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4.ワーキンググループ検討内容

1.ストレージサービス等に関する諸問題について

 ストレージサービス等に関する諸問題については、ネットワークを介して行うことが効率的となっている現状において、これまでユーザの手元のパソコンで行われてきた行為を著作権法がどこまで許容するかどうかの問題、サービス提供内容の違いによって管理者の責任が不明確である問題、私的使用をどこまで許容するかの問題、公衆送信の範囲をどのように解釈するかという問題、などの問題として整理することができる。
ストレージサービス等に関する諸問題について、以下のような意見が出された。

(1)ストレージサービス等の種類

  • 現在、ストレージサービス等として、純粋なファイルのストレージサービス、他者に見せる意味合いの強い動画共有サービス、中間的な位置づけとなる写真のストレージサービス、「まねきTV」のように単なる中継・変換サービス等、様々なサービスがある。このように、サービス事業者がインターネット上でハードディスク等のストレージを提供するサービスや、ユーザから離れたところにあるサービス事業者のストレージにあるリソースを共有できるサービス全般を、ストレージサービス等として検討を行った。
  • 将来的にはいっそうネットワーク化が進展し、様々なファイルをネットワーク上で預かるサービスが提供され、他者に送る時もそのままネットワーク上で渡せるようになると考えられる。

(2)サービス提供内容の違いによって管理者の責任が不明確である問題点

  • ストレージサービス等の管理者としてどこまで責任を負うべきか不明確であり、大きく2つの論点があると考えられる。
  • 第一に、ストレージサービスに格納されているデータは、誰でもアクセス可能なオープンなものから本人だけがアクセスできる限定的なもの、またそれらの中間的なものまで様々であり、データのアクセス権限によって、管理者の責任にどのような違いがあるか不明確である点である。また、どれだけ対象を限定すれば、公衆送信権の侵害に当たらないか。アップロードしたユーザ本人がダウンロードできれば、公衆送信権の侵害に当たるという判決もあるため、そこをどう考えるか。
  • 第二に、動画共有サイトなどではデータを格納するときに通常ファイル形式を変換しており、このようにファイル形式を変換する事業者の行為がどのような評価を受けるのか非常に見えづらい点である。サービス業者が変換行為を行っている場合はそれだけでも複製権の侵害であると指摘されることもあり、場合によっては、同一性保持権の侵害に当たらないとも限らない。

(3)裁判例におけるカラオケ法理の適用について

1カラオケ法理の適用について

  • MYUTA判決(注1)の判断を前提として、ストレージサービスにカラオケ法理を適用すると、営利性、管理性等の点から少なくとも複製の主体にはなってしまいかねない。その中で、ほとんどが他人の著作物という形でストレージサービスを提供する場合は権利侵害となり、何でもアップロードできるというサービスを提供する場合は権利侵害にならないということになるのか。

2営利性について

  • カラオケ法理に関しては営利性に引きずられて評価している部分もあると思われる。本来、著作権の制限の対象となるかならないかという評価に、必ずしも営利性は絡んでこないと考えられる。そのようなカラオケ法理をストレージサービスの事案にもあっさり当てはめていることが奇妙に感じられるとの指摘があった。

