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著作権分科会 契約・流通小委員会(第4回)議事録

1.日時: 平成17年7月25日(月曜日)10時30分〜13時

2.場所: 経済産業省別館10階1020会議室


3. 出席者:
 
(委員) 野村分科会長、荒川、池田、石井、上原、金原、児玉、駒井、佐々木、椎名、菅原、瀬尾、関口、寺島、土肥、生野、松田、三田、村上、森田、山本の各委員
(文化庁) 辰野文化庁長官官房審議官、甲野文化庁著作権課長、池原国際課長、川瀬著作物流通推進室長、千代国際課国際著作権専門官、木村著作物流通推進室長補佐ほか関係者

4 議事次第
 1. 開会
 2. 議事
(1) 裁定制度について
(2) その他
 3. 閉会

5 資料
  資料   裁定制度に関する検討報告(案)
  添付資料1   我が国の裁定制度の概要
  添付資料2−1   著作権者不明の場合の裁定申請の手続き見直し等について
  添付資料2−2   著作権者等が不明等な場合における著作物の利用(著作権法第67条)(PDF:25KB)

議事内容
  (土肥主査) おはようございます。定刻になりましたので,ただいまから文化審議会著作権分科会「契約・流通小委員会」の第4回を開催いたします。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開について決定したいと存じます。すでに傍聴の方には入場をしていただいているところでございますけれども,予定されている議事内容を見ますと,非公開とするには及ばないと思われますので,公開としてよろしいでしょうか。

  〔異議なしの声あり〕

   ありがとうございます。それでは,本日の議事は公開といたします。
 早速議事に移ります。初めに,事務局の人事異動について報告をお願いいたします。

(川瀬室長) それでは事務局の人事異動について,ご報告をさせていただきます。7月20日付で甲野正道著作権課長が就任しております。

(甲野課長) 吉川課長の後任として7月20日付でまいりました甲野でございます。どうかよろしくお願いします。

(川瀬室長) 前の著作権課長でありました吉川は,文部科学省科学技術・学術政策局政策課長に転出しております。以上でございます。

(土肥主査) はい,ありがとうございました。次に事務局より,配付資料の確認をお願いいたします。

(木村補佐) それでは本日の配付資料を確認させていただきます。本日の配付資料でございますが,「裁定制度に関する検討報告(案)」という資料,これ一式でございますが,お手元にございますでしょうか。ありがとうございます。

(土肥主査) はい,よろしゅうございますね。本日の議題は「裁定制度について」の検討の第2回目です。前回検討いただきました内容を踏まえて作成した報告案を,事務局より各委員に事前にメールで送付いたしております。本日は,この報告案について議論をしてまいりたいと思います。
 それでは,事務局から資料の説明をお願いいたします。

