第2節 海賊版の拡大防止のための措置について

(2)親告罪の範囲の見直しについて

個人・団体名 意見
株式会社オプス

 当社は、著作物を制作し、販売している著作権者であります。
 今回の著作権法見直しに関しまして、著作権者の側からの意見を述べさせていただきます。
 先ず、著作権が登録制ではなく自然発生的な権利として認められる事から、権利者の届出が不要な、強力な権利であるという点、また、著作権は「文化の発展に寄与することを目的とする」ために定められたものであり、商業利益を保護する目的で定められたものでは無いという点が、著作権者として大いに注目する点です。
 この2点から、当社は著作権者として、著作権侵害の非親告罪化と、著作権侵害の範囲強化に強く反対します。
 その理由は、著作権のような強力な権利には、限定的で厳格な適用が必要であると考えるからです。
 海賊版商品の対策の為に、著作権侵害の非親告罪化等の著作権法の強化で対応するのは、著作権者の活動を大いに損なう事になり、文化の発展が阻害される事になります。

 25ページ目「4 非親告罪化に関する実務上の問題等について」に挙げられている点は、著作権者として大いに同意するものです。
 また、ここには挙げられていない点ですが、著作権者自身が著作物の告知宣伝のためにあえて著作権侵害を黙認している場合があります。
 この場合に、著作権侵害が非親告罪化される事により、その宣伝力が減ぜられるという事態が生じる事が予想され、当社はこの点を深く懸念しております。

 したがって、「5 仮に非親告罪化するとした場合の範囲について」については、相当に厳格な規定を望みます。その規定は、著作物の完全な複製品を商業利用している場合にのみ摘要される事、そして、その場合の違法商品の形態も、明確に記述される事を望みます。

