第4節 検索エンジンの法制上の課題について

個人・団体名 意見
イートライジャパン株式会社  特許出願に関しては、発明内容をインターネットのホームページに掲載した場合、公衆に告知されたとことになり、新規性が失われ特許要件を満たさなくなります。
 つまりインターネットは公衆の場であるので、インターネット上に置かれた著作物は検索エンジンに限らず著作物の利用が黙示的に許諾されたと推認することができると考えます。
 著作権保護に厳格な芸能プロダクションは自らのホームページにおいてもタレントの写真を掲載しないので、著作物を保護しようとするならば、そもそもインターネット上に置くべきではないと考えます。
エヌ・ティ・ティ レゾナント株式会社
  • 56ページ第4節検索エンジンの法制上の課題について2検討の概況(2)立法措置による対応の可能性と論点1権利制限規定の立法による対応の可能性 c権利制限の対象範囲 2)検索エンジンにおける行為<3>検索結果の表示(送信)
    • 検索結果の表示(送信)に係わる権利制限対象範囲を包括的とするべきです。検索エンジンサービス提供者が、新たな表示方法を研究・開発しても、その方法が権利制限行為ではなく直ちに権利侵害であるとされると、検索エンジンサービス提供者の研究・開発意欲を萎縮させ、その結果、検索エンジンサービスの今後の発展を阻害するおそれがあります。
  • 58ページ第4節検索エンジンの法制上の課題について2検討の概況(2)立法措置による対応の可能性と論点1権利制限規定の立法による対応の可能性d権利者保護への対応2)技術的回避手段以外による意思表示
    • 技術的回避手段による意思表示のみとするべきです。技術的回避手段以外の方法により意思表示をした者が正当な権利者であることの確認・判断を検索エンジンサービス提供者側が行うことは極めて困難であり、その結果、なりすまし等があった場合、誤って正当な権利者のウェブページまで検索対象としない措置を講じ、権利者が不利益を被る可能性があります。
  • 61ページ第4節検索エンジンの法制上の課題について3検討結果
    • 検索エンジンにおける著作物の利用行為については、米国等において既に著作権の制限が認められてきているところであり、日本においても、著作権を侵害するおそれがあるとされる行為に関して権利制限を設けることにより、検索サービス提供上の法的リスクを負うおそれを払拭することができるのであれば、立法措置による対応に賛成します。
株式会社 国際電気通信基礎技術研究所
  • A.利用実態等の調査により明らかになる実際上の課題に加えて、インターネットにおけるコンテンツの利用を促進する技術開発のためのコンテンツの二次利用については、現状の技術が提供可能な利用形態を超えた範囲でコンテンツの複製、引用を超える範囲での利用などが必要となる場合がある。これらコンテンツの利用を促進する新技術の研究開発のための、コンテンツの二次利用に関する法制の整備がなされなければ、効果的な技術的解決策の進展が遅滞することとなる。研究開発目的での法制の整備を望む。
  • B.検索エンジンについての具体的な課題に対して述べられているが、クローリングの結果は、単に検索用に用いられるだけではない。たとえば、機械翻訳システムの知識源や、言語教育用の知識源としても利用可能である。これらの技術の研究開発のための利用についても、現行の著作権法では明文の規定がなく、解釈に委ねられており、研究開発を行う者の法的地位の安定性が確保されていない。そのため、Web情報を扱う情報システム(検索エンジンの開発を含めて)の実験・開発では、小規模なデータに対するものとなりがちであり、技術開発の進展を停滞させる要因となっている。研究開発でのコンテンツ利用に対する法制の整備をすすめることで、現実のコンテンツの利用が促進される。これらの技術開発は、コンテンツの流通を目的にしたものだけでなく、原著者の識別技法などの著作権者を保護する技術の進展にも寄与するものであり、法制の整備を期待する。
株式会社ジャステック
  1. 45ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 1.問題の所在
    (1)検討の背景
    【意見】
     問題の所在については、中間まとめの意見と同意見である。
     但し、権利者の私権を保護しつつ、検索エンジンサービス提供者の法的地位の安定性を確保するためには、法律による規制のみならず、所謂海賊版を摘発するようなシステム上の仕組みを作ることが必要と考えます。
     インターネット上のコンテンツを誰もが自由に活用できるようにすることと、権利者の私権を保護することは、〔車の両輪〕であるべきです。
  2. 47ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 1.問題の所在
    (2)検索エンジンの仕組み
    1〕ソフトウエアによるウエブサイト情報の収集・格納(クローリング)
    【意見】
     ウエブサイト開設者が、クローリングされることを回避するためのプロトコルが準備されていることを、如何にして周知させるかが必要である。
     但しここでも、権利者の与り知らぬところで、勝手にコンテンツがインターネット上にアップ(不正登録や所謂海賊版など)される場合には、このプロトコルは用をなさなくなります。
     従って、やはり海賊版などを監視・排除するシステムが必要であると考えます。
  3. 49ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 1.問題の所在
    (3)国際動向
    【意見】
     法律上の規制とは別に、著作権侵害で訴訟された米国のYouTube社は、サイトに投稿されるコンテンツが、他の著作権を侵害していないかを検証するシステムの開発に着手しました。最初は音声・音楽関係を、次に画像・映像に関するコンテンツの検証に進むと聞いております。このことは、YouTube社のみならずその親会社のGoogle社の社会的信用を増加させ、結果としてインターネット上のコンテンツの自由な活用につながるものと思われます。
     わが国でも同様に、インターネット上にアップされる前に、つまりは水際で著作権を保護する仕組みが必要と考えます。
  4. 50ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 2.検討の概況
    (1)現行法下での解釈による対応の可能性と論点
    1 検索エンジンにおいて行われる行為の著作権法上の位置づけについて
    1〕ソフトウエアによるウエブサイト情報の収集・格納(クローリング)
    【意見】
     ウエブサイト情報の収集・格納(クローリング)について、個人の研究や趣味で行われるものは、私的複製であり、著作権法上も許されるものであります。
  5. 51ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 2.検討の概況
    (1)現行法下での解釈による対応の可能性と論点
    1 検索エンジンにおいて行われる行為の著作権法上の位置づけについて
    2〕検索用インデックス及び検索結果表示用データの作成・蓄積
    【意見】
     検索用インデックスの作成・蓄積は、データ収集、データ処理にあたり、著作権上問題とならないとの指摘には同意します。
     また検索結果表示用データの作成については、オリジナルの著作物全てをそのまま再現するのでなければ、著作物の利用に該当はしないと考えるべきと思います。
  6. 51ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 2.検討の概況
    (1)現行法下での解釈による対応の可能性と論点
    1 検索エンジンにおいて行われる行為の著作権法上の位置づけについて
    3〕検索結果の表示(送信)
    【意見】
     検索結果表示データが、キーワードの存否あるいはその特定部分の表示であるならば、引用の範囲内であり、著作権法上の送信可能化及び自動公衆送信とは認められないと考えます。
  7. 51ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 2.検討の概況
    (1)現行法下での解釈による対応の可能性と論点
    2 現行の権利制限規定(引用)による対応の可能性
    【意見】
     記述の内容と同意見です。
  8. 52ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 2.検討の概況
    (1)現行法下での解釈による対応の可能性と論点
    3 黙示の許諾にによる対応の可能性
    【意見】
     記述の内容と同意見です。
  9. 52ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 2.検討の概況
    (1)現行法下での解釈による対応の可能性と論点
    4 権利濫用の法理にによる対応の可能性
    【意見】
     記述の内容と同意見です。
  10. 61ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 3.検討結果
    【意見】
     「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ」の基本的見解に賛同しつつ、一日も早い法改正を期待致します。
     我々はその中で、安全な著作権保護システム構築の分野において、微力ながら貢献させて頂ければ幸いと存じます。
情報処理学会 データベースシステム研究会  ソフトウェアによるウェブサイト情報の収集・格納(クローリング)については,あらかじめ公衆送信されたコンテンツの閲覧であるため大きな問題はないと考える。また,検索結果表示用データとして作成されるスニペットやサムネイルを検索結果として表示する行為については,あくまでも「インデックス」情報を構築していると捕らえた方が自然であり,著作物としてこれらを直接的に利用するという意思は無いと考えられる。