(木村補佐) それでは本日の配付資料,「裁定制度に関する検討報告(案)」ご覧ください。この資料につきましては,先ほど座長よりもご案内がありましたが,事前に各委員にお送りしたものでございます。お送りした資料につきましては,目次のページでいいますと,「はじめに」から「検討結果」の部分でございます。本日の資料には,それにさらに添付資料の1と2を加えさせてもらっております。
 この報告案のまず全体的な構成について説明いたします。目次のページをご覧ください。
 1の「はじめに」ですが,今回この検討をするに至った経緯等を,この項の中で説明させてもらっております。そして2の「現行制度」,3の「国際条約との関係」につきましては,前回の会議で配付資料等で説明しました内容につきまして記述させてもらっております。4の「検討結果」についてですが,前回の会議でご意見いただきましたことにつきまして,この章の中でまとめさせてもらっております。
 それでは各々の項目につきまして,概要を説明させていただきます。1枚めくっていただきまして,最初に「はじめに」のところでございます。
 今回,この著作権分科会契約・流通小委員会で裁定制度に関する検討,それに至った経緯等をここでまとめさせてもらっておりますが,これは文化審議会著作権分科会のほうでとりまとめました「著作権法に関する今後の検討課題」におきまして,この「裁定制度のあり方」については,法制問題小委員会における検討に先立って,契約・流通小委員会において,検討することが適当であるということを受けまして,今回検討してもらっております。
 この検討するに当たってですが,わが国の裁定制度といったものでございますけれども,これは国際著作権関係条約の強制許諾に位置づけられるものであることから,主にわが国の著作権法上の強制許諾制度に限定して検討したということで,前提を加えさせていただきました。
 次に,現行制度のことにつきまして説明させていただきます。3ページ以降になります。
 現行制度につきましては,全部で4つございますけれども,著作権者不明等の場合の裁定,67条に関するもの,著作物を放送する場合の裁定制度,第68条に関するもの,そして商業用レコードの録音等に関する裁定制度,第69条,そして翻訳権の7年強制許諾についてです。その各々について説明させていただきます。
 まず,3ページの最初の(1)になりますが,著作権者不明等の場合の裁定,第67条についてです。まず制度の内容ですけれども,これは著作権者不明等の理由により,相当な努力を払っても,著作権者に連絡できない時に,文化庁長官の裁定により,補償金を供託し,著作物の適法な利用を可能とする制度ということでございます。
 この制度の補償金につきましては,文化庁長官が定める額であり,額の決定については文化審議会に諮問いたしますということが,第71条のほうに規定されております。
 また,この裁定を受けて作成した著作物の複製物には,裁定に基づく著作物である旨及び裁定のあった年月日を表示しなければならないということが,同条の第2項の中に規定されております。
 次にこの制度の沿革でございますが,この制度といいますのは,公衆の需要があるにも関わらず,著作物の適法な利用手段がないことは,社会公益の見地において適切でないことにより設けられたものでございまして,明治32年の旧著作権法制定時ですが,この時には著作権者不明の未発行または未興行の著作物を一定の手続を経て,発行または興行することができる旨の規定を設けていたものでございます。
 その後,昭和9年の改正の時に,著作権者の居所不明その他の理由により,著作権者と協議することができない時に,主務大臣に補償金を供託して,こういったものを使うことを可能としたというふうになっております。
 そして昭和45年の現行法の制定の時ですが,この裁定制度の対象となる著作物の範囲を見直ししております。従前,公表,未公表の著作物すべてを対象としていたのですが,現行法では公表された著作物のみを対象としております。こういった沿革がございます。
 そして,この制度の運用実績でございますが,3のところでございます。現行法の制定以来,現在まで30件ほどの運用実績がございます。その最も多い利用方法ですが,これが出版で20件ほどございます。また,最近ですけれども,国立国会図書館が明治期から昭和初期にかけて所蔵資料のデータベース化,こういうことを積極的に行っておりまして,多数の著作物の多数の作品のCD-R,DVDの作成とか,ネット配信にかかる申請,こういったものが近年は増えておりまして,国立国会図書館関係だけで5件ほどございます。また,これらに関係します補償金でございますが,利用する著作物が1つの場合は,概ね数千円から数万円程度でございますが,著作物が多数である場合には合わせて数十万円から数百万円くらいになることがあるということで,この制度の運用実績についても記させていただきました。
 続いて次のページ,4ページ目になりますが,(2)著作物を放送する場合の裁定制度,第68条です。
 まず,この制度の内容でございますが,公表された著作物について,放送事業者が著作権者に協議を求めたが,その協議が成立せず,またはその協議をすることができない時,こういった時は文化庁長官の裁定により,補償金を支払って著作物の適法な放送を可能とする制度といったことでございます。
 この制度に関係しましては,著作権者がその著作物の放送の許諾を与えないということについてやむを得ない事情がある時は,裁定をしてはならないといった規定もありまして,これは第70条第4項第2号のほうに規定されております。
 また,裁定に基づき放送される著作物については,有線放送,受信装置を用いた公の伝達,これらが可能になります。ただ,この場合には,それに相当する額の補償金を支払わなければならないといったところが,第68条第2項のほうに規定されております。
 補償金の額の算定については,著作権者不明等の場合の裁定の場合と同じです。
 次にこの制度の沿革ですけれども,この制度は昭和6年の旧著作権法の改正の時に設けられたものでして,放送の公共性を考慮し,著作権者の許諾拒否に正当な理由がない場合に,放送事業者の著作物の放送利用を認めるために設けられたものです。立法当時の背景といたしまして,1つは放送事業者は日本放送協会のみで,その公共性が強調されていたこと,2つ目,昭和6年改正の前提となったベルヌ条約ローマ会議で決定された規定に同種の制度が織り込まれていたことがございまして,こういった制度を設けております。
 昭和45年の現行法制定時でございますが,この制度の維持について議論がなされたわけなのですが,放送の公共性を考慮し,著作権者の権利濫用に対処するための制度として維持されることになっております。
 この制度の運用実績ですが,これまで運用実績はございません。
 続いて(3)の商業用レコードの録音等に関する裁定制度,第69条でございます。
 この制度につきましては,商業用レコードが国内において発売され,かつその発売日から3年が経過した場合において,そこに録音された音楽の著作物を録音して,他の商業用レコードを作成することについて,その著作権者に協議を求めたが,その協議が成立せず,またはその協議ができない時は,文化庁長官の裁定により,補償金を支払い,録音または譲渡による公衆への提供を可能とする制度でございます。
 この制度の場合の補償金の額の算定等につきましては,著作権者不明等の裁定の場合と同様でございます。
 この制度の沿革でございますけれども,5ページのほうになりますが,この制度は昭和45年に新たに設けられた制度でございます。これは特定のレコード会社が音楽の著作物の独占的録音権を取得すること,作家専属制というふうに括弧になっておりますが,1つはレコード業界において特定のレコード会社が独占的な地位を形成することを防止すること。さらに独占から派生する著作物の死蔵化や大幅の利用の制限を防止すること。また,このような制度が欧米諸国において採用されていること,こういったことに鑑み,導入されたものでございます。
 制度の運用実績でございますが,現行法の制定から現在に至るまで運用実績はございません。
 なお,この運用に関係しましてですが,日本音楽著作権協会様のお調べによりますと,第69条の適用をける商業用レコードに録音される音楽の著作物といったものが,現行法制定からこれまで約7400曲ほどあったところですが,これらの曲につきましては,同協会の信託契約約款によれば,3年経過ごとに管理楽曲として通常の許諾が行われることになりますので,現時点でその対象曲は約70曲まで減っております。
 しかし,この著作権法附則第11条なのですけれども,現行法が制定された昭和45年以前に国内で発売された商業用レコードに録音された音楽の著作物には,この制度の適用がございません。そのため,この旧著作権法時代の楽曲のうち,約14万曲といったものが現在も専属扱いになっております。こういった実情もご紹介させていただきました。
 (4)ですが,翻訳権の7年強制許諾,万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律第5条に基づくものです。
 この制度の内容でございますが,わが国が万国著作権条約に基づき,保護義務を負っている著作物の利用にのみ適用がある制度でございまして,文書が最初に発行された翌年から7年の間に,権利者の許諾を得て,日本語による翻訳物が発行されていない場合で,翻訳権を有する者に対し,翻訳し,翻訳物を発行することの許諾を求めたが拒否された時,または相当な努力を払ったが,翻訳権を有する者と連絡することができなかった時,こういった場合には文化庁長官から許可を受けて,公正なかつ国際慣行に合致した額の補償金を払うことを条件に,日本語による翻訳し発行できることになっております。
 なお,補償金額の算定につきましては,著作権者不明等の利用の裁定の場合と同じでございます。
 また,上記2ということで,相当な努力を支払ったけれども,翻訳権者,翻訳権を有する者と連絡することができなかったような場合ですが,原著作者の発行者の氏名が掲げられている時は,その発行者に対し,翻訳権を有する者の国籍が判明している時はその翻訳権を有する者が国籍を有する国の外交代表または領事代表,またはその国の政府が指定する機関に対して,この著作権利用の申請書の写しを送付し,かつ,これを送付した旨を文化庁長官に届け出なければならないということも規定されております。
 この制度の沿革でございますが,万国著作権条約第5条,これは1952年成立しまして,わが国は1956年締結をしておりますが,その第5条に基づき,翻訳権の保護の原則の例外的な措置として定められております。
 これまでの運用実績でございますが,現在に至るまで運用実績は1件でございまして,これは米国の論文の発行にかかるものでございまして,わが国と米国がまだ万国著作権条約による保護関係にあった昭和47年に裁定が行われたものです。
 次に国際著作権関係条約との関係につきまして説明させていただきます。
 これは全部で5つ,1つはベルヌ条約,もう1つが実演家・レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約,実演家等保護条約,またはローマ条約といっております。次に著作権に関する世界知的所有権機関条約にかかるもの,さらに実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約にかかるもの,そして最後に知的所有権の貿易関連の側面に関する協定,TRIPS協定でございますが,これにかかるものを説明させてもらっております。
 それでは,まず(1)のベルヌ条約についてですが,この中ではまず複製権の制限,そして放送権の制限,録音権の制限,こういったものが条約上規定されております。
 複製権の制限につきましては,スリー・ステップ・テスト,いわゆる特別の場合について著作物の通常の利用を妨げず,その著作権者の正当な利益を不当に害しないこと,このような3要件を満たす時には,国内法令において制限・例外規定を定めることを認めております。これは同条約の第9条第2項のほうに規定されております。
 次に放送権の制限でございますが,著作者の人格権及び協議不調の時に権限のある機関が定める公正な補償金を受ける著作者の権利を害さないことを条件に,国内法令において制限・例外規定を定めることを認めております。これは同条約の第11条の2(2)でございます。
 そして録音権の制限ですが,これは音楽及び歌詞の著作者と使用者との間に協議が成立しない時,権限ある機関が定める公正な補償金を受ける著作者の権利を害しないことを条件に,国内法令によって,制限・例外規定を定めることを認めております。同条約の第13条でございます。
 また,条約に規定はされておらないのですが,その他といたしまして,1967年のストックホルム会合での合意でございますが,伝達系の権利,その中には公の上演・演奏権,放送権,公の朗読権,音楽の録音権,映画化権等,こういったものが含まれますが,これらについても「小留保」に基づき,国内法令において,制限・例外規定を定めることというものが認められております。
 次に実演家等保護条約についてです。この条約の中では,4つの行為について例外を定めることを認めておりまして,私的使用,時事の事件の報道に伴う部分的使用,放送機関が自己の手段により自己の放送のために行う一時的固定,教育目的または学術的研究目的のためのみの,こういった4つの行為だけなのですが,これらの行為について,国内法令により,条約が保障する保護の例外を定めることを認めております。これは同条約の第15条約1項に規定されております。
 次に7ページのほうにちょっと入ってまいりますが,実演家等の保護の例外についてですけれども,著作権の保護に関して国内法令に定める制限と同一の種類の制限について,国内法令により定めることを認めておりますが,強制許諾については,「この条約に抵触しない限りにのみ定めることができる」と規定されておりまして,条約に根拠のあるごく限られた場合だけに限定されることになっております。これは第15条の第2項のほうに規定されております。
 次にWCT,著作権に関する世界知的所有権機関条約についてですが,複製権及びその他の権利について,ベルヌ条約と同様,スリー・ステップ・テストの3要件を満たす時,国内法令において制限・例外規定を定めることを認めております。これが第10条のほうに規定されております。
 次にWPPT,実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約,これでございまして,まずは個々の例外でございますが,著作権の保護に関して国内法令で認める制限と同一の制限を定めることを認めております。これは第16条のほうに規定されております。
 次に実演家等保護条約との関係でございますが,このWPPTに加盟していても,実演家等保護条約の加盟国は,その実演家等保護条約の義務を免除されないこととなっております。これはWPPTの第1条の(1)のほうに規定されております。
 そして最後にTRIPS協定についてですが,著作権についてはスリー・ステップ・テストの3要件を満たす時は制限・例外規定を定めることを認めております。第13条のほうで規定されております。
 そして,著作隣接権についてですけれども,実演家等保護条約が認める範囲内でのみ,制限・例外規定を定めることを認めております。それが第14条の6項のほうに規定されております。
 以上が裁定制度,そして国際条約との関係等につきまして説明しているところでございます。
 まためくっていただきまして,検討結果につきまして項目を4つに分けて説明させてもらっております。これにつきましては前回の会議でいろいろご意見をいただいたことにつきまして,各項目に応じまして整理させていただいたものでございます。
 まず(1)著作権者不明等の場合の裁定制度,第67条に関係するものです。
  1としまして,制度の評価でございますが,この裁定制度につきましては,貴重な著作物を死蔵化せず,世の中に提供し活用させるために有効なものであり,制度は存続すべきであるということでございます。なお,制度の存続に異論はないものの,制度を有効に活用するためには制度面や手続面での改善を行う必要があるとの意見がありました。
 まず,この制度面の問題につきまして,2でまとめさせていただきました。この中では特定機関による裁定の実施,そして著作権の制限規定での対応,こういった意見があったかと思います。
 特定機関による裁定の実施でございますが,裁定制度を簡便化するため,氏名表示がない写真とか,著作物の複写などのように頻繁な利用ではあるが,小規模な利用分野においては,特定の機関に裁定の権限を委ねるような仕組みを求める意見がございました。
 ただ,これらにつきましては,現行制度上,著作権に関する登録業務を民間の指定登録機関に実施させるという仕組みはあるものの,裁定のように他人の私権を制限し,他人に代わって利用者の許諾を与えるような業務について民間の指定機関に運用を任せるというような制度設計は難しいところであり,慎重に検討すべき課題だと考えるというふうに整理させていただきました。
 次に著作権の制限規定での対応です。いったん許諾を受けて利用したものの限定的な再利用,例えばデータベース化とか,こういった場合の特別な場合については,裁定制度ではなく,著作権の制限規定で対応すべきであるという意見がございました。
 これについて,まず現行の著作権制度においても,例えば私的使用,教育目的の利用,図書館等における利用,障害者の福祉の増進のための利用など,著作権の制限規定に該当する場合には,当然著作権者の許諾なしに利用できるというものがございます。
 しかしながら,例えば著作物の再利用に限定するとはいっても,商業目的の利用も認める著作権の制限規定を新たに創設するといったことについては,国際著作権関係条約や制限規定の趣旨に照らして問題が多いと思われますので,慎重な検討を行う必要があるというふうに整理いたしました。
  3としまして手続面での問題です。手続面の問題に関係しましては,この裁定制度につきまして見直しといったものがこれまで求められておりまして,これにつきまして文化庁のほうで見直しを行い,不明な著作権者を捜すための調査方法を整理した上で,従来新聞広告等を要求していた一般や関係者の協力要請につきまして,インターネットのホームページへの広告掲載でも可とするというような見直しをしております。
 また,併せて著作権情報センターでは,不明な著作権者を捜す窓口ホームページを開設しております。これらの裁定の手続等につきましては,「著作物利用の裁定申請の手引き」というものを作りまして,文化庁のホームページでも公開しております。
 これらの見直し等によりまして,調査方法が明確になり,また従来に比べて調査にかかる事務的または経済的負担も軽減されたものというふうに考えております。
 なお,手続の問題に関係しましてですが,個人情報保護法に関連しまして,不明な著作権者を捜す作業の困難さ,こういったものを懸念する意見もあったかと思います。なお,このことを理由といたしまして,著作物を利用しようとする者が通常行うであろう調査方法に足りない方法でもよいというふうにすることはできないものでありまして,例えばインターネット上の尋ね人欄に掲載しただけで調査を尽くしたとするようなことは難しいというふうに考えます。
 ただし,先ほどの著作権情報センターの事例のように,著作権者を捜すための手段を提供してくれる仕組みの創設,専門家や問い合わせ先の団体を紹介してくれる窓口,こういったものの充実,また調査を代行してくれる団体等の設置など,こういったものによって利用者の事務的負担の軽減が図られるのではないかというような意見もあったかと思いまして,このようなものを整理させてもらっております。
  4としてその他でございますが,この著作物を裁定で利用した旨の表示に関係してです。第67条第2項では,裁定を受け作成した著作物の複製物に,裁定で作成した複製物である旨等の表示を義務づけておりますが,最近では著作物のデータベース化にかかる裁定の申請が増えておりまして,送信された著作物が裁定で利用された旨を周知させるために,当該著作物の画面表示であるとか,プリンターで印刷した際にその旨の表示がされるよう,文化庁は制度の運用を考慮する必要があるということを整理させてもらっております。
 次に2つ目の裁定制度にかかる検討の部分でございますが,著作物を放送する場合の裁定制度,第68条にかかるものです。
 まず,この制度の評価でございますが,この第68条は旧法の時代,昭和6年に創設されて,現行法を制定した際には,その制度を維持しましょうということで今日まで至っておるわけでございまして,これまで制定以来,裁定の実績といったものについてはありません。これは著作物の利用について,多くの利用につきましては,著作権者や著作権等管理事業者との契約で対応できていること,また現行法の引用,政治上の演説等の利用,時事の事件の報道のための利用など,著作権の制限規定の適用により利用している場合も多いことなどから,これまで裁定制度を利用してまでも放送しなければならないといったような場合がほとんどなかったということが原因で実績がないということになっておるだろうということを整理させてもらっております。
 なお,この制度が利用されていないことを理由に廃止を考慮すべきであるとの考え方もありますが,放送の公共性を守る最後の手段として制度の存続を望む意見も強いことから,あえて制度を廃止する必要はないものと考えられるというふうに整理させていただきました。
 次にこの第68条に関係しまして,その他としまして,民間放送事業者の場合,全国放送を行うためにはキー局から配信を受けネット局が放送を行うことが通常でありまして,この場合,キー局と多数のネット局が同一の申請をしなければならないというような指摘がございました。これにつきましては,例えばキー局が全ネット局の代理人としてまとめて申請を行えば足りるのではないかということで,特に問題はないと考えられるというふうに整理させていただきました。
 次に3つ目でございますが,商業用レコードへの録音等に関する裁定制度,第69条にかかる部分でございます。
 この裁定制度につきましては,現行法制定時にこの制度を設けたことによりまして,レコード会社と作詞家,作曲家の専属契約の慣行といったものが見直されまして,著作物の利用が促進されることになったということが評価されるかと思います。
 また,この制度につきましては,その対象が商業用レコードに録音された著作物の録音等に限定されておりますが,この制度の波及的効果と思われることとしまして,ビデオなどの映像ソフト,これらに関しても専属契約等による弊害の事例が生じていないというようなことから,この制度といったものが著作物の円滑な利用に貢献しているものと考えられるというものを整理させていただきました。
 このようなことから,この制度の利用実績はありませんが,引き続き専属契約による弊害の改善を図り,現行法制定当時の状況に後戻りしないためにも,この制度をあえて廃止する必要はないものと考えられるというふうに整理しております。
 次に4つ目でございますが,翻訳権の7年強制許諾でございます。これにつきましては対象国がある限りにおいては適用される可能性は皆無でないことから,ただちに廃止する理由はないと考えられるというふうに整理しております。
 そして,これら4つの検討課題以外に5つ目といたしまして,新たな裁定制度の創設についてというものをまとめさせていただいております。この制度の概要につきましては,実演家の権利に関する裁定制度ということでございます。
 これは放送事業者が制作する放送番組につきましては,近年二次利用の要望が強いものの,通常,番組を制作する際に俳優等の実演家から録音・録画の許諾を得ていないことから,当該番組を二次利用する際には改めて実演家の許諾が必要となるというものでございます。この場合,古い番組については出演していた実演家を捜すことが非常に困難な場合があり,二次利用できないケースがあることから,権利者不明時等の裁定制度に準じた裁定制度の創設を求める意見といったものが出されておりました。
 これらについては,実演家等保護条約では,強制許諾については条約に根拠のあるごく限られた特別な場合には認められるが,それ以外は認められていないところであるということ,また実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約においても,実演等に関する制限及び例外については,著作権保護について国内法令に定めるものと同一の種類の制限または例外を定めることができる規定になっているものの,実演家等保護条約の締約国については,同条約の義務を免れないこととされております。
 このようなことから,新たな裁定制度のを,実演の利用について創設することは,国際条約との関係で整理すべき問題点が多いと考えられ,慎重に検討する必要があると考えられるというふうに整理させていただきました。
 このまとめの案の後ろのほうに,添付資料の1と2といたしまして,1はわが国の裁定制度の概要,これは前回の会議でお配りしたものでございますが,わが国の裁定制度につきまして一覧表にまとめたものを添付させてもらっております。
 もう1つは添付資料の2といたしまして,著作権者不明の場合の裁定申請の手続見直し等について見直しを行った内容等につきまして説明する資料を2枚ほどでございますが,これを添付させてもらっております。以上でございます。