3管理性について

  • 管理性については、サービス事業者がどれほど物理的行為に貢献しているかということと、何をコピーするかという意思決定の部分にどれだけ関与しているかでみていくことになるのではないか。そうすると、施設を貸していることだけでは侵害とならず、コピーされるソースにどれだけ関与しているのかということも考えていかなければならないのではないか。
  • 録画ネットや選撮見録の事例では、必ず放送番組が複製されるということが明白であり、MYUTAではほとんどJASRAC(ジャスラック)の管理下にある著作物に限定される。一方、一般のストレージサービスの場合は、そのような限定がないので、そういう意味では、複製に対するコントロールが低いということになる。ただ、本来、限定なく何でもコピーできるということは、可能性としては更に拡大しているとも考えられる。しかし、そのような行為を差し止めてしまうと波及効果が大きいから、差し止めされないのか。ストレージサービスを提供する際の事業者の約款では、通常、他者の権利のあるものはアップロードしないことと記載されている。
  • MYUTA事件、録画ネット事件(注2)等の判例の流れをみると、事業者が何らかの形で複製等に介在している場合は、カラオケ法理で解釈しようという発想があるようにみえる。そのため、単なる場所貸しであればかろうじて侵害行為はないとされることになろう。しかし、このような解釈が定着してしまうと、場所貸しを外形的に装っておくなどこの解釈を逆手にとった実務が逆に広がってしまい、要領が悪い事業者が権利行使されてしまうというのもおかしいのではないか。
  • まねきTV等の裁判例から考えると、自らサーバを立ててやればよいが、別途業者に頼むと侵害となるということになるのではないか。自分でサーバを立てる方法としては、ハウジングサービスを利用することになるが、管理しすぎると録画ネットのように偽装と言われてしまいかねない。自分でサーバを立てて自宅に置いて共有するのであれば侵害にならないことになろう。
  • ただし、まねきTVでも実際にはまったく管理をしていないわけではなく、アンテナで信号を拾えるようにしているが、裁判所によるとそこまでは問題ないということである。純粋なストレージサービスの場合も、例えば外部から攻撃されるのをファイアウォールで守っているなどの管理をしているので、自らサーバを購入して管理しなければ侵害となってしまうかもしれない。そこから少しでも踏み出すと侵害となる可能性がある。

(4)私的使用の範囲について

1私的使用の許容範囲としての問題の整理

  • ストレージサービスの問題では、本来的にはストレージサービス事業者に責任を負わせるかどうかという問題よりは、私的使用をどこまで許容するかの問題として整理できるのではないか。現状は便宜的にカラオケ法理が使われており、介在している事業者に権利行使できるようにしているように感じる。技術進歩により私的使用が広がっていく中で、私的使用をどこまで認めるのかというところで議論すべきではないか。私的使用の範囲を超えるということであれば、個人ユーザであろうが権利行使できると明確にすることが本来の姿ではないか。

2複製主体についての考え方

  • サービス事業者が公衆送信や複製の主体となる場合、ユーザは公衆送信の主体にはなりえないのか、それとも複製の主体は、共同主体という可能性があるのではないか。複写事業者にコピーを頼んだ場合には著作権法第30条(注3)の権利制限に該当しないと考えられている。その際、誰が複製行為者なのか。事業者が複製しているとすると、私的複製ではないから、複製権侵害になる。個人は複製してもらっているため、複製行為者ではないといえるのかどうか疑問である。それとも事業者に複製をさせたのだから、やはり個人も複製をしているということになるが、私的複製でないから許されないということなのか。結論としては、事業者も個人も両方とも侵害にすることとしてもよいのではないのか。これは、例えば、出版社が違法なデッドコピーの本を作った場合、出版社も印刷会社も理屈の上では両方侵害に当たることと、同様に考えることができるのではないか。
  • 事業者がユーザの指示の下、手足として複製していると評価されるなら、それは私的の範囲内であり、ユーザの行為といえるのではないか。例えば、ユーザがどの番組を録画するかを特定して、個別的に録画されたものだけが自分のところに届くというサービス構成をみると、限りなく私的な領域で使われるという評価もできるのではないか。
  • 侵害行為について手足論として、他人の行為まで自分の行為(責任)として解釈するということであれば、本来は第30条の適用する主体も拡大していることになるのではないか。複製業者を手足として使ったと言えるのであれば、個人が業者に複製を頼んだ場合も私的複製の対象になって許されなければおかしいが、どうも一貫していないのではないか。
  • (注3)
    著作権法第30条1項  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
    • 一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
    • 二 (略)

3「私的」の解釈について

  • まねきTVのケースを除くと、ほとんどの事例は、著作権法第30条の私的複製に関係している。しかし、裁判所は「私的」にはあまり重きをおかずに、「家庭内」または「これに準ずる範囲」ということを物理的に考えてしまって、そこから出たところでの行為については、30条を適用することにためらうところがあるように感じられる。私的で自分しか使わないということを重視するのであれば、家を出ようと、どこに置いてあろうと「私的」なことになるのではないか。それにもかかわらず、物理的な家庭内と捉えている感じが強いのではないか。
  • 著作権法第30条1項は、家庭内で複製するのではなく、家庭内で使用することを目的とするときの規定である。本来は複製の場所は問われなくてもよいはずであるのではないか。しかし、家庭の外での複製を権利制限の対象と解している例は非常に少ない。