 著作物の一部使用(評論やパロディ)や、紹介のための素材の使用(第三者の口コミ宣伝など)、二次創作活動などは、文化保護の観点からも有益であります。これらの活動が些かも阻害されることが無いように、非親告罪化の際の違法規定は、相当に限定的な規定である事を望みます。
W-TALE(小説・ゲーム製作コミュニティ)
  • 18ページ 親告罪の範囲の見直しについて
     我々は著作権の非親告罪化には反対である。
     その理由の一つに、ありとあらゆるコンテンツの創作行為において、意図が有り無しにかかわらず多少の模倣を含んでいるからである。
     あるコンテンツに模倣されたものが内蔵されている場合それが俗に言うパロディとして受け止められるか、それとも単なる模倣なのか、また表現が意図した剽窃か偶然の相似なのかという判断は非常にあいまいで難しく、それを判断するのには裁判所で長い時間をかけてケースバイケースで考えていかなければならないと思われる。そもそも、コンテンツに含まれる模倣要素を模倣元となった一時創作者が容認するのであればわざわざ犯罪として取り扱う必要は全く無い。
     それを著作権を非親告罪にすることで警察や通報者の一存で、「これは著作権違反である」と決め付けて犯罪として取り扱うのは問題があるのではないか。
     二つに、著作権を非親告罪にすることでそのコンテンツに本当に著作権侵害があるのかどうかわからないのにもかかわらず、警察や通報者の判断で強制的に犯罪として調査されてしまう恐れがある。その場合、愉快犯的にみだりに著作権侵害を通報する人間が現れたり、「あなたの作品を著作権違反として訴えるか、訴えない代わりに和解金を用意しろ」というような俗に言う当たり屋的な金銭の請求などが発生するおそれがあり、これはコンテンツの創作者に対して表現の幅を狭めるどころから表現することそのものをできなくさせる。これは表現の自由の侵害に繋がる可能性がある。
     三つに、著作権はありとあらゆる創作活動において根幹をなす法律であり、これを容易に改変することは様々な新しい不都合をを生み出す可能性が高い。現在問題となっている海賊版の取り締まりや違法なアップロードについては著作権本体ではなく、別の法律によって個別に対処するべきである。
     四つに著作権侵害においては国内よりも国外の法がもっと酷い状況にある。国外において日本国内の創作物が無許可で著作権を侵害されている事態に対して、もっと深刻に扱うべきであり、国内の著作権法を無思慮に改変するよりは国外に対して影響力を持つ法律をもっと優先的に制定すべきであると考える。
動画コンテンツの永久保存を考える会  著作権侵害を非親告罪化することは、警察関係者と一部の既得権者のみを優遇し、大多数の国民には不利益しか与えぬ愚考の極みです。そもそも、知財の保護において重要なことは「権利者と利益者双方の利益を損なわないルールづくりを行うこと」であり、「盲目的に権利者に便宜を図ること」ではありません。
 「著作権法違反の非親告罪化」については、すでに様々な場所で避難の対象となっていますが、なにより著作物に対するフェアユースの概念が整っていないわが国では、二次創作をはじめとする善意のファン活動に壊滅的な打撃をあたえかねません。本件で大切なのは「刑罰の対象は海賊版販売など悪質な商行為に限定する」と明記することです。どんなに著作権保護を錦に掲げたところで、合理的利用のない弱者いじめのような微罪摘発が繰り返されては、決して民意の賛同は得られないでしょう。
日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合  当組合は、著作権法違反に係る罪について、非親告罪を原則とすること及び現行の非親告罪とされている範囲を拡大することに反対する。従って、中間まとめにおいて「慎重な検討を要する」とされる方向性は基本的に支持するが、さらに踏み込んで「非親告罪化は行わない」旨を明文で打ち出すべきである。
 著作権法違反に係る罪について原則として非親告罪化された場合、当事者である著作権者及び著作隣接権者(権利の信託を受けた者を含む)でない第三者による告発が乱発されるおそれも有り、創作活動を著作権侵害のリスクと両天秤に量った場合に前者が優越する度合いが親告罪とされている現状よりも必然的に高まることが予想され、それは結果的に創作活動の萎縮を招くことに繋がると考えられる。その場合、既に大量のコンテンツを保有している既得権者を利することは有っても個人・団体を問わず新規の創作活動が阻害され、中長期的に我が国のコンテンツ供給量を減少させる懸念が極めて大きいと判断せざるを得ない。
 また、レンタルにおいて供給されている音楽・映像ソフトが第三者の告発や捜査機関の職権探知により著作権侵害物品であると認定された場合、レンタル店はもとより特に顧客が借り受けた著作物の私的複製を著作権法第30条の範囲を越えて行ったことを主たる理由に刑事責任を問われる恐れも否定し得ず、当組合としては加盟店及び顧客が確信犯的でない行動を理由として刑事責任を問われるリスクを負うことは、看過し難いと言わざるを得ない。
 以上の理由により、当組合は著作権法違反に係る罪について、非親告罪を原則とすること及び現行の非親告罪とされている範囲を拡大することに反対する。