 また,保護されたWebコンテンツ(Webサイト)の閲覧については,著者らの意図を充分に考慮し,その利用に関するガイドラインの早期整備を期待する。なお,非営利団体(例えば,学会など)については,相互に連携して複数の学会がWebコンテンツを共有できる枠組みについても,メタルールとしてのガイドラインの策定を早急に進めるべきと考える。
チームラボ株式会社
  • 53ページ 1 権利制限規定の立法による対応の可能性
  • 57ページ 1)技術的回避手段による意思表示
     情報提供側で、クローラー拒否の「技術的回避手段(Robot.txt等)」が取られているか否かをもって、当該著作物を権利制限するかしないかの判断材料とすることは有効と考えられる。
  • 58ページ 2) 技術的回避手段以外による意思表示
     電話・メール等での個別の削除意思表示による「技術的回避手段以外の対応策」をとることは望ましいと考えられる。しかしながら、検索エンジンサービスを運用する上で、妥当で現実的な環境下(体制・対応手順・経費等)での対応策であることが望まれる。
  • 59ページ f)違法著作物への対応について 違法著作物への対応についても、検索エンジンサービス提供者に負担が大きくないことが望まれる。
財団法人日本情報処理開発協会 データベース振興センター
  • 該当ページ及び項目名:「56ページ、〈3〉 検索結果の表示(送信)」
    <意見>
     検索結果の表示について権利制限を行うべき対象範囲が、当該表示が権利者の利益を不当に害するものとならないものとすべきことは論を待たない。一方で、権利制限対象範囲が過度に狭くなりすぎると、極端な場合、検索結果の表示が検索エンジンサービス提供者間で画一的なものにならざるを得なくなるおそれがあり、検索エンジンの健全な発展の観点からは必ずしも望ましくなく、文化の発展という著作権法の目的に照らしても望ましいとは言えない。検索結果の表示に係る権利制限対象範囲が、過度に狭いものにならないよう留意すべきである。
  • 該当ページ及び項目名:「53ページ、1権利制限規定の立法対応の可能性について」
    または
    該当ページ及び項目名:「57ページ、1)技術的回避手段による意思表示」
    <意見>
     情報提供側でのクローラー拒否の明示の有無により、当該著作物を権利制限するかしないかを明確にするのは有効と考える。
     クローラー拒否が明示されていない場合は、55ページから56ページにある「ウェブサイト情報の収集・格納」、「検索用インデックス及び検索結果表示用データの作成・蓄積」、「検索結果の表示」にかかる著作物の蓄積・表示については、権利制限をするもとのして扱うことを強く要望するものである。
  • 該当ページ及び項目名:「59ページ、2)技術的回避手段以外による意思表示」
    <意見>
     「権利者が、技術的手段以外の意思表示にもとづき、合理的な期間内に当該著作物の利用停止又は削除を請求できるような阻止を取ること」は、権利者尊重の観点からはあり得べし措置であるが、検索エンジンサービス提供者側に環境整備等(手続き、体制、経費)の負担が過度に大きくならないよう留意することが望まれる。
  • 該当ページ及び項目名:「58ページ、e 違法複製物への対応」
    <意見>
     「違法複製物であっても、一旦権利制限の対象としつつも、検索エンジン提供者に対して、事後的に違法複製物の利用停止又は削除の措置を義務づける」ことは、有効であると思われるが、検索エンジンサービス提供者側に環境整備等(手続き、体制、経費)の負担が過度に大きくならないことが望まれる。
社団法人電子情報通信学会データ工学研究専門委員会
  • 1)中間まとめにも記述があるように、この分野は社会的に重要で公共性の強い情報環境であるという点から、欧米、韓国、中国等の検索エンジンが国としても戦略的な取り組みがなされており国際競争が行われている分野である。
     わが国でも「情報大航海」「情報爆発IT基盤」等の戦略的研究開発が進められている。このようなわが国として戦略的に取り組む必要のある分野ということを考慮すればわが国の検索エンジンサービス提供者の法的地位安定性の実現が強く望まれるものと考える。ぜひこの方向で議論をしていただきたい。
  • 2)検索エンジンサービス提供者の著作権法適用に関しては、中間まとめにも記述があるように、著作権法適用に関してサーバ所在地なのかデジタルコンテンツ最終受信者(これは複製を非常に拡大解釈されてしまっているが)の所在地等の国際的問題に発展する問題を抱えている。
     国際的に問題なく、しかもわが国の情報化が戦略的に発展できるように検討することが重要であると考える。このような点を十分に考慮していただきたい。
  • 3)最近のインターネット技術(ネットワークやソフトウェア技術)の発展により仮想化が進み、キャッシュや複製が全体システムのどこに所在しているかが、負荷や機能等から自由に制御可能な技術となりつつある。著作権者の権利保護ももちろん重要なことであるが、人間にとって快適で安全な社会を形成する社会インフラとしての情報技術の発展を阻害しないことを強く望む。
  • 4)わが国として戦略性が強く意識されている検索エンジンの研究開発には、検索エンジンサービス提供者の法的地位安定性とは異なる性質の安定性も必要である。すなわち、検索エンジンサービス提供者を対象とする本節の記述に加えて、公共性の高い研究開発における著作権権利制限に関する議論も行っていただきたい。検索エンジンサービス提供者の安定性の議論に研究開発での権利制限が含まれるという方向性の議論になれば、それはもっとも望まれるものである。
社団法人 電子情報技術産業協会  著作物の流通を含めインターネットを活用しての経済活動はますます拡大しており、検索エンジンは、インターネットを活用するにあたり、今や必要不可欠なものとなっています。中間まとめにおいて認識されている通り、検索エンジンサービスの提供者がそのサービスを提供するために行う著作物の利用行為に関し、著作者の権利との調和を衡量しつつも、権利制限を置くことによって適法であることを明確にすべきです。これにより、検索エンジンサービスの提供を法的に安定的なものとすることは、ひいては著作者の利益にもかなうものと考えられます。
 検索エンジンサービスの提供者が、権利者による意思表示に従ってサービスの対象とならないように対応することは、著作者の被る不利益に鑑み、必要な措置であると考えられます。この際、技術的、現実的に可能な範囲での措置とすべきですが、検索エンジンサービス提供者側に過度な負担とならないよう配慮することが必要と考えます。違法複製物への対応については、そのようなサービスを行う事業者の行為を正当化できるものではないものの、検索エンジンサービスの提供者に違法な複製物であるかどうかを事前に判断することを要求することは実現不可能であるから、事後的に権利者から要請があった際には削除等による合理的な対応をすることで足りるとすべきであると考えます。
 今後、関連のサービスは、ますます発展をしていき、新たな技術開発もなされていくものと考えられますので、権利制限規定にかかる行為主体や利用行為は、あまりに制約的とせず合理的な範囲で許容するように規定されるべきだと考えます。すなわち、権利制限を認められる行為の主体は、インターネットの利用主体・サービス態様の多様性に鑑み、特段の限定的な要件を付すべきではないこと、また、サービス提供者がその行う行為ごとに権利制限規定への該当性を一々判断する必要がないように、「検索エンジンサービスに必要な限度での利用行為」を許容する立法が望ましいと考えます。
社団法人 日本映画製作者連盟  違法複製物については、権利者からの要請に基づいて事後的に違法複製物の利用停止又は削除の措置を講ずるよう義務づけるだけでなく、
  • 1 違法複製物の利用・収集又は提供が発生しないように自主的に合理的な努力を行うこと。
かつ
  • 2 違法複製物の利用・収集又は提供が当該検索サービスの主要な目的の一つとなっておらず、かつ、現実にも違法複製物の提供等が当該サービスの主要な用途の一つとなっていないこと。
が、検索エンジンサービス提供者が免責を受けるための要件とすべきであると考えます。
社団法人日本映像ソフト協会  「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ」(以下「本中間まとめ」と言います。)「第4節 検索エンジンの法制上の課題について」中、59頁の「e 違法複製物への対応」に関し、以下のとおり意見を申し述べます。
 「本中間まとめ」59頁では、「検索エンジンは、ウェブサイトから自動的に情報を収集するため、違法複製物を蓄積したり、表示したりすることを事前に回避することは不可能である。」としています。
 「事前に蓄積」を回避することが困難であるとしても、権利者からの削除要請等がなくても、自主的に違法複製物を発見して削除し、それを表示されないようにすることは可能であると思われます。現に、動画共有サイト等では、自ら違法複製物が無いように監視し、自ら違法にアップロードされたものを発見して削除しているという事実も認められます。
 自動的に情報を収集する検索エンジンにおいても、違法複製物を検索しこれを除外する技術を開発しえないとは考えられず、違法複製物を情報提供の対象としないことは可能なのではないでしょうか。
 また、「本中間まとめ」では、同じく59頁において、利用停止又は削除義務について「他人の著作権が侵害されていることを知った場合、または、他者の著作権を侵害するものであることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があった場合」に限定すべき旨を提言しています。
 この点、インターネット上には多数の違法複製物が存在することは公知の事実です。また、違法ファイルを主たる検索対象とし、違法複製物の流布を助長するようなサービス提供者が検索エンジンにおける制限規定に便乗して免責を主張することを許容することも危惧されます。今後の立法又はその後の法運用に際しては、権利者からの侵害通知を前提とするような受動的対応だけではなく、検索エンジンの運用者に対して、違法複製物の蓄積や表示を回避するための積極的作為義務を課すべきことを強く要望いたします。