(土肥主査) どうもありがとうございました。それでは全部でこの案は11ページ,本文11ページですね。
 目次を含めて11ページでございますけれども,全体を見ますと1.のところで「はじめに」ということで,この本委員会におきまして裁定制度問題を取り扱うに至った,検討を行うに至った経緯及び今後の取り扱いについて,ここに述べてあると思います。これは量的にもそう多くないものでありますから,1.それから現行制度について紹介していただいております。7ページまでですね。まず,ここまでについて,これは事実の問題でございますので,表現等の問題になろうかと思いますけれども,何かご指摘いただくようなことはございますか,7ページまでにつきまして。恐らく8ページ,9ページ,10ページ,この3ページについてはいろいろご意見もあろうと思いますけれども,7ページまでのところで何かございますか。
 よろしゅうございますか。7ページ辺りのところで,全角半角とかポツが落ちていたりしておるところの辺りは最終的な段階ではきれいにしていただいて,お願いします。
 事実の問題については,だいたいこういう紹介でよろしいということですね。
 それではもし何かありましたら,また後で全体を振り返るところでご意見をいただければと思います。
 それでは4.の8ページ以下10ページまで,これは全体にわたりまして,8,9,10,11ページの全体にわたりまして,ご意見あるいはご質問ございましたらお出しいただければと思いますが。特に67条関係については,多々ご意見があるのではないかと思うのですけれども,どうぞご遠慮なく。
 どうも失礼しました。瀬尾委員,お願いいたします。向こうですか。すみません。じゃあ三田委員,お願いいたします。

