著作権分科会 法制問題小委員会(第10回)議事録・配付資料

1.日時

平成20年1月11日(金曜日)13時30分〜15時30分

2.場所

フロラシオン青山 1階「はごろも」

3.出席者

(委員)

青山、市川、大渕、末吉、茶園、道垣内、土肥、苗村、中山、松田、村上の各委員

(文化庁)

吉田長官官房審議官,山下著作権課長,亀岡国際課長ほか関係者

4.議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)中間まとめに対する意見募集の結果について
    • (2)その他
  3. 閉会

5.配付資料一覧

資料1
  第23回文化審議会著作権分科会における意見の概要
資料2
  意見募集の結果について
資料3
  「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ」に対する団体からの意見
資料4
  意見募集を受けた主な論点について

(参考資料)

参考資料1
  文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第7回)議事録
(※(第7回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料2
  文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第8回)議事録
(※(第8回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料3
  文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第9回)議事録
(※(第9回)議事録・配付資料へリンク)

(机上配付)

6.議事内容

13時30分開会

【中山主査】

 時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第10回を開催いたします。
 本日は、御多忙中のところお集まりいただきましてまことにありがとうございます。
 いつもと同じでございますけれども、議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開にするには及ばないと思われますので、傍聴者の方々には既に御入場いただいておりますけれども、そういうことでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】

 ありがとうございます。
 それでは、本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々はそのまま傍聴をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 まず、事務局から、配付資料の確認をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、お手元の議事次第に配付資料一覧が記載してございますので、それと見比べながら御確認をお願いいたします。
 資料1は、10月12日に開かれました著作権分科会でいただいた意見の概要でございます。資料2から4が今回の10月から実施しました意見募集の結果に関する資料で、資料2が寄せられた意見全体を要約したまとめの資料でございます。資料3は意見全体の中から団体から寄せられた意見を抜粋したものでございます。意見募集に寄せられた意見の全体は、大部なものなので傍聴の方々にはお配りしてございませんけれども、机上にファイルとして置かせていただいておりますので適宜御参照いただければと思います。資料4は、その中から主な争点となるものを抜粋した資料です。
 それから、参考資料といたしまして、第7回から第9回までの議事録を配付してございます。
 以上、過不足等ございましたら、御連絡をお願いいたします。

【中山主査】

 よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議事の段取りでございますけれども、前回10月4日の当小委員会におきまして法制問題小委員会平成19年度中間まとめの取りまとめを行いましたけれども、その後、この中間まとめにつきましては、10月12日に親委員会である著作権分科会で報告をいたしまして御意見をちょうだいしております。さらに、10月16日から11月15日までの1カ月の間、意見募集を行いまして、こちらも相当数の御意見をちょうだいしておりますので、まずこれらの御意見につきまして事務局から報告をお願いしたいと思います。
 そして、その御意見の中で大きく意見が割れている項目が幾つかございますので、それについて項目ごとに争点を整理しつつ、当小委員会として取り上げるべき意見を議論していただきたいと思います。
 それでは、第1節 デジタルコンテンツ流通促進法制についての意見につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、資料1と2に基づきまして、御説明させていただきます。
 まず資料1の10月12日に著作権分科会でいただいた意見でございますが、「デジタルコンテンツ流通促進法制」に関しましては2点の御意見がございました。
 まず、1点目は、インターネット上で不特定多数の者が関わる創作活動について、重要なのでしっかり検討すべきという御意見。それから、2点目は、2年以内ということでじっくりやるよりも積極的に検討を進めるべきだとの御指摘をいただきました。
 引き続きまして、資料2の方に移っていただきまして、意見募集で寄せられた意見ですが、2ページからが、「デジタルコンテンツ流通促進法制」に関するものでございます。全体で30件の意見が寄せられまして、そのうち団体からは10件という構成になってございます。
 総論部分では、「デジタルコンテンツ流通促進法制」は、権利者自らが行うビジネスの活性化や集中管理事業によって達成すべきであって、報酬請求権の切り下げは、権利者と利用者の対等な立場で交渉できなくなってかえってコンテンツの再生産能力を低下させるという御意見がございました。また、利用に関するルールは、利用者と権利者の間のルール形成で合意をつくっていくべきだ、流通が盛んになっていく時代こそ、内容の充実がより重視されるべきだといった御意見がございました。
 その次の次でございますけれども、Web2.0における広域な参加型ビジネスを含めた利用について総合的な検討が必要だということで、当小委員会の中間まとめの総合的な検討を行っていくことが適当というまとめに賛成するという意見がございます。その次は、問題点を解消してコンテンツ流通促進を図るのではなくて、より積極的にデジタルコンテンツの網羅的蓄積、社会への提供を義務づけるというような国民の共有の知的資産であるとの観点から検討すべきという御意見もございました。
 それから、2ページから3ページにわたっておりますが、誰でも簡単にある程度許可をとれるシステムをつくることが流通を促進させるという御意見でございます。また、集権型よりもクリエイティブ・コモンズのように分散型で著作権管理を行う方が現実的であるという御意見もございました。
 総論の最後は、特別法に関して提案されている案は、現時点では実現性に乏しく、さらなる検討が必要であるという御意見がございました。
 続きまして、過去の放送番組の二次利用等に関する御意見ございますが、放送事業者から2点、御意見が来ております。放送事業者としても二次利用に積極的に努めており、特に2点目に書いてございますけれども、放送コンテンツが死蔵されているとの誤った認識のもとで検討が行われるべきではないという御意見です。なお、具体的な手段としましては、裁定制度の簡略化、著作隣接権についての裁定制度、映画の著作物への共用著作権の行使と同様の取扱いの導入などについて検討されるべき、という御意見でございました。
 3番目でございますが、放送対象地域外に同時再送信する場合については権利制限を新設すべきだということが来ておりました。
 続きまして、次のページでございますけれども、その他、全般的にわたるような事項といたしまして、インターネットを介したコンテンツの二次利用に関しましては、研究開発での利用について障壁になっている場合があるということで、研究開発目的での法制の整備を期待するという御意見。その次は、フェアユース規定の考え方を導入して、二次創作に関する権利制限を設けることについて検討すべきという御意見。そして、最後は、権利者不明の場合の対策について、放送番組だけではなく、著作物全般について検討を進めてほしいという観点から、所在判明または利用拒否の意思表示があるまで、利用できる仮の地位を認める制度を検討すべき、そういった御意見が寄せられております。
 それぞれ取り上げて検討すべき事項ですとか、関連の御指摘などがあればお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【中山主査】

