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文化審議会

2002/10/30 議事録
文化審議会著作権分科会契約・流通小委員会(第5回)議事要旨

文化審議会著作権分科会契約・流通小委員会(第5回)議事要旨


1  日  時 平成14年10月30日(水)10時30分〜13時

場  所 文部科学省分館201,202特別会議室

出席者
(委員)
紋谷主査、今川委員、入江委員、上原委員、大森委員、加藤委員、金原委員、久保田委員、児玉委員、佐々木委員、寺島委員、土肥委員、生野委員、橋本委員、松田委員
(文化庁)
銭谷文化庁次長、岡本著作権課長、尾崎著作物流通推進室長、その他の担当官

配付資料
第5回議事次第
資料1   契約・流通契約・流通小委員会(第4回)議事要旨
資料2   「ライセンス契約におけるライセンシーの第三者対抗」に係る検討課題の整理
資料3   「契約」に関わる法制の改正について

5   概  要
(1) ライセンス契約におけるライセンシーの第三者対抗に関し、事務局からの検討事項の整理に関する説明が行われ、以下の質疑応答が行われた。
 (以下、委員:○、事務局:△)

○: 音楽業界では権利を譲渡する契約があるかもしれないが、脚本家等の著作者は権利を譲渡するような契約はしないと思われる。

○: 音楽の場合は、年に3、4回程度ではあるが、著作権者が破産するケースがあり、ライセンシーに対する利用許諾契約を安定させる見地からして、この議論をする意義がある。

○: A案では契約書の内容をそのまま、独占性、期間その他重要事項についても、ライセンシーが譲受人に対抗できるものと考えられる。B、C、D案は場合によっては、詳細に条文を作る必要があるのかもしれない。

○: A案はライセンス契約を権利の譲受人に対抗する措置の観点から書面契約が必要と考えるものであり、契約の中身自体を当然に主張できるという主旨ではない。登録を要件しているB案からも登録されている契約が保護されると考えるならば、同じ結論になるのではないか。
 権利の譲渡については、権利を持つ者が自己の意思により希望して譲渡するというケースだけでなく、例えば、ベンチャー企業等が唯一の資産である知的財産を元に資金調達をすることもあり、質権の設定又は譲渡担保等を含め、様々なケースを前提として検討する必要があると思われる。

○: 放送におけるライセンス契約では、番組発注契約、番組購入契約双方とも範囲、回数、期間等についてほとんど独占契約となっており、独占契約が保護されなければ意味がなくなる。

○: ライセンシーの立場では、周辺的な投資があるため、単に契約案件の経済性の問題だけでなく、投下資本の回収と保護の観点から、1独占性、2契約期間、3保守・保証義務等の特約条項、4サブライセンスの4つの項目すべて保護すべき対象として必要と思っている。

○: 著作権法には独占権というのはないわけで、単にライセンサーが、第三者に許諾しないことを約束しているだけであり、全て契約の内容によることになる。当事者間の債権債務関係を著作権の譲受人に対して対抗できるとすると、例えば著作権の譲受人又はその権利を差し押さえた場合の競売人の利益を害し、著作権の流通の阻害要因のなるのではないか。また、保証義務の履行については、あくまで技術リソースや人的リソースが相手方にあるのが前提である。権利が移転した場合、必ずしも譲受人に事業の実態まで移っているとは限らず、譲受人に保証義務を課すことは現実的ではない。

○: 著作権の利用許諾契約を結んだ後に、プロダクション等の利用者が倒産して契約不履行になるケースもある。ライセンシーだけを保護する方策はいかがと思われるが。

○: 保護すべき範囲の検討にあたっては、1ライセンシーが既にロイヤリティを払っている場合、権利の譲受人に対抗することができるのか、2独占性のほかに排他性についても契約条項に入っている場合はどうかの2点に留意すべきと思われる。

○: クロスライセンス契約の場合、著作権を第三者に譲渡することによって、ライセンシー側の反対給付がその第三者に移転することは、その反対給付が金銭債権なら特に問題はないとしても、技術提携等の場合、当事者の意思に反することになり認められない。

○: 権利譲渡の場合のライセンシーの法的地位をどう考えるのか。ライセンシーが独占的なライセンスを与えられていたが、譲受人に権利が移転することによって、非独占的な地位しか主張できないことは、ライセンシーがライセンスに対する対抗要件を備えているとは言えないのではないか。また、権利譲渡時におけるライセンス契約の有無による譲受人の保護はそれが任意譲渡の場合ならば、譲渡人に対する担保責任の問題として解決ができると考える。

○: 独占的なライセンス契約が権利譲渡によって独占性を失うことに対する危惧について疑問がある。著作権法では特許法でいう専用実施権のような独占的な許諾制度はないので、第三者にライセンスしないという契約はあくまでも債権上の約束であって、それが第三者を縛るものではない。