(三田委員) だいたい今のままでいいというような趣旨の説明があったと思います。私も当面はそれでやるしかないというふうに考えておりますけれども,少し先のことを考えますと,この裁定制度というのはもう1度抜本的に考え直す必要があるかなというふうに思っております。
 といいますのは,インターネットというものが非常に現在普及をしておりまして,さまざまな著作物をインターネット上に公開するということを,公開する側も受け手の側も推進するという傾向が広まっております。例えば諸外国の大学などでは,大学図書館の蔵書を公開するということをやっておりますし,学術雑誌や大学で発行したさまざまな雑誌のバックナンバーを公開するということもやっております。多くのインターネット関係者の間には,こういうすでに発表された作品というのはパブリックドメイン,公共性がある,公表すべきであるという理念を持っている人が増えております。
 そういう形で,これは商業利用ということではなくて,これでお金を儲けようということではなくて,その文化を享受する人のためにインターネットを利用していこうという,そういう考え方で,なるべく多くの著作物をインターネット上に載せていこうと,そういうことをやっている人たちが沢山おります。そういう人たちの利用を考えると,この現在の制度では,それを使って何か儲けようという人は所定の費用を払う,手数料も払うということでやっていけるだろうと思うのですけれども,世のため人のために著作物を公開していこうという人にとっては,現行の制度は大変利用しにくいものになっているということがいえるだろうと思います。
 特にもうただで公開してしまったほうが良いのじゃないかと思われるようなものというのは,実際には著作物として販売されていないものでありますから,著作者がどこにいるかを捜すということも非常に困難であります。現在,著作権法というものがパブリックドメインという考え方と対立するものとして受け止められているということが現状ではないかと思います。
 これに対して何らかの簡易な手続によって,より広い利用が可能であるというようなシステムを,近い将来か遠い将来かはわかりませんけれども,作っていくというような姿勢が文化庁や,あるいは関係諸団体にないと,インターネットの利用者から大変反発が強くなるということが予想されます。
 特に著作者の団体の中には,著作権の存続期間を延長してほしいというような要望を強く持っているところと,強く持ってなくてもそれが当然であるというふうに考えている人が多いのではないかと思いますけれども,そういうことを主張しますと,インターネット関係者から大変な反発が出てくるだろうということが予想されます。
 これに対して,こういう裁定制度のようなものを利用して,商業目的で利用されていないようなものについては,積極的にパブリックドメインにしていくというような道筋を作っておかないと,著作権というものがインターネット利用者にとって非常に問題のあるものになってしまう。中にはピア・トゥ・ピアのような著作権をまったく無視するような試みを,あたかも正義の行いであるかのように考えてしまう人たちも現に存在しておりますし,これから増えていくということも予想されます。
 そういう将来的な見通しを考えた上で,この裁定制度というものを考えてみますと,今のままの制度でだいたい良いというような結論ではなくて,さらに持続的にこれを検討しなければならないというような,そういう考え方をこの報告書に盛り込むことはできないかなというふうに考えておりますが,皆様のご意見はいかがでしょうか。以上です。