 それでは、この項目につきまして、何か御意見ございましたらお願いをいたします。
 いかがでしょうか。特に御意見がないようでしたら先に進めてもよろしいでしょうか。
 それでは、引き続きまして、第2節 海賊版の拡大防止のための措置について、事務局から説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 引き続きまして、海賊版の拡大防止のための措置の譲渡告知行為の防止策の部分につきまして説明させていただきます。資料2の5ページを御覧ください。
 譲渡告知行為の防止策につきましていただいた御意見は、全体で20件、そのうち団体から8件の意見が寄せられております。
 総論といたしまして、賛成の御意見とそれから後ほど資料4の方で詳しく御紹介いたしますけれども、運営上の懸念についての意見が2つ寄せられております。
 それから、インターネット以外の媒体での譲渡告知行為をどのように取り扱うかという点については、こちらも後ほど資料4で詳しく御紹介しようと思っておりますけれども、インターネット以外の広告媒体の取扱いについて意見が分かれている状態でございます。
 ウのどのような要件で制度をつくるべきかということでございますが、6ページで、1番上に、「海賊版と知って告知に関与した者」とするなど、悪質な事業者を峻別するための文言を選定してほしいとの御意見がございます。また、「海賊版」について、権利侵害ということではなくて、違法複製した物品であるというような表現など、妥当な定義を検討すべきだという御意見もございます。その次は、「情を知って」の判断基準時について、告知行為の開始時点ではなく個々の告知行為時点とすべきという御意見がありました。
 それから、今の譲渡告知行為に関しましては先ほど意見が割れていると申したところにつきまして、資料4で詳しく整理をしてございますので、こちらを御覧いただければと思います。
 資料4の1ページ目、対象とすべき譲渡告知行為の媒体についての御意見ですが、インターネットに限定しないものを対象とすべきという御意見とインターネットに限定すべきという御意見が来ております。限定しない御意見としましては、インターネット以外のチラシやカタログなどを利用した一般的な広告手法についても伝播効果は高いということで、対策を講ずべきという御意見でした。逆に、今問題が顕在化している課題の解決を目指して法改正を行うべきという御意見、インターネットに限定すべきという趣旨だと思いますけれども、そういった御意見がございました。
 これにつきまして、中間まとめでは、一番下の枠囲みでございますけれども、インターネットは、匿名性が高いですとか、権利者にとって必要な措置を講ずるための措置という点で、他の媒体と差があるというところに着目しておりまして、インターネット以外の媒体については、それぞれの実態等を踏まえまして、必要性を見極めた上で必要な措置を講じることが適当というような記述にしていたところでございます。
 これらを踏まえまして、インターネット以外の媒体をどう考えるか、御意見賜れば幸いでございます。
 その次のページは、先ほど運用上の懸念について幾つか御意見が寄せられていると申し上げましたが、それについて特に取り上げたものでございます。
 1点目は、要件にも絡むのですが、海賊版の譲渡のみならず譲渡行為が頒布権・譲渡権侵害になる場合も対象にしてほしいとの御希望がございました。
 それから、2番目と3番目が先ほど申し上げた運用上の懸念のところでございますけれども、海賊版であるかどうかという確認方法が不明確で、厳しく判断しようとするとネット利用者のほとんど全員が処罰の対象となり得るし、曖昧な運用では法律が意味をなさないという御指摘がございました。また、告知行為を見ただけでは、正規品を仕入れて売るつもりなのか、侵害品を作成して販売するのか明確でない場合もあるのではないかと、そういった懸念が寄せられております。
 これを踏まえまして、告知行為の外形上から海賊版であることの情を知って告知行為を行っているかどうかをどのように判断するのかとの点について、また、併せまして譲渡自体が譲渡権侵害となる場合の告知行為を対象とすべきかどうかについての御意見を賜れればと思っております。
 引き続きまして、資料1の方に戻っていただきまして、親告罪の範囲の見直しについて、御報告を申し上げたいと思います。
 親告罪の範囲の見直しにつきましては、資料1の著作権分科会では2点ほど御意見がございました。
 基本的に、非親告罪とすることで反対であり、一部を非親告罪化することについても実効性を考えながら慎重に検討すべきだという御意見がございました。2点目は、検討の観点についての御指摘でございましたが、知的財産法全体の中で著作権法の位置づけですとか、法定刑との関係で検討が必要であるけれども、一方で特許法などについてはプロだけの世界であるのに対して、著作権は全国民の問題になっているというような違いや、その他諸々の観点から違いもあるので、慎重に議論を進めると、そういった御指摘がございました。
 それから、資料2を見ていただきまして、親告罪の範囲の見直しについての意見募集の結果でございます。6ページからが関係の範囲でございます。
 こちらは全体で312件意見が寄せられておりまして、ほとんどが個人からの意見で、団体からは9件のみでございました。数は各項目の中では最も多かったのですが、内容につきましては、概ね中間まとめと同じ方向といいますか、慎重な方向で検討すべき内容という御意見がほとんどでございます。
 内容を簡単に御紹介いたしますと、総論の部分ですが、著作権は言論の自由に密接に関連するという特色があり、言論の自由を萎縮させることのないように、細心の注意を払って検討すべきということでございまして、非親告罪としても抑止力としての有効性が明らかでない、国家が侵害の認知をすることが困難、覚知されない犯罪を増やすだけであると。言論の自由に萎縮効果を与える恐れが強いということで、さらに、立法事実もないという観点から、消極な結論が出されるべきという意見が寄せられております。
 それから、2点目は、慎重な検討という基本的な方向を支持するけれども、さらに踏み込んで、「非親告罪化を行わない」ということを明文で打ち出すべきという御意見でございました。
 3点目は、これは特に意見の中でも多かったものでございますけれども、特に代表的なものとして御紹介いたしますが、コンテンツの創作行為には、多少は模倣を含んでいるということで、それがパロディとして受け止められるのか単なる模倣なのか、意図的な剽窃なのか偶然の相似なのかという点は非常に曖昧で判断が難しい。一次創作者が容認するものをわざわざ犯罪として取り扱う必要もなく、警察や通報者の判断で調査されてしまうということは、表現の自由の侵害につながる可能性がある、そういった御指摘でございました。
 その次は、著作権の性質からの御意見ですけれども、人格権の保護という色彩が払拭されることは今後も考えられないという御意見でございます。その次は、ほかの財産権と違って登録なしで認められる権利なので、非親告罪化するのであれば著作権も登録制とすべきという御指摘。その次は、著作権者自身が黙認している場合があることに関しての御意見でございまして、宣伝告知のために黙認している場合もあって、非親告罪化することによって宣伝力が減ぜられる事態になることを懸念するという御意見でございます。
 そのほか、大量の御意見の中で、特に多く見られた意見をまとめております。
 大体このような観点に集約できるのではないかということで4つ挙げておりますが、1点目は、著作物をどのように使っていいかという判断ができるのは著作権者だけであるという観点から、著作者・著作権者が関与しない部分で犯罪が成立するというのは、著作者・著作権者の意思の軽視であるという御指摘でございます。
 2点目は、第三者が判断するということになると、判断が難しいということもありまして、第三者による脅し・ゆすり・たかりですとか、それによって適法な活動まで萎縮する可能性があると、そういった御指摘でございます。
 3点目は、これまで黙認等で自由に行われてきた二次創作活動に大きな打撃を与えかねない、それによって模倣による学習とか人材育成に弊害が生じるという御意見でございます。
 4点目は、インターネットを利用するだけでも犯罪になるとか、国民の大半が誰でもいつでも逮捕される事態になりかねない。捜査官・検察官の裁量次第になり、国家権力による検閲に利用されかねないと、こういった意見が特に個人からの意見として多かったものでございます。
 そのほか、捜査実務の観点から必要性が感じられないという御意見ですとか、侵害を放置しないという目的であれば、侵害を発見する組織や権利者の対応を補佐する組織を整備すれば十分である。告訴期間の関係であれば、その規定を変更できるかを検討すればいいのではないかという御意見がございました。
 最後の御意見は、出版業界からで、メリット、デメリットの双方があるという御指摘でございまして、著作権者の告発がなくても出版社のみで刑事訴追ができるというメリットはあるけれども、一方で、表現・出版の自由が最大限に保障されなければならず、一定の効果があるとしても極めて慎重に検討されるべきという御意見がございました。
 引き続きまして、仮に親告罪化する場合の範囲についての御意見ですけれども、まず1点目は、一部を切り出すことについては、厳格な要件設定は立法技術上極めて困難ではないかという御指摘がございました。
 それから、次のページで、ここからは具体的な提案でございますけれども、完全な複製物を商業利用している場合のみとすべきで、二次創作活動などについては対象にすべきではないという御意見がございました。その次は、暴力団、悪徳業者、外国マフィア等が対象で、反社会的行為に使うための資金を得るためであること等の場合に限るべきということでございます。
 3点目は、これも個人の方から非常に多く寄せられた意見の1つですけれども、いわゆるデッドコピーの場合のみに限るべきという御意見でした。
 最後は、営利目的の場合に限るべきと、そういった御意見があったところでございます。
 この範囲についての御紹介は以上でございます。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの海賊版の拡大防止のための措置につきまして、御意見ございましたらお願いいたします。
 特に、海賊版の告知の要件として、「情」を知ってという要件について、何か御意見ございますか。
 それでは、先に進みますけれども、もし何かまた後からございましたらお願いいたします。
 その次は、第3節の1の薬事関係の権利制度の見直しにつきまして説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、引き続きまして、権利制限のうちの薬事関係部分について御説明いたします。まず、資料1で、著作権分科会で出された御指摘についての御紹介をさせていただきます。
 資料1の2ページでございますが、1点目は公的な観点から権利制限を課すというベースの一方で、補償金額については当事者間のビジネスベースで決めるということに違和感があるという御指摘でございます。
 それから、2点目は、今回の権利制限は、権利者の通常の利用を妨げ、ベルヌ条約に違反する可能性が高いという御指摘でございます。権利制限の根拠に関しましても、管理団体と年間の基本契約があれば、許諾手続は不要であり、事実に反することを前提として検討されているのではないかという御指摘。それから、権利制限をするとしてもどの範囲までか限定明確化すべき、そういった御指摘がございました。
 3点目は、営業的行為であるので、少し慎重な扱いが必要ではないかという御意見でございます。
 4点目は、複写権業務の観点からの御意見でございましたが、大量に複写が行われる分野が権利制限となっている場合には、日本での複写権事業が非常に困難な状況に置かれているということで、公的な理由というのみで権利制限を取り入れていくと、日本の健全な複写権事業が阻害されるという御意見でございます。それから、補償金についてきちんとした議論が必要で、公的だから最低料金でいいということにならないようにすべきということでございました。
 最後の御意見は、健全な複写事業と法的な利害の調整のために最終的には補償金の問題が大きくなってくるという観点から、関係者の話し合いなど関係省庁も関係してよい方向に進むことを望むという御指摘がございました。
 引き続きまして、意見募集に寄せられました御意見の紹介ですけれども、資料2の10ページをごらんいただければと思います。こちらは、全体で78件の御意見が寄せられておりまして、うち団体からは30件の御意見ございました。また、海外からか、英文で寄せられた意見も多かったというのが特徴の1つでございます。
 総論といたしまして、最初の2点は賛成の観点からの御意見でございます。権利制限の形で方向性が示されたことは評価するというような御意見でございまして、後ほどまた資料4で詳しく御紹介したいと思います。
 3番目は反対の御意見でございまして、専門出版社はもともと少部数の出版が多いので、今回の権利制限はその雑誌そのものの存立基盤を危うくするという御意見でございます。
 その次が、権利制限の根拠をめぐる意見でございまして、こちらも大分意見が割れているところでございまして、後ほど資料の4で詳しく整理をしたいと思いますが、要点を申し上げますと、許諾に時間がかかることはないということで、権利制限の根拠がないのではないかという御指摘が幾つか寄せられております。
