時にだいたいこういうルールではいいのだということが、明らかになるなら非常に実務として望ましいのではないかという、そういうことです。

(土肥主査) はい、ありがとうございます。

(寺島委員) 映画のことを言ってらっしゃるのですか。

(土肥主査) いや、それは特に分野を限ってというわけではないのですけれども、何か、寺島委員。

(寺島委員) いや、映画は確かにどうも流通のところがわからないというのは、映画というのはもう今やほとんど東映さんみたいに会社で、会社だって劇場用映画というよりは、本来はビデオですけれどね。そういう会社はありますけれども、東宝だってもう映画製作をしないのですよね。流通のことだけやっているのですよ。それから松竹さんは一定の、『釣りバカ』とか、何か決まったものを年に2本くらい作るのですよ。そういうやり方なのですね。恐らく松竹さんの映画の部分がそれくらいです。ただし、松竹さんは歌舞伎座も持ってらっしゃいますし、いわゆる生の上演や何かやってますから、また東宝さんとは違うのです。ですから、何かそういうふうに業界がなってきている中で、要するに私は脚本家連盟ですから、脚本家の権利を守ることに精一杯やろうと思うだけで、それは個人の人って、個人の人、うちなんか正直いって個人の人に、私、気がつくとすぐ事務局に調べさせて入りなさいと。そうしないと複写のお金とか私的録音録画のお金とかが入りませんよという文書を出すのですよ。入ってくる人は、もちろんそんな文書を出さなくたって入ってくる人いっぱいいますけれども、それでも、出しても入らない人はいるのだから、そんなものご自由ですよ。それはわずかです。ごくわずかです。恐らく脚本家はうちとシナリオさんとで、シナリオさんはいくらか映画の脚本家の権利を預かってらっしゃいますから、90パーセントは完全にいっていると思います。あと九十数パーセントの人がいくらお入りなさいと、入らないとこういう権利が守れませんよといったって入らないのですから、それはどうもしょうがないのですね。

(土肥主査) そこはそうでということで。はい、じゃあ児玉委員、お願いします。

(児玉委員) どうしようかな(笑)。先ほどちょっと本音を言いましたけれども、世の中確かに映画の著作物については権利関係が複雑であり、あるいは著作権そのものが非常にわかりにくいから、そういうことでインターネット等、ブロードバンドに積極的にアップロードされていないというふうに理解されているのはそのとおりだと思います。
 ただ、いまわれわれはこの映画ビジネスの当事者ですから、中にいていろいろよくわかることは、いま一般的にさっきの総務省さんだとか、あるいはインフラの事業者さんとか、あるいはコンピュータ関係のハードウェアのメーカーさんだとかがおっしゃっている、映画の著作物についてはやはり範囲が非常に広いものでありまして、われわれが管理あるいは製作しているのはいわゆる劇場映画、ないしあるいはビデオ用に作られたいわゆる映画という範疇の、あるいはアニメも最近ありますけれども、映像著作物ですけれども、こういうものと、それからいま現状インターネットに流れている映画の著作物とは根本的に、同じ映画の著作物でも商品として見た時には違うものだと思います。
 例えば、いま現状でインターネットで流れているのはショートフィルムですとか、あるいはプロモーション用の映画の紹介の映像であるとか、あるいは何か例えばコンピュータ、CGを駆使していろいろ個人が作成したいわゆる、われわれ劇場用映画の世界では、劇場用の映画の中の一素材にすぎないような部分のものが、これが現在インターネットで流通しているものだと思います。
 そういう方々からすれば、もっと著作権について簡単にわかりやすいように、あるいは許諾の得られるシステムがもっと充実して、誰でもいつでもワンクリックすれば著作物が使えるようにしてください、そのために法改正も必要だろうというご意見が出てくるのだろうと思うのですけれども、われわれ映画という、劇場で公開してそれをインターネットで流そうということについては、一編全編を丸々頭から最後まで鑑賞していただく、あるいは見て涙を流していただいたり、あるいは興奮して大笑いをしたりしてもらうための、そういう商品であるわけでありまして、これを例えば切り売りしたり、部分利用して、それを何か自分のホームページに張りつけているようなものだとか、そういうことは一切考えていない商品でございますので、そういう点においては現在のそういう商品から見た場合には、現在のインターネットそのものが、あるいはブロードバンドそのものがわれわれのビジネスの領域の中に入ってこないメディアだというふうに、いま現在でも理解しているわけです。
 そういったところが、結果的に映画がインターネットで流通しないということになっておりまして、それを何か誰かが間違ってある人、さっき言いましたように、著作権の問題があるからだとか、あるいは使用料が決まっていないからだとか、いろいろなことをおっしゃった方がいるかもしれないけれども、それは大きな間違いだということです。あくまでもさっき言いましたように、われわれとしてもインターネットに対して、あるいはブロードバンドが、あるいは何らかのいわゆる公衆送信が、送信可能化権が商品になるというシチュエーションになった場合は、むしろ積極的にこれをビジネスにしていくわけですから、その場合には許諾のシステムですとか、あるいは何らかの権利関係を処理する仲介の事業者みたいなものが当然現れてきて、その人たちがどんどんどんどん積極的にむしろ商品として、これを買ってくださいというふうになるようになるだろうと、私自身は確信しているのです。いま現在、その状況になっていないから、さっきの総務省みたいなものが出てくるのだ。
 そのためには、今度契約・流通小委員会の委員としての発言ですけれども、現在の著作権法あるいは現在の契約のシステムについて、今この時点で何も変える必要は何もないのではないかというふうに思っております。

