各項目ごとの主な意見の概要

1.「デジタルコンテンツ流通促進法制」について

ア 総論

  •  「デジタルコンテンツ流通促進法制」は、権利の切り下げによるのではなく、権利者自らが行うビジネスの活性化の促進及び権利の集中管理事業の充実により達成すべき。権利の報酬請求権への切り下げは、権利者と利用者が対等な立場で交渉できなくなり、権利者が本来享受できる正当な利益を得ることを困難とし、かえってコンテンツの再生産を阻害し、日本のコンテンツ制作能力を低下させるおそれがある。(社団法人日本レコード協会)
  •  本来、著作物の利用に関するルールは、利用者と権利者の間の契約により形成されるべきもの。安易に著作権を制限しようとすれば、国際条約に適合しなくなるおそれもあり、コンテンツビジネスの発展は、利用者と権利者双方の真摯な努力によって実現すべき。流通が盛んになっていく時代にこそ、コンテンツを構成する著作物の内容の充実がより重視されるべき。(社団法人日本音楽著作権協会)
  •  あらゆるコンテンツの源泉である文字・活字コンテンツの権利保護があってこそ、良質なデジタルコンテンツが生み出されていくことを認識すべき。安易な強制許諾制度の導入等や、著作者人格権の特に同一性保持権の要件の見直し等については、原創作者の権利や利益を損なうことがないよう、慎重な検討が行われることを希望する。(社団法人日本書籍出版協会)
  •   Web2.0における広域な参加型ビジネスを含めた利用については総合的な検討が必要であり、「デジタル化・ネットワーク化の下における著作権制度の在り方について、より総合的に検討を行っていくことが適当」との意見に賛成。(株式会社日本ユニシス)(同旨 多数)
  •  現状の問題点の解消だけでなく、より一層積極的に利用を促進するための制度作りが必要。フランスが国内で放送されるテレビ・ラジオ放送などの網羅的蓄積、社会への提供を義務づけた国立機関の設置を規定したように、デジタルコンテンツを国民共有の知的資産であるとの観点から検討すべき。(個人)
  •  多くの者に触れてもらえる機会をつくることで文化は発展する。一般利用者の利用を認め促進することが、デジタルコンテンツを豊富に流通させる第一歩である。音楽や映像などを利用する時に、誰でも簡単にある程度の許可を取ることのできるシステムとすることが必要。(個人)
  •   Web上でのコンテンツ流通が「リアルタイムに複数のコンテンツの重ね合わせ」を行う「マッシュアップ」という新しい利用概念/形態にシフトしている状況を鑑みると、「一任型の著作権管理方式」の「集権型」より、クリエィティブ・コモンズのようにメタ情報として権利者の意思表示を埋め込んだ「分散型」で著作権管理を行う方が現実的である。(株式会社インディゴ)
  •  特別法に関して提案されている案は、現時点では実現性に乏しく、さらなる検討が必要。(日本知的財産協会)

イ 過去の放送番組の二次利用等について

  •  NHKとしても放送番組の二次利用に積極的に努めているが、権利者の所在不明の場合について、現行の裁定制度では手続きに要する期間が長く実際の二次利用に支障を来たすおそれがあり、実演家が不明の場合にはそもそも裁定制度がないなどの問題がある。これら諸課題への対応を総合的に検討すべき。(日本放送協会)(一部同旨 社団法人日本民間放送連盟)
  •  放送番組の二次利用は、現状でも海外番販やビデオグラム化など様々な形態で実現しており、放送コンテンツが死蔵されているとの誤った認識のもとで検討が行われるべきではない。さらなる放送番組の流通を促進するためには、著作権法制度の議論とは別に、各権利者のビジネス上の採算や戦略等に関する十分な検討が必要。著作権法上の課題については、映画の著作物への共有著作権の行使と同様の扱いの導入等を要望しており、今後の検討に反映されることを希望する。(社団法人日本民間放送連盟)
  •  国民の「知る権利」を実質的に保障するためには、同じ放送対象地域に民間放送局が1つしかない地域もあり、放送を受信できない地域に所在する者に受信させる目的で放送を同時再送信することができるように、権利制限を新設すべき。(個人)
  •  放送局による過去の番組のダウンロード提供は、二次利用でなく「再放送」と位置付けるべき。(個人)

ウ その他

  •  インターネットを介したコンテンツの二次利用は、検索をはじめ様々な情報処理技術の研究開発を行う上で必要不可欠だが、研究開発者や二次利用者の法的地位が不安定であり、研究開発を進める上での障壁となっている。研究開発におけるコンテンツの二次利用に対する法制の整備を期待する。(独立行政法人情報通信研究機構 知識創成コミュニケーション研究センター 自然言語グループ、個人)
  •  フェアユース規定の考え方を導入し、二次利用、二次創作に関する権利制限を設けることについて検討すべき。(個人)
  •  権利者不明の場合等の対策については、過去の放送番組だけでなく著作物全般について考えるべき。常識の範囲で最大限の努力をしても連絡が取れない場合は、所在判明又は利用拒否の意思表示があるまで、著作物の利用ができる仮の地位を認める制度を検討すべき。(個人)

2.海賊版の拡大防止のための措置について

(1)海賊版の譲渡のための告知行為の防止策について

ア 総論

  •  インターネット上で海賊版の譲渡の告知を行う行為を、著作権侵害行為とみなすことに賛成。(社団法人日本映像ソフト協会)(同旨 社団法人日本映画製作者連盟、社団法人日本音楽著作権協会、社団法人日本民間放送連盟、社団法人日本レコード協会、日本知的財産協会、個人)
  •  海賊版であるか否かを当事者が知っているかの確認方法が不明確であり、厳しく判断するとネット利用者のほとんど全員が処罰の対象となり得、同意できない。一方、曖昧な運用では法律が意味をなさない。(個人)
  •  反対。海賊版の定義には、典型的な海賊版だけでなく、無許諾の二次創作物(複製権や翻案権の侵害に当たるもの)等も含まれると考えられ、また、正規品を仕入れるのか侵害品を作成して販売するのか明確でない場合もあり、創作活動への萎縮効果について検討が十分でない。(個人)

イ インターネット以外の媒体について

  •  インターネットオークションでの海賊版の蔓延等が現在明確化している課題なのであれば、あくまで顕在化している課題の解決を目的とする法改正を行うべき。(社団法人日本広告業協会)
  •  インターネット以外のチラシやカタログなどを利用した一般的な広告手法による譲渡告知行為についても、伝播効果は高いと考えられ、対策を講ずる必要。(社団法人日本音楽著作権協会、個人)
  •  インターネットに限定した手当とすべきかどうかについては、更なる慎重な検討が必要。(日本知的財産協会)

ウ 要件その他について

  •  海賊版の譲渡のみならず、譲渡行為が頒布権・譲渡権等の侵害となる場合の告知行為についても著作権侵害行為とみなすようにすべき。(社団法人日本映画製作者連盟)(同旨 社団法人日本レコード協会)
  •  要件を「海賊版と知って告知に関与した者」とするなど、善良な事業者と悪質な事業者を峻別するための文言は明瞭なものを選定すべき。権利侵害したものがすべて「海賊版」とも読めるが、「海賊版」は、音楽・映画・放送番組・ゲームソフト等を違法複製した物品等のことを表現するのが一般的であり、妥当な定義を検討すべき。(社団法人日本広告業協会)
  •  告知行為の開始時点では著作権等侵害物品とは認識していなかったが、後に事情を知るに至ったケースが含まれるよう、「情」を知っての判断基準時は、告知行為の開始時点ではなく個々の告知行為時点とすべき。(社団法人日本レコード協会)
  •  「『情を知って』などの一定の要件」について、明確に定義することが必要。(個人)
  •  「海賊版広告」ではなく、「海賊版の譲渡のための告知行為」と改めたことについては歓迎したい。海賊版の売買を呼びかける形の広告に限定するというのであれば法規制の妥当性も高まるものと考えられる。(個人)