 11ページの上から2番目のまるからは、それと同様の観点ではありますが、もともと医学系の専門雑誌などは一般的な内容なので、緊急対応に向いているものではないという御意見でした。それから、上から3番目のまるは、製薬企業であれば自社の医薬品の分析に必要な文献が当然把握可能で、前もって準備しておくことができるのではないかという御意見です。4番目も同様の観点ですけれども、オンライン出版ですとか、オンラインで入手できる手段が整っているので、許諾を得た形の方がむしろスピーディーに迅速に入手が可能であって、権利制限でオフラインでコピーするということはむしろ遅くなるのではないかという御指摘がございました。
 11ページ一番下の御意見は、許諾ベースで進めるべきもので、3割の未委託著作物のために7割の委託著作物を権利制限する必要はないのではないかという御指摘でございました。
 その他については、後ほど資料4で御紹介したいと思います。
 次の12ページのイは、先ほど分科会の意見でも出てきましたが、ベルヌ条約ですとか国際条約との関係についての御意見でございます。これもベルヌ条約違反であるという意見とそうではないという御意見と大きく分かれておりまして、後ほど資料4で詳しく御紹介をしたいと思います。
 14ページのウは権利制限をどのような範囲で行うかという観点での御意見でございますけれども、1点目は権利制限の対象につきまして著作権管理団体に権利委託されていないものに限定すべきである。それ以外については許諾を得ることが可能であるし、時間はかからないという観点からの御意見がございました。
 2番目ですけれども、緊急性を根拠にすれば、緊急性の要素も要件に明示的に書かれる必要があるという御意見でございます。
 3番目は、「薬事法77条の3に基づく情報提供」ということでは、拡大運用される可能性が高いという御意見がございまして、「患者の生命、身体に対して迅速な対応が求められる場合」というのを明確化して、購入の代替とならない範囲に限定する必要があるという御指摘がございました。その次の御意見も、自主提供である部分との判別は非常に難しくてどこまで厳守されるのかが非常に懸念されるという御意見でございます。
 その次の点は、逆に広げるべきだということでございまして、製薬企業が必要だと判断した情報はすべて事前許諾なしに配付可能とすべきということでございまして、この趣旨は、競合企業が提供する医薬品の安全上の情報も必要になる場合があるという観点でございます。
 製薬企業そのものではなくて、文献複写業者が購入した文献複写にまで権利制限が及ぶことにはなおさら反対であるということの御指摘がございます。
 続きまして、エの補償金の問題についての御意見に移らせていただきます。
 この点も大きな対立点となっておりまして、これも後ほど資料4で詳しく整理をしたいと思っておりますが、補償金は不要である、もしくは安価なものとすべきという観点が一番目の御意見から16ページの全部まで、これらがそういった観点からの御意見でございます。後ほどまた詳しく御紹介をいたします。
 その反対の御意見は17ページの一番上から3つ目まででございまして、通常の額の補償が必要であるという観点の御意見でございます。
 17ページの一番下は、著作権管理団体に管理されていない出版物について補償額がどのような基準で決定されるのか、中間まとめで触れられていないという御指摘がございました。
 次に18ページですが、オの医療関係者自らによる情報取得の体制整備に関する御意見でございます。
 こちらも御意見が分かれておりますので、資料4で詳しく御紹介をしたいと思っております。概要としては、上から4つ目でございますが、医療関係者自身の情報取得の体制の不備に起因する問題であって、それを権利制限を行って切り抜けようとすることは真っ当な考え方ではないというふうな指摘が寄せられているところでございます。
 その他の前提条件というところにつきましては、2点ほど御意見がございまして、補償金とは関係ない利用許諾契約の条件の合意というものを権利制限の前提条件とするような記述は関係ないので削除すべきだという御意見ですとか、著作権等管理事業者でもない特定の私的な権利処理機関との契約交渉が前提とされているということは、公的な観点から権利制限を行うという本質とかけ離れているのではないか、そういった御指摘でございました。
 それでは、資料4に移っていただきまして、先ほど対立点があると述べた部分について詳しく御紹介をさせていただきたいと思います。資料4の3ページでございます。
 まず、争点の1つ目といたしまして、権利制限の根拠があるのかないのかという点でございまして、権利制限に対して賛成側の御意見、表の左上のマスでございますけれども、こちらは国民の生存権を補完・実行するものが薬事法であって、薬事法にかかる行為は公益性の観点から既存の権利制限規定と同じ性質を有するということ。それから、法や行政が複製物の提供を義務づけているのであれば、そのようなものであれば、薬事に限らず権利制限を加えてしかるべきだという御意見がございました。
 それに対しまして、右側のマスですけれども、薬事法の努力義務は他者の権利を侵害してまでも情報提供すべきとは言ってないはずであって、この薬事法77条3は、製造者としての当然の義務を明記したものに過ぎない、権利制限の根拠にはならないという御指摘でございます。
 これらに関しまして、中間まとめではどのような根拠で権利制限をすべきとまとめたかと申しますと、一番下のマスでございますけれども、患者の生命、身体に関するもので、迅速な対応が求められるものについては個別に許諾に時間をかけることが不適切な場合もあるということと、3割の管理団体に属さない文献について事前に許諾を行うことが困難な場合もあると、こういう点を権利制限の根拠として記載していたわけでございますが、これについても賛否がございます。
 上の表の右下のマスから御紹介させていただきますと、管理団体との事前の基本契約さえあれば、複写の都度の許諾は不要であって、許諾に時間がかかるということはない。事実誤認であるというような御指摘でございます。それから、さらに実態としては、文献複写業者に発注の上で文献提供を行っている場合があって、数日の日数を要することは容易に考えられるため、「緊急性」を理由とするということは現実に即していないという御指摘でございます。
 それに対しまして、賛成側の方の意見が表の左下のマスでございますが、ちょうどいい反論が寄せられておりませんで、多少すれ違いになってしまうかもしれないのですが、御紹介させていただきますと、医薬品の情報提供については「最適な」情報が「迅速に」提供される必要があるということで、事前の許諾手続が不要になることで「迅速性」の観点は担保できるものの、一方で、金額に公的な規制がかからない場合には価格の高騰などによって「最適な」情報提供ができないことになりかねないという観点から、つまり、金額に公的な規制をかける観点から権利制限が必要だという主張が賛成側からは寄せられているところでございます。
 これらにつきまして、双方の主張を踏まえてどのように権利制限の根拠を考えていくべきなのか御指摘を賜ればと思っております。
 引き続きまして4ページ、争点の2番目、国際条約との関係についての双方の御意見を御紹介したいと思います。
 まず左側の方ですけれども、条約違反であるという御指摘でございますが、これは医学の専門書籍は、医療関係者に医学専門情報を提供することを目的としているものであって、またそれ以外には市場が存在しないので医学専門書の出版社にとっては医療関係者への提供こそが「通常の利用」であるという観点でございます。
 その次の段落で、薬事法77条3に該当する情報提供は、業界全体で年間数千万ページに及ぶというところから、このような権利制限を設けると通常の利用を妨げ、著作者の正当な利益を不当に害することになり、ベルヌ条約9条2項の規定に違反するという御指摘でございます。
 一方で条約違反ではないという右側の御意見でございますけれども、こちらは情報提供する文献はほとんど論文であって「通常の利用」は「出版」であるという前提から出発しまして、複写の権利制限が認められたとしても医療関係者は日々の購読を中止するようなことは考えられないという点でございます。2段落目ですが、仮にこれらについて購入を申し出たとしても出版社は1部の論文単位での提供は困難というふうに言っておりまして、ということは文献複写は量的に「出版」に影響があるということではないということであって、複写の権利制限は「出版」を妨げるものではないという観点からの反論がございます。
 最後の段落は、既に過去何十年にもわたって、薬事法77条3の情報提供が行われてきているのであって、今回の権利制限によって影響が出るとは考えられないという観点の御意見でございます。
 そのほか、経済的損失が不当とまで言えないという主張がありまして、長いので省略いたしますけれども、要点としましては、1つ1つの著作物ごとのコピーの量は多くはないので1人1人の損失に直せば少ないという観点ですとか、教育の権利制限、報道の権利制限に比べればコピーの量は多いとは言えないのではないかということから経済的損失は不当とまでは言えないという観点から反論がございました。
 これらの双方の主張について、条約との関係でどのように考えるべきか御指摘を賜ればと思っております。また場合によっては、通常の利用を妨げるかどうかということに関しまして、詳細に文献の提供先等を提供文献の内容に応じて分析する必要があるのかどうか、それも御意見を賜りたいと思います。
 それから、その次のページでございますけれども、争点の3番目としまして、補償金額をめぐる論点がございます。こちらは、補償金不要、あるいは安くあるべきだという御意見とその反対の御意見がございます。
 左側でございますけれども、安価であるべきという観点から3点ほど御紹介いたします。一番上が、補償金がまず必要ないと考えるということですが、仮に必要だとしても権利者と利用者の話し合いに任せるのではなく、公的な規制がかかる一定の制限が必要であるということでございます。具体的には、文献を医師自ら入手する場合もあって、単に複写主体が、医師か製薬会社かという点が異なるだけなので、社内複写利用料である1ページあたり2円程度を目安として関係省庁間などの協議で決定されるべきという御意見でございます。
 2点目は、その趣旨について詳しく解説されているものでございますけれども、製薬企業は薬事法上の努力義務を負っていて、契約もせざるを得ないということから、対等な価格交渉が行われない恐れがあるので、金額については公的な観点からチェックする仕組みが必要である、そういった御意見でございます。
 3番目も権利制限をする一方で、補償が必要であるというのは理解しがたいという点と、仮に補償制度を設定するにしても公的な目的に鑑みて安価に設定することが必要という御意見でございます。
 それに対しまして反対の側の右側の御意見ですけれども、製薬企業は「国民の健康のため」の公共目的であるから情報提供は無償にすべきと主張している一方で、「国民の健康のために不可欠」な医薬品を有償で販売しているということでございまして、同じような「国民の健康のために」出版している医学専門書だけ無償にすべきというのは論理矛盾だという御指摘でございます。
 それから、2点目は、製薬業界が権利制限を要望している本当の理由は、コスト削減であるということでありまして、情報提供は顧客サービスとして行われているものであって、そのサービスとして提供するのであれば、そのコストは製薬会社自身が負担するべきものであるという御指摘でございます。
 そういったものを踏まえまして、3番目としましては、著作物の使用料と同水準のものにすべきという御指摘でございます。
 それから、双方の中間的な御意見も表の下で寄せられておりまして、補償金の額は専門書のページ単価、もしくは抜き刷りのページ単価と同程度にすべき、現在の権利者側のページ単価は高すぎるという御意見もございました。
 これらにつきまして双方の主張をどのように考えるかについて御指摘を賜れればと思います。
 中間まとめでは、無償の権利制限ということでは経済的な利益を不当に害することになりかねないということで、補償の必要については言及をしているところでございます。また、ここに記載しておりませんけれども、金額については関係者間での合意が必要ということで中間まとめではまとめておりました。
 続きまして、6ページ、争点の4番目としまして、医療関係者自らによる情報取得の体制整備に関する御意見でございます。
 表の左上のマスの御意見は、そういった体制整備は望ましいけれども、当面は患者の利益のために実際の医療現場で混乱なく円滑に情報を入手できるように配慮するべきだということでございました。
 その反対の御意見ですけれども、この問題は、製薬企業が顧客である医師からの文献の複写提供の依頼を断れないという製薬業界のビジネスのあり方自体の問題であると。今回の権利制限は、文献を買わなくても、頼めばサービスで文献を届けてくれるという、そういう風潮に拍車をかけることになってしまうという御意見がございました。
 それから、賛成反対という観点でははっきり分けられない意見として2点ほど御紹介いたしますと、今回の権利制限は、「患者の生命・身体に対して迅速な対応が求められる場合」とするのであれば、権利制限の適用を行使するのは医療関係者であるべきで医薬品等製造販売業者ではないのではないかという御指摘がございました。2点目は、病院図書館からの御意見でございますが、病院図書館は医学雑誌・資料をいろいろ収集しており、製薬企業による情報提供という限定された制度に頼るのではなくて、病院図書館を著作権法31条の図書館に位置づけるという検討課題についても並行して検討してほしい、そういった御意見がございました。
 この分野につきましては、相当意見が割れているところがございましたので、いろいろ御指摘賜れればと思っております。よろしくお願いいたします。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの薬事関係の権利制限のことにつきまして御意見ございましたらお願いいたします。
 はい、どうぞ、松田委員。