(土肥主査) はい。ありがとうございました。石井さん。

(石井委員) 概ね児玉委員と重複するところがございますが、せっかく村上委員からいろいろご指摘いただきましたので、私の個人的に考えるところを申しますと、放送番組というのは、特にこの1〜2年ですけれども、思ったよりはあちらこちらで流通しているなというのが私の感じでございます。
 ネックは何かといいますと、1つは、意外にビデオになるコンテンツがないとか、放送とネットではやはり見られるものが違うというところで、もう1つ需要に結びつかないところがあるということ。それから契約の問題というよりは、やはり事業者の方、例えば著作物を管理している方、あるいは実演を管理している方、そういうところの事業とのバッティングといいますか、端的に申しますと、ブロードバンドには絶対進出したくないとか、ほかのところでやっていくのだとか、そういう方がいらっしゃる、それとも重なるのですけれども、経済的な問題、ブロードバンドに提供して1カ月たったこれだけではとても了承できない。そういう問題がどちらかというと多いのではないかなと思います。
 あとはそれと団体に入っていらっしゃらない方の問題、これはなかなか追いかけるのは大変でございますが、そういうところが今のいくつかの問題の中の結びつくところではないかなというふうに考えておりますので、今後こういうところが解決されていけば、より一層流通ということは考えられるのではないかと思います。

(土肥主査) どうもありがとうございました。多数の委員の方から貴重なご意見を頂戴いたしまして、ほぼだいたい予定した時間がまいっております。したがいまして、本日の検討はここまでということにしたいと存じます。
 次回も、またこうした場を持ちたいと思いますけれども、次回は舞台やコンサートなど生の実演に係る契約等の状況につきまして説明を頂戴し、最後に著作権契約のあり方について引き続き検討を行なってまいりたいというふうに考えております。
 それでは文化審議会著作権分科会の第5回契約・流通小委員会を終わらせていただきますが、最後に事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。

(木村室長補佐) 次回でございますが、10月の開催を予定しております。日程等につきましては調整中でございますので、決まり次第ご案内させていただきます。
 本日、昼食の用意がございますので、お時間のある委員におかれましてはそのままお待ちください。本日はどうもありがとうございました。

〔了〕

(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)


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