(2)親告罪の範囲の見直しについて

ア 総論

  •  著作権法違反罪を非親告罪とすることには反対。著作権は、産業財産権とは異なり、民主主義の基盤をなす言論の自由に密接に関連するという特質を有することにかんがみ、検討するについては、言論の自由を萎縮させることのないように細心の注意が払われなければならない。非親告罪化しても抑止力として有効か明らかではなく、また国家は告訴を待たなければ侵害の認知が困難で、覚知されない犯罪を増やすだけであり、さらに言論の自由に萎縮効果を与えるおそれが強い。また、改正を必要とする立法事実もないため、慎重な検討を行い、消極の結論が出されるべき。(日本弁護士連合会)
  •  非親告罪の範囲拡大に反対であり、「慎重な検討を要する」とされる方向性は基本的に支持するが、さらに踏み込んで「非親告罪化は行わない」旨を明文で打ち出すべき。非親告罪化された場合、第三者による告発が濫発されるおそれもあり、結果的に創作活動の萎縮を招くことにつながる。(日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合)
  •  非親告罪化には反対。あらゆるコンテンツの創作行為において、意図が有無にかかわらず多少の模倣を含んでいるが、それがパロディとして受け止められるか、単なる模倣なのか、意図した剽窃か偶然の相似なのかの判断は非常にあいまいで難しい。そもそも模倣元となった一次創作者が容認するのであればわざわざ犯罪として取り扱う必要は全く無いにもかかわらず、警察や通報者の判断で強制的に犯罪として調査されてしまう恐れがあり、表現の自由の侵害につながる可能性がある。(W-TALE(小説・ゲーム製作コミュニティ)、個人)
  •  特許権と異なり、著作権から人格権の保護という色彩が払拭されることは考えられない。これは、インターネットの普及により個人の著作が増えており、今後とも通用する理屈である。(個人)
  •  他の知的財産権と異なり、著作権は登録なしで認められる権利であり、量が多いため社会的負担が大きい。非親告罪化するのであれば、著作権も登録制とすべき。(個人)
  •  著作権者自身が著作物の宣伝告知のために侵害を黙認している場合があり、非親告罪化されることにより宣伝力が減ぜられる事態が生じることを懸念する。(株式会社オプス、個人)
  •  捜査の実務担当者からも、実務上は「非親告罪化」はあまり必要ないという意見があり、「非親告罪化」を行う必要性が感じられない。(個人)(同旨 日本知的財産協会)
  •  侵害を放置しないという目的であれば、侵害の可能性のある案件を著作権者に連絡するための中間的な連絡組織や、権利者の対応を補佐する組織を整備すれば十分効果が上がる。(個人)
  •  親告罪の告訴が「犯人を知った日から6か月を経過したとき」出来なくなるという規定を変更できるかを検討すべきかと思われる。(個人)
  •  その他、個人からの意見で多く見られた反対の理由は、以下のとおり。
    • 1 著作物をどのように使ってよいかを判断できるのは著作者・著作権者のみであり、著作者・著作権者の意思が関与しない部分で犯罪が成立していくことは、著作者・著作権者の意思の軽視である。著作権は著作者の利益のためにあるべきもので、国益のためにあるべきものではない。
    • 2 何が侵害で何が侵害でないかは、第三者は明示的には判断できず、冤罪や、第三者による脅し・ゆすり・たかりを受ける可能性がある。悪意を持った第三者の告発により適法な活動まで萎縮する可能性がある。
    • 3 これまで著作権者の黙認等で比較的自由に行われてきた二次創作活動に大きな打撃を与えかねない。創作者はまず模倣による学習から始めるが、模様による学習を妨げ、人材育成、文化の発展に弊害が生じる。
    • 4 インターネットを利用するだけでも、また、その他著作権法についての知識が十分に浸透していない中では、大半の国民が、誰でもいつでも逮捕される事態になりかねない。また、取締りが捜査官・検察官の裁量次第になり、国家権力による検閲に利用されかねない。
  •  出版者は、著作権上の固有の権利を有しておらず、著作者は裁判の当事者になることを躊躇する場合も多いことから、著作権者の告発がなくとも、出版者のみが捜査に協力することで刑事訴追が行われることのメリットはあるともいえる。一方で、著作物の創作・発表においては、表現・出版の自由が最大限に保障されなければならず、著作者の創作に対する萎縮効果を及ぼすことになる事態は、絶対に認めることはできない。この理由から、非親告罪化の範囲拡大は、海賊版対策に一定の効果があるとしても、極めて慎重に検討されるべき。(社団法人日本書籍出版協会)

イ 仮に非親告罪化する場合の範囲

  •  特に悪質な著作権法違反行為に限定して刑事罰の非親告罪化を検討するといっても、その絞り込み作業は困難。単に「営利目的」や「大量に」というだけでは、書籍、雑誌、新聞の発行も入ってくることになるが、これは明らかに問題であるなど、厳格な要件設定は立法技術上極めて困難。(日本弁護士連合会、個人)
  •  侵害行為を一律に非親告罪とすることは不適当で、一部でも非親告罪とすることには慎重な検討が必要であるという意見に賛成であり、さらに言えば全面的に親告罪のまま据え置いた方がよい。(個人)
  •  相当に厳格な規定を望む。著作物の完全な複製物を商業利用している場合のみとすべき。二次創作活動などが阻害されないよう、相当限定的であるべき。(株式会社オプス)
  •  非親告罪の範囲拡大の見送りが望ましいが、仮に行うとしても、暴力団、悪徳業者、外国マフィア等が対象であること、反社会的行為に使うための資金を得るためであること等の場合に限るべき。(個人)
  •  親告罪の見直しに反対だが、仮に非親告罪化するとして場合の範囲については、機械的複写(いわゆる「デッドコピー」)による複製権侵害のみを非親告罪化するべき。権利者に経済的被害を及ぼす海賊版は機械的複製というべきものであるため、海賊版対策はこれで十分。(個人)
  •  著作権の非親告化については、営利目的に限り賛成。個人のファン活動としての二次作は消費者を増やし権利者の利益にもつながるが、ネットオークションでの海賊版の販売や権利者に無断で作成した二次作の販売(同人誌など)の販売は、他人の表現物や著作物を利用して利益を得ている訳だから、これを黙認するわけにはいかない。(個人)

3.権利制限の見直しについて

(1)薬事関係

ア 総論・権利制限の必要性等

  •  権利制限を行う方向が示されたことは、国民の生命・健康を守る上で重要な一歩。薬事法は、憲法上の国民の生存権を補完・実行するものであり、薬事法に係る行為は、公益性の観点から、既存の権利制限と同じ性質を有するものである。薬事法第77条の3はこの中核をなすものであり、この一端を担うのが学術文献の入手、提供であり、著作権による制約を受けるべきものではない。(日本製薬団体連合会)(同旨 日本製薬工業協会知的財産委員会、財団法人日本医薬情報センター、社団法人情報科学技術協会)
  •  薬事法と著作権法が交錯する場面において、著作権法の権利制限の形で調整の方向性が示されたことを評価する。(社団法人日本経済団体連合会・知的財産委員会企画部会)
  •  専門書出版は少部数の出版が多いが、今回の権利制限は、その読者をさらに減少させ、医学系の専門的な書籍・雑誌そのものの存立基盤を危うくする。医学研究の発表の場も失われ、結果として、国民の医療水準にも影響を及ぼすことになる。(社団法人自然科学書協会、株式会社医歯薬出版、個人)(同旨 American Chemical Society Publications Division
  •  権利制限要望の主たる理由として、許諾に時間がかかることを挙げているが、管理団体との事前の基本契約があれば、複写の都度の許諾手続は不要であり、許諾に時間がかかるということはない。また、製薬企業における医療従事者への情報提供は、多くは文献複写業者に発注の上で行っており、数日の日数を要することは容易に考えうるため、「緊急性」を理由とすることは現実に即していない。今後の検討においては、許諾に本当に時間がかかるのか、文献複写にどれほどの緊急性があるのかについて実態を十分に検証される必要がある。(株式会社日本著作出版権管理システム、社団法人日本書籍出版協会、日本医書出版協会、株式会社日本臨牀社、株式会社シュプリンガー・ジャパン、株式会社メジカルビュー社、社団法人自然科学書協会、国際科学工学医学出版社協会、株式会社医歯薬出版、株式会社医学書院、Elsevier BV、個人)
  •  管理団体に委託されていない3割についても、書目の奥付(それに該当する箇所)に発行元が記載されており、連絡は容易のはず。(個人)
  •  緊急事態での的確な情報は、製薬企業自身への問い合わせが一番確実であり、医学系専門雑誌は、一般的な内容で、緊急性対応の内容は薄い。(株式会社緑書房)
  •  通常、製薬企業は自社の医薬品の分析に必要な文献としてどのようなものか把握可能であり、医療関係者から依頼があれば即座に頒布ができるよう前もって出版物のコピーの発注をしておくことは可能であり、実際それが実行されている。また、リクエストのあった文献や書籍を、オンラインで、許諾を得た適法な形で、簡易かつ即時に手に入れることが可能となっている。(Springer ScienceplusBusiness MediaAmerican Chemical Society Publications Division
  •  権利管理団体から入手する方法に加えて、多くの医科学系雑誌がオンラインで入手することが可能である。また、出版社が複製物を電子媒体で直接提供することも行われているため、文献は、どの製薬企業を経由するよりも早く入手できる。権利制限をすれば、文献のコピーの入手スピードは、早くなることはなく、むしろ遅くなるだろう。(THE PUBLISHERS ASSOCIATION
  •  出版社は複製利用を拒否しておらず、許諾ベースで進めるべき。3割の管理団体への未委託著作物への対応は別途考えられるべきで、3割のために7割の委託著作物を権利制限する必要はない。(株式会社医学書院、株式会社医歯薬出版、株式会社南江堂、日本医書出版協会)(同旨 社団法人日本書籍出版協会)
  •  薬事法第77条の3が製薬企業に課している努力義務は、他者の権利を侵害してまでも情報提供すべきとはされていない。医薬品の安全等に関する情報提供は、製造者責任の範疇にある事柄であって、営利企業である製薬企業の当然の責務である。薬事法第77条の3の規定はその製造者としての当然の義務を明記したものであり、それを理由として医薬品の安全等のための情報複製を権利制限とする必然性はない。(日本医書出版協会)(同旨 株式会社日本著作出版権管理システム、株式会社文光堂、株式会社日本臨牀社、株式会社中山書店、株式会社シュプリンガー・ジャパン、American Chemical Society Publications DivisionElsevier BVand on behalf of its affiliates Elsevier Ltd and Elsevier Inc.(以下「Elsevier BV」)、個人)
  •  法や行政が複製物の提供を義務づける場合に、著作権処理の義務が課されることは、義務者の負担であると同時に、行政の遅延にもなる。このような場合には、薬事関係に限らず、権利制限を加えるべき。(個人)