【松田委員】

 ベルヌ条約の複製に関する規定の通常の利用を妨げるということはどういうことなのか。医療関係図書出版社が通常のビジネスとして出版事業を継続しようとしているところ制限規定があって、その業務が成り立たないという状況がこれにあたります。
 確かに医学書につきましては、非常に高額なものであり、なおかつ出版に費用がかかる。それから、出版物としては大部なものが頒布される市場ではないということも特質としてあると思います。
 ですから、出版物にかわる代替的な複製物の供給手段がとられたときには、通常の使用を妨げるという状況に至るのは一般の図書よりは可能性は高いだろうと思っております。
 でありますので、私はそこに留意をしつつ、そういう状況に至らないような、使用料、利用料の規定を考えるべきではないかと思っております。
 一言で言うと、いささか高くてもやむを得ないのではないかと。そのかわり利用する側の体制をきちんと整えることによって、個々の許諾が特に3割については処理ができてない文献があるわけですから、それについてもある程度利用者側の方でデータをきちんと整備すれば利用が促進できるような、そういう体制をつくるということが求められているのではないかというふうに思っているわけです。
 利用の促進とそれから通常の利用を妨げない、このバランスのところで制度をつくるべきだろうというふうに思っています。

【中山主査】

 ありがとうございます。
 ほかに御意見ございますか。
 今の松田委員の対価の決定は当事者に任せるのではなくて、何か規制をつくるという趣旨ですか。

【松田委員】

 基本的には利用者側とそれから出版社側、団体による利用料の合意を形成させて、そしてそれがどうしても整わないような場合については何か補完的な措置を講じることがよいと考えています。まずは合意を形成するということではないかなとは思っています。

