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2.4.その他の論点

(1)著作物データベースの構築・充実化

ア)背景:現状の問題点、生じている障害等

  • 著作物のデータベースが充実していないことが将来的には大きな問題になると考えられるため、人手をかけず、技術的に著作物の検索が可能な仕組(フィンガープリントを使ったデータベース等)ができればよいのではないかとの指摘があった。あわせて、日本では米国と比較してメタデータの整備が遅れているのではないかとの指摘があった。
  • 著作物がパブリックドメインであるかどうか確認できないことが問題であるとの指摘があった。実際、コンテンツ配信事業者にパブリックドメインの著作物を配信したい要望が寄せられるが、コンテンツ配信事業者としてパブリックドメインであることの確認ができないため、現在すべて断っている状況にあるようである。

イ)解決策の案

  • フィンガープリントを使ったデータベースを構築するという方法も考えられるのではないかとの指摘があった。

(2)著作権管理団体との交渉の円滑化、利用申請・支払い手続の簡便化

ア)背景:現状の問題点、生じている障害等

  • JASRAC(ジャスラック)が権利者から翻案権を預かっていないことは問題であるとの指摘があった。この点が問題となった事例としては、記念樹事件(注1)、『おふくろさん』(注2)等がある。また、既存楽曲のサンプリングを伴うヒップホップが盛んになっているが、若いアーティストがそのような楽曲をネットで発表する際、サンプリング元のアーティスト本人に許諾してもらうことは困難であり、同様の問題となりうるとの指摘があった。
  • 現状のJASRAC(ジャスラック)の使用料規程では、CS放送等であれば一括して権利処理可能であるのに、ネット配信ではプラスのコストが必要となることが問題であるとの指摘があった。プロモーション用に無料で配信するものでも、曲数、リクエスト回数に応じた多額の使用料が必要となる状況であり、料率をもっと論理的にして欲しいとの指摘があった。特に、演劇で多数の楽曲を利用してネット配信する場合に許諾を得るためのコストは大きい(商用配信のダウンロード形式の場合、現行の規程ではJASRAC(ジャスラック)への使用料が情報料の100パーセントを超える可能性がある)との指摘があった。
  • 公衆送信権があるために、ダウンロードごとに課金するという考え方がベースになり、ユーザの用途によって、その都度支払が必要になってしまう。
  • JASRAC(ジャスラック)から動画共有サービスにおける利用許諾条件について提示されたが、契約対象に隣接権が含まれていない点で不十分であるとの指摘があった。また、レポーティング、カウント等の管理業務の負荷が大きいとの指摘があった。例えば、ある音楽コミュニティサイトでは、利用された楽曲をすべて報告しなければ、無料サイトの使用料が適用されないため、個人ユーザがアップロードしたMIDIデータについて、人手をかけて楽曲を特定してJASRAC(ジャスラック)に報告し、年間5万円の使用料を支払っているとのことである。このように、本来、著作権者に十分な使用料が分配されなければならないのに、利用した著作物の特定等に関わる管理業務にコストがかかっては本末転倒であるとの指摘があった。一方で、放送番組の使用料はブランケット方式で支払われるため、利用状況の実態と権利者への分配が整合的でないといった問題があるとの指摘があった。
  • (注1)『記念樹』の作曲が『どこまでも行こう』の作曲者の同一性保持権の侵害とされたため、JASRAC(ジャスラック)が利用許諾を中止し、公の場での『記念樹』の歌唱・演奏が事実上不可能となった。
  • (注2)歌詞の冒頭に語りを付加したバージョンが原作詞者の同一性保持権の侵害とされ、JASRAC(ジャスラック)が利用許諾を中止した。

イ)解決策の案

  • インターネットでの利用報告に相応しい簡便な仕組みが必要であるとの指摘があった。

(3)その他:インターネットでの配信地域の限定について

ア)背景:現状の問題点、生じている障害等

  • インターネット配信においても、コンテンツ二次利用のライセンスを、利用する地域ごとに与える慣行があるため、地域を限定して配信する必要が生じることが多い。地域を限定したインターネット配信は、米アカマイ社が提供するIPドメインのデータベース・サービスを利用すれば可能だが、世界的にこのようなサービスを提供する企業が少ないため、コストが高くつくとの指摘があった。また、このようなIPドメインのデータベース・サービスを利用しても、日本以外からのアクセスを完全に防ぐことはできないとのことである。別方法として、クレジットカード課金を行っている場合、日本のカードを持っているユーザだけに配信することは可能であるが、プロモーション等のため無料配信する場合には対応できないという問題点があるとの指摘があった。

イ)解決策の案

  • IPアドレスのデータベースが、コンテンツ事業者に広く開放されるとよいのではないかとの指摘があった。