(土肥主査) ありがとうございました。三田委員からかなり刺激的なご意見をいただいたわけでありますけれども,将来の著作権制度がどうあるか,そこを見据えた上で,現在われわれがいま検討しております裁定制度についても,そこにつながるような準備をしておく必要があるのではないかと,こういう趣旨だと思いますけれども,こういう非常に大きなテーマでのご意見を求められたわけでありますが,それについてただちにお答えいただいても構いませんし,それに関連するようなわりあい細かいところでの議論でもかまいませんが,ほかにご意見ございますでしょうか。はい,瀬尾委員。

(瀬尾委員) 結論的にいうと,今の三田委員の意見と一緒で,方向性はこの中に見えないという部分に,何か文章を足す必要があるのではないかというふうに思います。4.の検討結果,(1)制度の評価の中では,制度面や手続面での改善を行う必要があるとの意見があったというふうな文言がありながら,かつ,どのように改善を行っていくかというような将来的な部分が見えてこないというふうな部分が多少不足しているのではないかなというふうに感じました。
 それともう1つ,これはちょっと内容的に三田委員と変わってきますけれども,現在,またはこれからデジタル,インターネットの時代になって,非常に著作物の分野は細分化して,特殊化して,またその利用用途も非常に細分化,特殊化していくというふうに考えられると思います。
 その中で,先ほどおっしゃられたパブリックドメインのような法定許諾か,もしくは完全なデジタルでの管理,この二極化してしまう中間にこの強制許諾があるのではないかというふうに考えております。
 さらにこれだけ細分化,特殊化していく用途で,個人でその権利をきちんと管理しきれないような部分に関して,この強制許諾が機能していくといいのではないかというふうに思います。
 ただ,先ほどこのア.にありますように,特定の機関またはそういう制度上の形を作っていくのは大変難しいことではあると思いますが,何らかの,要するにパブリックドメイン,もしくは完全個人ではなくて,その中間に存在するような管理方式を作っていかないと,今後の利用形態とその著作物の分野にはなかなか対応できないのではないか。
 これはまだまだ検討を要する事項だと思いますので,そういうふうな将来的にこれを何らかの現状に対応するための手段として,現在の裁定制度はそのまま維持するにしても,これに類するような強制許諾,もしくはそれに準じるような方式ということについて検討を重ねていくなど,未来についての改善策は継続して審議されるべきではないか。結論を繰り返して,三田委員と一緒に同じになってしまうのですが,私はそのように思います。以上です。

(土肥主査) ありがとうございました。ほかにこの点について,関連するご意見はございますでしょうか。はい,どうぞ,山本委員。

(山本委員) 今,お二方からご指摘のあった点なのですが,まずパブリックドメインという概念ですけれども,公有に帰しているということで,権利が切れたものをパブリックドメインといいます。いま議論されているのはちょっと意味が違うのではないか。
 つまり,著作物の性質としての公共的な性質,みんなで利用できるというような側面をご指摘になって,パブリックドメインとおっしゃっているのではないかと思うのですが,そのご趣旨はわかりますが,それはパブリックドメインではないと思います。
 では公共的な性質があるというのをどのように権利者の権利と調和させるのかという点で,例えばベルヌ条約の中ではスリー・ステップ・テストという枠組みを設けております。要件が3つあって,特定の場合であるということと,著作物の通常の利用を妨げないということと,著作者の正当な権利を不当に害しないという3つの要件が定められているのですが,この小委員会でずっと議論されているのは,どういう場合が今の3つの要件に該当するような場合なのかというのを具体的に提示して,こういうものについては権利制限規定ないしは裁定制度を認める必要があるのではないですかという問題提起をして,その検討結果を報告書の中に盛り込んでいかないといけないと思います。しかし,今日までの議論の中では具体的な問題点として指摘されたものの中に,それに該当するようなものがなかったというのが今までの結論のように思います。
今お二方からご指摘があった点というのもちょっと抽象的で,問題意識はわかるのですが,具体的な,じゃあこういう場合について裁定なり権利制限を認めないといけないというところに結びつくような具体的な内容では,申し訳ないけれども,ないように思います。
 ですから,報告書の中には今後もそういう場合があるかもしれないというような文言を入れるのはいいと思いますが,結論的には今のところについては変更がないというのはやむを得ないのではないか。というのが,私の意見です。

(土肥主査) ありがとうございました。先ほどから各委員,ご指摘がありましたように,近時,複製技術,流通手段,さまざま多様になってきておりますので,著作物を利用する目的,対応というものが極めて特殊,多様な形になっておりますよね。こういう時に67条のような,こういう包括的なそういう指定が裁定制度として用意されておるわけでありますけれども,もう少し細かく見てほしいというふうなことが前回かなり議論としては出たと思うわけですね。権利制限規定と,それから強制許諾というものの間に中二階か何かを作ってほしいというような形の意見もあったと思います。
 そういう意見を本委員会は適切に把握して,法制小委に持ち上げるということになるわけであります。これは法制小委のほうから,まず契約・流通でやってみてほしいということがありまして,それを受けてやっておるわけでありますので,ここでの結論,検討の経緯というのは法制小委に正確に伝える必要がある。こういうふうに思っております。
 例えば先ほどのご意見等の中で,例えば8ページの4.の2の制度面の問題として,特定機関による裁定の実施,3行ほど書いてあるわけでありますけれども,皆さんのご意見,前回のご意見はこの3行の中で適切に反映されておると,こう私,理解させていただいてよろしゅうございますか。
 あるいは,かなり刺激的な松田委員の前回のご意見なんかもあったわけでありますけれども,松田委員はこのところの意見で,表現でよろしゅうございますか。