社団法人 日本書籍出版協会  非親告罪の範囲を拡大することは、悪質な海賊版の摘発に効果があるという面はあろうかと思います。特に、出版者は、著作権上の固有の権利を有していないため、著作権侵害事件において民事上の訴えを起こす場合でも、常に著作者の持つ著作権に基づいて対処するほかはありませんが、著作者は裁判の当事者になることを躊躇する場合も多く、みすみす泣き寝入りすることも少なくありません。その意味で、著作権者の告発がなくとも、出版者のみが捜査に協力することで刑事訴追が行われることのメリットはあるともいえます。
 しかし、一方で、著作物の創作・発表においては、表現・出版の自由が最大限に保障されなければなりません。非親告罪の範囲を拡大することで、著作権者の告発なしに、著作権侵害の疑いのあるものが捜査を受け、刑事訴追されるようなことになった場合、それが著作者の創作に対する萎縮効果を及ぼすことになるおそれがあります。このような事態は、絶対に認めることはできません。
 この理由から、非親告罪化の範囲拡大は、海賊版対策に一定の効果があるとしても、極めて慎重に検討されるべきであると考えます。
日本民主主義著作者総連合  民著総連は、著作権法における非親告罪の範囲拡大に反対する。中間まとめでも著作権等の侵害罪についての親告罪の範囲の見直しについて慎重な立場が示されているが、改めて主張したい。
 知識労働者は、創作者であると同時に利用者であるとも言える。われわれは多くの先人に学び、巨人の肩に乗る存在であることは言うに及ばないであろう。しかし、いくら独創性や新規性が創作物にあるとしても、全くゼロから創作しているわけではない。仮に、本当に新しいもの、本当に独創的なものがあるとしても、その定義上われわれの認識の枠外にあるのだから、創作物として認識できないだろう。既知の創作物の体系をもとにわれわれは認識し、鑑賞し、創作しているのである。
 われわれは既に流布している創作物を、時として風刺し、倣って学び、新たなる創作物として昇華させることが多くある。その際対象となるのは、古典的な創作物に留まるというわけではない。時事的な流行や同時代の著作物を利用することも多い。
 以上のような意図的な利用を保護することも、文化の発展や多様性を考えると必要であると考えられる。
 海賊版対策は、確かに創作者に資するものである。しかし、「仮に非親告罪化するとした場合の範囲について」(25〜26ページ)でも示されているように多くの問題を孕んでいるし、非親告罪範囲拡大は「副作用」の方が大きいのではないかと考える。
 非親告罪の範囲を広げるのではなく、むしろ、一定の要件の下でフェアユースを認めるべきであり、そのことについて検討していただきたいと考える(むろん、仮にフェアユースを創設したからといって、ただちに非親告罪の範囲を広げて良いとの意見ではないことに注意されたし)。
 民著総連は要綱にある通り、フェアユース規定の実現を目指しているが、著作物、実演またはレコードの通常の利用を妨げないこと、権利者の利益を不当に害しないこと、特別な事情が考慮される場合の三点(ベルヌ条約で、権利の制限を行っても良いかどうかを判断する際に利用している3-step-testに依拠)を満たしている利用法について、全般的に認められるようにしていただきたい。
 つまり現在列挙され規定されている、著作権の効力が及ばない著作物の利用行為(著作権法30条〜47条の3)を、限定を設けない抽象的な規定に改正すべきだと提案し、そのことについて検討していただきたいと希望する。
日本知的財産協会  著作権侵害罪の運用・実態面からみて、早急に非親告罪化する必要性を見出すことはできないため、現行法のままで特に問題はないと考える。非親告罪化することによる効果及び影響も含め、更に慎重に検討すべきであると考える。
日本弁護士連合会 第1 「第2節 2 親告罪の範囲の見直しについて」の部分に関する意見同中間まとめでは、著作権法違反罪を一律に非親告罪化することは適当でなく、例外的に一部の犯罪類型に限り非親告罪化することに関しても慎重に検討する必要があるとしてまとめられている。当連合会においても2007年2月9日付けで「著作権罰則の非親告罪化に関する意見書」を内閣の知的財産戦略本部、同本部知的創造サイクル専門調査会、同本部知的創造サイクル専門調査会会長・委員及び知的財産戦略推進事務局あてに提出しているが、改めて次のとおり意見を述べる。
  • 1 意見の趣旨
     著作権法違反罪を、非親告罪とすることには反対する。
     著作権は、産業財産権とは異なり、民主主義の基盤をなす言論の自由に密接に関連するという特質を有することにかんがみ、検討するについては、言論の自由を萎縮させることのないように細心の注意が払われなければならない。
  • 2 理由
    • (1)親告罪
       親告罪とは、そもそも、公訴の提起に告訴・告発または請求を必要とする犯罪をいう。親告罪については、告訴・告発を欠く公訴は無効であり、公訴棄却の判決で却下される(刑訴338条4項)。
       公訴権の行使を被害者等の告訴という意思表示にかからしめる理由には大別して4つある。第1は、起訴して公にすることがかえって被害者の利益に反することがある場合である、強制猥褻罪などがそれである。第2は、毀棄罪のように、被害法益が比較的小さいので被害者の意思を無視してまであえて訴追する必要がない場合である。第3は、被害法益が小さいとはいえないが、法政策上、被害者の感情に反してまで国家が干渉しない方がよい場合である。第4は被害者の告訴がなければ犯罪を認知するのが実際上困難な場合である。