4間接侵害の従属性について

  • 権利制限との関係について、米国では、従属性があり、物理的行為者が適法であれば間接侵害は成立しないが、日本ではそのあたりが明確ではなく、物理的行為者が適法であっても間接侵害は成立する可能性がある。例えばキャッツアイ事件(注4)、ときめきメモリアル事件(注5)などである。MYUTA事件では物理的行為者が分からないという指摘もある。
  • ストレージサービスについて、物理的利用行為が侵害でない限り、間接侵害が成立しないと規定したとしても、日本では、著作権法第30条の公衆用自動複製機器の問題が残っているので、そこで権利侵害と処理されてしまう可能性があり、米国と同様にはならないのではないか。もっとも公衆用自動複製機器の規定をどこまで適用するかということは、まだ訴訟の場でチャレンジされていないので分からない。
  • (注4)最(三)判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁
  • (注5)最(三)判平成13年2月13日民集55巻1号87頁

(5)公衆送信の範囲について

1「公衆」の概念について

  • 公衆送信となると、私的や研究目的での場合であっても、権利制限規定はない。
  • 公衆送信の場合は、「公衆」ではない範囲を広めにとってもらうことが、唯一の権利制限規定のようなものであるが、現状ではかなり狭めに解釈する方向にあるのではないか。私的複製でいうところの家庭内その他これに準ずる範囲の外が、いきなり公衆になっているような気がする。家庭内ではないが、公衆でもないという場合がもっとあると思われるが、その領域が狭くなっているのではないか。そうすると、公衆送信権に権利制限をきちんとつけないと、公衆送信権は非常に厳しい権利になってしまう。
  • 公衆の概念を、公衆送信権に関して、他と同じように解釈していいかという問題がある。

2インターネットを介した送信と同一構内の送信について

  • インターネットは物理的にどこにでもつながっているので、インターネットを介して送信すると何でも公衆送信と解釈されてしまっているのではないか。そうすると、インターネットを使って何かしようとするとほとんどが公衆送信になり、公衆送信に当たらないものは少なくなってしまう。
  • 現在の解釈では、ビル一棟でも同一構内で法人として占有者が同じであれば200人でも1,000人でも、公衆送信にはならない。他方、見ている人数が5人でも10人でもどこかのサーバにばらばらにアクセスすると公衆送信となる。建物や物理的枠組みをかなり意識した解釈となっているのではないか。
  • ただし、同一構内なら公衆送信にはならないため、公衆送信権侵害にならないが、各部屋で画面に映せるようにサーバに置くということは、演奏や上映にあたる可能性はある。そうなると、同一構内でも結局同じことで、どの権利侵害に当たるかどうかだけの違いである。
  • ストレージサービスでは形式で評価されており、他のユーザが使う可能性はほとんどないのに、1つのコピーから複数ばらまいているので公衆送信ではないかという評価になっていると考えられる。そこは現実と著作権法上の評価とずれがあると思われる。

(6)「公衆用自動複製機器」の定義について

 「公衆用自動複製機器」を利用した私的複製は、著作権法第30条1項による著作権の制限の対象から除外されているため、広く共用サーバコンピュータが「公衆用自動複製機器」に含まれてしまうと、オンラインストレージサービス全般が権利侵害となってしまいかねない点が問題として指摘されている。「公衆用自動複製機器」の定義について、以下のような意見が出された。