【中山主査】

 ほかに御意見ございましたらどうぞ。
 それでは、一応先に進ませていただきたいと思います。
 第3節の2と3の、障害者福祉関係、ネットオークション関係の権利制限の見直しについて、事務局から説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、引き続きまして、権利制限の残りの部分についてご説明をさせていただきます。資料1の3ページから御紹介をいたします。
 まず障害者福祉関係につきまして、著作権分科会に寄せられた意見でございますけれども、障害者福祉関係につきましては、総論として異論はないけれども、映画の複製が知らないところで行われるということにはどうしても神経質になる傾向があるので、適切なルールがつくられるべきであるという御指摘でございます。なお、映画界では著作物を無償で提供して、日本語字幕つきの映画の提供ですとか、そういったものを継続的に取り組んでいる実績があるので参考にしてほしいということでございます。
 それから、2番目は、権利制限の議論は慎重にしてほしいのが前提であるけれども、学習障害児童のように、慎重に議論している間に障害者の方が致命的な損失をこうむることがないように、早く結論を出すべきだという御指摘がございました。
 それから、健常者へ障害者用コンテンツが流れるという心配については、公共図書館で公的な主体が管理することによって防ぐことができるのではないかという御意見がございました。
 あと障害者福祉関係につきまして、資料の2の方で、意見募集で寄せられた意見を御紹介したいと思います。19ページをお開きいただければと思います。全体45件の御意見が寄せられておりまして、うち団体から18件の御意見でございます。
 総論部分ですけれども、2007年9月28日に日本政府が署名した国連障害者権利条約に言及すべきだということでございます。その趣旨としましては、検討の観点が情報格差解消のための合理的配慮であるべきという観点からのものでございまして、そういう基本的な観点から最終まとめの検討がされるべきだということでございます。
 2番目でございますけれども、こちらは字幕手話を挿入したDVDの制作などにつきまして、今事前の一括許諾の契約によって多数制作が提供されていて、障害者権利条約で言われているような、不当な差別的な障壁になっているとは言いがたいのではないかという御意見でございました。また、逆に、こういった権利制限を設けると、障害者向けにコンテンツを提供する事業者のインセンティブを阻害することになる。結果として障害者向けコンテンツ提供の機会が減少するのではないかという御指摘でございます。
 次のページから、視覚障害者関係、聴覚障害者関係、発達障害者、知的障害者関係、それぞれについての御意見でございますけれども、まず1点目としまして視覚障害者関係の複製主体のところでございます。
 公共図書館、国会図書館、大学図書館、学校図書館も認めていくことが必要であると。福祉施設についても視覚障害者情報提供施設としての基準を満たさないものであっても一定の条件の下で、それを含めていくべきだという御指摘でございます。一方で、対象施設については、利用者の確認が行える体制が整っている施設に限定すべきだという御意見もございます。
 それから、対象者の範囲ですけれども、2のところでより多くの障害者を含めるという方向が後退しないことを望むという御意見。障害者手帳の有無というものを著作権法に盛り込むことは避けるべきという御指摘がございました。一方で、21ページの一番上ですが、対象となる障害者の範囲を公的機関で認定された者に限定するなどして明確化することが必要であるという御指摘もございます。
  3の障害者が利用可能なコンテンツが市販されている場合の取り扱いですけれども、これについては権利制限を適用しないこととすべきという御意見。
 一方、録音資料であっても、障害者が使うために適していないというものもあったりするので、そういったものは別と考えるべきだという御意見が2番目でございます。また、3番目は、発売されているCDブックなどは非常に高価な場合があるので、活字のものと同価格のみ権利制限は適用しないとすべきだという御意見がございました。
 そのほか複製の対象となるものにつきまして、施設や障害者自身が所蔵しているものに限定するべきだという御意見。それから、営利目的の場合は、権利制限の対象外とするというような御指摘がございました。
 引き続きまして、聴覚障害者関係ですけれども、総論としましては、市販されているDVDには複製を制御する著作権保護技術が用いられているということで、こういった現状から考えますと、字幕つきのDVDビデオを作製するためには、保護技術が用いられていない素材の提供を受けないと難しいではないか。その後も、貸与するための補償金の支払いが必要となりまして、結果として権利者との連絡が必要になるので、複製権を制限したとしても事実上現状と同じ状況になってしまうのではないかという御指摘でございまして、状況を改善することは賛成だが、この権利制限は聴覚障害者のニーズに合致したものなのか疑問であって、賛成しかねる。そういった御意見がございました。
 それに関連しまして、日本映画製作者連盟からは、保護技術がなされていないマザーテープに関して貸し出す用意があるというような御意見が来ております。
 その次は、放送事業者からの御意見ですけれども、ニュースや情報番組は時間の経過によってデータが古くなってしまうので、字幕を付与する場合には、誰が字幕を付したのかということについて複製主体が責任を有することを明確にすることが必要だという御指摘がございます。それから、自由に再送信することについてはより慎重な検討が必要という御指摘も寄せられております。
 その次のページにまいりまして、複製主体のところでございますが、情報文化センターなどの特定の団体との契約を条件とすべきではないということですとか、大学などの高等教育機関も複製主体として含んでほしいという御指摘がございました。
 対象者の範囲につきましては、わが国の障害判定は厳しいという御指摘がございまして、障害者と認定されなくても、聞こえや見ることに困難があると申告した人を対象とすべきという御指摘がございました。
 健常者への流出防止について、中間まとめでも多少触れてございますけれども、これにつきましては、費用負担などが発生する「技術的保護手段」を付すということを求めないこととすべきという御指摘がございました。
 逆に、健常者向けに無償貸出しされないようにすることですとか、市販のDVDと同様の保護技術を施すということ、それから、公衆送信についてはアクセス用のID管理などで利用者限定の手段が確保されるように、この3点について配慮が必要だという御指摘もございました。
 一方で、著作権の技術に関しましては、技術の進歩によっていろいろ変化していくので、要件ではなくてガイドラインなどで示せばいいのではないかという御指摘もございました。
 利用可能な著作物が市販されている場合は、先ほどの視覚障害者関係と同様に、聴覚障害者が本当に使いやすいものでなければ別のものと考えるべきだという御指摘もございます。
 その他といたしまして、こちらはDVDなどを複製して字幕を付与するということではなくとも、市販されているDVDをバリアフリー化する技術というのが既にあるという御指摘が来ております。これは、著作物自身を複製しなくてもパソコンで市販のDVDを入れれば、字幕がネットから流れてくると、そういうサービスがあるようですけれども、今回の複製の権利制限をするよりも、そういったサービスの方が複製物の流出の可能性ですとか、いろいろな問題点が解消できるので、こういったものについても権利制限の対象として考えていくべきだというような御指摘が来ております。
 2番目でございますけれども、障害者を対象としたCS放送については、今自動公衆送信の範囲が厳格に限定されていて、これ以上の限定をするべきではないという御指摘。字幕を付加する作業については、どうしても人員的な限界があるので、「ニコニコ動画」ですとか、そういったサイトで使われているような機能を活用できないかというような御意見がございました。
 その次のページですけれども、知的障害者、発達障害者関係についての御意見でございます。こちらは、視覚障害者、聴覚障害者に準ずるということではなく、発達障害者を著作権法で正式に位置づけるべきだという御意見が幾つか来ております。
 また、複製の方向についてもデイジー化ですとか、特定の手段に限定すべきではないという意見が何点か来ております。それから、上から5番目では、制作だけではなくて一定期間保存が可能となるような方策の検討をすべきという御指摘がされております。
 障害者福祉関係については以上でございます。
 引き続きまして、長くなりまして恐縮ですが、ネットオークション関係についても続いて御説明させていただきたいと思います。資料1に戻っていただきまして、3ページで、著作権分科会でいただいた御指摘でございます。
 3ページ(3)の最初の御意見は、ネットオークションなどに画像を載せる場合には許諾をとってから載せるのが前提だと、慎重に検討すべきだという御意見でございます。
 2番目は、販売もしくはオークションという名目をつけることによって、事実上、画像の掲載が無制限に行われてしまう可能性が高いのではないかという観点から、要件、目的など慎重に設計すべきということでございます。
 3点目は、営業的行為なので少し慎重に考えた方がいいのではないかという御指摘です。
 それから、4ページでは、権利者の利害を害さないようにするということで、逆に粗悪な画像ですとか一部加工したような画像を利用するということは人格権の問題も出てくるのではないかということで、この点についても検討すべきという御指摘がございました。
 最後は、検討の観点についての御指摘でございますが、商品を売るときには見せるというのが通常であって、これは必要なことであると、一方でネットに乗せて無制限に複製されないようにするという、この2点をどのように調和させるかというのが課題であって、この辺を検討すべきだという御指摘がございました。
 引き続きまして、資料2に移りまして、意見募集で寄せられたものについての御紹介をさせていただきます。26ページを御覧いただければと思います。ネットオークション関係につきましては全体で36件の御意見、うち団体から16件の御意見が寄せられております。
 総論といたしましては、最初の3つの御意見は、特に漫画について強い懸念が寄せられているというところでございまして、詳しくは後ほど資料4で取り上げますが、要点だけ申し上げますと、権利制限規定が拡大解釈されて、安易にネット上に画像が掲載される恐れがあるということで、場合によっては漫画の場合には、載せたことによって、それが購入代替になってしまうことも少なくないのではないかという観点の懸念でございます。
 4点目は、絵画の場合ですけれども、画像だけでの商品取引というのはあり得ないので、権利制限を行うことは是認できないという御意見がございました。
 その次に、27ページの一番上は、権利制限をするとオークション事業者自らが違法複製物を調査し、削除するというような体制が期待できなくなるという観点の御意見でございました。
 次の2つは、賛成の側の御意見でして、必要不可欠なものだという点とそれから販売を阻害されるような精密な画像を掲載することは想定できないので、権利制限をしても問題はないのではないかという観点の御意見がございました。
 その次のイのところですけれども、権利制限を対象とする売買形式につきまして、公売だけに限るのか、それとも一般のショッピングサイトまで含めるかという点について、幾つか懸念が寄せられておりまして、後ほど資料4で御紹介をさせていただきたいと思います。
 28ページのウに進ませていただきたいと思います。権利制限の対象とすべき著作物についてですけれども、美術、写真の原作品の譲渡に限定すべきだという御意見と、それから2番目は、美術品、写真以外でも商品画像についても同じ問題もあるということで、すべての商品画像について掲載できるようにすべきという御意見もありました。
 次は、エの技術的保護手段の条件をどのようにするかということでございますが、こちらも資料4で御説明をしたいと思います。
 29ページの最後のその他のところでございますが、こちらについては、権利制限という結論に賛意を示したいが、さらに進んでフェアユースの導入について検討してほしいという御意見。それから、著作権の観点とは違いますけれども、CDジャケット等に実演家の肖像を用いているものが数多くあって、著作権法についての検討によって、肖像権に関しての取扱いにも影響が出てくるのではないかと。そういったことにも留意してほしいというような御指摘がございました。
 それでは、先ほど後ほど御紹介すると申しました点につきまして、資料4で詳しく御紹介をしたいと思います。資料4の7ページをお開き願います。
 1点目は、漫画についての懸念が寄せられていると申し上げた点に関してですけれども、1点目の御意見は、出版物の表紙についても、これも美術の著作物であることには変わりないので、今回の権利制限の対象とされて安易にネットに掲載される恐れがあるのではないかということで、現在、無許諾で載せられているようなものもあるけれども、権利制限はそれ合法化することになりかねないという御指摘でございます。
 2点目も、漫画やイラストについて現在でもさまざまな違法行為が横行していて、権利制限は拡大解釈がされる可能性があるという御懸念でございます。具体的には、作品を紹介するために中身まで見せないとしようがないという拡大解釈が心配されるということでございます。
 3点目は、不法に複製されたものですとか、譲渡権侵害によって不法に入手されたものの取引についてまで対象となることは是認できないという観点でございます。これらにつきまして、中間まとめでは、権利者の利益を不当に害さないための条件について、取引の状況などを踏まえて検討すべきということにしておりましたが、こういった懸念が寄せられたことにつきましてどのように考えるべきなのか御指摘を賜れればと思っております。
 違法複製物への対応につきましては、ここの問題というより、譲渡告知行為の防止策で対応すべきものも中にはあるかもしれませんので、それを含めて御指摘賜れればと思っております。
 その次の8ページでございますけれども、こちらは権利制限の対象とすべき売買形式でございます。公売に限るのかどうかという問題ですけれども、寄せられた意見としましては、この権利制限は公売の公益性との比較考量の問題であって、一般商取引まで敷衍することには慎重であるべきだという御指摘。事業者と消費者間の取引の場合と消費者間の取引の場合では同じように考えるということは疑問であるという御指摘が寄せられております。
 この点につきまして、中間まとめでは権利制限の根拠としましては、公売の公益性ということではなく、譲渡権等々の調整の観点を権利制限の根拠にしているところでございますけれども、こういった御意見について、ショッピングサイトの懸念についてどのように考えるべきか御指摘を賜れればと思っております。
 最後9ページでございますけれども、技術的保護手段等の条件をどのようにするかということについての御意見でございます。
 まず、条件付けに否定的な御意見としましては、今の商慣行から乖離した保護手段などの義務を課すと取引市場全体に萎縮効果を及ぼすのではないかという御指摘がございました。
 一方で、そういった技術は当然に必要だという御意見と、これは権利制限にかかわらず技術的保護手段をかけるというような環境整備の検討が必要だという御指摘がございました。これらにつきましてもどのように取り扱うべきか御指摘を賜ればと思っております。
 長くなりましたが以上でございます。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 それでは、障害者福祉関係とネットオークション関係に関しまして御意見ございましたらお願いいたします。
 一応、先に進めまして、また後で御意見があればちょうだいしたいと思います。
 次に、第4節の検索エンジンの法制上の課題について説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 引き続きまして、検索エンジンの部分について御報告をいたしたいと思います。
 まず、資料1の著作権分科会でいただいた意見でございます。4ページでございます。御意見は1点でございまして、わが国でも検索エンジンが適正にしっかり普及していく環境をつくることが重要でありまして、早急に結論を出すべきという御指摘がございました。
 それから、資料2で、意見募集で寄せられた御意見の御報告ですけれども、30ページでございます。全体で92件の意見が寄せられておりまして、うち団体から32件ございます。
 総論といたしまして、まず賛成の意見がございます。この分野での我が国のこれ以上の遅れをとらないようにするためにも早急な検索エンジンサービスの法的地位の安定に向けて立法措置を講じるべきという御意見が寄せられております。
 2点目は、慎重な検討が必要という御意見でございまして、検索エンジンが重要な施策であることは理解できるけれども、違法複製物の流出を増長している側面もあるということと、特定の事業主体が大規模に著作物を恒常的に利用して莫大な利益をあげていることも事実であり、スリーステップテストに照らして慎重な検討が必要という御指摘でございます。
 3点目は、権利制限というよりは、その根拠はネット上に置かれた著作物の利用が黙示的に許諾されている場合が推認できることが多いということなので、「利用許諾の推定規定の立法」による方法が、権利制限を講じるより整合性がある解決が図られるのではないか。そういった御指摘がございました。
 それから、続きまして、権利制限の対象とすべきサービスの範囲についての御意見でございます。1点目は、検索エンジンの目的と行為を明確に定義して合理的な範囲とすべきという意見でございますが、2点目、3点目はより包括的に規定すべきという御意見でございまして、2点目は、現在のサービスをもとにして、対象範囲を決定するとした場合には、将来の検索エンジンの発展を阻害する恐れがある。あまり制約的とせずに包括的に規定すべきという御指摘でございます。3点目も、「オリジナルなウェブページ」への誘導に限るべきであるという御指摘がございました。
 それから、31ページの上から3つ目のまるは、クローリングを行っているのは検索用だけではなく、その他のサービスもあるので、これらに関する研究開発について権利制限が必要だという御指摘でございます。
 また、中間まとめでは自動収集型の検索エンジンを対象としているわけでございますけれども、人手によって登録、評価を行っているサービスについても、これも事前に許諾を得ることが現実的ではないので、権利制限しても問題はないのではないかという御意見がございました。
 そのほかの検討の留意点としまして、キャッシュ表示、スニペット、サムネイルについて、「翻案」について検討が必要ではないかという御指摘ですとか、32ページでは、キャッシュについては同一性保持権の問題が出てくるのではないかという御指摘がございました。
 引き続きまして、ウのところですが、中間まとめでは検索で収集されることを拒否する手段として、技術的回避手段を挙げているわけですけれども、それ以外の意思表示によって収集を拒否するものについて、どのようにするのかということで、中間まとめでも課題になっていたところでございます。その点についての関連の御意見でございますが、まず1点目は、そういった意思表示をしてきた者が正当な権利者であるかどうかという確認が非常に困難であるということから、技術的回避手段のみを対象とすべきであるという御指摘でございます。
 2点目は、技術的回避手段以外の意思表示でも対応をとることが望ましいけれども、過度な負担にならないように配慮が必要という御指摘でございます。
 3点目は、そういったものも含めて、関係者間の話し合いでつくっていけばいいのではないかという御指摘でございます。
 それから、4番目からは、技術的回避手段以外の意思表示については、意思表示そのものではなくて、そういったものに対応できるような新しい技術によって対決すべきではないかという意見が2つほど続いております。著作者の意思表示をより簡便・容易にする手段や利用範囲を発信者が柔軟にコントロールできるような技術を提供することによって解決するのが妥当であるという御意見。技術的手段で意思表示をしてから削除されるまでのタイムラグを縮小する技術的な対応を考えるべきという御意見でございました。
 それから、33ページの上から3つ目ですけれども、ネット上に著作物を公表するのは一定のリスクがあるので、検索エンジンサービス提供者が自主的に応じることは望ましいけれども、法的に強制するべきではないという御指摘がございました。
 それから、検索エンジンサービスでは、クローリングですとか収集部分は、他のサービス事業者の手を借りている場合もあるという観点からの御指摘ですけれども、他の事業者のサービスを利用してサービスを提供している場合には、利用停止や削除という手段をとることは困難なので、検索結果ページから表示されなくなるようにすることで免責されるよう検討すべきという御指摘がございました。
 引き続きまして、エの違法複製物への対応をどうするかということでございまして、1点目は、権利制限規定によって、違法複製物の流布を助長しているような提供者が権利制限規定に便乗して免責を主張するというような危惧があるということでございまして、違法複製物については、通知を受動的に対応するだけではなくて、むしろ積極的に事前に違法複製物の蓄積や表示を回避するための作為義務を課すべきだという御指摘がございます。
 34ページの一番上のまるも今と同じような観点の御指摘ですけれども、実際に韓国では一定のプロバイダにフィルタリング技術を義務づけるとか、ベルギーで防止措置を命じた経緯もあり、参考にすべきと言われております。
 その次からは、消極的な意見ですけれども、違法複製物の対応について負担が大きくならないようにすべきという御意見。その次は、違法複製物について、削除義務を課したとしても、検索にヒットしなくなるだけで、元の侵害サイトは送信し続けられるので効果が薄いのではないかという一方で、違法複製物の削除はサービス側の過大な負担となりかねないので、合理的な範囲にとどめるよう慎重に検討すべきと、そういった御指摘でございます。
 35ページ上のところですが、こちらも先ほどのオークションのところと同じですけれども、著作権に関する権利制限が肖像の利用に関する取扱いにも影響することが考えられるので留意してほしいという御指摘がございました。
 その他といたしまして、フェアユース規定について議論すべきという御指摘ですとか、ウェブページのアーカイブについてもクローリングを行っている場合とかありますので、そういったものについても総合的に検討すべきと、そういった御指摘があったところでございます。
 こちらの分野についての御紹介は、以上でございます。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 それでは、検索エンジンの問題につきまして御意見をちょうだいできればと思います。
 茶園委員。