社団法人日本音楽事業者協会  検索エンジンが、デジタル・ネットワーク社会におけるインフラとして、ネットワーク上における知的創造サイクルの活性化に大きな役割を果たしていること、我が国においても独自の検索エンジンを立ち上げることが重要な施策であることは理解できる。
 しかし、この施策を果たすために、著作者等の権利制限と結びつけてしまうことは、あまりにも安易的かつ短絡的ではないか。
 仮に、検索エンジンサービスに係る法的リスクを払拭する観点から、立法措置により明確化を図ることとする場合、権利制限を講じずとも、検索エンジンサービスに期待される役割を果たすことは可能と考えられる。
 なぜなら、一般的に権利者自ら著作物等をインターネット上で公開することは、広く情報を伝達することを目的としており、検索エンジンにおいて検索可能な状態になることを承知しているものと推測される。
 であるなら、『中間まとめ』に記されている「利用許諾の推定規定の立法」による方法が、権利制限を講じるより、より整合性のある解決を図ることも可能だろう。
 『中間まとめ』では、権利者が技術的回避手段を講じて、検索対象として利用されることを拒否する旨の意思表示をした場合には、権利者保護のために、権利制限の対象外とすることが考えられているが、解決方法のひとつとして「黙示の許諾論による対応の可能性」でも指摘されているように、権利者が技術的回避手段を講じて、検索対象から除外されることを望んでいるのであれば、反対の意思表示があるものとして、利用許諾の推定が及ばず、著作権等に基づき検索エンジンからの削除等を求めることも可能である。
 また、『中間まとめ』において指摘されているように、技術的回避手段が利用できない場合や、技術的回避手段を講じる前に検索エンジンによる検索対象となってしまった場合に、権利制限をした上で、その削除等を請求できるような措置を講じるよりも、現状の方が著作権法の原則に適った在り方にあると考える。
 一方で、インターネット上には、多くの違法複製物が氾濫しており、検索エンジンが違法複製物の拡散を助長してしまっている。その点については、「違法複製物であっても、一旦権利制限の対象としつつも、検索エンジンサービス提供者に対して、事後的に違法複製物の利用停止又は削除の措置を講ずるよう義務づけることで、実質的に権利者の利益が不当に害される事態が生じないようにすることが適切である」としているが、利用許諾の推定規定の立法による場合であれば、違法複製物が検索対象となることについて権利者の利用許諾がある訳もなく、利用許諾の推定が及ばないから、よって著作権等に基づいた削除等を求めることが可能となり、著作権法の原則に立ち戻った解決が図られると考える。
 前述のように、権利制限を設けることとなると、法律の規定を複雑にする可能性がある。結果、検索エンジンサービス提供事業に混乱を及ぼすことも考えられ、著作者等の権利制限を講じることは適当ではないと考える。
 営利目的のビジネスとして行われ、多大な広告収益がある検索エンジンサービス提供事業に、権利制限を認めることが本当に必要なのか。権利者の立場より、より一層慎重な検討を要請する。
 なお、検索エンジンでは、実演家等の肖像が用いられた画像も検索対象になる。実演家等の肖像の利用に係る権利については、法律の定めがあるものではなく、判例の積み重ねにおいて認められてきたものであり、検索エンジンにおける著作権法の課題が、肖像の利用に係る権利に影響することも否定できず、検討にあたって留意することが求められる。
社団法人日本経済団体連合会 知的財産委員会 企画部会  ネットワークを活用した知的創造サイクルを活性化させることは、わが国の情報通信社会の高度化を推進し、さらには、情報通信産業が発展していく上でも必要であると考える。今回の「中間まとめ」でも指摘されている通り、検索エンジンサービスの一連の行為に関する法的リスクを低減させるため、著作者の権利との調和と安定的な制度運用に慎重に配慮しつつ、検索エンジンの目的と行為を明確に定義し、合理的な範囲において権利制限を講ずるべきである。
 なお、検索エンジンサービスの中には、主に著作権者等の許諾なくアップロードされた著作物(違法複製物)を収集し、表示するサービスも存在しており、そのようなサービスを行う事業者の行為が正当化されることのないようにすべきである。また、技術的保護手段以外の意思表示のあり方の検討にあたっては、産業界の関係者間の話し合いを促すべきである。
社団法人日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター(CPRA)  『中間まとめ』でも述べられているように、検索エンジンが、「いわば、デジタル・ネットワーク社会におけるインフラとして、ネットワーク上における知的創造サイクルの活性化に大きな役割」(『中間まとめ』45頁)を果たし、このために、わが国においても独自の検索エンジンを立ち上げることが重要な施策に位置付けられることは理解できる。しかしながら、この施策を達成するために、著作者等の利益を無視し、著作者等の権利制限と結び付けてしまうことは、あまりにも安易かつ短絡的過ぎる。
 『中間まとめ』では、検索エンジンにおける著作物の利用行為につき、スリー・ステップ・テストとの関係において、検索エンジンの利用という「特別の場合」であり、専ら検索を目的とし、著作物の提示や提供自体を目的とするものでないことから「著作物の通常の利用」を妨げず、また「著作者の正当な利益を不当に害しない」ものと指摘している(同54頁)。しかしながら、検索エンジンサービスは、膨大な数の著作物の検索を前提とする巨大ビジネスとして運営されており、特定の事業主体が、検索システムを通じて大規模な著作物等を恒常的に利用して莫大な利益を上げているのである。このような検索エンジンに関するビジネスの実態は、スリー・ステップ・テストが前提とする「特別の場合」には該当せず、膨大な数の著作物を検索結果表示データ(とりわけウェブページのアーカイブコピーを前提とするキャッシュ・リンク)として作成・蓄積し、これを送信することは「著作物の通常の利用」を妨げるおそれもあり、「著作者の正当な利益を不当に害しない」ものとは到底言えないのである。ことに、違法複製物が多数アップロードされており、検索エンジンを通じてその被害がさらに拡大されていることを考えると、現在の状況において、検索エンジンによる利用行為を権利制限の対象とすることは許されないものというべきである。
 検索エンジンサービスについて、デジタル・ネットワーク社会における情報流通の利便性を向上させる「公益的」なものであるから、権利制限はやむを得ないとの論調も見受けられるが、著作者等の利益が不当に軽視されることになれば、豊かな創作活動は阻害され、社会全体の文化基盤が脆弱化することは明らかである。利便性という「公益」の名の下に、豊かな社会に必要とされる文化面での「公益」が否定される結果となることを忘れてはならない。上記のとおり、検索エンジンサービスが巨大なビジネスとして運営されている以上、安易な権利制限を認めることは、文化国家としての基盤を失うおそれもあり、極めて慎重な検討が求められる。
 なお、著作権法上の権利に関わる問題ではないが、検索エンジンを通じて、実演家等の肖像が用いられた画像も検索対象となる。違法複製物の多くに実演家等の肖像が利用されており、検索エンジンサービスを通じて、実演家の利益も不当に害されている。検索エンジンにおける著作権法の課題が、肖像の利用に係る権利にも影響することは否定できず、検討に当たって留意すべき重要な論点である。
日本民主主義著作者総連合  4の項目で示したように、これは創作者と利用者が新しい情報技術の利用に際し、常に法的に不安定な地位に置かれる事例に他ならないと考える。
 「著作者の権利との調和と安定的な制度運用に慎重に配慮しつつ、権利制限を講ずることが適切であると結論」したことには賛同するが、しかし、こうした追認作業をしている間、創作者は検索エンジンその他に関わる創作活動を抑制されている。
 このことは情報時代である現在において看過できない事態であると思われる。
社団法人 日本レコード協会
  • (1) 検索エンジンサービスの中には、主に著作権者等の許諾なくアップロードされた著作物(違法複製物)等を収集し、表示するサービスも存在しており、そのようなサービスを行う事業者までが免責されることのないよう制度設計する必要がある。サービスを行う事業者に対し事後的に権利者からの削除要請に応じる義務を課すだけでは実効性に乏しく、削除要請に要する権利者の負荷も相当なものとなることに留意すべきである。権利制限を認める際は、次の要件を満たすサービスに限定すべきである。
    • 1 違法複製物の流通を目的としていないこと
    • 2 違法複製物の流通を防止するための合理的な措置を講じていること
    • 3 当該サービスの実態として違法複製物の流通促進が主たる用途の一つになっていないこと
  • (2) 「違法複製物を蓄積したり、表示したりすることを事前に回避することは、技術的に不可能である。」(59ページ)と整理されているが、韓国においては、著作権等の侵害予防を目的として、一定のプロバイダにフィルタリング等の技術の搭載を義務付ける法制化が行われており、またベルギーで著作権侵害の防止措置を講じるようISPに命じた判決が出ているので、我が国の立法においても参考とされるべきである。
兵庫県立大学 環境人間学部  ソフトウェアによるウェブサイト情報の収集・格納(クローリング)については,あらかじめ公衆送信されたコンテンツの閲覧であるため大きな問題はないと考える。また,検索結果表示用データとして作成されるスニペットやサムネイルを検索結果として表示する行為については,あくまでも「インデックス」情報を構築していると捕らえた方が自然であり,著作物としてこれらを直接的に利用するという意思は無いと考えられる。
 また,保護されたWebコンテンツ(Webサイト)の閲覧については,著者らの意図を充分に考慮し,その利用に関するガイドラインの早期整備を期待する。なお,非営利団体(例えば,学会など)については,相互に連携して複数の学会がWebコンテンツを共有できる枠組みについても,メタルールとしてのガイドラインの策定を早急に進めるべきと考える。
株式会社ブログウォッチャー