イ 国際条約との関係について

  •  権利制限はベルヌ条約違反である。医学専門書籍・雑誌等の目的は、医療関係者に最新の医学専門情報を提供することにより、医学・医療の進歩に貢献することにある。医学専門書籍・雑誌等は、医師、薬剤師等の医療関係者に有償で提供することを前提としており、またそれ以外に市場は存在せず、それが医学専門書の出版社にとって"通常の利用"に他ならない。
     一方、これらの情報は、今回の権利制限の対象とされている、薬事法第77条の3において医薬品等の製造販売業者等に課せられている医薬品等の有効性、安全性または適正な使用のために必要な情報そのものであり、かつ、薬事法第77条の3に該当する情報提供に係る製薬企業による複製は膨大であり、業界全体で年間数千万ページに及ぶと言われている。
     この膨大な量の複製を権利制限することは著作物の通常の利用を妨げ、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害することになり、明らかにベルヌ条約第9条第2項の規定に違反する。海外権利者の反発は避けられず、国際的な問題に発展することは必至である。(株式会社メジカルビュー社、株式会社日本著作出版権管理システム、社団法人日本書籍出版協会、日本医書出版協会、株式会社中山書店、株式会社シュプリンガー・ジャパン、株式会社医学書院、株式会社自然科学書協会)(同旨 株式会社南江堂、国際科学工学医学出版社協会、Association of American Publishers,Inc.International Publishers AssociationElsevier BVTHE PUBLISHERS ASSOCIATION、個人)
  •  情報提供をする文献はほとんどが論文であり、その通常の利用は出版である。日々の研鑽のための購読利用と、患者に応じた個別の症例対応のための個別入手利用では、その目的が異なるため、複写の権利制限が認められたとしても、医療関係者は購読を中止するようなことはない(日々の研鑽をやめるようなことはしない)。仮に医師が必要な情報(文献)を特定し、出版社に購入を申し出たとしても、出版社は1部の論文単位での提供は困難としており、逆に言うと出版量に比して、ごく小部数で個別的であるということを裏付けるものであり、量的には出版に影響があるといえる程度ではないということであって、今回の複写は、通常の利用である出版を妨げるものではない。
     また、権利制限による経済的損失についても、過去何十年にもわたって薬事法第77条の3による情報提供の一部が複写文献により行われて来たことを勘案すれば、今回の権利制限により出版が影響を受けるとは考えられない。(日本製薬団体連合会)
  •  徴収される使用(複写)許諾料に関しては、管理団体の製薬企業からの収入のうち、製薬企業の社内利用は権利制限の対象外であり、また、社外利用(社外への提供)についても、製薬企業からの発意で提供される文献等は、権利制限の対象外であり、使用許諾料や別刷り作成料等の形で収入は確保されるため、管理団体の収入が大きく影響を受けるようなことはない。
     また、個々の権利者の収入減については、この権利制限の対象は、個々の事例・症例に対応する文献(著作物)の1部ずつの複写提供であり、年間を通しても、個々の著作物でみれば通常多くても数部であり、権利制限の対象となったとしても著作物ごとでみれば、大きな影響は考えられない。(部数が多いものでも数百円分である。)
     この経済的損失は、例えば、第35条の権利制限による権利者の経済的損失と比較すると、全国の幼稚園・保育園から大学・大学院まで多くの教育機関で、多くの教員が日々その援業において必要な著作物を生徒の数だけ複写して配付しており、複写量は相当な数にのぼると考えられるのに対して、本権利制限の場合の複写量は、事例・症例に最適な文献の複写物1部が提供されるのであり、これらを量的に比較してみても明らかに差があるとは考え難く、個別の著作物の複写量では、教育の場合の複写量の方が明らかに多いと考えられる。また、報道における利用についても、例えば、新聞で利用された場合などは、ひとつの著作物を数百万部複製・配付されることと比較しても、本件の複写が明らかに権利者の権利を「不当」に害するとまで言うことはできない。(日本製薬団体連合会)
  •  複製される著作物は多岐にわたり特定の著作物に集中していないため、権利制限は、権利者の権利を著しく脅かすことにはならない。(社団法人情報科学技術協会)

ウ 権利制限の対象範囲・要件について

  •  権利制限の対象は、著作権管理団体に権利委託されていないものに限定することが適当。既に権利委託されているものは、管理団体において容易に許諾を受けることが可能であり、事後的な権利処理も認めているので、緊急性のある情報提供の必要があったとしても、その提供が許諾を得られないために妨げられることはなく、権利制限を行う必要性はない。(社団法人日本書籍出版協会)(同旨 株式会社文光堂、株式会社南江堂、Association of American Publishers,Inc.International Publishers AssociationSpringer ScienceplusBusiness MediaSpringer ScienceplusBusiness Media
  •  事前許諾が難しい場合があることを理由としているのであれば、権利制限の要件には、緊急性の要素が明示的に定義される必要がある。(国際科学工学医学出版社協会)(同旨 Association of American Publishers,Inc.、)
  •  権利制限は拡大運用される可能性が高い。「薬事法77条の3に基づく情報提供」には製薬企業の製品である医薬品の情報やその医薬品の臨床応用例、効果等、緊急性のない一般的な医学情報も含まれ、医療関係者が情報を求めさえすれば薬事法上の要件を事実上満たしてしまうことは明らかに権利制限の拡大運用となる。「患者の生命、身体に対して迅速な対応が求められる場合」を明確化し、購入の代替とならない範囲に限定する必要がある。(株式会社シュプリンガー・ジャパン、社団法人日本書籍出版協会、日本医書出版協会、株式会社日本著作出版件管理システム、Association of American Publishers,Inc.International Publishers AssociationSpringer ScienceplusBusiness MediaTHE PUBLISHERS ASSOCIATION、個人)
  •  「医療関係者の求めとは無関係に行われる企業の自主的な情報提供が含まれないこと」とあるが、医療者への自主提供である企業の販売促進営業活動と、個別の患者対応等のための文献提供は、医療者へ個人対応として行われることが多く、その判別は非常に難しく、これらがどこまで厳守されるか懸念される。(日本病院ライブラリー協会)(同旨 株式会社南江堂)
  •  競合企業が提供する医薬品の類薬・同効薬の安全上の問題が重要となるケースもあり、製薬企業が必要と判断した情報はすべて事前許諾なしに配付可能とすべき。(個人)
  •  中間まとめで提案されている改正案に反対であるとともに、文献複写事業者から購入された複写文献にまで権利制限が及ぶことにはなおさら反対である。(Elsevier BV

エ 補償金・負担の公平性等について

  •  権利制限の趣旨からして、補償金は必要ないと考える。また、どのような検討経緯で「通常の使用料相当額」とされたのか、疑念を抱かざるを得ない。金額は、権利者と利用者の話し合いに任せるのではなく、公的な規制がかかる一定の制限が必要。つまり、医薬品の安全等の情報は、患者の病状に「最適な」情報が「迅速に」提供される必要があり、事前の許諾手続が不要になることで「迅速性」は担保されるかもしれないものの、「最適性」という観点からも検討すべき。金額に公的な規制がかからない場合には、価格の一方的な高騰がおこる可能性があり、体力のない企業は「最適な」情報を提供ができないことになりかねない。(日本製薬団体連合会)(同旨 日本製薬工業協会・知的財産委員会)
  •  文献は医師が自ら入手する場合もあり、単に複写主体が異なるだけであるので、補償金は、日本複写権センターの社内複写利用料である1頁当たり2円程度を目安として、原本相当額(原本の頁単価)を超えない範囲で、関係者関係省庁間で協議・決定されるべきである旨を明記すべき。(日本製薬団体連合会)(同旨 日本製薬工業協会・知的財産委員会)
  •  製薬企業は薬事法上の努力義務を負っていることから立場が弱くなり、関係者間の話し合いにおいて対等の価格交渉が行われないおそれもある。補償金の額は、当事者間の交渉のみに委ねるのではなく、裁定制度の適用を含め、公的な観点から何らかの形でチェックする仕組みが必要。(社団法人日本経済団体連合会・知的財産委員会企画部会)
  •  権利制限する方向で、一方では補償するというのは理解しがたい。一歩譲って補償が必要になったとしても、補償金制度のスキームが全く提示されておらず、その性格も不明。本小委員会あるいは行政が公平な立場から、補償金の全体的スキームを早急に明示すべき。補償制度を設定するにしても、目的の性格に鑑み安価に設定することが必要。なお、補償金の支払い義務者は複写を行った者なのか、医薬品等の製造販売業者なのか、誤解のない表現とすべき。(財団法人日本医薬情報センター)
  •  補償金の支払いを義務付けることは反対。薬剤師は、医薬品等の適正な使用のために必要な情報を患者や購入者に提供することが薬剤師法及び薬事法に義務として定められており、常に情報収集に努めているが、日々更新される膨大な学術文献等を網羅することは不可能であり、医薬品等製造販売業者の協力が必要不可欠。あまりに高額な補償料が設定されると、最適の情報が提供されなくなる可能性が大きくなるので、無償での提供とすべき。仮に有償とするとしても、医療現場での情報入手、利用が困難となることのないような金額が設定されるべき。(社団法人日本薬剤師会)
  •  製薬企業は、「国民の健康のため」という公共目的であるから情報提供は無償にすべきとしている一方で、「国民の健康のために不可欠」な医薬品は有償で販売している。医学専門書誌は「国民の健康のため」との公共目的で出版しているものであり、製薬企業の主張は論理矛盾である。(株式会社日本著作出版権管理システム、個人)
  •  製薬業界が権利制限を要望している本当の理由は製薬会社のコスト削減である。製薬会社は、サービスとして顧客である医師等に対して、出版物の複製提供等、本来医師が自ら行うべきものの業務を代行してきている。出版社が発行・販売している情報を製薬会社が提供するのであれば、そのコストは製薬会社が負担すべきもの。製薬会社はこのサービスのコスト削減のために無断の違法複製を繰り返し、使用料を無視してきており、今回の権利制限要望はそれを合法化しようとするもの。(株式会社医学書院)(同旨 株式会社日本著作出版権管理システム、個人)
  •  補償金の額は、現在、著作権管理団体に委託されている著作物の使用料と同水準のものにすべき。(社団法人日本書籍出版協会)(同旨 株式会社文光堂)
  •  補償金の額は、医薬関係専門書のページ単価又は抜き刷りのページ単価と同等程度にすべき。現在の権利者側のページ単価は高額すぎ、製薬企業の経営を圧迫するほか、他の弊害も生じるのではないか。(個人)
  •  仮に、著作権管理団体に管理されていない出版物について権利制限が行なわれた場合、その補償額はどのような基準で決定されるか定かでない。裁定制度か、それとも管理団体が管理しているものについては、運用されている使用料を適用することができるのか検討されていない。権利者の意向が補償金に反映されなければならないと考える。すくなくとも海外の権利者が権利者としての権利行使ができないとなれば、国際問題となることは必至である。(株式会社日本著作出版権管理システム)