1公衆用自動複製機器の適用範囲について

 ストレージサーバの他にも、例えば、インターネットカフェ等の公衆用PC、複合的機能を有するコピー機器等が「公衆用自動複製機器」に該当する可能性があり、そうすると、これらを利用した複製は私的複製に該当しない可能性がある。

a)公衆用PCについて
  • インターネットカフェのPCについてもフロッピーディスクを入れてデータを複製できるようになると、公衆の用に供されている自動複製機器になるという指摘もある。その場合、インターネットカフェにおけるプリントアウトは著作権法第30条によって許される私的複製にはならないということになる。ただ、インターネットのウェブサイトについては、開設者がサイトを開いた段階でそのウェブサイトが印刷等されることについて黙示的に承諾しているのではないかという考え方もある。しかし、そういえない場合、公衆用自動複製機器の適用範囲を広くとると、私的複製の範囲は狭くなってしまうことになる。
b)複合的機能を有するコピー機器
  • 複合的機能を有するコピー機器は「専ら文書又は図画の複製に供するもの」ではないので、たとえ文書をコピーする場合であっても附則第5条の2(注6)で適用除外とはならず、著作権法第30条1項1号の規定により、このようなコピー機器を使用して文書をコピーすることは私的複製には該当しないということになる。
  • (注6)
    附則第5条の2 著作権法第三十条第一項第一号及び第百十九条第二項第二号の規定の適用については、当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする。
c)ストレージサーバについて
  • ストレージサーバについても公衆の用に供されている場合、サーバを物理的に捉えて、1つのサーバを複数の人が使えるとなると、公衆用自動複製機器に該当するとされる可能性がある。そうすると私的複製であるということで行為主体はユーザであると主張しても、著作権法第30条1項1号の規定により、少なくともユーザは違法になる。事業者については、第119条2項2号(注7)の「営利を目的として複製に使用させた者」に当たる可能性がある。広く共用サーバコンピュータが「公衆用自動複製機器」に含まれてしまうと、オンラインストレージサービス全般が権利侵害となってしまいかねない点が問題として指摘されている。
  • 極論すれば、メールサーバ自体も公衆用自動複製機器に該当する可能性がある。
  • (注7)
    著作権法第119条2項  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
    • 一 (略)
    • 二 営利を目的として、第三十条第一項第一号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
    • 三、四(略)

2公衆用自動複製機器による私的複製を権利制限から除外する著作権法第30条1項1号の削除の可能性について

a)本規定が現在において実質的に意味を持つ可能性のある場合について
  • 著作権法第30条1項1号の規定が不要ということであれば、30条のもともとの規定をどのように見直すかという議論はまた別途出てくるかもしれないが、附則第5条の2で「専ら文書・図画の複製に供するもの」を適用除外するという経過措置があるので、この第30条1項1号の規定だけが実質的に意味を持っている局面はそれほどないと考えられる。
  • この規定に実質的な意味があるとすると音楽CDコピーへの対策だけではないか。DVDは技術的保護手段が講じられているので、この規定が削除されても、技術的保護手段を外す機能付きのダビングマシンでなければならないため、そちらで押さえることができる。コンピュータソフトウェアについても、技術的保護手段を講じておくことによって法的に対応することができる。音楽CDには技術的保護手段を講じることができないので、音楽CDに関してはこの規定の意味があると考えられる。
b)規定削除の可能性について
  • 著作権法第30条1項1号、附則第5条の2は削除してもよいのではないか。昔は機械を使うと大量複製されるということであったが、現在、機械を使わない複製の方が珍しいと考えられる。現在では、家の中でも同じような機能の機械を多く所有しているので、程度の差こそあれ著作権法第30条1項1号の規定を削除してもそれほど変わらない。むしろ、カラオケ法理などの方で議論をすればよいのではないか。
  • たしかに、ビデオレンタル店にビデオダビング機器が置いてあり、借りたビデオをそこでコピーして持ち帰ることが一番の問題である。このように、コピーするものとコピー機器の両方が店舗に備わっているような場合には、土地宝典事件(注8)の裁判例のように、店舗が複製主体とみなすことができよう。さらに、使用させた者が侵害者になるのであれば、著作権法第30条1項1号の規定は不要ではないかと考えられる。また、著作権法第119条2項2号の規定についても、それ自体の侵害責任の方がもっと重くなり、営利目的に限定されないので同様に不要となると考えられる。
  • 著作権法第30条1項1号の規定が実質的に音楽CDにしか意味を持たないのであれば、規定がなくなった方がよいのかもしれない。現在、利用者の中には、大きなレンタル屋に行くとCDを借りて、隣のインターネットカフェのPCでコピーして返却している人もいる。規定ができた当時は、高速ダビング機が高価で普通の人が手に入らなかった時代であるが、現在はデジタルで複製できる機器が普及しているので、このようなものだけを禁止してもほとんど意味がない時代になったといえよう。ただし、このような状態があるべき姿かどうかは別の問題である点には留意しておく必要がある。