 検索サービスに関して著作権のあり方の議論が開始された事は、弊社をはじめとした国内の検索事業者にとっては、大きな追い風であり、検索関連ビジネスの事業環境の正常化への第一歩だと考えております。

 現在、国内の検索事業者は、サーバーを海外においていたとして、著作権法の侵害の可能性があることから、ビジネスをする上で、資金調達面やクライアント獲得面において、海外の検索事業者に比べて、不利な状況にあります。また、サーバーを海外に置かざるを得ない事で、サーバー本体のチューニングや細かなメンテナンスなどを迅速に行うことも難しく技術発展が阻害されている状況にあります。

 今後、検索関連のビジネスは、個々の利用者の行動履歴を分析し、最適な情報を組み合わせて配信するパーソナライズサービスが登場してくると予想されており、海外では、技術競争やサービス競争が始まっております。その点においても、国内事業者は技術的にも事業的にも出遅れが目立つようになっています。

 検索サービスおよびその周辺サービスに関して、検索サービス目的で、画像、音声、動画、テキスト等の著作物を自社サーバー内に複製したり、著作物を組み合わせて検索結果として表示したりする事などを著作権侵害としない方向での著作権法の改正は、国内の検索技術の発展を促し、国際競争力のある検索事業者の育成につながると考えています。そのことは、ひいては、著作権法の目的である文化の発展にも資するものであり、したがって、可能な限り早く、そのような方向での著作権法の改正を行うべきと考えます。

 検索エンジン業界は、技術開発競争やサービス競争が激しく、新しい技術やサービスが次々と誕生しています。現時点で提供されている検索エンジンのサービスを基にして、権利制限の対象範囲を決定する事は、将来の検索エンジンの発展を技術的・サービス的に阻害する恐れがあると考えております。将来の検索エンジンの技術的な発展・サービスの向上を見据えての目的・行為の両面における権利制限の対象範囲の設定が、国内の検索事業者の発展と、ひいては文化の発展につながるものであると考えています。
牧野総合法律事務所
  • 1.45ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 1 問題の所在
    (1)検討の背景
    【意見】
     問題の所在については、中間まとめの意見と、同意見である。
     しかし、現実には、「法的地位の安定性が確保されていないとの懸念」にとどまらず、また、「十分なリソースが集まりにくい要因となっている」というレベルではなく、さらに深刻な事態が進行しているというべきである。
     わが国ではGoogleに先立つこと2年前に検索エンジンが開発されていた。米国で、ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンが、Googleの原型をスタンフォード大学学内ネットワークに設置して、教授たちが利用できるようになったのは97年のことである。これに先立ち数多くの検索エンジンが相次いで開発される。
     95年には、東京大学学生であった原田昌紀氏が「ODiN」を、早稲田大学学生であった田村健人氏が「千里眼」を、豊橋技術科学大学の学生らが「Yahho」を開発するなど、世界最先端とも言うべき研究開発が行われ、サービス提供が開始された。このほかにも「TITAN」「Mondou」「HIPPON SEARCH ENGINE」「ホールインワン」などもあった。
     しかし、わが国では著作権法上、他のホームページを検索エンジンのサーバに収集する段階ですでに複製権侵害となるとされ、検索対象であるホームページを収集する際には、それぞれのサイト主催者に対して同意を取ることが求められていた。
     このため、各検索エンジンサイトの主催者は、検索対象と収集するにあたって、対象となるホームページに対して、電子メールを発信して、検索のために収集し、データベース化し、検索対象とすることについての同意を、一つ一つ取っていったのである。こうした気の遠くなるような努力の結果、97年ころにおいても、検索サイトは数千件からせいぜい1万件程度にとどまっており、検索エンジンの機能を発揮することはできないままであった。1万件程度では、検索キーワードはほとんどヒットせず、「対象なし」とでるのが精一杯であった。
     このときGoogleは、わが国とは異なり、フェアーユースの制度に守られ、著作権の制限を考えることなく、大学の全面的支援を得て、数十万から、数百万にいたるサイトをコピーし、データベースを構築していたのである。そのため、検索の精度は格段に向上し、ヒット率も高まり、検索エンジンとしての評価も高まっていったのである。
     こうしてわが国の優秀な研究開発は、著作権の厚い壁に阻まれて、検索エンジンの本来の機能を発揮することができず、機能の問題ではなく、著作権という外的障害によってその発展の道を閉ざされたのである。その後、こうした開発の多くはサービス提供を停止するに至った。
     この優秀な開発者は、後にGoogleや、IBMに就職し、わが国の検索の萌芽をなした優秀なエネルギーは、成果を収めることなく、頭脳流出し、散逸することになったのである。
     結局後発のGoogleが各種の支援を得て大きく展開することになったが、その基礎には、フェアーユースという米国著作権法上の懐の深さがあり、検索の必要性に着眼した人々の支援もあったことが大きな要因といえる。もしわが国に、フェアーユースの制度があり、若き開発者たちを支援できたとすれば、Googleと同等か、あるいはそれ以上のサービスがわが国で花開いた可能性が高い。しかもGoogleよりも2年も早く、成功の道を歩んだ可能性があった。
     わが国の研究開発能力に足かせをかけ、妨害し、事業家を阻止したのはほかならぬ著作権制度、過剰なまでの権利者保護制度なのであって、まず、その改正が喫緊の課題といえる。また、その権利過保護体制が、わが国自生の検索エンジンを阻止してことで、その結果として、日本語検索のぎこちなさを生み出し、コンテンツの利用を阻害し、よって権利者自身の権利伸張自体を阻害し、制限する結果になっていることに気づくべきであろう。
     わが国においては、検索サービス、情報データベース処理産業が、いわば壊滅的な状況に追いやられており、その遅れはいまや致命的となりつつあると思われる。今回の著作権法改正は、遅れをとった情報産業を推進させ、情報産業全体の底上げをおこない、諸外国へのキャッチアップのためにも、至急実施されることが必要であると考える。
  • 2.49ページ 同(3)国際動向
     国際動向の認識に同意する。
     さらに、次の点を加えるものである。
     米国ではインターネット上の情報を総てクロールして、人類の資産として保管するための作業が行われており、我々もその成果を利用できるように提供されている事実がある。こうした歴史的作業を担うのは、Internet Archiveであり、この団体は、1996年にブリュースター・カールによって設立され、世界最大のアーカイブに成長し、アメリカ議会図書館やスミソニアン博物館などの他機関との恊働が行われている。このアーカイブに蓄積されたWEBの資料(1996年ころからの資料)は、公開され、いつでも誰でも当時のWEBページをそのまま見ることができるようになっている。
    http://www.archive.org/web/web.php
     このように、WEBデータのアーカイブは、著作権がフェアーユースにより制限されることを前提に実施されており、全世界の市民に、貢献している事実を認識し、検討する必要がある。
     ウェッブサイト情報の収集・格納問題、さらには検索用インデックス及び検索結果表示用データの作成・蓄積について、このような先進例が96年から存在するほか、さらには同サイトによる保存データそのものの公開、開示は公衆送信権との関係もあるものの、すでに実施されて長期間のサービス提供が実施されているにもかかわらず、権利侵害を生じず、わが国の著作権権利者からもいささかもクレームを受けることもなく、なんら法的問題を生じていない点からも、その合理性が指摘できるものと思われる。
  • 3.50ページ 2 検討の概況 (1)現行法下での解釈による対応の可能性と論点
    【意見】
     中間まとめの1著作権法上の位置づけについては、同意する。
     念のため、次の点を検討すべきである。
    • 1> ソフトウエアによるウェブサイト情報の収集・格納(クローリング)について、複製であるとする点について、同意する。
    • 2> 検索用インデックス及び検索結果表示用データの作成・蓄積については、検索用インデックスの作成については、データ収集、データ処理にあたり、著作権上問題とならないとの指摘は同意する。
       しかし、その表示のための検索結果表示用データの作成については個別検討を要するとするが、むしろ内部処理の作業としての側面が強く、問題はむしろ外部の要求にしたがって、外部に提供し、あるいは開示する場合に現実化するというべきである。
       なお、キャッシュリンクの点に付いても、そのインデックス構造自体が問題なのではなく、キャッシュリンクを外部に表示して、利用対象とすることによって、アーカイブしたものの表示になる点について検討することになると解する。