オ 医療関係者による情報取得の体制整備について

  •  「製薬企業からの文献の提供を待たずとも医療関係者が必要な情報を取得できる体制の在り方について検討が行われるべき」との意見に賛成。病院図書館では、医学雑誌・資料を偏ることなく網羅的に収集している。製薬企業による情報提供という限定された制度によることなく、診療現場で必要な情報提供の体系を形成すべきであり、「病院図書館においても著作権法31条が適用されること」との病院図書館の検討課題についても並行して検討していただきたい。(日本病院ライブラリー協会、個人)
  •  日本薬剤師会としても「医療関係者が必要な情報を取得できる体制」は望ましいが、当面は、患者の利益のために、実際の医療現場で混乱なく円滑に情報が入手できるよう配慮されるべき。(社団法人日本薬剤師会)
  •  今回の権利制限の背景には、医師が長年の製薬企業の便宜供与に慣れている経緯と、製薬企業が顧客である医師からの文献の複写提供を断り切れないことがある。製薬業界のビジネスの在り方自体が大きな問題。今回の権利制限は、文献は買わなくとも、頼めばメーカーがサービスで届けてくれるという風潮に拍車をかけることになる。(日本医書出版協会、株式会社医歯薬出版)
  •  医療関係者の情報取得の体制の不備に起因する問題を、そのこととして解決する方策をとらず、権利制限を行って切り抜けようとすることはまっとうな考え方ではない。(社団法人自然科学書協会)
  •  「患者の生命・身体に対して迅速な対応が求められる場合」であるなら、権利制限の適用を行使できるのは、医療関係者であって医薬品等製造販売業者ではないのではないか。(個人)

キ その他の前提条件

  •  本権利制限とは関係のない利用許諾契約の額やそれ以外の条件の合意が「補償金の額について権利者側と利用者側との間に共通理解があること」にならないことは明らかであり、補償金とは関係のない利用許諾契約の条件合意を条件とするような記述は削除すべき。(日本製薬団体連合会)(同旨 日本製薬工業協会・知的財産委員会)
  •  著作権等管理事業者でもない特定の私的な権利処理機関との契約交渉がまとまることを前提としていることは、公共の福祉の観点から権利制限を行うこととする本質とかけ離れている。(社団法人情報科学技術協会)

(2)障害者福祉関係

ア 総論

  •  2007年9月28日に日本政府が署名した国連障害者権利条約に言及すべき。製作の資格や窓口の制限、貸出等のアクセス方法の限定があり、そのための資金負担も求められる。条約批准に向けて早急な改善が図られるべき。
     著作権者側からみれば権利の一部制限にはなるが、これは障害のある人の情報格差解消のための合理的配慮(reasonable accommodation)であり、この措置で、障害のある人が健常な人と同等に文化や情報を享受することが可能となる。こういった基本的観点から最終まとめの検討がされるべき。
     なお、重複障害もあるため、「まるまる障害者」でなく「まるまる障害」との表記にとすべき。(障害者放送協議会、財団法人全日本ろうあ連盟、他)
  •  コンテンツ提供者側も、障害者福祉の重要性を認識しており、既に、字幕や解説を付した映像作品や字幕放送などの提供が広く行われている。字幕・手話を挿入したDVD等の制作につき事前の一括許諾契約の締結により、字幕付DVD等も多数制作、提供されており、著作権法上の権利の存在が、「障害者の権利に関する条約」で言われている「不当な又は差別的な障壁」となっているとは言い難いというべきである。
     安易な権利制限は、障害者向けにコンテンツを提供する者のインセンティブを阻害することとなり、結果として、障害者向けのコンテンツ提供の機会を減少させるおそれがある。障害者に対する配慮は、社会福祉政策全般の観点から、権利制限がどうしても必要であるとの共通認識が得られた場合に限り、その導入を検討すべき。その場合も権利制限の範囲を明確にし、著作権者等に対する補償措置等についても検討すべき。(社団法人日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター(CPRA))
  •  いずれの権利制限要望も障害者の基本的人権を実質的に保障するものであり、情報アクセスの観点から認めるべき。(社団法人情報科学技術協会)

イ 視覚障害者関係

1 37条3項の複製主体の範囲
  •  公共図書館、国立国会図書館を是非複製主体に含めるべき。大学図書館や学校図書館においても障害を持つ学生、生徒等のために複製を認めることが必要。また、福祉施設についても、視覚障害者情報提供施設でなくとも、一定の条件の下で責任を持った製作と情報提供を行える施設を含めるべき。(障害者放送協議会、個人)
  •  対象施設を利用者の確認が行える体制が整っている公共図書館等に限定するべき。(社団法人日本レコード協会)(同旨 社団法人日本書籍出版協会)
  •  複製主体については、国立国会図書館や一般図書館のみを例示し「施設」に限定するのではなく、NPO法人を含めた「法人」も複製主体として含めるべき。(特定非営利活動法人シネマ・アクセス・パートナーズ)
2 37条3項の対象者の範囲
  •  対象者の範囲は、より多くの障害者を含めるようとするもので画期的な措置と考える。条文作成時にこの考えが実質的に後退しないことを望む。(社団法人日本図書館協会)
  •  障害者手帳の有無を対象者の範囲として著作権法に盛り込むことは避けるべきであり、「障害等により著作物の利用が困難な者」と定めればよい。(障害者放送協議会、個人)
  •  対象となる障害者の範囲を、視覚障害者に限定せず、その他の様々な障害を持つ人々に広げることは、公益性を有する措置であると考えるが、対象となる障害者の範囲は、公的機関等によって認定された者に限定するなどして明確化しておくことが必要。(社団法人日本書籍出版協会)
3 利用可能な著作物が市販されている場合の取扱い
  •  コンテンツ提供者自らが録音物の形態で市販している場合については、権利制限を適用しないこととすべき。(社団法人日本レコード協会)(同旨 社団法人日本書籍出版協会)
  •  同じ録音資料でも資料の一部抜粋であったり音声劇のような特殊なものについては、障害者が使うための資料とは別のものと考えるべき(障害者への情報保障という観点から、資料のすべてをありのままに読んだものを必要としている。)(社団法人日本図書館協会、個人)
  •  多くのCDブックは活字書に比べて非常に高価であり、デイジー録音図書等で製作されたものが、活字と同価格で同時期に出版される場合にのみ、権利制限を適用しないとすることが適当。(障害者放送協議会)
4 その他
  •  複製の対象となる著作物は、その複製を行うことができる施設や障害者自身が所蔵しているものに限定することが必要。(社団法人日本書籍出版協会、個人)
  •  営利目的で行う場合については、権利制限の対象とすべきではない。(社団法人日本書籍出版協会)(同旨 社団法人日本レコード協会)

ウ 聴覚障害者関係

1 総論
  •  市販されているDVDビデオは通常、複製を制御する著作権保護技術が用いられているため、複製権を制限しても字幕等を付けて複製することができない。字幕付きDVDビデオを新たに作るためには、映像著作物の著作権者から、著作権保護技術が用いられていない素材の提供を受ける必要がある。また、貸与には補償金が必要となるため(第38条第5項)、元栓処理で行うことが想定され、複製権を制限したとしても事実上現状と同じ不便さを強いる結果になるのではないか。聴覚障害者がビデオソフトを楽しむことができない状況の改善は賛成だが、この権利制限は、聴覚障害者のニーズに合致したものか疑問であり、賛成しかねる。
     複製権の制限という方法ではなく、著作権者を含む関係者間の協力関係を構築するルールづくりが必要。(社団法人日本映像ソフト協会)
  •  複製の元となる適法なマザーテープを取得していることを前提とすべき。従前より、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターによる字幕付ビデオ・DVDの作成・貸出に協力してきており、その他の公共機関・非営利団体にも、一定の措置の実施を条件にマザーテープを貸し出す用意がある。福祉の増進は、基本的に権利者の協力により実現されるべきであり、安易に権利制限規定を拡充する方法によるべきではない。(社団法人日本映画製作者連盟)
  •  ニュースや情報番組等は時間の経過とともに内容やデータが古くなり誤解を与える可能性もあり、複製して字幕等を付与することについては、新たに複製の主体となる障害者情報提供施設が責任を有することを明確にすることが必要。なお、仮に字幕を挿入した放送番組の録画物をCS放送やネットで再送信できるようにした場合、視聴者にリアルタイムの放送と混同されて誤解や混乱を招くおそれが強い。自由に再送信できるようにすることについては、より慎重な検討が必要。(日本放送協会)
  •  放送事業者としては第三者により付加される字幕等によって放送内容の正確さが結果的に損なわれるなどの問題が生じ得ることを、本来的に懸念している。聴力障害者情報文化センターにおける字幕・手話DVDの貸出しが希望する作品に十分対応できないということであれば、権利者との契約によって運用されているものであり、改善策について放送事業者や権利者団体との話し合いにより解決が図れるのではないか。(社団法人日本民間放送連盟)
  •  放送自体には字幕付き割合が向上しているが、同じ放送でもメディア化したら字幕がつかないという現象が発生している。(個人)
2 複製主体の範囲について
  •  聴覚障害者情報提供施設、障害者福祉を目的とする非営利法人で、聴覚障害者を対象とした字幕や手話を附しており、その実績と経験の一定期間あるところとし、情報文化センター等の特定団体との契約を条件とすべきでない。(財団法人全日本ろうあ連盟、障害者放送協議会)
  •  講義等でビデオを使用する教員も多く、大学など高等教育機関も複製主体として含めて欲しい。(個人)
3 対象者の範囲について
  •  高齢者の多くが難聴などの障害を持っているにも関わらず、我が国は障害判定が厳しく、障害者と認定されない。聞こえや見ることが困難と申告した人を対象とすべき。(財団法人全日本ろうあ連盟、障害者放送協議会)
4 健常者への流出防止等の条件について
  •  「主体対象」を定めること以外に更なる条件を附すことは、バリアフリー作業を困難にさせるだけであり、本件趣旨に反する。結局著作権法の適用と変わらない作業、費用負担を発生させる「技術的保護手段」などを求めないこととし、無断の複製を禁止するクレジットを明記するなど、「主体」の適切な処置、判断に任せるべき。(財団法人全日本ろうあ連盟、障害者放送協議会、個人)
  •  障害者の著作物に接する機会を拡大しようとする本中間まとめに基本的に賛成するが、聴覚障害者の用に供するための字幕等を付した映像資料については、1健常者向けに無償貸出がなされないようにすること、2市販されているDVD等と同様の保護技術手段を施すこと、3当該資料を公衆送信するときは、健常者が視聴できないよう、アクセス用のID管理を行うなど利用者の限定の手段が確保されるようにすることの3点について充分に配慮されるべき。(社団法人日本音楽著作権協会)
  •  プロテクト等の使用については、技術の進歩により変化していくものであり、ガイドライン等で示すのが適当。(社団法人日本図書館協会、個人)
  •  字幕のないDVD等は聴覚障害者向けに収益を得ることを想定していないものであり、複製が行われたとしても権利者の利益を害することはないから、技術的な保護手段をかけることは求めないべき。(個人)
5 利用可能な著作物が市販されている場合の取扱い
  •  聴覚障害者が本当に使い易いものでなければならず、単なるキャプションの挿入されたもの等は含まれない。(社団法人日本図書館協会)
6 その他
  •  市場で一般に売られているDVD等をバリアフリー化する技術があり(「web-shake字幕をつけ隊!」等。市場コンテンツをPCで再生する際に音声ガイドが出るソフトウェア)、著作物に手を加えず、複製もせず、内容を改ざんしない形でのバリアフリー化ができる。むしろ今回の複製を行うことについての権利制限では、複製物の流出の懸念、市場から字幕付きタイトルが減る、メディアの多様化に追いつかない等の問題点があり、コンテンツと字幕データを分けて、著作物に手を加えない形のバリアフリー化も権利者の許諾を不要とすべき。(株式会社キュー・テック)
  •  障害者を対象としたCS放送は、通信相手が障害者手帳を有する者が地方自治体に申請した場合しか機器を入手できず、スクランブルもかけられている。自動公衆送信よりも厳格に限定されており、これ以上の条件を付すべきでない。(財団法人全日本ろうあ連盟)
  •  字幕を追加する作業は専用の機材等が必要であり、施設も少ない。字幕付加について障害者どうしで補完するためにも、「ニコニコ動画」や「字幕.in」のような機能を活用できないか。(個人)