(7)解決の方向性について

1事業者としての考え方

  • 事業者としては、規定を作って明確化して欲しいという要望がある。
  • 実際、日本では企業としては冒険をしないという判断をすることがリスクヘッジということになるとの指摘もある。間接侵害に関する規定についても、この要件を満たせば著作権侵害に当たらないし不法行為の責任も負わない、というところまで規定できないとあまり意味はないのではないか。
  • 米国の企業はリスクを負ってビジネスをしているのに対して、日本の企業は、まずは適法にしてもらって、安全だと分かってからビジネスをするという風土があるのではないか。読売オンライン事件(注9)などの事案では、著作権侵害にならないが不法行為になるとの判断であり、いくらか支払って事業を続けられると思うのだが、現実にはそのような会社はないのではないか。

2特許法型の間接侵害の規定について

  • 間接侵害の規定を作ろうという議論も出ているが、特許法型の物特定の規定は、著作権法の場合には難しいのではないか。

3セーフハーバー規定について

  • 従来の裁判例では、カラオケ法理を拡大しているから、これは放っておいてもよいし、裁判官もこのままやらせて欲しいと考えている人もいる。明文化するとかなり限定されてしまったり、規定しても従来の裁判例とあまり変わらなかったりするのではないか。
  • 著作権法本体で明確化して欲しいということは、侵害となる行為を明確にして欲しいということよりは、侵害とならない行為を明確化して欲しいということではないか。
  • プロバイダ責任制限法では、ある一定の条件を満たしていれば少なくとも損害賠償責任は負わないという規定がある。著作権法でも第113条は「みなし侵害」の規定であるが、第113条の2が「みなし非侵害」の規定となっている。これは、一定の条件であれば侵害にならないものとみなすという内容である。例えばストレージサービスで一般向けであるものなどについては、一定の条件で「侵害に当たらないものとみなす」といったように、セーフハーバー規定を設ける方法もあるのではないか。
  • 事後的な対応も含めてセーフハーバーを設けるということも、1つの方法かもしれない。ストレージサービスの外形的なところをある程度緩くしておいて、結果的に侵害品をまき散らしている場合を救わないようにしていけばよいのではないか。プロバイダ責任制限法のような「ノーティス・アンド・テイクダウン」がいいのか分からないが、何らかの形で事後的なことを含めて処理しないと難しいのではないか。

4侵害に介在する主体の行為を直接差し止める方法について

  • 悪意を持つ事業者がストレージサービスで何らかの介在サービスをして、侵害品をばらまいていても自社は何もやっていないと逃げてしまっているのであれば、権利者側として差し止めることが意味を持つという発想は理解できる。
  • 現在は、カラオケ法理で著作権法侵害主体と評価し、著作権侵害者だから差し止め請求できるという段取りとなっているが、たとえ著作権侵害主体と評価しなくても、侵害品をまき散らす元凶であれば、侵害に介在する主体の行為を直接差し止めできるという発想ができないか。ただし、どのように理論構成するかという問題がある。物型でおさえていってもうまく逃げられてしまう可能性があるし、本来差し止めるべきでないところの人が差し止められてしまう可能性がある。

5事業者に求められる責任としてどこまで明確化を図るべきかについて

  • 差し止めと損害賠償では、ビジネスへ及ぼす影響が異なる。損害賠償だけの場合にはいわば強制許諾のようなことになり、ビジネスとしては、ある程度算段をつけてユーザからお金を徴収すれば何とかなるともいえる。しかし、差し止めの場合には非常に厳しく、ビジネスが終わるということである。解決策との関係では、どこまでのエンフォースメントを認めるかということである。
  • ただし、企業の立場から考えると、違法で損害賠償と判断されると、コンプライアンスの面から問題となる場合がある。企業としては、差し止めか損害賠償か、その金額はいくらなのかということよりも、違法行為をしている企業と言われることの方が痛いという判断をする会社もあるのではないか。