    <検索結果の表示(送信)>
     中間意見に同意する。

    中間まとめ 2現行の権利制限規定(引用)による対応の可能性の意見については、同意見である。
    3黙示の許諾論による対応の可能性の意見についても、同意見である。
    4権利濫用の法理による対応の可能性の意見についても、同意見である。
  • 4.54ページ (2)立法措置による対応の可能性と論点 c以下
    【意見】
    c 権利制限の対象範囲について
    1 検索エンジンの「目的」について

     意見書によれば、「オリジナルのウェブサイトへの誘導を専ら目的とするものであると定義するのが適当」との意見であるが、反対である。
     検索エンジンは、情報の収集、蓄積を主要な内容として、その検索システムは各種ノウハウがあり、その利用目的は、利用者によって決められるものであって、検索エンジン開発者が定めたとしても、それに制限され足り、拘束されるとは限らないのである。
     現在、検索エンジンを人気投票のように扱うテレビ番組があるように、プログやWEBページ、掲示案サイトなどへの書き込みの状況を研究、観察の対象とすることも考えられる。その場合、オリジナルのウェブサイトへの誘導が主目的ではなく、キーワードの存在するページ数や、その傾向、取り扱い方などを類型的に見ることに意義があるともいえる。
     検索エンジンは、まさに検索することが目的であって、「オリジナルなウェブページ」への誘導だけが目的とされるものとは限らないというべきである。
     検索エンジンの今後の技術開発、サービス態様の変化などを視野に入れて、「検索エンジンサービスを提供する上で正当な範囲内での利用行為」を権利制限対象範囲とすべきである。

    2 検索エンジンにおける行為ついて
    1><2>は、すでに述べたことのほか、基本的に同意する。
    3>検索結果の表示に関して、包括的な権利制限規定を定めることに賛成する。

     権利制限対象範囲を包括的に記載することで、多様に変化、発展する検索エンジン、情報検索解析技術の発展を阻害する危険性は回避できるようになり、現在の産業阻害要因は撤廃できると解する。その場合、意見が指摘するように、検索対象外との表示を行うことで容易に検索対象からはずすことができるため、技術的に解決することが可能となるのである。
     権利者が、自らの情報をインターネット上に公開する場合には、公開の範囲、公開の程度、公開制限の仕組みなどを選択することが容易になっており、公開する作業の中にそうした意思決定、権利保護手段が十分に用意されているのであるから、その手段保護の仕組みにより権利調整は十分機能すると考える。

    3 検索エンジンサービスの属性・機能

     意見は、ディレクトリ型検索の場合には同意が取れるため、権利制限の対象としてはロボット型とすることで十分ではないかと、とするが、反対である。
     現在のディレクトリ型とは、収集自体はロボットで行い、評価を人手でするものが多く、すべてを人手で行うものではない。膨大な情報を検索するには、もはやクロールマシンを利用するほかなく、今後はさらに自動化が加速されることになる。したがって、現在の、あるいはこれまでの検索エンジンの属性や機能を根拠に制限するのは妥当でない。
     すべての検索エンジンを同等に取り扱うのが妥当と解する。

    d 権利者保護への対応について
    2) 技術的回避手段以外による意思表示

     技術的回避手段以外による拒否について、事業者に削除義務を課すことは、権利者尊重の点からは理解できるが、一方で、事業者のコスト負担が過度に大きくならないよう配慮することが望ましい。特に、「タイムラグ」が存在することが権利者にとっての不利益というのであれば(p.58)、一律に削除義務を課すのでなく、タイムラグを縮小する措置を技術的に講じる等の事業者の自主的取組を促すことも一つの方策であると考える。