エ 知的障害者・発達障害者等関係

  •  「全国LD親の会」から2007年2月8日付けで文部科学大臣宛に提出された要望書の第11項にある、「LD児・LD者の情報保障を促進するために著作権法を改正すること。現在文化審議会著作権分科会で見直しが検討されている、著作権法第37条第3項、同第33条第2項を改正しLD児・LD者を含む発達障害者も適用対象とすること。」という提言を尊重すること。視覚障害、聴覚障害に準ずる形ではなく、発達障害を著作権法上で正式に位置づけるべき。(全国LD親の会)
  •  複製の方法にデイジー化を含むことは、様々な状況・程度の障害を持つ人々に対応していかなければならない状況の下では、必要な措置であるが、権利者の利益を不当に害することがないように、利用のための条件を限定し、明確化する必要がある。(社団法人日本書籍出版協会)
  •  対象となる「障害者」として、視覚障害・聴覚障害に準ずる形での位置づけにと留まることなく、発達障害や知的障害および精神障害についても正式に位置づけられるべき。発達障害については、学校教育、就労支援等の場面で具体的な支援ニーズに即したものとすべきでり、実際に当該者の指導・支援に携わっている専門家からの所見をもとにして、対象者とすることもできるようにすべき。(障害者放送協議会)
  •  デイジーのほか、技術の進歩により障害者のための著作物へのアクセス手段は様々なものが生まれている。複製方法や提供方法は、特定の手段を限定せず「障害者が必要とする形態」で複製できるようにすべき。(障害者放送協議会)
  •  マルチメディアデイジーの制作だけでなく、教員や公務員の管理の下に、一定期間保存が可能となる方策を検討すべき。(社団法人日本図書館協会)
  •  知的障害者や発達障害者への情報提供について、公表された著作物を平易な表現に改めること、文字情報をイラストやピクトグラムなどへ置き換えることについて権利制限を検討すべき。(個人)

(3)ネットオークション等関係

ア 総論

  •  この権利制限の見直しに強く反対。美術の著作物であっても、出版物はその書名、作者名、出版社等の文字情報を掲載することで商品を特定するに充分である(実際に、一部のサイトでは、そのような形で取引が成立している)。出版物のカバー画像が「美術の著作物」でもあるために今回の権利制限の対象とされ、安易にネット上に掲載されるおそれがある。現在、書籍等の表紙画像が無断でネット掲載されることが蔓延しているが、この権利制限はそれを合法化することになりかねない。(株式会社集英社)(一部同旨 山ざき司平法律事務所)
  •  漫画やイラストについては現在でも様々な形で違法行為が横行しており、権利制限がされれば、作品をネットオークションで売るためには中身も読ませなくてはならないとの拡大解釈が広まるのは必至である。たとえ表紙といえども公衆送信権の権利制限見直しに断固反対。(株式会社秋田書店)(一部同旨 株式会社講談社)
  •  漫画やイラストについては、著作権者の特定は容易であり、許諾は困難ではない。また、特定の部分の掲載・送信することで購入者の目的が果たされ、購入の代替になってしまうことも少なくない。劣悪なスキャニングによって、作家の同一性保持権を侵害することすら考えられる。一慨に「美術の著作物」に権利制限を行うことに反対。(株式会社角川グループホールディングス)(同旨 株式会社小学館、社団法人日本雑誌協会、社団法人日本書籍出版協会、株式会社双葉社、個人)(一部同旨 山ざき司平法律事務所)
  •  絵画の実物を確認することなく、画像だけでの商品取引はあり得ない。商品情報の提供の必要性を根拠としても、絵画等の著作物を画像として複製・掲載する行為について、権利制限を行うことを是認することはできない。(株式会社美術著作権センター)
  •  画像掲載について権利制限をすると、オークション等の運営者が自ら違法複製物を調査し、削除するなどの策を講じることが期待できなくなり、認められるものではない。(社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター(CPRA))
  •  インターネットオークション等において美術品や写真等を出品する際の商品紹介のために行う画像掲載は、売主の義務として必要不可欠なものであり、権利制限の対象とすることを要望。正確な情報の開示と提供は、消費者保護にも必須。売り主が、販売を阻害するまでの精密な画像を掲載することは想定できず、権利制限しても問題はないはず。(社団法人情報科学技術協会、個人)
  •  ある程度の範囲で画像の掲示等の利用可能範囲が明文化されていると利用者にとって安心感がある。(個人)

イ 権利制限の対象とすべき売買形式について

  •  この見直しの契機は、税務当局が差し押さえた絵画のネットオークションで公売する際における、「著作権侵害」と公売の「公益性」の比較考量の問題であり、公益性の少ない一般商取引であるオークション、ショッピングサイトにまで一気に敷衍することには慎重であるべき。(株式会社集英社)
  •  「公売、オークションといった形式によらず一般のショッピングサイト等も含めた制度設計とすべきと考えられる」とされているが、事業者・消費者間の取引と消費者間の取引とでは、それぞれ事情が異なり、両者を含めて制度設計することは疑問。(社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター(CPRA))(同旨 社団法人日本雑誌協会)
  •  ネットオークションに限らず、他の媒体や画廊等においても同様の問題が想定できる。また、取引の対象となる商品は美術品以外の著作物も数多く存在すること、デジタルコンテンツ等の無体物も取引の対象となり得ることから、「インターネット上」における「美術品等」の譲渡等のみを対象とした権利制限を設けることの意義は小さい。(日本知的財産協会)
  •  公売における税への換価を重要視するならば、時間をかけても著作者を明確にして価値を確認するととともに著作権者に許諾を得ることが重要だが、どうしても著作権者の許諾を得ることが困難な場合には、「補償金制度」の導入が考えられる。(株式会社美術著作権センター)

ウ 権利制限の対象とすべき著作物について

  •  権利制限の提案は、美術および写真の原作品を公売その他により譲渡する場合の必要性に基づくものであるから、美術および写真の原作品を譲渡する場合に限定するのが適当。(社団法人日本レコード協会)
  •  美術品や写真以外の商品の画像を無断で載せたら著作権侵害となるケースがあると思われ、すべての商品画像について許諾無しに掲載できるようにすべき。(個人)
  •  不法に複製されたものや譲渡権を侵害して不法に入手されたものの取引を認めることはできない。(社団法人日本書籍出版協会、株式会社双葉社、個人)

エ 技術的保護手段等の条件について

  •  権利制限を講ずるとしても、商慣行から乖離した、技術的保護手段などの過度な義務を課すとなると、取引市場全般に萎縮効果を及ぼすおそれがある。要件の具体化に当たっては更なる検討が必要。(日本知的財産協会)
  •  インターネット上に画像を紹介するにあたり、故意に画像に細工をほどこす等、著作権法から免れる為の行為は、著作者人格権の侵害はもとより、絵画のもつ芸術性を全く無視した行為そのもの。絵画の紹介は1点づつ大きく、正確に掲載し(勿論、許諾を得た上で)堂々と発信することが望まれる。ネットオークションで絵画等の著作物を複製・掲載する場合、複製された画像が再利用できないように「電子透かし」などの技術を導入することを義務つけることが必要。(株式会社美術著作権センター)
  •  画像を掲載する際に、流出防止のための技術的保護手段を施すことや商品の情報提供に必要な限度に限って掲載することなどの必要な環境を整えていくことは、著作権法上の問題を検討するか否かに係わらず、早急に対処されるべき。(社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター(CPRA))
  •  どの程度のものが「鑑賞に堪える」ものなのか明確な線引きが必要。著作者が公開条件を自主的に設定してもらうことが望ましい。(個人)