【茶園委員】

 資料2の31ページにある意見に関して、デジタル対応ワーキングチームにおいて議論した点を御紹介しておきますと、31ページの下から2つ目の意見は、検索エンジンはクローリングして、それを検索結果として表示するものですけれども、研究としてクローリングをするが、その結果を表示しないような研究開発に関するものです。ワーキングチームにおいて検索エンジンの問題を議論したときには、検索エンジンはネット上に流通している情報をユーザーに知らせるという機能があるので、それに着目して権利制限を設ける必要があるのではないかということでした。
 こういう点から議論しておりましたので、あるいはクローリング自体について研究開発のために権利制限が必要なのかもしれませんけれども、この点は、ちょっと問題が違うだろうということで検討は行いませんでした。
 その次の最後のところの意見は、自動収集型の検索エンジンではなくて、人手によった場合に関するものですが、ワーキングチームの議論では、自動収集型であるから、個々的に著作権者から許諾を得るというのは非現実的であるので、権利制限を設ける必要があるのではないかということでした。
 一方、人手による場合には、人間が認識して、その情報を収集するわけですから、許諾を求めなさいといっても、コストはかかりますが、必ずしも無理という話でもないのではないかということがありました。それと、検索エンジンに関して権利制限を設けようとした場合に、多くのユーザーが現在使っている検索エンジンを前提として検討することになるのですが、権利制限が定められた後に、一体どういうものが出てくるのか、今あるものとは異なるものが出てきて権利制限の対象として問題となるのかが、検索エンジンの定義にもよるのですが、なかなか想定しがたいところがございます。ですから、まずは必要性が明らかである自動収集型について権利制限を設けるということで、それが現時点では適切ではないかという議論をしておりました。以上です。