(松田委員) 条約で許された範囲内において,現在の機関が,そして制度が,手続を緩和するとして,もっと簡易という視点で第67条等をみますと,確かにこの意見書のとおりにならざるを得ないなと納得しちゃうのですね,私自身も。
 確かに私権でありますから,私権の制限として何らかの機関が裁定をして,そしてそれに代わる補償金を決めていくという,こういう機関であれば,機能であれば,当該機関は複合機関でなければならないような,それは納得いたしますし,それから条約との関係でいいますと,制限規定の中に盛り込むというのは大変難しいというよりは不可能であるという。検討といいますけれども,多分不可能なのでしょうね,条約から改定していかないといけない。
 となると,この制度の枠の中で改革しろというと,これはもうもうやむを得ない。そして文化庁は制度の見直しをして,インターネット上での方向を考慮したわけで,これでかなり改善されたということも,実際やってみるとあるのかもしれません。この枠の中だとそうなのですね。
 しかし,膨大にあるデジタル化されていない情報をこれからデジタル化して有用に使うことができるということ,使いたいないしは使うようにしなきゃいけないという,1つの経済的な方向性としては間違いないのだろうと思うのですね。それを認めてあげないと,いわゆるコンテンツビジネスがなかなか拡大しないだろうということも,一理あるのだろうと思います。それだけでなく,私は新しいコンテンツを作らないといけないのだろうと思っています。古いものも有用に活用するということも,できれば制度として作ったほうが良い。それを考えますと,もう第67条とか第68条の問題ではないのですね。
 先般出た意見も,実はそういう点を踏まえて意見が出て,過激な意見も出ちゃったとかという話ですが,お二方の意見について私はそういうところに背景がすでにもうあったのではないかなというふうに思います。

(土肥主査) ありがとうございました。関連してですか,関口委員,お願いいたします。

(関口委員) 今のご議論をお聞きしておりまして,基本的には三田委員,瀬尾委員のおっしゃられた方向性というのは踏まえていかないといけないと思います。
 ですが,今回ここで議論しているところは,言ってみれば強制許諾か,あるいは裁定ということについてここで議論しているわけでありまして,恐らく私の理解するところでは,強制許諾というのは統治していると,公共の持つ,あるいは公共的なニーズがありながら過去の著作物が有効に活用されない,その場合にどうするかというのが強制許諾の世界だと思うわけです。
 その意味でいきますと,先ほどのインターネットへの対応ということで出てきている部分は,むしろ自発的にそれを出していきたいと。ですから,パブリックドメインというか,むしろ最近でいうクリエーティブコモンズとかといったことで語られる類の部分であって,それは多分これとは別の枠でそういったものを作っていくということを方向性として出すべきではないかと思うわけです。
 逆に放置しておいたらば有効な活用が図られないというのは,むしろこの10ページの最後の(5)にあります,新たな裁定制度の創設についてと。特に二次利用に関しての実演家の権利,これがネックとなって,特に放送コンテンツですとか,今のデジタルに対応した配信ができないという問題が多分あるわけであります。
 ですから,最後の3行のところに,「このようなことから,裁定制度を,実演の利用について創設することは,国際条約との関連で整理すべき問題点が多いと考えられ,慎重に検討する必要がある」というと,極めてこれはネガティブというか,後退的な形に読み取れるわけです。国際条約そのものは,本来はそういうインターネットを想定しない時に作られている国際条約でありますので,「国際条約との関係で整理すべき問題点が多いと考えられ」ではなくて,「考えられるが」で,「慎重に」ではなくて,これをむしろ「実質的に」とか,前向きというのはどうかわかりませんが,新しい形で検討していくということを少し出していく必要があるのではないかと思います。

(土肥主査) ありがとうございました。はい,椎名委員,お願いいたします。

(椎名委員) 前回,実演家の不明な場合ということでちょっとご意見を申し上げたのですが,契約・流通ということで,わりと実務上のルール的な観点から申し上げたりして,実際処理できない案件というのを抱えていたりするもので,果たして不明な人の権利を制限することになるのかというのが,どうしても引っかかるところで,その趣旨でご発言したのですが,実際そういったことというのはルールという意味では,例えば放送事業者とかの向き合いの中でそういったことを話し合っていったりとかという方法もある。
 ただ,何かというと実演家抜きになってきたことをいわれてしまいますので,権利者団体としてはその部分に言及したつもりでございます。
 また,逆にいいますと,インターネットで流通が促進されていく一方で,やはりインターネットで情報の相互利用と,この契約・流通で今後の課題になっています権利情報に関する相互利用などが進んだ段階で,不明であるという状況はかなり減ってくるということは当然考えられると思うので,そうした中で,この間ああいうふうには発言したのですが,こういう結論が妥当なのではないかなと今は思っております。

(土肥主査) そうですか。私,この話というのは非常に説得力のある話として椎名委員の発言を前回伺ったのですけれども,つまり100名の実演家が関わっていて,99名には許諾が取れたけれども,1人がわからない。こういうような場合には,結局皆さんのご意見を総合してお聞きしていると,エイヤッとやるというようなことで伺ったわけですよね。その実態のほうがやはりよろしいのでしょうか。

(椎名委員) ここまでいくつも挙げられてできないのだよと言われると,それはできないのだろうなと,専門家ではございませんので。ただ,実務上は問題は残っているのです,確かに。ただ,最近では利用者の方々と権利者団体と一緒になってソリューションを考えるというスタンスですから,必ずしも権利権利というところではないという切り口もちょっと出したのですけれども,やはり条約に違反するわけにはいかないと思いますので。

(土肥主査) いや,前回の資料をいただいたところでは,イギリスは条約に入っていながらやっているわけですね,このことを。だから,そういう状況を検討するという,そういう表現であってもいのじゃないかなと思っているのですけれども。
 つまり,非常にネガティブにこうは書いてあるのですが,ほかの国ではそういう事態について裁定制度を設けている国もある,だから検討を継続するというようなことでもいいのではないかと私は思ったのですが。川瀬さん,今のところ補足いただけますか。

(川瀬室長) イギリスは,前回の資料にありましたように,実演一般について裁定制度があるのですが,その運用について少し調べてみないと,今の時点では何ともいえません。想定されるのは,イギリスは実演家等保護条約に加入しておりますので,先ほど言ったような条約の解釈が適用されるのだと思うのですけれども,それ以外の国は,例えば実演・レコードに関する知的所有権機関条約の場合ですと,すべてスリー・ステップ・テストで制限規定が課せるというふうになっておりますから,すべての外国について駄目だということではないとわけでしょうから,例えば一般的に国内法で規定しておいて,あとは条約の関係を見ながら適用を決めていくことになるのかもしれないと思います。

(土肥主査) 非常に難しい問題というのはよくわかったのですけれども,法制小委でどういうふうにご報告をするかということもございますが,そういうことを含めた報告でもいいわけですね。それは現にそういう議論をしたわけでしょうから。
 したがって,5のところの実演家のこういう裁定制度についての検討をしないというわけではないけれども,運用を含めて検討をしてみようという,ほかの国のやり方を含めてですね。そういう書き方でもいいのではないかなと思うのですけれども,椎名委員は今のところはいかがですか。