オ その他

  •  権利制限を行うことが適当との結論に基本的に賛意を示したいが、さらに考えを推し進め、フェアユース導入についてまで検討してほしい。個別条項で現状を追認していくだけでは、創作者および利用者は新しい情報技術の利用に際し、常に法的に不安定な地位に置かれることになる。(日本民主主義著作者総連合、個人)
  •  音楽CDジャケットや写真集には実演家等の肖像を用いたものも数多くあり、画像掲載に係る著作権法についての検討が、肖像に係る権利にも影響することが否定できないため、留意すべき。(社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター(CPRA))

4.検索エンジンの法制上の課題について

ア 総論

  •  中間まとめの意見に賛同する。検索エンジンの開発は、欧米、韓国、中国等では国家戦略として取り組まれている。こうしている間にも、日本の創作者は検索エンジンその他に関わる創作活動が抑制されており、検索エンジンに関する海外への頭脳流出が起きており、この結果、すでに出遅れが目立つようにもなってきている。この分野での我が国がこれ以上遅れをとらないようにするためにも早急な検索エンジンサービスの法的地位の安定性の実現に向けて立法措置を講ずるべき。(日本知的財産協会、社団法人電子情報通信学会データ工学研究専門委員会、株式会社データクラフト、株式会社日本ユニシス、株式会社富士通、株式会社ブログウォッチャー、株式会社マイクロソフト、株式会社ビジネスサーチテクノロジ、牧野総合法律事務所、日本民主主義著作者総連合、株式会社NTTレゾナント、個人)
  •  検索エンジンが、社会におけるインフラとしてネットワーク上における知的創造サイクルの活性化に大きな役割を果たしていること、我が国においても独自の検索エンジンを立ち上げることが重要な施策であることは理解できるが、違法複製物の流通を増長している側面もある。また、特定の事業主体が検索システムを通じて著作物等を恒常的に利用して莫大な利益を上げていることも事実であり、権利制限を設けることについては、スリーステップテストに照らして慎重な検討が必要である。(社団法人日本音楽著作権協会、社団法人日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター(CPRA))
  •  インターネットは公衆の場であり、インターネット上に置かれた著作物は検索エンジンに限らず著作物の利用が黙示的に許諾されたと推認することができるのではないか。「利用許諾の推定規定の立法」による方法が、権利制限を講じるより整合性のある解決を図ることが可能ではないか。(株式会社イートライジャパン、社団法人日本音楽事業者協会、個人)

イ 権利制限の対象とすべき範囲について

  •  検索エンジンサービスの一連の行為に関する法的リスクを低減させるため、著作者の権利との調和と安定的な制度運用に慎重に配慮しつつ、検索エンジンの目的と行為を明確に定義し、合理的な範囲において権利制限を講ずるべきである。(社団法人日本経済団体連合会)
  •  現時点で提供されている検索エンジンのサービスを元にして、権利制限の対象範囲を決定する事は、将来の検索エンジンの発展を技術的・サービス的に阻害するおそれがある。したがって、将来の技術的な発展・サービスの向上を見据えて、権利制限の対象範囲は、あまり制約的とせず合理的な範囲で許容できるよう包括的に規定すべき。(株式会社NTTレゾナント、株式会社ニフティ、株式会社ブログウォッチャー、株式会社富士通、社団法人電子情報技術産業協会、財団法人日本情報処理開発協会データベース振興センター)
  •  検索エンジンサービスは、今後、キーワードの存在するページ数やその傾向、取扱方法、個人の嗜好などを累計的に分析し、特定の利用者ごとにその人にあった検索結果を表示するサービスなど、より一層多様化していく。したがって、検索エンジンサービスの目的は「オリジナルなウェブページ」への誘導だけに限るのではなく、これら行為についても権利制限の対象となるようにしておくべき。(株式会社きざしカンパニー、株式会社ブログウォッチャー、株式会社ニフティ、牧野総合法律事務所、個人)
  •  クローリングの結果については、単なる検索用のみではなく、ウェブ情報を取り扱う機械翻訳システムや言語教育の知識源としても利用可能なものである。また、大学の研究では、検索結果の表示はせずに、収集・蓄積のみを行うこともある。これらに関する研究開発については、現行法上、解釈に委ねられており、法的地位の安定性が確保されていないことから、これについても権利制限が必要ではないか。(株式会社国際電気通信基礎技術研究所、個人)
  •  自動収集型の検索エンジンに限るのではなく、例えばソーシャルブックマークサービス(自動的に機械が収集するのではなく、人手によって登録や評価を行っているサービス)についても、著作物の利用について事前に許諾を得ることは現実的ではなく、情報検索を支えるデータベース部分については広く権利制限しても問題はないのではないか。(個人)
  •  キャッシュ表示、スニペット、サムネイルについては、「翻案」に当たる可能性があることに留意して権利制限の範囲を考えるべき。(株式会社メタWeb研究所)
  •  キャッシュとしてのウェブページの複製については、同一性保持権の問題が考えられ慎重な議論が必要。(個人)
  •  保護されたウェブコンテンツの閲覧については、著作者らの意図を十分に考慮し、その利用に関するガイドラインの早期整備を期待する。(情報処理学会データベースシステム研究会、兵庫県立大学環境人間学部)

ウ 技術的回避手段以外の意思表示について

  •  技術的回避手段以外の方法により意思表示をした者が正当な権利者であることの確認・判断を検索エンジンサービス提供者が行うことは極めて困難であり、技術的回避手段の意思表示のみ権利制限の対象外とすべき。(株式会社NTTレゾナント、財団法人日本情報処理開発協会データベース振興センター)
  •  著作物を公表することには一定のリスクが伴うものであり、インターネット上で公表するが検索されたくないのであれば、技術的回避手段を用いるなどの努力を行うべきであり、検索エンジンサービス提供者が技術的回避手段以外の意思表示に自主的に応じることは望ましいが、それを法的に強制するべきではない。(個人)
  •  技術的回避手段以外の対応策をとることは望ましいが、検索エンジンサービス提供者側に過度な負担とならないよう配慮することが必要。検索エンジンサービス運用上、妥当で現実的な環境下での対応策であることが望まれる。(社団法人電子情報技術産業協会、株式会社チームラボ、財団法人日本情報処理開発協会データベース振興センター、株式会社マイクロソフト、株式会社ビジネスサーチテクノロジ)
  •  技術的保護手段以外の意思表示の在り方の検討にあたっては、産業界の関係者間の話し合いを促すべき。(社団法人日本経済団体連合)
  •  技術的回避手段以外による拒否については権利者尊重の立場から慎重な配慮が必要であるが、著作者の意思表示をより簡便・容易にする手段や著作物の利用範囲を発信者が柔軟にコントロールできるような技術を提供していくことにより解決するのが妥当である。事業者は当該手段の周知普及及び容易な意思表示手段の提供が求められる。(文科省特定領域研究「情報爆発時代に向けた新しいIT基盤技術の研究」有志、個人)
  •  技術的回避手段で意思表示時をしてから削除されるまでのタイムラグについては、その縮小を技術的に講じる等の事業者の自主的取組を促すことも一つの方策である。(株式会社ブログウォッチャー)
  •  積極的な意思表示のないコンテンツの利用可能性を担保するとともに積極的な意思表示を定型的、統一的に行う仕組み、すなわち各デジタルコンテンツの利用許諾範囲を公示する仕組みを法的に整備することが重要である(個人)

エ 違法複製物等への対応について

  •  違法ファイルを主たる検索対象とし、違法複製物の流布を助長するようなサービス提供者が検索エンジンにおける制限規定に便乗して免責を主張することを許容することも危惧され、立法又はその後の法運用に際しては、権利者からの侵害通知を前提とするような受動的対応だけではなく、検索エンジン運用者に対して、違法複製物の蓄積や表示を回避するための積極的作為義務を課すべき。このため、権利者からの要請に基づいて事後的に違法複製物の利用停止又は削除の措置を講ずるよう義務づけるだけでなく、1違法複製物の流通を目的としていないこと、2違法複製物の流通を防止するための合理的な措置を講じていること、3当該サービスの実態として違法著作物の流通促進が主たる用途の一つになっていないことが免責を受けるための要件とすべき。(社団法人日本映像ソフト協会、IFPI(国際レコード産業連盟)・RIAA(全米レコード協会)、社団法人日本レコード協会、社団法人日本映画製作者連盟)
  •  事後的に権利者からの削除要請に応じる義務を課すだけでは、実効性に乏しく、削除要請に要する権利者の負荷についても考えるべきである。違法複製物の蓄積・表示を事前に回避することは技術的に不可能であると整理されているが、韓国では一定のプロバイダにフィルタリング等の技術の載を義務づける法やベルギーでISPに著作権侵害の防止措置を講じた命令を参考にすべき。(社団法人日本レコード協会)
  •  検索エンジンサービスを運営する上で、妥当で現実的な環境下(体制・対応手順・経費等)での対応策であることが望まれる。違法著作物への対応についても負担が大きくないことが望まれる。(株式会社チームラボ、財団法人日本情報処理開発協会データベース振興センター、個人)
  •  検索エンジンサービス提供者の多くは、表示工程より上流の工程を他の事業者のサービスを利用することによりサービスを提供しており、その場合には、他の事業者の管理するサーバにある著作物の利用停止や削除を迅速に行うことが困難である。そのような場合、検索結果ページから当該著作物を表示されなくすることをもって免責されるよう検討していただきたい。(株式会社ニフティ)
  •  違法複製物について削除義務を課したとしても、検索にヒットしなくなるだけで、元の侵害情報自体は侵害者のサイトで送信し続けられるので、権利者を救済することが限定的である一方、一旦削除請求を受けると検索サービス側の負担は過大なものとなりかねないことから、このような義務を課すことについては、合理的な範囲にとどめるよう慎重に検討すべき。(株式会社きざしカンパニー、株式会社ビジネスサーチテクノロジ、個人)
  •  権利者が知らないところで勝手にコンテンツがアップロードされている場合は、海賊版などを監視・排除するシステムが必要である。また、インターネット上にアップされる前に取り締まることのできる仕組みも必要。(株式会社ジャステック)
  •  検索エンジンの利用が肖像の利用に係る権利に影響することも考えられるが、検討に際して留意が必要である。(社団法人日本音楽事業者協会、社団法人日本芸能実演家団体協議会 実演家著作隣接権センター(CPRA))

