資料4
(社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会作成)
社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は、文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理に関する意見募集に関してパブリックコメントを提出し、30条の適用範囲の除外事項の検討にあたり、どの著作物の私的ダウンロードを30条から除外するのが相応しいのかについて、著作物全般について議論していただきたい旨、主張しております。
また、併せて法改正の際にはその実効性を確保するための環境を整備することが必要である旨も、主張しております。
上主張に関し、インターネット上における違法コンテンツの流通実態についてご報告いたしますので、本委員会における議論に資すれば幸いです。
ファイル共有ソフトとは、ピアツーピア技術と呼ばれるコンピュータ同士をサーバ等介することなく通信させる技術を利用したソフトウェアで、自己のコンピュータ内にあるファイルを、他のユーザーが直接アクセスすることによって、ファイルをやりとり(共有)することを可能にしたソフトウェアのことです。
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【図 Napsterの仕組み】 |
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【図 Limewireの仕組み】 |
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Winny類似のファイル共有ソフトは、2-2(3)で説明したとおり、コンテンツがネットワーク上に流通するに際し、「キャッシュ」と呼ばれる暗号化されたファイルとなって流通します。
「キャッシュ」は”自主的に”アップロードした場合にはもちろん、ダウンロードした場合も「キャッシュフォルダ」に保存され、ネットワークに公開され(送信可能化状態になり)ます。
また、アップロードあるいはダウンロードを行わずとも、「中継」と呼ばれる機能によって自動的に複製され送信可能化状態になる場合もあります。
したがって、Winny類似のファイル共有ソフトにおけるコンテンツの流通は、
を判別することができず、法的責任を追及するにあたっての立証が困難であるのが実情です。
本調査は、インターネットユーザーにおけるファイル共有の利用実態を把握することで、今後の効果的なファイル共有対策を講じるための基礎的資料を作成することを目的として実施しました。
本調査は、WEBアンケート方式で実施しました。なお、総回答数は20,301件です。
2007年9月14日〜9月24日
アンケート調査によると、「Winnyを含むファイル共有ソフトを現在利用している者」の割合は、インターネット利用者(今回のアンケートに回答した者の総数とします。)の9.6パーセントという結果となり、2006年6月に実施した調査の結果(3.5パーセント)に比べて、ファイル共有ソフトの利用は急増しています。
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【図1 Winnyを含むファイル共有ソフトを現在利用している者(年代別)】 |
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【図2 ダウンロード経験のあるファイルのジャンル】 |
音楽関連ファイルや映像関連ファイルに加え、ソフトウェアや書籍関連ファイルもダウンロード経験があると回答しています。
ファイル共有ネットワークで流通しているコンテンツの情報を分析し、効果的なファイル共有対策を検討するために実施しました。
各ファイル共有ネットワークに対応したツール(当該ファイル共有ソフトとは別のソフトウェア)を使用し、実際のネットワークに流通している情報(ファイルそのものではなく、ファイルの名称、ファイルを保有するコンピュータのIPアドレス等の情報)を取得、分析しました。
2007年9月28日17時から9月29日17時までの24時間
収集された情報より、ランダムに約20,000件を抽出し、抽出データに含まれるファイル名を確認の上、各ファイルに推定されるジャンルと権利の対象及び許諾の有無について調査しました。
本調査により、ファイルの流通状況を確認したところ、Winnyに関しては、全体の1割程度がプログラムや書籍関連のコンテンツです。
また、全体の約51パーセントが何らかの著作物であり、その約92パーセントが著作権が存続しておりかつ著作権者の許諾なく流通されていると推測されます。その他のファイル共有ソフトに関してもほぼ同様です。
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【図2 Winnyにて流通しているコンテンツの状況(種類別)】 |
ACCSが把握しているファイル共有ソフト以外の違法コンテンツ流通に関する問題としては、携帯用ゲームソフトなど容量の小さいファイルを中心としたアップロードWebサイトが中国やヨーロッパ等の海外のサーバーに蔵置されていることが散見されます。
当該サイトは、日本語以外の言語で記述されたものが多いため、日本人が蔵置しているかどうかは判然としませんが、日本からもアクセス可能な状態にあります。
このように、インターネット上には様々な種類の著作物が違法に流通しており、また、現行法制では公衆送信権侵害の責任追及が非常に困難です。このような状況を勘案していただき、あるべき法制度につき議論を行っていただきたくお願い申し上げます。
また、ACCSでは著作権保護のためには、「法制度」「保護技術」「教育・普及啓発」のバランスが大切だと考えておりますので、本議論をしていただくにあたっては、この点もご考慮願えればと存じます。
以上