    e 違法複製物への対応について

     中間意見に同意する。

    f 著作者人格権 問題について

     中間意見に同意する。

    2 プロバイダ責任制限法類似の特別立法による対応の可能性(六〇頁) について
     中間意見は、プロバイダ責任制限法類似の特別立法について可能性を示唆するが、反対である。
     現在、プロバイダ責任制限法によって、名誉毀損、侮辱などの権利侵害表示についてのルールが策定されているが、実際にはまったく機能していないのが実情である。事業者は、実質的な違法判断に踏み込むことを避け、法的判断ミスによる責任の追及を恐れることから、法的判断はすべて裁判所にゆだねる実務が確立している。したがって、包括的に裁判所に付託して、訴訟行為により個別判断を求める結果となった。その結果、むしろ権利侵害の被害者は、長期間救済されず、より面倒な対応を余儀なくされるという現実が生まれたのである。
     今回の著作権法判断については、権利者によるクレームにより、あるいは一定の疎明資料の提出によって、いわば機械的にテイクダウン(削除)する方式をとることで免責を働かせることが妥当である。検索エンジン事業者は、膨大な数のウェッブサイトをクローラーによって収集させているだけであって、それぞれのサイトに対する認識は皆無に等しい。むしろ、それぞれのサイトの内容を判断させる仕組みは、膨大な検索を実現する仕組みとしては背理となる。したがって、単純に一定の要件の元で、クレームを行った場合には、クレームの提供者(多くは著作権権利者)を表示するか、その存在を示すなどして民間での権利紛争解決の手立てを与えた上で、当該表示自体は削除することが考えられる。結局、その後の処理は、クレームを提供したものと検索データベースから削除されたものとの調整にゆだね、事業者は免責させることが必要となる。
     意見書のように、名誉毀損や侮辱のほか、プライバシー侵害といった実質判断を含むようになれば、事業者にかかる負担は膨大となり、訴訟リスクも大きくなるため、実質的には法的措置も無意味になるものと解する。有効な仕組みは、機械的であり、単純なものとして構成されるべきであると解する。
  • 5 61ページ (3)その他の論点
    1準拠法の問題について
     検索エンジン事業者に関する免責規定として機能させる点からすれば、検索エンジン事業者の存在する場所、すなわち営業場所が基準とされるべきものと解する。
  • 6 61ページ 3 検討結果
    【意見】
     中間まとめの基本的見解に賛同し、一日も早い改正を期待するものである。
株式会社メタWeb研究所
  1. 51ページ、<2> 検索用インデックス及び検索結果表示用データの作成・蓄積
    【意見】
     キャッシュ・リンクについてであるが、検索サービスにおけるキャッシュの表示はキャッシュされたオリジナルのページをそのまま表示するのではなく、なんらかの文言等を付与した上で表示するのが一般的である。つまりオリジナルのページが改変されている。そのため、スニペットやサムネイルと同様、ここでの改変が翻案に当たるまでのものになる可能性については留意すべきであると愚考する。
  2. 57ページ、3) 検索エンジンサービスの属性・機能
    【意見】
     ここでは触れられていないが、昨今の検索サービスの潮流である「パーソナライズ」について、今回の検討内容とどう関わってくる可能性があるのか考えてみたい。
     パーソナライズでは、特定の利用者ごとにその人に合った形で検索結果を変えて表示することが可能である。
     米Oracle社の提供する検索システムのためのソフトウェア、Secure Enterprise Searchにはセルフサービス認証という機能がある。これを用いるとなにができるかというと、このソフトウェアによって構築された検索システムでは、管理者だけでなく一般の利用者が検索システムに対し任意のサイトをクロール先に指定でき、クローラに対してクロール先にアクセスするためのユーザIDとパスワードを設定することができる。この機能は、自分のWebメールのメールBOX内の文書をパーソナライズされた検索での検索対象にする、というような利用方法を想定したものである。つまり通常の共有(公開)インデックスと同様な形で個人用のデータの入ったインデックスを持つわけである。
      Secure Enterprise Search自体は企業内での利用を想定したソフトウェア製品ではあるが、これと同様の機能を持った検索サービスがインターネット上に公開されたとしよう。ある利用者は自分が会員である3つの情報サイトを横断的に検索したいと考えた。これらの情報サイトは無償ではあるが、コンテンツを見るためには会員登録が必要であり、コンテンツにアクセスするためにはユーザIDとパスワードを入力しないとならない。件の機能を利用すれば、この利用者はそれぞれのサイトをクロールして自分の個人用インデックスにコンテンツを取り込むように検索サービスを設定でき、それに必要なユーザIDとパスワードをセットしておくことができる。この利用者は、これらはあくまで自分一人が利用するためものものであり、それを検索サービスに登録することは、各サイトの会員規約には違反しないと考えた。
     しかし実際には、会員のみに提示されるべきコンテンツが第三者である検索サービスのインデックス上に存在するわけである。
     さらに、この検索サービスにおいてはクロールされた情報の公開レベルが設定できる。件の利用者は、この機能による検索結果があまりに気に入ったため、この情報の公開レベルを友人が共有できるレベルにまで引き上げた。この友人は、検索対象となっている会員制サイト3つのうち、2つは会員であったが、後のひとつについては会員でなかった。検索結果に表示される3つのサイトのコンテンツについて、自分が会員でないサイトのコンテンツについては、当然、会員にならなければ開くことはできない。しかしながら、この検索サービスにおいてはキャッシュ・リンクも提供されているので、会員登録が面倒なこの友人はキャッシュ・リンク先を見て必要な情報を得ることができた。
     さて、先の利用者はこの便利な機能を広めようと、公開レベルを一般(不特定多数)にまで引き上げたうえで、自身のブログで紹介してしまった…。
     …というようなストーリーを想像したわけだが、このような(技術的には現在でも充分起こりうる)ケースにおいて、非があるのは件の利用者やその友人だけであろうか。パスワード保護されているコンテンツをクロールできたり、さらにその公開レベルを設定できたり、キャッシュ・リンクを提供したりする検索サービス側に問題があるといえるのではないだろうか。つまり、検索サービスにおける機能についても何らかの規定のようなものが必要なのかもしれないと愚考する次第である。
株式会社きざしカンパニー
  • A 55頁・第4節2(2)1cの1) 検索エンジンの目的
    • (1) 本項では、権利制限の対象とすべき検索エンジンの主観的要件について規定しています。本項は、権利制限の主観的要件として、検索サービスが、利用者の求めに応じ著作物の所在情報を提供し、著作物の内容の紹介を通じて、その著作物が存在するオリジナルのウェブサイトへの誘導を「専ら」目的とするものであることを求めています。
    • (2) しかし、検索サービス提供者は、上記(1)のように利用者をオリジナルサイトへ誘導することを目的とするサービスだけではなく、それに付随して、クローラーにより収集されたウェブサイト等の情報(以下「クローリングデータ」といいます。)を分析してウェブサイト上の流行の話題をグラフ化して表示する等のサービスを行っている場合があります。このような場合、クローリングデータは、利用者をオリジナルサイトへ誘導するために用いられていますが、同時に、レポートサービスの分析対象データとしても利用されています。したがって、主観的要件について「専ら」という制限を付加すると、このようにオリジナルのウェブサイトへの誘導以外のサービスを伴う複合的な機能を持った検索エンジンについては、かかる権利制限規定の適用を受けられないという問題が生じます。しかしそれでは、多様なサービス形態を持った検索エンジンの健全な発展を阻害するおそれがあります。さらに、このような付随的な機能は、権利者のオリジナルサイトへの誘導を阻害するものではなく、むしろ助長するものでもあります。
    • (3) 以上の観点から、権利制限の主観的要件として、検索サービスがオリジナルのウェブサイトへの誘導を「専ら」目的とするという要件を設定するのではなく、「専ら」という制限を掛けずに、単にオリジナルのウェブサイトへの誘導を目的とするという要件とすべきと考えます。
  • B 59頁・第4節2(2)1e 違法複製物への対応
    • (1) 本項では、違法複製物を権利制限の対象外とするために、検索サービス提供者に、違法複製物の利用停止又は削除を義務づけています。そして、検索サービス提供者に利用停止又は削除の義務が生ずる要件として、プロバイダ責任制限法第3条の規定を参考にしつつ、他人の著作権が侵害されていることを知った場合、又は、他人の著作権を侵害するものであることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があった場合を挙げています。
    • (2) しかし、このように削除または送信停止等の措置を執らない限り、権利制限が認められないことになると、結果として、削除等の措置を執っていない場合は著作権侵害の状態が継続していることとなり、権利者が検索サービス提供者に対して侵害行為の差止請求(著作権法112条)を行うことが考えられます。しかし、プロバイダ責任制限法が予定している状況(侵害情報の送信がまったく停止する)と違い、この請求によって実現されるのは、検索サービスにおいて検索にヒットしなくなるという効果に過ぎません。元の侵害情報自体は、相変わらず侵害者のサイトにおいて送信され続けていることになります。それでは、権利者を救済する効果は限定的です。
    • (3) にもかかわらず、いったんかかる削除等の請求を受けると、それに対応する検索サービス提供者の負担は過大なものがあります。類似性・依拠性の有無や許諾の有無など、著作権侵害の判断には困難が伴うため、容易に削除等の措置を講ずることができず、常に裁判手続によって公的判断を受けた上で措置を執る必要が生ずるからです。それに対し、権利者は侵害者に対する訴訟の共同被告として検索サービス提供者を加えればよいだけなので、容易に請求を行うことが可能になります。したがって、このような削除等の義務を課すことには、慎重な検討が必要なものと思われます。
    • (4) なお、プロバイダ責任制限法第3条第2項も、送信を防止する措置が発信者との関係で免責される条件として、権利侵害の存在を信ずるに足りる正当理由の存在に加えて、発信者に対する照会の後7日間を経過しても不同意の申出がなかった場合を付加しています。したがって、仮に本項で規定する削除等の義務を設けるとしても、その要件として、著作権侵害を知っていたこと、知ることができたと認めるに足りる正当理由に加えて、自己の著作権を侵害されたと主張する者からクローリングデータ等の削除等の申出を受けた場合に、検索サービス提供者がウェブサイト等の著作者に対し、クローリングデータ等の削除等の措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該照会を受けた日から7日を経過しても当該措置について同意しないという申出がなかったとき、という要件を付加すべきであると考えます。
株式会社データクラフト
  1. 1.45ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 1 問題の所在
    【意見】
     問題の所在については、中間まとめの意見と、同意見である。
     特に「検索エンジンがデジタルネットワーク社会におけるインフラとして、ネットワーク上における知的創造サイクルの活性化に大きな役割を果たしている」という指摘は正鵠を得ていると考える。
     また「検索エンジンによって検索サービスを提供する者の法的地位の安定性が確保されていないとの懸念が指摘されている」という指摘は、我が国から利用可能な検索サービスは(複製などが合法とされる)米国に設置された検索エンジンを用いて運営されている実態に照らしても、深刻な事実であろう。
     現状のままでは、我が国において、デジタルネットワーク社会におけるインフラである検索エンジンサービスが育ない可能性が高い。言い換えれば我が国における未来情報化社会(コンテンツの潜在的利用を顕在化する多様なアクセスルートを提供する社会)の実現が困難となる可能性が高いということであり、早急に検索エンジンサービスの提供者の法的地位の安定性を確保する必要があろう。
  2. 2.61ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について 3 検討結果
    【意見】
     検討結果については、中間まとめの意見と同意見であり、一日も早い改正を期待するものである。
     加えて、この課題が、単に検索エンジンサービスの問題にとどまらず、我が国が未来情報化社会にむけて発展できるか否かを左右する重大な問題である点を指摘せざるを得ない。
     我が国において、コンテンツの潜在的利用を顕在化する多様なアクセスルートを提供する未来情報化社会を実現するため、著作権の権利制限規定を追加する著作権法改正を強く要望する。
ニフティ株式会社  検索エンジンに関する権利制限規定を立法することに賛成する。また、権利制限の対象範囲の画定にあたっては、検索エンジンの流通促進機能と権利者の私権との調和が十分に図られるよう、慎重に検討する必要があるとの考え(p56)に賛同する。そして、検索エンジンサービスの内容や業態が多様化している現状に鑑みると、権利制限の対象範囲は包括的に規定すべきである。
 権利者保護のための対応としては、権利者が著作物を検索対象として利用されることを技術的回避手段を利用して拒否した場合だけを権利制限の対象外とすれば足りると考える。もっとも、検索対象となるウェブサイトの全てについて権利者自らが技術的回避手段を行使できるわけではなく、ブログの大半や違法複製物が掲載されたウェブサイト等については、権利者自らが技術的回避手段を行使することが困難である。このような権利者の利益を図るべく、権利者が、一定の理由に基づき技術的回避手段以外の方法により著作物の利用拒否の意思表示を行った場合に限り、検索エンジンサービス事業者において、一定の利用停止又は削除を行うことを義務づける必要があるとの考えは理解する。