オ その他

  •  検索エンジンの分野の日本の国際的な競争力を強化するためにも、米国著作権法におけるフェアユース規定のようなある一定範囲の利用であれば著作物を積極的に利用・流通できるような仕組みについても議論すべき。(個人)
  •  ウェブページをアーカイブするサービスや、図書館でのウェブアーカイブについても併せて検討すべきではないか。(牧野法律事務所、個人)
  •  検索エンジンサービスは国境を越えて提供されており、準拠法によって権利の保護の内容や制限が異なるのは権利者、事業者共に憂慮する事態であり、ビジネスの実施体制を視野に入れた議論が必要。(株式会社ビジネスサーチテクノロジ、個人)

5.ライセンシーの保護等の在り方について

ア ライセンシーの保護について

  •  対抗要件を具備させる新たな登録制度の創設に対して、ライセンシー保護の必要性から法改正の方向で検討することについて賛成するが、中間まとめにおいて検討されている登録制度については、対象とする著作物、業界の実情、現在検討されている特許権等の通常実施権登録制度の改正の方向にも留意しつつ実態に即した対抗要件制度を設計すべきであり賛成できない。(大阪弁護士会)
  •  著作権については、特許権等登録を前提とする通常実施権の登録制度そのものが存在せず、対抗要件制度が存在していないことが関係してか、検討されている登録制度の概要としては、包括的ライセンス契約を含んだライセンス契約一般について許諾にかかる著作物を利用できる権利を登録できる制度とされているが、例えば、個別のライセンス契約において対象となる著作権を特定することが容易である場合と、包括ライセンス契約において対象となる著作権を特定することが容易でない場合を同一に論じることは困難であり、対象となる権利の特定方法についても著作物毎の検討が不十分と考えられる。(大阪弁護士会)
  •  従前より、当業界からは著作物(特にプログラムの著作物)の円滑な利用の促進のためには、ライセンシーがライセンサーの権利譲渡または破産後も引き続き著作物を利用できるようにするためのライセンシー保護制度が必要である旨を主張しており、今回、ライセンシー保護制度の検討を進め、著作物を利用できる(許諾を受けた)地位を保護するための具体的制度設計案を示したことは高く評価するが、プログラム著作物については、特許とは権利の性質が異なり、多くの権利者が関与し、また権利者の確定が難しい場合もあり、当業界が従前より主張して来た、登録(公示)によらない書面による契約により対抗要件を付与する制度が望ましいと考える。当業界の意見、要望も聞き、産業界にとって活用しやすい制度の導入を実現するための検討を今後とも継続してほしい。(社団法人電子情報技術産業協会)
  •  商品化権ビジネスは、ライセンサーとライセンシーが良好な信頼関係のもとに立ち、商品化権許諾契約により健全な経済活動を行っている。この度のライセンシー保護を目的とした新たな登録制度は、商品化権ビジネスをより一層確実なものとし、なお振興する上で重要な制度と考えるので、様々な点で慎重に検討し制度化を目指してほしい。(日本商品化権協会)
  •  「許諾に係る著作物を利用する権利」の登録制度を仮に設けるのであれば、登録の手続き及び費用の負担をできる限り軽減してほしい。(社団法人日本映画製作者連盟)
  •  登録制度とは別に、許諾に係る著作物の利用を事業として現実に行っている以上、登録等の手続きを経ることなく第三者にその権利を対抗できる仕組みを早急に設けてほしい。(社団法人日本映画製作者連盟)
  •  原著作物の著作権者から映画化、上映、二次的著作物の二次利用について許諾を得て二次的著作物を作成した場合には、当該二次的著作物の二次利用に係る原著作物の著作権者の許諾については、登録等の手続きを経ることなく、当該二次的著作物の上映によって、第三者に対抗できることとしていただきたい。(社団法人日本映画製作者連盟)
  •  ライセンシー保護のための登録制度の創設には反対。確かに、ライセンシーを保護することは必要だが、それは、取引慣行を尊重したものであるべき。特許権と著作権とはともに知的財産権を構成するものだが、技術思想を保護する特許権と表現を保護する著作権とは大きな相違があり、表現を保護する著作権はその権利の発生に登録を必要としないため、著作権に関する登録制度は、譲渡についても行われないケースが多く、それは、登録制度が著作権に関わる取引に馴染みにくいことを現しているように思う。(社団法人日本映像ソフト協会)
  •  ある著作物について、ライセンスを受けて事業化する場合には、その著作物に発売元、販売元等が記載され、ライセンシーが誰かは商品それ自体に表示されている。映画の場合にも映画の著作権者の表示も原作者、脚本家等の氏名も著作物の中に表示され、映画製作者が原権利者からライセンスを受けて映画化したことを公示している。したがって、取引慣行を尊重するならば、新たに登録制度を設けるのではなく、例えば(a)ライセンシーが映画(二次的著作物)という別個の著作物を製作したのであればその映画(二次的著作物)の公表によって、(b)ライセンシーが映画のビデオ化権を取得したのであればその現実の事業化されていることによって、対抗力を認める制度による方が適切だと考える。(社団法人日本映像ソフト協会)
  •  現行法に「出版権」制度が既に存在しており、出版権の設定を受けた者は、登録を要件として第三者にも対抗できる準物権的な出版権を持つことができることから、出版界では「ライセンシーの保護」について、新たな制度を設けることに積極的な意見はあまりない。この「出版権」制度は、現実の登録件数は少ないものの、出版権設定契約において、著作権者は出版権者に対して「登録を承諾する」旨を取り決めていることが多く、出版界における適切な契約慣行の前提としての機能を果たしているといえ、今後も維持されるべきものと考える。したがって、仮に、ライセンシー保護のための制度が設けられるとした場合、現在の「出版権」制度で業界内の秩序が保たれていることから、「出版権」制度に影響を及ぼすことにならないように要望する。「出版権」制度においては、登録が第三者対抗要件とされているが、業界の慣行としては、いつでも登録しうる状態にはあるものの、実際の登録まではいたらない場合がほとんど。新たな制度においてライセンシーの保護を受けるために、登録が要件となった場合でも、あえて登録しないでいることが、何らかのデメリットをもたらすとしたら、緊急の必要性がない登録をライセンシーに強いるような事になり、これは出版ビジネスの実態を鑑みると望ましいこととはいえない。(社団法人日本書籍出版協会)
  •  産業財産権法と同様、著作権法においてもライセンシーの保護が望まれるため、ライセンシーを保護するための法整備が必要であるとの基本的な考えには賛同する。
     しかしながら、ライセンシーの地位の保護のために「登録」を必須とするアプローチには賛同できない。このような「登録」を要することとすると、そもそも権利の発生に「登録」を要しない著作権制度において、新たに煩雑な手続きを創設することとなり、現場に多くの混乱を生ずることが予想される。(日本知的財産協会)
  •  多くの当事者がその作成に関与しうるプログラム(データベースも含む)の著作権の性質から、許諾を要する権利者等の正確な特定や許諾取得は現実的には極めて困難であり、制度の実効性という観点からも疑問が残る(例:ライセンサー以外の第三者の許諾を得て利用しているモジュールを含むような場合)。さらには、ライセンス内容を秘密にしたいため、ある「許諾に係る著作物を利用する権利」を登録対象から除外すれば、「登録」により保護を受けようとする対象と実際のライセンス契約で規定される内容とに不整合が生じることも充分にありうるため、実務上の混乱はさらに深まるものと考える。したがって、実情に照らし、登録を要することなく契約で定められた範囲でライセンシーの地位が保護される制度を創設することが望ましい。著作物の利用態様やその特性を考慮することなく、また制度利用者のニーズを十分に反映することなく、ライセンシー保護の手段として「登録」制度を創設することには慎重な姿勢でのぞんでほしい。(日本知的財産協会)
  •  ライセンシーの保護を図るため、著作物を利用する権利について新たな登録制度を導入する方向で法改正を検討することについては、賛成する。ただし、制度設計にあたっては、平成19年の産業活力再生特別措置法(以下「産活法」という。)の改正により創設された特定通常実施権登録制度のみならず、現在改正作業が進められている特許法の通常実施権登録制度の改正の動向や、登録制度を前提としない著作権固有の問題にも配慮しつつ実務の実態に即した著作物を利用する権利の対抗要件制度を設計するよう要望する。また、著作物は自然人たる個人が創作するケースが多く、ライセンシーも法人に限られないことから、著作物を利用する権利の登録については、個人のライセンサーあるいはライセンシーにとって利用しやすい制度設計をすることを要望する。(日本弁護士連合会)
  •  中間まとめは、産業活力再生特別措置法の特定通常実施権登録制度をモデルとした制度設計を提案しているが、従来、包括ライセンス契約など個々の特許番号を特定しないライセンス契約について特許法上の通常実施権登録制度を活用することができなかったという問題点があり、今回の産活法の特定通常実施権登録制度はそもそも特許法上の通常実施権登録制度を補完するための法整備であった。これに対し、著作物を利用する権利には、そもそも対抗要件制度が存在していないのであるから、まず、特許法上の通常実施権登録制度との整合性を考慮した登録制度の導入を検討すべきであり、特許法の通常実施権登録制度の特例制度である産活法の特定通常実施権登録制度との整合性まで考慮する必要があるかについてはさらに十分な検証を行うべき。(日本弁護士連合会)
  •  コンピュータ業界におけるプログラム等のライセンスは、まだまだ米国よりライセンスの供与を受けるケースが多い。一方、米国におけるソフトウェア業界のM&Aは激しさを増している。この様な状況下においては、ライセンサーが変わる事によるライセンス条件の変更等はユーザに対する対応を含め大きな問題となりかねず、何らかの制度的対応を切望する。(日本ユニシス株式会社)
  •  ライセンシーの保護の必要性は著作物等の種類により異なるため、さしあたりライセンシー保護の必要性の高いコンピュータプログラムに限定して登録制度を創設したうえ、他の著作物等に関してはさらに検討することが適当である。検討においては、ライセンスを受けて実際に商品として市場に流通している場合には、「商品化」の事実にも「登録」と同様の法的効果を認めるべきである。(社団法人日本レコード協会)