    • (2)著作権法違反罪が親告罪とされている理由
       著作権法違反罪が親告罪とされている理由は、その保護法益が私的利益であること、さらに加えて、これを認知するのは侵害行為に最も敏感で、しかもその事情をよく知る被害者(著作権者等)の告訴に待つのが、相当であるからであると解される(香城敏麿「著作権法」注解特別刑法第4巻886頁参照。)。
       これを敷衍していえば「著作権者等の事後追認または事後承諾により適法化される性格を有するもので…その侵害について刑事責任を追及するかどうかは被害者である権利者の判断に委ねることが適当であ」り、「被害者が不問に付することを希望しているときまで国家が乗り出す必要がないと考えられる」(加戸守行「著作権法逐条講義」[第5版]755頁参照。)ということである。
       これにさらにつけ加えれば「著作物には営利的に利用されないものが多いなど、なお特許と比較して私益性が強い…特許権とはそういったことで異なる事情が多い」(第147回通常国会参議院文教・科学委員会会議録第5号(平成12年3月16日)政府参考人・近藤信司氏(当時・文化庁次長)の答弁。)。
    • (3)非親告罪化に反対する理由
      • ア 効果に対する疑問
         多様な著作物に対する多様な態様の著作権等侵害罪を、非親告罪にしたとしても、抑止力として果たして有効か否かも必ずしも明らかではない。
      • イ 刑事罰則の謙抑性および認知困難性
         また著作者人格権侵害の罪についていえば、人格的利益を保護法益とするので、被害者の感情に反してまで国家が介入するのは不適当であること、公に公訴提起することによってかえって被害者の被害を拡大する場合もあり、また、何よりも名誉、名誉感情にかかる犯罪は、被害者の告訴に待たなければ、国家はこれを認知しがたい、という事実がある。
      • ウ 刑事政策的理由
         著作権法違反罪を一般的に非親告罪にすることは、犯罪抑止より、覚知されない犯罪(暗数)をいたずらに増やすだけで、かえって法軽視の風潮を生じさせかねないという懸念もある。
      • エ 言論に対する萎縮効果
         さらに、著作権は言論の自由と密接に関わるものであり、著作権法違反罪の非親告罪化は、民主主義の根幹的基盤である言論の自由に萎縮効果を与えるおそれが強い。特許権等の産業財産権との対比において、この点が大きく異なることを指摘したい。
    • (4) 一部類型についてのみ非親告罪化するという議論の問題点
      • ア 効果に対する疑問
         本意見は非親告罪化に反対するものであるが、中間まとめが言及するように特に悪質な著作権法違反行為に限定して刑事罰の非親告罪化を検討するといっても、その絞り込み作業は困難である。単に「営利目的」や「大量に」というだけでは、書籍、雑誌、新聞の発行も入ってくることになるが、これは明らかに問題である。
         親告罪のままでは公益的見地からも放置されることが許容しがたく、かつ、他に実効的抑制手段がない、誰の目から見ても一見明白に極めて悪質と認められる一部の行為類型に限定するといっても、それを具体的に行為類型を選定して、絞り込むのは極めて難しい。
         しかも現在、親告罪にしていることによりもたらされている不都合はないといってよい。
         非親告罪化して刑事的抑制の効果が上がるものでもない。非親告罪化して刑事的抑制効果が上がるという客観的実証はない。
      • イ 構成要件の明確性と立法技術的困難性
         一部の行為類型とはいえ非親告罪化するとすれば、行為類型の絞り込みとともに、構成要件の厳格化、明瞭化が不可欠である。
         ところで、多種多様な種類の著作物があり、日々新しい著作物が生じている。かつ著作権には翻案権を含むなど、その権利保護の範囲が一義的に明確にできない。
         したがって、かかる厳格な要件設定は立法技術上極めて困難といわなければならない。
      • ウ 慎重な審議の必要性
         著作権法違反罪の非親告罪化は上述のとおり重大な問題を孕んでおり、非親告罪化の著作権侵害行為の抑止効果も極めて疑わしく、改正を必要とする立法事実もない。よって、著作権法の対象とするものの特質を踏まえて、慎重な検討が行われ、非親告罪化について消極の結論が出されるべきである。
         なお、この点については、当連合会は前述のとおり2007年2月9日付けで、著作権罰則の非親告罪化に関する意見書を既に提出していることを付言する。
日本ユニシス株式会社
  • 意見内容
     非親告罪化に対する判断(適当でない)及び一部非親告罪を検討する場合の判断についても同意見であります。
  • 意見提出の理由
     特にありません。

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