 検索エンジンサービス提供者の業態が多様化している現状に鑑みると、どの程度の利用停止または削除義務を課すかは、別途検討が必要であると考える。たとえば、検索エンジンサービス提供者の多くは、表示工程より上流の工程を他の事業者のサービスを利用することによりサービスを提供しており、その場合には、他の事業者の管理するサーバーにある著作物の利用停止や削除を迅速に行うことが困難であることがある。そのような場合、検索結果ページから当該著作物を表示されなくすることをもって免責されるよう検討していただきたい。
 なお、検索エンジンサービスの提供に至る作業工程と同等の作業工程を辿るが、オリジナルのウェブサイトへの誘導を必ずしも主目的としていないサービス例として、ブログ等における商品等の評判を分析するサービス等がある。評判分析サービス等のサービスも一種の検索エンジンサービスとして権利制限規定の適用対象となるよう立法すべきであると考える。
社団法人 日本音楽著作権協会  著作権法上の権利制限規定は、公益的な目的があるなど例外的な場合に限って認められた規定であり、私企業が運営し、広告収入等により膨大な収入を上げている一般の検索エンジンサービスに対してまで例外の範囲を拡大すべきではない。以下に述べる問題点も含め、なお慎重に検討すべきであると考える。
 検索エンジンサービスは、インターネット上に無数に存在するウェブサイトの検索を容易にするものであり、その機能における必要性や知的創造サイクルの活性化に果たす役割を否定するものではない。
 しかし、一方ではやはり無数に存在する違法サイトへのアクセスをも容易にしているのであり、インターネット上の違法複製物の流通を増長する役割を果たしていることも看過することはできない。
 報告書では、こうした違法複製物への対応として「事前に回避することは、技術的に不可能である」と断定したうえで「事後的に違法複製物の利用停止又は削除の措置を講ずるよう義務づける」、具体的には「プロバイダ責任制限法第3条の規定も参考にしつつ、他人の著作権が侵害されていることを知った場合、または、他者の著作権を侵害するものであることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があった場合に限る」としているが、例えばプロバイダ責任制限法の現行のガイドラインに則って権利者が違法複製物の所在をすべて調べて検索エンジンサービス提供者へ通知するようなこともまた不可能であり、非現実的である。
 このように、違法複製物の流通に関して権利者、事業者双方策がない中であるにもかかわらず、一方的に権利を制限する方向で検討が進められることは容認できない。
日本知的財産協会  検索エンジンは、インターネット上に無数に存在するウェブページを適切かつ迅速に探し出すための道標となる点で、公益性が高く、また文化の発展に寄与するものであり、その法的安定を担保すべく、早急な法的手当てが必要であるとの考えに賛同する。
 但し、権利制限の対象範囲の検討にあたっては、技術の進歩を阻害しないためにも、過度に限定的なものとならないよう、配慮すべきであると考える。
 また、p.58の「2) 技術的回避手段以外による意思表示」については、権利者の利益を害さないよう配慮しつつも、検索の中立性を損なって、利用者の立場からの検索エンジンの利便性を害することのないよう、バランスを保った合理的な制度を検討すべきである。
日本ユニシス株式会社
  • 意見内容
     本検討結果の第一文節にある「検索エンジン」の評価、文化への貢献、その結果として第4文節の「…制度運用に慎重に配慮しつつ権利制限を講ずることが適切であるとの結論づけ」に同意するとともに、「…残された論点について、早急に結論を得るとともに具体的な立法措置のあり方を明らかにする」事に賛同いたします。
  • 意見提出の理由
     IT技術は日々発展を遂げているものであり、この発展に伴う文化的な貢献は、多大なものである事は、本節にて説明されている「フェアユース」の考え方で十分理解できるものです。さらに、検索エンジンにより得られる情報は、ロングテール理論に見られるような新たなビジネスチャンスを引き出す事となっています。従って、厳格な制限より「適切」な対応や、あり方を示す事が優先する事に同意するものであります。
ビジネスサーチテクノロジ株式会社
  1. 該当ページおよび項目名:45ページから50ページ「1 問題の所在」全般
    <意見>
     検索エンジンサービスは今日、インターネットユーザがごく日常的に使用するものであり、情報収集の利便性やネット関連ビジネスの興隆発展の面で、世の中に計り知れない恩恵を与えています。しかしながら、「中間とりまとめ」の問題提起によれば、検索エンジンサービスは、わが国著作権法上、一定の局面において著作権侵害の疑いなきにしもあらず、とのことであり、わが国発の検索エンジン開発・提供をめざして創業した弊社としては、これをきわめて深刻に受け止めているところです。現行著作権法が検索エンジンサービスの登場と今日の普及を想定していたものとは到底思えず、また幸か不幸かわが国では裁判例の蓄積もないことから、関係者による法解釈だけでその都度対応していくことには限界がありますので、立法による早急な問題解決を強く望みます。
     なお、弊社は、ソフトウェア製作とそのライセンスビジネスを本業とする会社であり、著作権者の権利保護に対してその意義を十分に理解する一方で、今後、検索エンジンサービスの提供を予定している会社でもあります。したがって、法制度の検討にあたっては、著作権者の権利との調和に十分に留意しつつ、検索エンジンサービス提供者の法的地位の安定性確保が図られるよう望んでおります。
  2. 該当ページおよび項目名:52ページ 「3黙示の許諾論による対応の可能性」
    <意見>
     黙示の許諾論は、検索サービスの著作権利用に関する適法性を推定させる、完全ではないものの最大の根拠だと考えます。ブラウザーおよび検索エンジンサービスの登場以後、今日インターネット上にアップロードされている著作物は、違法複製物を除き、不特定の検索エンジンサービスによってその存在を発見され閲覧されることを、その著作権者が最初から暗黙の前提として認めていると考えても過言ではないからです。ケースにより、検索結果の表示の態様などに一部不満が生じることはあって、その不満の大半は、検索エンジンの性能、すなわち検索の精度、配列、スピードなどに起因するものであって、論理的にはともかく、現実には著作権侵害の次元で問題視される場面はきわめて少ないのではないでしょうか。
  3. 該当ページおよび項目名:54ページから56ページ 「c 権利制限の対象範囲」
    <意見>
     権利制限の対象範囲を規定するにあたっては、目的規制と行為規制の組み合わせが妥当、とされていますが、当面は、目的規制(「利用者の求めに応じ著作物の所在情報を提供し、著作物の内容の紹介を通じて、その著作物が存在するオリジナルのウェブサイトへの誘導を専ら目的とする」ものに限定)だけで十分と考えます。行為規制の趣旨(原則、公衆の目に触れないこととし、目に触れる場合であっても著作物の提示や提供と同等のものでないこと)には賛同できますが、規制が複雑化し、かえって解釈に疑義を生みかねないからです。
  4. 該当ページおよび項目名:57ページから58ページ 「d 権利保護への対応」
    <意見>
     検索対象として利用されることを拒否したい場合は、そもそも著作物をアップロードしないのが一番確実ですが、次善策として技術的回避手段の行使によることも著作権者の権利保護上きわめて有効と考えます。したがって、これを行使する旨の意思表示が明示されていない場合には、権利制限ができるものとして扱うべきとの考え方に賛同いたします。
     一方、著作権者から、技術的回避手段以外による意思表示に基づき、検索エンジンサービス提供業者に対し、収集された著作物の利用停止、削除を請求するケースについても、同様の制度を導入するか否かについては、現実問題として、当該検索エンジンサービス提供業者に過大な負担が生じる可能性があり、制度の安定が懸念されますので、慎重な検討を求めます。
  5. 該当ページおよび項目名:59ページ 「e 違法複製物への対応」
    <意見>
     現在の検索エンジン技術では、違法複製物か否かを判断することは残念ながら不可能であります。したがって、違法複製物であっても、権利制限の対象とすべきと考えます。権利者保護のためには、事後的に違法複製物の利用停止、削除の措置を講ずることが必要ですが、検索エンジンサービス提供業者に対する義務付けの範囲については、プロバイダ責任制限法の趣旨を参考に、合理的な範囲にとどめるべきだと考えます。
  6. 該当ページおよび項目名:61ページ 「1 準拠法の問題」
    <意見>
     検索エンジンサービスは国境を越えて提供されますので、そもそも準拠法によって権利の保護や制限の内容が異なるという現状は、著作権者、検索エンジンサービス提供業者共に憂慮すべきことです。タックス・ヘイブンの例のように、仮に、日本よりも外国の著作権法制の方が、検索エンジンサービスの事業運営上きわめて有利であれば、わが国のサービス事業者は、極端な場合、法人格やサーバ類を当該外国に移したくなる誘惑にかられないとも限りません。検索エンジンサービスはネットワーク社会のインフラですので、特定国のインフラに過度に依存することはよくありません。したがって、検索エンジンサービスに関連した著作権法制の改正にあたっては、準拠法によって適用結果が大きく変わることのないよう、原則、諸外国横並びの制度の実現をめざしてほしいと考えます。
富士通株式会社
  • 1)基本的に本節の提言に同意する。
     検索エンジン等を活用したサービスは、電子商取引やオンライン広告・マーケティングなど企業・ビジネスの面だけでなく、SNS、ブログなど個人からの情報発信・コミュニケーションツールという面からも重要インフラと呼べるほどの位置を占めつつあり、今後益々多様化することが予想される。しかしながら、現状のように、検索エンジンサービス提供者等Web上のコンテンツを取り扱う事業者の法的地位の安定性が確保されていない状況は、提供されるサービスの質の向上や革新的な新ビジネス創出の障害となりつつある。
     将来に亘る我が国の知的活動および我が国の社会・経済の発展という観点からも、速やかに今回の検索エンジンに関わる提言が具体化され、早期に法改正等の措置がとられることを期待する。
  • 2)インターネットの利用主体・サービス態様は多様であり、また今後更なる広がりが予見されるため、権利制限規定における行為主体や利用行為は、過度に制約せず合理的な範囲で包括的に許容するような規定とすべきと考える。
  • 3)検索エンジンやインターネットの利用方法は今後も不断の変化・拡大が予測されるため、法制度に関しても利用方法の変化に応じ、適時見直しが図られるよう期待する。
  • 4)著作権に関する紛争が発生した場合の対応方法等について、事業者による自主ルール等の整備が必要と考える。
マイクロソフト株式会社
  • 意見通番1
    • 意見個所 P58 第4節2(2)d 2):技術的回避手段以外による意思表示
    • 意見内容:
       ネットワーク上の情報が氾濫する現在の情報通信環境に於いて、必要な情報を適切に検索するための手段として検索エンジンの果たす社会的な意義は非常に高まっており、国民全体の裨益として権利制限を課すことは必要不可欠であり、中間まとめの意見に賛同するところ。
       他方、検索エンジンによる検索対象として利用されたくない場合において、技術的回避手段が利用できない権利者への対処は検討すべき課題であるが、本項目にあるように電話、メール、郵便等の手段を用いる場合、当該著作物の権利者であることの本人性確認にかかる時間やコスト、削除請求理由の判断等を鑑みると非現実的であり、本項目はその対処の必要性を含め慎重な検討が必要と思料。
  • 意見通番2
    • 意見個所 P55 第4節2(2)c 1):検索エンジンの目的
    • 意見内容:
       本項目において、権利制限の対象とすべき検索エンジンを、「オリジナルのウェブサイトへの誘導を専ら目的とするもの」と定義しているが、「オリジナル」がコンテンツの元本性を示していると読む場合、検索エンジンには著作物の元本性に関する判断機能を有しないため不可能であり、記述は不適切。
       本項目の趣旨であると思われる、検索によって検索対象への誘導を行う機能を専ら提供するという目的を超えるものであるべきでないという内容に沿った修文が必要と思料。
文部科学省特定領域研究「情報爆発時代に向けた新しいIT基盤技術の研究」有志
  1. 45ページ 第4節 検索エンジンの法制上の課題について
    【意見】
     中間まとめによる問題の所在については、基本的に同意見である。以下に各論を述べる。
  2. 54ページ 2 検討の概況 (2)c.権利制限の対象範囲
    【意見】
     権利制限の対象範囲については、今後の研究開発により多様な検索技術およびサービスが新たに出現してくることを考慮することが重要である。一方、著作者の権利を慎重に配慮し、「著作物が存在するオリジナルのウェブサイトへの誘導」を主たる目的とする検索エンジンサービスを提供する上で、正当な範囲内の行為については権利制限の対象範囲とすることが望まれる。
  3. 57ページ 2 検討の概況 (2)d.権利者保護への対応
    【意見】
     技術的回避手段による収集拒否については、現在も広く利用されており、事業者および著作者双方にとって効率的な権利者保護手段であると考えられる。技術的回避手段以外による拒否については権利者尊重の立場から慎重な配慮が必要であるが、著作者の意思表示をより簡便・容易にする手段を提供していくことにより解決するのが妥当と考えられる。事業者には、当該手段の周知普及および、容易な意思表示手段の提供が求められる。
  4. 4.59ページ 2 検討の概況 (2)e.違法複製物への対応
    【意見】
     違法複製物の収集を事前に回避することは技術的に不可能であることから、事後的な利用停止および削除の対応を義務付けることは必要であると考えられる。
  5. 5.61ページ 3 検討結果
    【意見】
     検討結果に示された基本的見解に賛同する。一日も早い改正を期待するものである。
IFPI & RIAA

