参考資料3−5
昭和45年の現行著作権法では、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする複製(以下「私的複製」という。)については、実際上家庭内の行為について規制することは困難である一方、零細な複製であり、著作権者等の経済的利益を不当に害することがないと考えられたため、著作物を複製することができるとされている(第30条第1項及び第102条第1項)。
他方、その後、技術革新を踏まえ、私的複製の範囲として権利制限を認めておくことが不適切と考えられる事項については、適宜、その範囲の見直しを行ってきており、近年では複製・通信技術の発達により、特に、インターネットを通じた著作物等の交換・共有等により、私的領域においても、大量かつ広範な複製が可能となっている。また、私的領域であっても、契約や著作権保護技術を通じた権利者の利益の確保が可能な場合も生じてきている。
このような背景の下で、関係者からの著作権法改正に係る要望事項を踏まえて取りまとめられた「著作権法に関する今後の検討課題」(平成17年1月24日文化審議会著作権分科会)では、「条約上の制約や私的使用目的の複製の実態を踏まえて、認められる範囲の明確化など、私的使用目的の複製の見直しに関して検討する」とされた。
さらに、これに基づき行われた検討では、平成19年1月の著作権分科会報告書において、
について、私的録音録画小委員会において検討を進めることが適切であり、本小委員会としては、当該検討の状況を見守り、その結論を踏まえて、必要に応じて、私的複製の在り方全般について検討を行うことが適当とされた。
(資料2参照)
資料2のとおり、私的録音録画小委員会においては、現在、録音・録画に関して、違法複製物又は違法配信からの私的複製の取扱い、
適法配信事業から入手した録音・録画物からの私的複製の取扱いなどについて検討されているところである。
他方、昨年10月12日の著作権分科会やその後の意見募集においては、違法複製物又は違法配信からの複製については、ゲームソフトやビジネスソフトの被害による権利者の不利益も顕在化しているとして、私的複製の範囲の見直しの検討の対象を録音・録画に限定せず、著作物全体を対象として議論を行うべきとの指摘もあった。
そこで、本検討の対象として、例えば、録音・録画に加えて、不利益が顕在化していると指摘されているプログラムの著作物についても検討を行うこととするか、若しくは著作物全体について検討を行うかなど、私的録音録画小委員会における検討の趣旨を踏まえれば、検討の範囲をどのように捉えるべきか。
第9条 | 〔複製権〕
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【『外国著作権法令集(30)-フランス編-』(社団法人著作権情報センター,2001年)[大山幸房 訳]10頁,31頁】
第122の5条 | 著作物が公表された場合には、著作者は、次の各号に掲げることを禁止することができない。
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第211の3条 | この章において創設される権利の受益者は、次の各号に掲げることを禁止することができない。
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【渡邉修 訳「2003年版 ドイツ著作権法(上)」『知財ぷりずむ』(2005年7月)Vol.3 34 31〜32頁】
第53条 | 私的使用及びその他の自己使用のための複製 |
1 | 自然人が私的使用のために任意の媒体へ著作物を少数複製する行為は、それが直接的にも間接的にも営利目的を持たず、かつ複製するために明らかに違法に作成されたひな形を利用するのではない限りは、許される。複製権者は、複製が無償で行われる限りにおいて、又は任意の写真製版方式若しくは類似の効果を持つその他の方式を用いて紙若しくは類似の媒体に複製する限りにおいて、他者に複製物を作成することもできる。 |
2 | 次の目的のために、著作物の少数の複製物を作成し、又は作成させることは許される。
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3 | ある著作物のわずかな部分、わずかな量の著作物又は新聞若しくは雑誌において発行され、若しくは公衆に利用可能にされた個々の寄稿物の複製物を、次の場合に、自己使用のために作成し、又は作成させることは、その複製がこの目的のために必要であり、かつその範囲に限り、許される。
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4 | 次のものの複製は、それが手書きによるものでない限りは、権利者の同意を得た場合、第二項第二号の要件が満たされる場合、又は少なくとも二年間、品切れになっている著作物については自己使用の場合、にのみ許される。
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5 | 第一項、第二項第二号から第四号及び第三項第二号は、データベースの著作物であって、その要素が、電子的手段により個別にアクセスされるものには適用しない。第二項第一号及び第三項第一号は、学術的使用又は授業における使用が営利目的で行われるのではないという条件で、そのようなデータベースの著作物に適用される。 |
6 | 複製物は、頒布してはならず、公衆への伝達に利用することもできない。但し、適法に作成された新聞及び品切れの著作物の複製物、並びに毀損し、又は失われたわずかの部分が複製物で代替されているような著作物の複製物を貸し出すことは許される。 |
7 | 著作物の公の口述、演奏・上演又は上映を録画媒体又は録音媒体へ収録すること、美術の著作物の設計図及び構想を作品に仕上げること、並びに建築の著作物の模造は、常に権利者の同意を得た場合に許される。 |
【『外国著作権法令集(29)-アメリカ編-』(社団法人著作権情報センター,2000年)[山本隆司・増田雅子 共訳]25頁】
第107条 | 排他的権利の制限:フェア・ユース 第106条および第106A条の規定にかかわらず、批評、解説、ニュース報道、教授(教室における使用のために複数のコピーを作成する行為を含む)、研究または調査等を目的とする著作権のある著作物のフェア・ユース(コピーまたはレコードへの複製その他第106条に定める手段による使用を含む)は、著作権の侵害とならない。著作物の使用がフェア・ユースとなるか否かを判断する場合に考慮すべき要素は、以下のものを含む。
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欧州委員会が04年及び05年に行ったEU構成国への意見募集への各国からの回答によれば、ドイツ、スウェーデン、デンマーク、スペイン、フランス及びハンガリーは、私的複製の原本が適法なものであるべきとしている、とされている。
この他、EUによれば、フィンランド法においても、私的複製は合法的に入手した原本から作成されなければならないことを規定している、とされている。
(出典:「BACKGROUND DOCUMENT‘FAIR COMPENSATION FOR ACTS OF PRIVATE COPYING’」、Brussels 14/02/2008、欧州委員会(事務局仮訳))