○: 専用実施権に対応するのは、著作権法では出版権の設定しかない。

○: 著作権管理事業者の視点に立てば、一番重要なことは、「安定した利用許諾の供給」なので、C案の譲受人の権利移転時における主観的要素を持って判断するという考え方に「独占性」を差し引いた上で利用許諾契約の内容を特定するのであれば、C案を認めても良いと思う。

○: 窓口権(二次使用に係る許諾権を独占的に行使できる権利)は放送番組の利用に関し、権利者がテレビ局に一定の期限を設けた契約により与えることになるが、窓口権を持つテレビ局はライセンサーとしてライセンシーとライセンス契約をしている。期間後、権利者にその権利が戻ってくるわけであるが、権利譲渡における譲受人のような立場になると思われる。特殊な事例であるが、元々権利を持っている権利者に対してライセンシーが対抗することができるのかという問題は、別途考慮して検討する必要があると思われる。

○: C案については、ライセンス契約には開発委託、受託契約等の様々な許諾条項が介在しており、それらを譲受人の過失の有無によって一律に譲受人に承継させることは現実的ではないと思われる。
 事業化しているライセンシーを保護するD案については、1事業化の挙証が難しい、2事業化を対抗要件とすることで、相手方に開示が必要になると営業秘密に抵触する可能性がある、3全世界での利用許諾契約で、アメリカで先行した実施行為後、日本で事業化しようとした時、アメリカの先行行為を持って事業化と見なすことができるのか、親会社の実施行為後、子会社が実施する時に、子会社のライセンスを親会社の実施行為を持って保護することができるのか等、非常に問題がある案と思われる。

○: AからD案までのどれか1つを選択する必要はないので、それぞれの組み合わせにより対抗要件を構成することも考えられる。D案の事業化の判断基準の曖昧さの批判は、裁判上の法律解釈の運用によるものでD案だけの問題ではない。二重譲渡や独占的な二重ライセンスの場合の権利関係については登録が必要と思われるが、ライセンシーと譲受人間の権利関係はそれとは別の局面においての問題だと思われる。A案の書面契約における対抗にも言えるが、事業化等のある程度客観的に目に見える形態での対抗というのは意味のある案と考える。

○: 4つの案のそれぞれの長所を集約すれば統合できるのではないかと思っている。D案の事業化も事業の準備も含むとすれば、書面契約という部分をもって、A案にもなり得る。実務的な観点から見ると、権利譲渡時を想定するとA案、破産時を想定するとD案がいいと思われる。
 「ライセンス契約におけるライセンシーの第三者対抗」に係る検討は来年度も検討すべき課題として報告書に整理することで了承された。

(2) 「契約」に関わる法制の改正に関し、事務局から説明が行われ、以下の質疑応答が行われた。
 (以下、委員:○、事務局:△)

○: 放送番組において放送関係者間の契約の書面化は進みつつあるが、契約をなかなか結びたがらない一般の人との契約をどうするかが問題である。

○: 94条の放送のための固定物等による放送の規定は、ビデオ撮りしたものの利用について規定したもので、これは本来契約書により決めるべきものであると思われる。15条の職務著作の規定は、著作者人格権と著作権の帰属を同時に考えており論理的でない。著作者は自然人で、著作権を自然人と法人のどちらかに帰属させるのかという問題として規定し直すのが妥当と考えられる。

○: 日本芸能実演家団体協議会の調査によると、実演家のうち、95%が書面による契約をしていないという実態が判明している。今後一般人も含め、著作権に係る契約ができるよう、わかりやすいもの(契約書)を整備することが大事なことだと思っている。

○: 実演家が録画を許諾した場合、その後の利用について権利が及ばないことになっており、93条及び94条の規定はある意味では実演家を保護しているというバランスをもった規定である。93条及び94条の規定を廃止することは、この微妙なバランスを崩すことになるので、従前の慣行を大切にしながら、どう変えていけばうまくいくのかを、著作権法の全体的な簡略化の中で考えなければいけない。61条2項は、廃止することにより、著作権の譲渡契約時に明確に契約で権利帰属を把握する習慣を持たせることができると思われる。15条については、いきなり規定を廃止すると、あらゆる企業間で労使紛争が勃発すると思われるので、どういう方向でやればスムーズに移行できるか検討する必要がある。

○: 著作権の帰属に係る契約では、どちらに権利があるのかわからないものもある。

○: 61条2項に係る事項で契約に記載されなかったことによる問題は経験上生じていない。すぐに廃止したとしても特に問題はないと考える。

○: 映画製作者の定義は「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」という曖昧な表現にになっているため、ある放送局が自分が映画製作者であると主張している事例もある。本来契約でカバーすべきことが、定義の曖昧さのため、ある意味優越的地位の濫用ということが生じている実態もある。

6.閉会
 事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。


(文化庁著作権課著作物流通推進室)

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