IFPI (the International Federation of the Phonographic Industry) and RIAA (the Recording Industry Association of America) thank Bunka-cho for the opportunity to comment on the Interim Report from the Legislative Issues Subcommittee. These comments are submitted jointly by both associations, respectively representing the international recording industry and the US recording industry. Together we represent the recording industry worldwide, with over 1450 members in 78 countries. Our memberships include the major multinational recording companies and hundreds of independent record companies of all sizes located throughout the world. The Recording Industry Association of Japan (RIAJ) is our affiliate organisation in Japan.

Our comments below focus primarily on three specific copyright issues identified in the Interim Report: (1) the proposed limitation of liability for internet search engines; (2) injunctive relief for indirect infringement; and (3) statutory damages. Comments on the other issues raised in the Report are being submitted simultaneously by RIAJ.

INTERNET SEARCH ENGINES(p. 45 . 61, Section 4)

The Interim Report concludes that it is appropriate to introduce a new copyright limitation on the liability of Internet search engines. IFPI and RIAA submit that there is no need for such a new limitation, and that there are significant risks involved in introducing one in Japan at this point in time.

Most countries in the world (including the member states of the EU) do not provide for specific limitations on the liability of Internet search engines. The absence of such limitations has not hindered the development of search engines in those countries. For example, Yahoo, a major search engine provider, has a large user base in Europe and operates country-specific sites in the UK and Ireland, France, Germany, Italy and Spain.

While US law does contain a safe harbour against monetary liability in the DMCA, the DMCA was enacted in 1998 and that particular safe harbour (unlike the others aimed at mere conduit services, caching and hosting) has not been widely adopted elsewhere. Moreover, since that time, the relevant circumstances have changed significantly. In particular, music-specific search engines (operated for example by Baidu and Yahoo! China) have become a major source of online infringement in China, and are the subject of continuing litigation there. In addition, unauthorised P2P services have repeatedly sought to argue in court that they should be considered as search engines covered by the US safe harbour. Adoption of such a safe harbour in Japan would inevitably lead to efforts to use it as a defense for similar businesses built deliberately on the dissemination of infringing music files.

If Japan were nevertheless to consider adopting a limitation on search engine liability, it is critical that the limitation be carefully crafted to avoid its successful use by such entities. To begin with, any such limitation must be a limitation on monetary relief rather than a complete exception from liability. Copyright owners should always be able to go to court to seek an injunction to put a stop to ongoing acts of infringement. This is a fundamental principal of ISP safe harbours generally in countries around the world.

It is also critically important that appropriate conditions are required in order for a search engine to qualify for any limitation on liability. The goal should be to ensure that the search engine is a true neutral search engine and nothing more, and that it behaves responsibly in helping to limit its role in the dissemination of infringing content. Thus, to be protected by the limitation, the search engine must not knowingly and deliberately engage in the distribution of unauthorised copies, and doing so must not be one of the major purposes or uses of the service. Such a condition would separate out a general search engine such as Baidu from the specific music search engine it also operates in China.

Moreover, the search engine must adopt and implement reasonable measures to prevent the distribution of unauthorised copies. Filtering technologies are today widely available that can be used for this purpose, and courts and legislatures around the world are beginning to recognise their feasibility and require their use. It is not enough simply to respond to notices from right holders and take down links to hosted content; massive damage can be done by the dissemination of pirated copies before the right holder is even aware. And a responsible search engine business model should incorporate reasonable efforts to avoid perpetuating mass infringement.

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