【中山主査】

 ありがとうございます。
 ほかに御意見ございましたら。
 よろしいでしょうか。
 それでは、次の第5節と第6節のライセンシーの保護、いわゆる「間接侵害」に係る課題等について、事務局から説明をお願いします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、引き続きまして、ライセンシーの保護の在り方について、まず資料1の4ページでございますけれども、こちらにつきまして、著作権分科会でいただいた意見としましては、産業界では登録制度よりもアメリカで行われているような契約を優先してライセンシーを保護するという仕組みが望ましいという意見が多数であったということです。その観点から、引き続き関係者の意見を聞いて、活用しやすい制度設計とするべきだという御指摘がございました。
 資料2の36ページがライセンシー保護関係の意見募集の意見でございますが、こちらは寄せられた意見は全体で10件でございまして、すべて団体からの御意見でございました。
 1点目、2点目は、特許権等の通常実施権登録制度の改正の在り方に留意して、実態に即した対抗要件制度を設計すべきであるという観点から、中間まとめに検討されているものについても賛成できないという御意見がございました。
 また、3番目の意見に移りますと、ライセンシーを保護するための具体的制度設計案を示したことは評価できるけれども、登録によらない書面による契約によって対抗要件を付与する制度が望ましいという観点から、産業界にとって活用しやすい制度の導入を実現するための検討を今後とも継続してほしいといった御指摘でございます。
 それから、37ページに移りまして、こちらの登録の負担に関する観点から御意見が多数ありましたけれども、一番上は、登録制度を仮に設けるのであれば、登録の手続き、費用の負担を軽減すべきだという御意見。
 それから、先ほどと同様に、登録の手続きを経ることなく第三者にその権利を対抗できる仕組みを早急に設けてほしいと、これは映像業界からの御意見でございます。特に、映画業界からは二次著作物についての利用の許諾にかかる原著作物の著作権者の許諾については特に登録なしで対抗できるようにしてほしいという御指摘がございます。
 同じく映像分野からですけれども、登録制度の創設は反対である。著作権の権利の発生そのものには登録を必要としないということもありまして、現状としては譲渡についての対抗要件としての登録も行われていないケースが多くて、登録制度が著作権にかかわる取引に馴染みにくいということではないかという御指摘がございました。
 また、ライセンスを受けて事業化しているという場合には、この商品自体にライセンシーが誰かということは表われておりますので、現実の事業化されていることをもって対抗力を認める制度の方が適切だと、そういった御指摘も来ております。
 その次は、書籍分野からの御意見ですけれども、書籍分野につきましては、既に出版権という現行制度があるという観点からの御指摘ですが、新たな登録制度が出版権制度に影響を及ぼさないようにしてほしいということで、出版権においては業界の慣行として、いつでも登録し得る状態であるけれども、実際に登録していないという場合がほとんどであって、あえて登録しないということで何らかのデメリットをもたらさないようにすべきだと、そういった御指摘でございます。
 少々飛ばしまして、39ページの1つ目のまるのところですけれども、こちらは登録制度を導入する方向で法改正を検討することは賛成だという御意見なんですが、ただ、平成19年の産業活力再生特別措置法に対応した特定通常実施権登録制度のみならず、今改正作業中の特許法の通常実施権登録制度の改正の動向ですとか、実態に即した対抗要件制度を設計すべきだと、そういった御意見でございます。
 その下の御意見は、そもそも著作物を利用する権利は、現行で対抗要件制度が存在していないので、まず特許法上の通常実施権登録制度との整合性を考慮した登録制度の導入を検討すると、そういった御意見でございます。
 40ページに移りまして、先ほども分野ごとにそれぞれ多少御意見を紹介しましたけれども、ライセンシーの保護の必要性が著作物の種類によって異なるということから、さしあたり必要性の高いコンピュータープログラムに限定して登録制度を創設した上で、ほかの著作物に関してはさら検討することが適当である。そういった御意見がございました。
 引き続きまして、独占的に利用できる地位についての利用権でございますが、こういった地位の創設を検討することは賛成であると。ただ、実務に与える影響ですとか、各国の法制度の整合性を十分に検討すべきと、そういった御指摘がございました。
 引き続きまして、「間接侵害」の課題につきまして御報告をいたします。
 こちらは、著作権分科会では特に御指摘がございませんでしたので、資料2のみで御報告いたしますが、41ページ以降でございます。全体で33件の御意見、うち団体からは9件の御意見がございました。
 総論といたしましては、一番上の御意見では、いわゆる「カラオケ法理」の適用に過度な拡張が見られていて、予測可能性などの点で事業遂行の問題が生じているということから、司法判断における過度な拡張を謙抑的にする立法が望まれるという御意見でございます。
 2番目、3番目は、それとは逆でございますが、自ら利用行為をなす者に限定されないということを明確化するという結論を支持するという御意見でございます。3番目は、今まで裁判所は事案に応じて適切に判断してきたところなので、「行為主体」の判断が法制化によって硬直化することがないように留意すべきという御指摘がございました。
 4番目以降は、引き続き、謙抑的な立法を求めるという立場からの御意見でございますが、著作権の適切な保護と第三者の予測可能性との調和ですとか、罪刑法定主義の観点から112条1項で包括的な侵害行為類型を新設するよりも、113条で具体的なきめ細やかなみなし侵害行為類型を新設する方向でやるべきではないかという御指摘でございます。
 また、個別列挙の場合には、反対解釈の可能性があるという点を中間まとめでも指摘をしていたわけですけれども、予測可能性の欠如が立法の理由であるならば、113条の個別列挙によって、他が要件に該当しないとの反対解釈を生じるは当然構わないのではないかという御指摘もございました。同様の観点から、新規立法の対象外となる行為は、直接侵害行為と同視することを禁止する旨を併せて規定すべきだという御意見もございました。
 その次のページは、具体的に「間接侵害」として差止対象とすべき範囲に何を含めるべきかという点についての御意見でございます。
 過去の裁判例との関係で何点か御指摘がございまして、1点目は、これまで「カラオケ法理」が適用された事例について、それを無批判に整合性をとることがないようにすべきだという御意見。過去の判例の検討にとどまらず、将来予測される利用の形態も念頭において制度設計を行うべき、そういった御指摘がございました。
 具体的にどのようなものを含めるべきかという点につきましては、「2ちゃんねる小学館事件」ですとか、掲示板の管理者ですとか、P2Pソフトの配付者の責任の類型、さらに、ハイパーリンクを提供するウェブサイト運営者の責任、こういった類型についても念頭に置く必要があるという御指摘が来ております。
 上から4番目は、先ほどの113条において個別列挙すべきだという御指摘なんですが、新たな侵害行為類型の構成要件として、「営利目的」というのを盛り込むのを検討する必要があるという御指摘でございます。
 42ページ最後の御指摘は、権利侵害物へのアクセスを提供するサービス全般について、こういったものについては他国では差止請求について「直接侵害」と「間接侵害」かを区別してないのが通常であって、日本の法制もそうすべきというような御意見でございます。
 43ページの一番上のところは、広がり過ぎることを心配する御意見でございますけれども、例えば、同人誌の販売会などでその運営者が含まれてしまうのではないかという点で、こういったものが入らないようにという御趣旨だと思います。その次の御意見も広すぎるという観点からの御指摘でございまして、単に場を提供しているコンテンツサービスまで違法となる可能性があるので、デジタルサービスの可能性を萎縮させることになってしまうのではないかという御指摘。3番目は、侵害行為にも非侵害行為にも使える中立的なサービスが責任を負わないこととすべきだと、そういった御指摘でございます。
 引き続きまして、「間接侵害」に含めるべきものの範囲について、その判断基準についての御意見でございます。
 一番目は、侵害状態を是正することができる立場ということを基準とすべきで、さらに行為者の認識を違法性判断の要素とすることも明らかにすべきだという御指摘でございます。
 2番目は、「他者に行為をさせる」という中間まとめで使っている基準につきましての御指摘ですが、そういった要件では、「予測可能性の欠如」という判例理論に対する危惧が解消できてないのではないかという御指摘でございます。またそういった要件では漏れてしまうものがあるという御指摘で、継続的に直接侵害の温床になる状況を管理する場合には当てはまるけれども、単発的行為には該当しないことになってしまうという御意見。それから、他者の侵害行為をコントロールするという、他者の侵害行為に着目した場合には、カラオケボックスの顧客を支配下において営業するカラオケスナックは規制対象にできるのかという問題が生じてしまうのではないかという御指摘がございました。
 最後は、損害賠償制度に関する御意見でございますが、1番目は、ファイル交換などネットワーク上の著作権侵害について数量の特定が難しいので、法定損害賠償制度を創設するべきだという御指摘。2番目も、権利侵害事案に原告の立証負担から法定損害賠償制度、または懲罰的損害賠償制度を創設すべきだという御指摘が来ております。
 最後、45ページ、その他、「間接侵害」そのものについての御意見ではないかとは思いますが、関連しまして、図書館からの意見でございまして、いわゆる「カラオケ法理」により、図書館や公民館に置かれている端末、こういったものを利用させるだけでも「間接侵害」に問われる可能性があるではないかという観点から、こういったものを視野に入れて「間接侵害」をしてほしいという御指摘でございます。
 この分野につきましては以上でございます。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのライセンシーの保護、いわゆる「間接侵害」に係る課題について何か御意見ございましたらお願いします。
 土肥委員。

【土肥委員】

 ライセンシーの保護の制度の在り方について多くのコメントをちょうだいしております。
 それで、私どもが当初想定しておりましたのは、法制小委さらには文化審議会著作権分科会において、ライセンシーの保護の在り方としては対抗要件の問題として考えるようにということでございましたので、登録による対抗制度を基本とする、というところからスタートしておりました。
 今回のコメントを見ますと、登録によらないような、そういったものが多く寄せられておりまして、これは従来我々が想定していた対象よりも広がるところでございまして、ここをどういうふうに考えていくのか、というところを今後考えていかなければならないかなというふうに思っております。
 これは、ワーキングチーム全体で検討すべきところでございますので、また報告書においても引き続き検討するということを書いておりますので、その点では齟齬はないのではないかというふうに思っています。
 あと検討に先立ちましてユーザーのニーズ、需要としてどのあたりのところがあるのかということを我々としては相当考えたわけでございます。
 そういうことで、どちらかというと結論的には産活法との齟齬がない形で産業財産権と著作権との間でユーザーの方に障害が生じないような、そういうことがまず議論として、検討としてあったわけでございますけれども、今回のコメントは、そういうものにとらわれることなく、広く検討するようにというふうに主として弁護士連合会を中心にして、御意見をちょうだいしておりますので、また産活法の仕組みとは別にどういうものが考えられるのかということを今後の検討の継続の中で考えていかなければならないのかな、というふうに思っているところでございます。

【中山主査】

 ありがとうございます。
 ほかに御意見ございましたら。
 特許の方の議論におきましても、契約で対抗力をつけてくれという意見が非常に強かったんですけれども、なかなか現行の日本の法体系の中で難しいだろうということで、産活法で現在のような処理をしたという経緯があると思いますけれども、それ以上になるとなかなかこれは知的財産法だけの話ではなくて、むしろ大きい民法一般の話になってくるのではないかと思うんですけれども。
 ほかに何かございますか。よろしいですか。
 それでは、第7節のその他の検討事項につきまして事務局から説明をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 それでは、その他の検討事項につきまして御説明をいたします。
 資料1の5ページをごらんいただければと思います。著作権分科会における意見でございますが、その他の検討事項としましては、機器利用時・通信過程の蓄積の問題。それと私的使用目的の見直しの問題がその他の検討事項として主に掲げられていたわけでございます。
 1点目は、私的使用目的の範囲の見直しに関しての御意見でございまして、違法サイトからの私的録音録画を30条の範囲から除外する際に、ゲームソフトやビジネスソフトも量的にかなり多いので、録音、録画に限定せず、著作物全体を対象として議論すべきという御指摘がございました。
 2番目、3番目は、図書館関係の権利制限についての御指摘でして、再生手段の入手困難なコンテンツについての図書館での複製ですとか、図書館においてのインターネットの内容のプリントアウト、官公庁で刊行されているものの全部分複写、こういったものについて検討をぜひ進めてほしいとの御指摘がございました。
 それから、資料2の方に移っていただきまして、その他の検討事項についての意見募集での御指摘でございますが、私的使用目的の範囲見直しについての御意見は今回は知的録音録画小委員会の方で意見募集しておりますので、今回は御紹介を省略いたします。
 その他のものとしましては、まず1点目で、有線放送のスクランブルを解除する機器ですとか、無反応機器について取り締まる規定の検討をしてほしいという御意見がございました。
 それから、2点目は、中間まとめでは特に詳しく書いていない「機器利用時、通信過程における一時的固定」ですとか、「私的使用目的の複製の見直し」については、実態から乖離した一般社会、産業界に悪影響を及ぼす恐れのある結論を導かないように留意してほしいという御指摘ですとか、フェアユースのような一般的な権利制限規定の導入も含めて、広い視点で検討を行うべきという御指摘がございました。
 最後は、私的使用目的の複製につきまして、法制問題小委員会の方にも寄せられた意見が少々ございまして、こちら違法、適法の区別が困難の上に、個人的な使用まで違反になる可能性がある。さらに、テキストまで広がる可能性もあるということについて懸念の意見が寄せられております。ほかにも、今回の意見募集の直接の対象以外の意見が何点か来ておりまして、総論的なものもございますが、総論的な意見から御紹介しますと、違法なコンテンツ流通が放置されず、コンテンツホルダー側が新たなコンテンツを次々に生み出していくような状況になるような法律を制定すべきという御意見。既得権益者の収益を最優先にした中間まとめの内容に反対という意見も来ております。インターネットへの規制は、ユーザーに与える負担、不便が大きすぎるという御指摘がございます。
 4点目は、著作権制度そのものの柔軟な運用が必要であって、著作権制度以外の方法、例えば国が二次創作の「原点」となった作品を表彰するとか、そういった新しい著作者の利益確保のための技術で、利用者の広く小さな負担で新しい作品を生み出す環境を実現すべきだという指摘が来ております。
 5点目は、教育関係の権利制限についてですが、デジタルコンテンツ関係についての教育関係の権利制限での見直しで対象に含めるべきだという御指摘が来ております。
 その次が、法人著作制度について、著作者の利益の地位を向上させる観点からその制度は廃止すべきだと御意見も来ております。
 最後のページにまいりまして、保護期間の見直しにつきまして、これは過去の著作物小委員会でやっておりまして、今回の意見募集対象ではございませんが、延長すべきではないという意見が来ております。
 最後は著作権自体の廃止を検討すべきというような御意見も個人から寄せられております。
 全体ざっとでございましたが、以上でございます。