(椎名委員) 意見が出たことも書いてあるし,難しい点は述べられているということで,さほど違和感はないと思います。

(土肥主査) はい,おっしゃるように,ご異論はあまりないようなのであれなのですが,そういうニュアンスを含めて,文章の表現は別にして,そういう議論が,法制小委において,あったという報告をさせていただくことになろうと思っております。
 それ以外に,どうも失礼しました。

(上原委員) 今の点も含めてなのですけれども,主査のほうからある程度まとめがあったのですが,一応ちょっと元に戻ってしまうところがあるかもしれませんが,基本的に私は山本委員がおっしゃったことに賛成でございまして,三田委員や瀬尾委員のお気持ちはわかるのですが,まず第一に,パブリックドメインの問題とインターネット上の利用しやすい環境を作るということは別問題であろうと思います。法制度のあり方として別問題であるというふうに,まず切り分ける必要があろうかと思います。
 また,ここで議論されている裁定制度の問題も,インターネット上で利用しやすいということと,裁定制度がにわかに結びつくものかどうかということも,また別問題であろうというふうに考えております。
 今,われわれはここで裁定制度の議論をしているわけでございまして,その範疇からいいますと,やはり条約上の議論と,それから今までの流れというものからいって,今回出てきているような結論が妥当なところに落ち着いているものと考えます。
 ただ,土肥主査からお話がございましたように,法制小委員会からの諮問を受けているわれわれの議論の中で,いわゆる裁定制度としてはやはりこうした結論が妥当ではあろうが,この時代において,今の著作権法制度の中でインターネットあるいはデジタルの対応として,著作物の使いやすさを求めた法設計ないしは運用,あるいは何らかのシステムによるフォローというようなものが検討されることは必要ではないかという問題提起はできると思いますし,その問題提起がまた法制小委員会のほうから戻ってきて,ここでやれということになれば,非常に大きな問題を私どもが,例えば法制度でやるのか,何らかのシステムで解決するのかということを検討しなければいけないと思いますが,私どもとしては法制小委員会に投げるのは,裁定制度をこういじれということではなくて,裁定制度の結論はやはりこういうようなことに,先ほど松田委員からございましたように,ならざるを得ないと思いますが,意見としてはやはりもうちょっとインターネットやデジタルに対して使いやすい制度なりシステムを考えられないかという意見があったので,それを今後,法制小委員会でも検討いただきたいということで出すのではないだろうかというふうに考えております。
 なお,条約との関係でございますが,先ほど川瀬室長のほうからもお話がございましたけれども,ローマ条約におきましては,基本的に条約の義務がかかりますのは,他の締約国のものに対してでございますので,わが国において,例えば実演家の強制許諾というようなものを実現しようと思った場合,他の締約国の国民にこれをかけなければ可能という解釈になると思います。
 ただ,わが国におきましては,現在内外無差別という大原則を立てて著作権制度を作っているところでございますので,もし実演家の強制許諾というところに入り込むのであるならば,内外無差別という大原則をわが国として放棄した上で全体の著作権制度,法制度を組み立て直すということをして対応するのか,しないのか,という問題については,法制小委員会からの諮問でございますので,きちんと投げ返すべきだろうというふうに考えております。以上でございます。

(土肥主査) はい,ありがとうございました。はい,どうぞ。

(村上委員) 私は基本的に報告書で結構だと思いますし,意見の方向も座長に適宜まとめてもらえばいいと思っております。
 それで1つだけ質問させてもらいたい。競争法の世界では,もう少し事情が進んでおりまして,例えば欧米の競争法というのは,競争法違反があった場合には,特許権と同じく著作権においても,主に基本プログラムとかデータベースの話になりますけれども,競争法違反と認定された場合に,利用希望者には適正なロイヤリティで自由に利用させるようにという,そういう強制許諾命令を出して,それに伴う裁定制度を使うとか,これは現実に行われている話なわけです。日本では,まだ実際に用いたことはありませんが,解釈上は競争促進のために,そういう命令も出せるだろうというのが,一般的な解釈です。
 それで,それはあくまでも独占禁止法というか,競争法の話であって,著作権法の世界では,例えば公共の利益の促進か何かを根拠にして,そういう大胆な命令を命じるということは,国際条約の制約のためになかなかできないのだかというふうに,私は聞いていてそう受け取ったのですけれども,そういう受け取り方でよろしいものかどうかという質問になります。

(土肥主査) これはどちらに。どなたか適切な方に答えてもらえれば,そういう解釈でよろしいのかどうか。川瀬室長に。

(川瀬室長) 基本的には,これは私見になりますが,著作権条約の中では,いま村上先生がおっしゃったような考え方はあまりないのではないのかなと思います。それはあくまでも競争法の中であるわけですから,例えば日本でも許諾をしないという,談合が行われた場合に公正取引委員会がそういったカルテルの破棄を命じ,結果として許諾を促すというようなことはあろうかと思いますけれども,著作権法の体系の中でそういった競争法のような感覚,観念というのはあまりないのではないかなという気がします。

(土肥主査) 今の点なのですけれども,やはり著作権の場合は機能と関係しない表現形式を保護し,特許のように実施義務はないという関係もあり,ロイヤリティを払って利用させるというのは一部には当然あるのかもしれませんけれども,なかなか許諾権法制が原則である法制度の下では難しいという理解なのではないかと思いますけれども。

(村上委員) 独禁法違反は,あくまで個別事例の話なのですが,談合なんかで摘発した場合,一緒にやるのはやめて,個別に取引,意志決定しろという命令を出すのと,それと利用者に対して適正なロイヤリティで許諾しろという命令を出すのとでは違う感じのものがあります,そうするとやはり強制許諾命令を,著作権の世界では,そう安易には出さないという形でよろしいでしょうか。

(土肥主査) これは,川瀬さんのほうからお答えいただいたほうがいいのかもしれませんけれども。

(川瀬室長) 今まで著作権制度の中で,村上委員がおっしゃったような観点から制度の仕組みというものを作ってはいないのだと思います。もちろん,日本でいえば,著作権が排他的独占的権利であるということをもってして,独占禁止法の適用を免れないということはないわけでございますが,著作権法の中の制度として,そういった競争法的な観点から権利の制限,ないしは強制許諾,法定許諾というような制度はあまり例がないのではないなと思います。

(土肥主査) 恐らく,これは本日の裁定制度と別のステージで多分大変な大問題になる話だと思いますので,今日のところは裁定の報告書の案のとりまとめとしてどうかということで検討させていただきますが,寺島委員,手を挙げられましたか。

(寺島委員) はい。全体の議論は納得いくのですけれども,さっきからチラチラと出ているご意見で,何かインターネット上での使用のことが出ているのですね。でも,私どもはインターネット上にきちんとできない限りのっけていらないという考えですから,OKしない考えですから。だから,ちょっとそこが何か討論してらっしゃる方のそれぞれの立場で少し違うような気がするのです。私どもは少なくとも脚本を書いて,その脚本を売ることによって生活を立てているのですから,お金を出さないで勝手に使われることは絶対にあり得ない。もちろん許諾は出しません。
 ですから,言わでものことかと思ったのですけれども,何か伺っていると大変インターネット上の問題に関してはやさしいご意見がチラチラ出ているので,念のために申し上げます。

