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4.5.その他の全体的または共通する問題点について

 上記1.〜4.の議論を踏まえ、全体的または共通する問題点について、以下のような議論がなされた。

(1)コンテンツ利用促進の必要性と著作権法の役割等について

  • そもそもコンテンツ利用促進が自明の前提のように説かれているが、それが個人の著作権等に優先するものといえるかどうかは必ずしも自明ではない。コンテンツの利用促進が、例えば経済発展をもたらすとか、市民の著作物へのアクセスが増えるとかいった点から正当化しなければならないが、それが十分でないのではなかろうか。
  • また、著作権法を改正しても、ビジネスがうまくいくかどうかわからないケースもある。例えば、過去の放送番組のネット配信を促進しようとしても、放送局等の権利者が実際にビジネスとして取り組むには、それに伴う利益、リスクを勘案する必要があり、法制度さえ変えればビジネスが進むとは限らない。著作権法の役割や位置付けについて、もう少し検討されてもよいのではないか。

(2)日本におけるインターネットビジネス発展のための著作権法制度について

  • 現状の間接侵害等にかかる裁判例等を見ると、ビジネスを進める上での予見可能性の範囲を狭く解釈せざるを得ない部分があるのではないか。
  • インターネットでの事業はまだまだ未成熟なので、フェアユースとノーティス・アンド・テイクダウンの規定の組合せにより、裁判になる前に、ビジネスの中で議論する時間が確保できるような制度の方が柔軟であるのではないか。
  • 米国はそのような状況にある。Youtube等も様々な問題を抱えながら、一部でビジネス利用も強く模索されている。その1つの理由は、ノーティス・アンド・テイクダウンの制度があるために、そのようなサービスでも一定のところで歯止めがかかり、権利者も自ら対応しなければ権利侵害を止められないと認識しているからと考えられる。
  • 日本では、権利者とユーザの間に入る事業者に、権利侵害等への対応をすべてまかせるというスタンスであり、そうなると間に入るビジネスがなかなか育たなくなっているのではないか。フェアユースとノーティス・アンド・テイクダウンの組合せのような制度の検討により、守るべきものの範囲が明確になると事業者としてありがたいとの指摘がある。
  • インターネットを前提とすると、日本の法制度では事業が難しいとすると、所在地を海外へ移す可能性が高いとの指摘がある。ただし、米国にサーバを置けば本当にリスクはないかという問題もある。米国での行為も、日本に子会社があると問題になるケースがあるかもしれない。日本でのビジネスを考えると、海外へ所在地を移しても同じではないかとの議論もある。
  • 著作物に限らず電子データには価値があり、今後はそれを蓄積する国が有利になる可能性があると考えている。そのような電子データを蓄積する上で、障害となっているのが著作権法である。著作権法により日本では他国と比べて電子データを蓄積しづらい状況が続くと、情報量の差が生じることになる。今後、情報量に価値を見出していく社会となることを考えると、情報の移転の後に価値の移転も起こってくると考えられる。それをできるだけ日本に呼び込めるような余地がどこかにできるとよいだろう。

(3)権利行使に注力する権利者をサポートする法制度・仕組みの整備の必要性について

  • 権利行使に注力する権利者をより積極的にサポートする法制度・仕組を整備するべきであろう。それと合わせて、権利者側がサポートを受ける代わりに、著作権侵害にあたらないとして、利用を認める範囲を明確にする、または簡易な許諾方法を整備することも必要だろう。一定の利用については合法的に認められ、それを超えたものは厳しく取り締まられるという制度設計が望ましい。
  • そのためには、技術的保護手段を提供する、訴訟しやすくする、訴訟費用を補助する、侵害主体の捜索を支援する等、権利行使しやすくする仕組をつくることが必要である。また、権利行使といっても利用差止めだけでなく、利用条件を示して流通させるという方法もある。