イ 利用権について

  •  著作物を独占的に利用できる地位(中間まとめでは「利用権」として整理されている)の創設を検討することについては賛成する。ただし、かかる地位の創設が実務に与える影響や、各国の法制度との整合性を十分に配慮した検討がなされるべきである。(日本弁護士連合会 同旨 大阪弁護士会)

6.いわゆる「間接侵害」に係る課題等について

ア 総論(間接侵害)

  •  いわゆる「カラオケ法理」の適用には、過度な拡張が見受けられ、著作物の利用に多少でも関わる事業の遂行において、予見可能性の点から大きな問題が生じている。司法判断における過度な拡張を謙抑的にする、間接侵害規定の立法が望まれる。(社団法人電子情報技術産業協会)(同旨 株式会社ニフティ、日本知的財産協会、)
  •  第112条の侵害者の範囲が、自ら(物理的に)利用行為をなす者のみに限定されないことを明確化するとの結論を支持する。(社団法人日本音楽著作権協会)(同旨 IFPI(国際レコード産業連盟)・RIAA(全米レコード協会)、個人)
  •  裁判所が事案に応じて適切に判断してきた「行為主体」の判断が、法制化により硬直化することのないよう留意すべき。(社団法人日本レコード協会)
  •  具体的基本的方向性に異論はないが、新立法の具体策については更なる慎重な検討を要する。著作権の適切な保護と第三者の予測可能性との調和、罪刑法定主義に反しない処理を目指すなら、第112条1項において包括的な侵害行為類型を新設するよりも、第113条において具体的且つ肌理細やかなみなし侵害行為類型を新設する方向性に目を向けるべき。また、「カラオケ法理」の拡張解釈による予測可能性の欠如等を立法的対応の理由とするのであれば、第113条への個別列挙から、要件に該当しない行為について反対解釈が生じるは当然であり、第113条への列挙を躊躇する理由にならない。(大阪弁護士会)
  •  新規立法の対象外となる行為は、直接侵害行為と同視することを禁止する旨も併せて規定すべき。(個人)
  •  「間接侵害」を制定する事自体は十分理解できるが、その影響範囲や特許法との差異についてまだ十分に検討されている段階であるとは言えず、特に、この一億総著作権者時代において、影響範囲があまりに大きくなってしまう事を懸念する。再び十分な検討を行うべき。(個人)

イ 「間接侵害」に係る差止対象とすべき範囲について

  •  要件をいかなるものにすべきかについては、利用と保護のバランスに配慮して、慎重に検討されたい。これまで「カラオケ法理」が差止請求に適用された事例等について無批判に整合性をとることが無いようにされたい。(社団法人電子情報技術産業協会、株式会社ニフティ)
  •  過去の判例の検討にとどまらず、現状及び将来予測される利用態様も念頭に置いて慎重に検討した上で制度設計を行うべき。(日本知的財産協会)
  •  例示されたケースの他、今回の立法措置によって保護のレベルが後退する事態を避けるためには、「2ちゃんねる小学館事件」(東京高判平成17年3月3日)の類型も差止請求の対象範囲に含まれることが明確になるようにすべき。また、P2Pソフトウェアの配付者の著作権侵害責任を認めた「MGM Studios Inc. v. Grokster、Ltd.事件」(米国連邦最高裁判決)やハイパーリンクを提供するウェブサイト運営者の著作権侵害責任を認めた「Cooper v. Universal Music Australia Pty. Ltd.事件」(オーストラリア連邦控訴審判決)の類型も念頭に置く必要がある。(社団法人日本音楽著作権協会)
  •  第113条において、例えば、「侵害行為の用にのみ供される物等の提供行為」、「著作物の無断利用を幇助することを知り、且つ幇助行為を停止させることが出来る者が行なう幇助行為」との侵害行為類型を新設する方向性に目を向けるべき。加えて、昭和63年最高裁裁判決が、本来であれば著作権者に還元されるべき利益収受に対する規制の必要性を背景として下された事情を勘案するならば、新たな侵害行為類型の構成要件として「営利目的」を盛り込むことも検討する必要がある。(大阪弁護士会)
  •  オンライン環境において、音楽ファイルの不正流通により、大規模な権利侵害を、故意に引き起こし及び促しているサービスに対して、差止請求が認められることが特に重要。他国では、差止請求について直接侵害か間接侵害かを区別しないのが通常である。また、権利侵害物へのアクセスを提供するサービスについて、権利侵害物の蔵置場所にかかわらず、また、アクセスプロバイダが間接侵害者としての責任を有するかどうかにかかわらず、差止請求を可能にすることが必要。(IFPI(国際レコード産業連盟)・RIAA(全米レコード協会))
  •  差止請求対象として想定される範囲が過剰に広範になり、創作活動の萎縮を招くのではないかということが気になる。例えばいわゆる同人誌の即売会のなかで、主として「パロディー」作品を提供する即売会の運営者が該当してしまうように思われるが、このような事例をどう評価するか検討してほしい。(日本民主主義著作者総連合、個人)
  •  検討されている間接侵害の範囲はなお広過ぎ、著作物の利用形態の多様化をはかる新規商品・サービスの開発や提供の妨げになると考えられる。例示ではなく、「専ら侵害の用に供される物等の提供」のみを間接侵害とするように絞り込む必要がある。デジタルの「場」を提供するコンテンツ、サービスまで違法となる可能性があり、デジタルサービスの可能性を萎縮させる。(個人)
  •  侵害行為にも非侵害行為にも使える中立的なサービス(P2P通信ソフトの提供等)は、侵害主体としての責任を負わないこととすべき。(個人)

ウ 差止対象とすべき「間接侵害」の判断基準について

  •  侵害状態を是正することができる立場にあることを「相当因果関係」という用語で表現していると理解してよいのであれば、「権利侵害と行為との間の相当因果関係を有する教唆又は幇助に当たるかを基準とすべき」とする意見が妥当。また、行為者の認識を違法性判断の要素とすることを明らかにしておく必要がある。(社団法人日本音楽著作権協会)
  •  「他者に行為をさせる」や「専ら侵害の用に供せられる物等の提供その他の行為により他者に(侵害)行為をさせることにより侵害をする者」の概念は相変わらず曖昧であり、例えば、ファイル交換ソフトの提供が「専ら侵害の用に供せられる」ものに該当するか否かの判断は容易ではないなど、「予測可能性の欠如」という判例理論に対する危惧を解消できてはいない。第112条1項該当行為は罰則が適用される行為であり、罪刑法定主義の観点から、開かれた構成要件とすべきでない。(大阪弁護士会)
  •  「その行為により、他者の侵害行為をそのコントロール下に置いており、(その行為をやめさせること等により)この他者の侵害行為を除去し、ないし、生じさせないことができる立場にある者」との説明は、継続的に直接侵害の温床となる状況を管理(機械のリース、ウェブサイトの開設)している者には当てはまるが、単発的行為(カラオケ機器の売切り、著作権隣接権侵害を惹起する録画システムの売切り)には該当せず、過去の判例上差止めの対象とされた行為を規制の枠外に置いてしまう結論となる。また、カラオケボックスの顧客(この顧客には第38条1項が適用され著作権侵害が成立しない)を支配下において営業するカラオケスナックは規制対象とできるのかという問題も生ずる。(大阪弁護士会)

エ 損害賠償制度について

  •  早期に法定賠償制度を創設すべき。ファイル交換などネットワーク上における著作権侵害の場合は、受信複製物の数量の特定が難しいため、第114条1項又は3項に基づいて損害額を推定することは困難であるし、侵害者が「その侵害の行為により利益を受けて」いないために同条2項を適用することもできない場合が多い。(社団法人日本音楽著作権協会)(同旨 社団法人日本レコード協会)
  •  今後の議論によりコンセンサスが形成され、法定損害賠償制度または懲罰的損害賠償制度を規定する多くの国々に日本が加わることを望む。法定損害賠償制度によって、権利侵害事案における原告の立証にかかる負担が軽減され、より大きな確実性と予測可能性が提供され、将来の権利侵害の抑止力となり、訴訟コストが軽減され、そして、当事者間の法定外の和解が促進される。(IFPI(国際レコード産業連盟)・RIAA(全米レコード協会))

オ その他

  •  いわゆる「カラオケ法理」により、複製行為者が実際に複製機器を操作した者ではなく、複製機器の設置者であると認定されるという前提に立てば、図書館や公民館あるいはネットカフェ等の、端末を設置し情報が提供される場で、利用者や来店者が「違法配信事業者から入手した著作物の録音録画物からの私的録音録画」を行ったとしても、当該複製行為の行為者は図書館や公民館あるいはネットカフェ等ということになる。図書館については、著作権法31条の権利制限規定があるが、インターネット情報は同条の「図書館資料」には該当せず、同条に基づく複製とするのにも無理がある。インターネット上の情報の提供に支障をきたしている状況であり、「間接侵害」の検討に関しては、上記のような問題を念頭に置きつつ検討願いたい。(社団法人日本図書館協会)

7.その他の検討事項

8.総論的事項及びその他