【中山主査】

 それでは、ただいまのその他の検討事項につきまして御意見ございましたらお願いいたします。
 その他の検討事項のうち、私的使用目的の複製の見直しや一時的蓄積の取り扱いにつきましては、次回の小委員会で詳しく議論したいと思いますので、その際にその点につきましては引き続き議論をお願いいたします。
 それ以外で、何かその他の件についてございますか。
 それでは、どの点でも結構でございますから、御意見ございましたらお願いいたします。

【村上委員】

 個別の議論と離れるのですが、きょうのパブリックコメントの使い方というのは随分難しいなというのが率直な感想でありまして、パブリックコメントを行う以上は形骸化しないように工夫しなければならないのは当然なのですけれども、どこの組織でも同じメンバーで、合議体で意思決定して結論づけたものをもう一回その後で意見があったから見直すということはなかなか実際には難しい。これはある意味当たり前なので、どこでもそういう形の実態になっていると思います。
 それで、どう工夫するかと、1つのやり方が、今回の議題の中で、検索エンジンその他の話というのは、きょう伺った意見をこれから先、十分生かして議論するという結論で、それでいいと思います。
 ただ、第2節の海賊版拡大防止の議論とか、第3節の権利制限の見直しというように、ある程度ここで議論して結論づけた項目については、もう一回意見を聞いても結局は余り変わらないという結論になりがちだと思います。これはどこも同じなので、1つの是正策というもが私が入っていたような懇談会では中間的なところで、結論づける前に、中間論点整理という形でやることがあります。中間論点整理の時点でパブリックコメントを求めて、いろいろな意見をそこでもらうという形で、その後その意見を踏まえて、議論して、結論を出す。そのかわりにパブリックコメントをそこで使うかわりに、もうこちらの結論にはパブリックコメントは求めないという形のやり方をやっているところもあるので、そこら辺のパブリックコメントの使い方をちょっと工夫しないと、せっかく貴重な意見が随分出ているんですが、聞きっぱなしで、結局は余り生かされないということになりかねないので、その辺、工夫された方がいいのではないかなと。逆に、中間論点整理でのパブリックコメントの問題点というのは、下手をすると人気投票になりかねない。意見が分かれたら、声の大きい方に意見が左右されるということになりかねない、そのときにくれぐれも中間論点整理の部分でパブリックコメントをやった場合には投票数がどうなっているかは示さないとか、うまくそこを工夫しながら結果を取りまとめてもらって、論点をさらに整理してもらう。いろいろ一長一短なので、使い方は難しいと思いますけれども、その辺は、パブリックコメントについて工夫の余地があれば検討してもらう必要があるのではないかと考えています。

【中山主査】

 その点、事務局何かございますか。

【黒沼著作権調査官】

 今回も、中間まとめという段階で意見募集をしておりまして、その意味では、受けた意見を踏まえて、さらに検討する余地を残して、意見募集をしているつもりではあります。ただ、御指摘を踏まえまして、これからいろいろと委員会の中でも御意見をいただければ、パブリックコメントのタイミングなどについてもいろいろと工夫をしていきたいと思いますので、御指摘を賜りたいと思います。

【中山主査】

 ほかに何かございますか。

【茶園委員】

 今、村上委員がおっしゃったことはそのとおりだと思うのですけれども、私は欠席したことがあるので、あるいはその時に議論された点かもしれないですけれども、私の記憶では議論されてこなかった点について、ちょっと申し上げたいと思います。
 資料4の2ページ、最終行ですけれども、海賊版の告知行為については、海賊版、すなわち作成が権利侵害である場合の告知行為の規制を検討したと思うのですけれども、このパブリックコメントで出されている意見は、譲渡自体が権利侵害だという、ですから作成行為自身は適法なのだけれども、譲渡が侵害になるという場合を問題としています。恐らくここで問題にされているのは、47条の4で、複製権の制限により作成された複製物であるが、目的外譲渡であるために譲渡権が制限されず譲渡権侵害になるという場合、例えば、私的使用目的で複製したのだけれども、それを公衆に提供するといった場合ではないかと思うのですけれども、そういう場合を含めるか、すなわち作成段階での違法を考えるのか、譲渡段階での違法を考えるのかという問題なのであろうと思います。私は確信を持っているわけではないのですけれども、恐らく作成は権利制限規定が適用されて違法ではないが、目的外譲渡となる場合というのは、量的にはそう大きくないのではないか、とりわけ私的使用目的で複製されたものというのは、量的には当然私的ということですからわずかではないかと思います。
 そうなると、そのようなものが広告されて、それによって流通して、権利者の利益に大きな影響を及ぼすということは余りないように思いまして、まずは規制すべきとされているのは、作成行為自体が違法で、とりわけ大量に複製されて、それが世の中に出回るということでしょうから、今の時点では、規制対象は、海賊版、すなわち作成が侵害であるものの告知にとどめるということでよろしいのではないかと思っております。
 ただ、もしこの規制を開始してみて、この点がある種言い訳みたいに使われるような話になってくると、抜け道、抜け穴になりますので、その場合には何らかの対応がさらに必要になるのかもしれませんが、現時点においては、まずは作成が違法だという場面を対象にするということでよろしいのではないかなと思っております。
 それと関連して、7ページのネットオークション関係ですけれども、ネットオークションに関しては、譲渡権侵害かどうかということが問題とされています。これは妥当な考え方だと思います。といいますのは、適法な譲渡を円滑に行うために、試作物なりをネットに乗せることができるかどうかということですから、譲渡自体が適法か違法かというのを考えることでよろしいのではないかと思っております。
 譲渡権侵害になるというのは、違法複製物との間で違いが生じるのは、先ほど言いましたような適法複製物の目的外譲渡という場合です。
 この場合も、ネットオークションに掲載できないものに含めてもよろしいのではないかと思います。そもそも譲渡ができないわけですから、そういうものの販売を助けるために、ネットに試作物を掲載させる必要がないだろうと思います。
 もう1点、違いが生じると思いますのは、違法に複製されたのだけれども、113条の2で、譲渡権が制限される場合です。この場合も、譲渡権が侵害されないのですから、ネットオークションに掲載できるものに含めてよいのではないかと思います。違法複製物であっても、譲渡は許されているのですから、その作品の譲渡を促進するためにネットに掲載させるということも許してよろしいのではないかと思っております。以上です。

【中山主査】

 2ページの方の、譲渡権侵害、これも違法にしてほしいという要求は何を考えているのか。つまり目的外の譲渡、盗品の場合はどうでしょうか。盗品をネットに出すというような場合は、これはどうでしょうか。

【茶園委員】

 譲渡権の侵害ですか。

【中山主査】

 いや、いや2ページの方の。
 パブリックコメント、この意見の人が何をここで想定して、譲渡権侵害も入れてほしいと言ったのかということなのですけれども。

【茶園委員】

 この資料3の9ページを見ますと、日本映画製作者協会さんと日本レコード協会さんが意見を出されていまして、日本映画製作者協会さんはどういう場面を想定しているかを記載されていないのですけれども、日本レコード協会さんは、この9ページの一番最後ですが、2行目に、例えば私的複製物を公衆に譲渡するための告知行為のように譲渡行為が違法になる場合を挙げておられます。これは49条1項1号、47条の4に関するものではないかと思いますけれども、私的複製の目的外譲渡を想定されているのだろうと思います。

【中山主査】

 ほかに何かございますか。
 はい、道垣内委員。

【道垣内委員】

 パブリックコメントの中で、資料4の4ページ、国際条約との関係の点については、違反するのではないかという強い意見が相当にあるようですね。
 あらためて10月の中間まとめの該当部分を見ますと、それについての言及がないように思われます。ベルヌ条約9条2項には言及がありません。この小委員会では議論をしたと思いますが、明確な答えを出すことなく現在に至っています。しかし、10月の中間まとめの30ページを見ますと、一定の要件のもと、権利制限を行う方向で限定をすることが適当であると考えられるというふうになっており、これは条約に反しないことが確認されることを前提としていると思います。そもそもこの問題を権利制限の形で救うかどうかという政策論よりも前に、仮に権利制限をしても国際約束に違反しないということは、この点を検討をするに先立つ条件だと思います。この点は、中間まとめの書きぶりを見直すべきではないでしょうか。

【中山主査】

 その点はいかがでしょうか。

【黒沼著作権調査官】

 ちょっと関係団体にも詳しい実態をいろいろ聞いてみたいと思いますので、それを踏まえてまた改めて考えてみたいと思います。

【中山主査】

 このベルヌ条約のこの該当規定は不確定概念が3つも入っていて、そもそもそう簡単に解釈できるような条文かどうかというのはまた問題があるとは思うのですけれども、それはちょっと検討してください。
 ほかに何かございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、予定されていた時刻になりましたので、本日の会議はこのくらいにしたいと思います。
 事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】

 本日は、どうもありがとうございました。
 次回の法制問題小委員会の日程ですけれども、今期最後でございますが1月24日(木曜日)の10時から12時に、三田共用会議所での会議を予定しております。よろしくお願いいたします。

【中山主査】

 それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会の第10回法制問題小委員会を終了したいと思います。
 次回は、三田の共用会議室でございますので、毎回違うので、お間違いないようにお願いいたします。
 本日は、ありがとうございました。

15時32分閉会

(文化庁著作権課)