(土肥主査) はい,ありがとうございました。どうぞ。

(瀬尾委員) 先ほど申し上げた意見も,実は具体的なルールに欠けているということで,まったくそのとおりだというふうに思います。
 ただ,これが法制問題小委員会から諮問されたという内容,そしてこの契約・流通小委員会という,この場で議論されているという性質上,私はどちらかといえば法的な整合性とかよりも,実際の運用において,流通においてどのような弊害があり,どのような価値があるのか。それについての意見がまとめられているものを,要するに現場の意見をこの委員会から上げることによって,法的な制度を法制問題小委員会で検討する。そういう図式になっているというふうに思われるために,法的な側面というよりは,現場との整合性とか不便,もしくはもっとこうであったらいいだろうということを,この流通の小委員会で話をして,そこに出た意見をまとまらないにしても,現場ではこんな声があるのだよということを,法制問題小委員会にお返しする。
 それによって法的側面を考慮して制度を作るというような形の報告書が今回はふさわしいというふうに思いましたので,現場との合わない部分,また将来的な憂慮すべき部分,そういうものを上げていき,結論つけずに,今まで沢山出た意見をこういう意見もある,こういう意見もあると。そして,すべてがこの中で何か必要であるという現場の意見がありつつも,法律上考えると慎重にとか,非常にネガティブな結果になってしまっているから,現場ではずれがあるのだという意見があるのだから,それをそのまま返す。あくまで1つのいろいろな意見があるという,そういうふうなまとめ方になるほうが有効なのかなということで,先ほどの意見を申し上げたというふうな部分です。1つの意見に固執しているわけではございません。けれども,方向性としてはちょっと違うのではないかなと思ったので申し上げたというふうなことでございます。以上です。

(土肥主査) 瀬尾委員がおっしゃっている部分については,私のほうから法制小委に,そういうここでの議論,現場での問題点の指摘についてはお伝えするようにさせていただきますので,ここにこれからというのはちょっと難しいと思いますので,よろしくお願いします。ほかに,はい,どうぞ,石井委員ですね。

(石井委員) 私も全体としてこの結論についての異論はございません。今まで出た意見,今日もありましたけれども,それを主査のほうでおまとめいただければいいのではないかと思っております。
 その中で特に第68条に関して,書きぶりの問題ですけれども,2点だけ述べさせていただきたいと思います。
 1つは9ページですが,第68条に関する第2段落の最後のところですけれども,「裁定制度を利用してまで放送しなければならない場合がほとんどないこと」となっておりますけれども,ここはもう「放送しなければならない場合がなかった」というふうに言い切っていただいていいのではないかなと思います。
 それからその次の段落なのですけれども,2行目のところ,「放送の公共性を守る最後の手段として」とございます。確かに私も口ではそのように発言したからかもしれませんが,ちょっとその部分,著作権法の趣旨に照らして,やや違和感がありますので,例えば,公共的な性格の強い放送において著作物を視聴者に伝えるための最後の砦といいますか,あるいは伝家の宝刀といいますか,そんなような感じにしていただいたほうがいいのではないかと思います。表現上の問題です。

(土肥主査) 今のは,基本的にはあまり変わらないということですよね。わかりました。そういう表現のところでいうと,第69条も,これは,菅原委員がおっしゃったのですかね。69ページの(3)の第69条の,映像についてもこういう波及効果があるという。

(生野委員) それは私も説明させていただきました。

(土肥主査) これは事実としてそういうものを,つまりこれがあることによって映像ソフトのほうもうまくいっているということになりますか。これがあったこと,その1つであるという,そういうニュアンスはいりませんか。

(生野委員) 現実問題として商業用レコード以外にも3年を超えて行使されている実績はありませんというふうな言い方で述べさせてもらったのですけれども。

(土肥主査) ご発言いただいた委員の方におかれまして,こういう第69条があることによって,商業用レコードについてはうまくいっている。それが映像ソフトについても専属契約の弊害が出てきてない。こういう波及効果はあるのだという趣旨の文章なのですけれども,そういうものかなと。このような実態があるのかどうか,よくわからないので。はい。

(菅原委員) 実態について報告いたしますと,専属制度を持っているレコード社において,映像のコンテンツについても専属の契約を持っているというケースがございます。それもこの69条の考え方と同じで,拘束されるとしても3年以内というところでは,この69条の制度があることによって,それ以上の拘束はされないということではあります。 内容としてはよろしいと思います。

(土肥主査) ありがとうございました。

(生野委員) 内容としてはよろしいと思います。

(土肥主査) 全体として,8,9,10ページですね。それはもちろんですけれども,1ページのところから含めて,全体として何かご意見をいただくようなところがありましたら,今お出しいただければと思っておりますが,よろしゅうございますか。
 だいたい基本的にこういう内容でいいのだと。若干,テニヲハとか,一部についてごくわずかな修正等がもし今後出てくるかもしれませんけれども,そういった部分につきましては皆さんのお許しが得られれば,私に一任いただく形でこの報告書を法制小委に上げるということにしたいと思いますけれども,基本的にはこの10ページの報告書を法制小委に上げますが,なお今日の議論を受けて,若干部分的に訂正をする。少なくとも全角を半角にするとか,そういう部分は当然あるわけですので。逆か。半角を全角にするとか,ポツがないのをきれいにするとかというようなことはあると思いますので,そういう形式的なことを含めてご一任いただいて,これを法制小委に報告をするということにさせていただきたいと思いますけれども,よろしゅうございますか。

  〔異議なしの声あり〕

   ありがとうございます。それではこの裁定制度のあり方につきましては,本日ご議論いただいたご意見,こういったものももちろん受けて,若干の修正をし,大幅な修正内容はまったくないというふうに伺っておりますので,必要があるわずかな修正がもしあれば,その修正内容については私のほうに一任をいただいて,それを8月開催予定の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会において,私から報告をさせていただくということにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは,第4回契約・流通小委員会を終わらせていただきたいと存じます。最後に事務局から連絡事項がございましたら,お願いをいたします。

(木村補佐) 次回以降のこの小委員会の審議スケジュールでございますが,第5回及び第6回は「著作権契約のあり方等について」審議いただく予定となっております。
 この小委員会の中には,多くの実務家の方もおられますので,できましたら各業界における著作権契約等の状況について説明をいただきまして,その課題等を整理し,議論を進めさせていただきたいというふうに考えております。
 次回会議では,何名かの委員の中には説明をお願いしたいと思っておりまして,次回会議までに改めて個別にお願いさせていただきますので,その際にはよろしくお願いいたします。
 あと,次回の会議ですけれども,9月13日,火曜日になりますが,10時半から1時まで,同じくこの場所ですが,経済産業省別館1020会議室のほうで開催いたします。
 本日,昼食の用意がございますので,お時間のある委員におかれまして,そのままお待ちください。本日はどうもありがとうございました。

  〔了〕


(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)


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