平成19年9月21日
文化庁著作権課
文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会では、私的録音録画補償金制度のあり方について抜本的な見直しを行っており、これに関連して、第30条の適用範囲の見直しについて検討しているところである。現在検討している同小委員会中間整理(案)における第30条の適用範囲の見直しの方向性は次の通りである。
複製技術の開発・普及に伴い、立法当初想定していなかった行為が著作物の通常の利用を妨げ、権利者の正当な利益を不当に害するような実態が新たに生じるようになった場合は、第30条の適用範囲を見直しの対象とする。
(例)
- 高速ダビング機器等の公衆が使用する目的の自動複製機器を用いて行う私的複製を除外(昭和59年改正)
- 技術的保護手段を回避して行う複製について、回避の事実を知っている場合を除外(平成11年改正)
- ア 違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画(ファイル交換ソフト等によるものを含む)
- 違法な配信等からの録音録画の実態を踏まえ、違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画については第30条の適用範囲から除外する方向で検討中。
- 第30条の適用範囲から除外する場合は、消費者保護の観点から、次のような条件を付す方向性で検討している。
違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画と承知の上で(「情を知って」)録音録画する場合や、明らかな違法録音録画物からの録音録画に限定する等(例 ドイツ著作権法)。
なお、「著作物の通常の利用を妨げるものであってはならず、かつ著作者の正当な利益を不当に害するものであってはならない」との但書を加え、個別の事案に即して違法性を判断するとする意見もある(例 フランス著作権法)。
罰則は従来どおり適用しない。
- 一方、利用者の録音録画まで違法にするのは行き過ぎであるとの反対意見もある。
- イ 他人から借りた音楽CDからの私的録音
私的領域で行われる録音行為について仮に第30条の適用範囲から除外しても違法状態が放置されるだけであることから、検討においては第30条の適用範囲から除外することについては慎重な意見が多かった。
- ア 適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画
- 配信事業者と利用者の間の配信契約では、ほとんどの場合利用者の一定範囲の録音録画を許容する条件を定めており、それに伴う対価には私的録音録画の対価も含まれている可能性もあるため、仮に第30条の適用範囲から除外したとしても利用秩序に混乱は生じないと考えられるので、契約による解決に委ねる趣旨から第30条から除外する方向で検討中。
- なお、第30条の適用範囲から除外する場合の条件として、配信事業者が利用者の録音録画行為について一定の管理責任を負っているような事業形態に限定するため、適法な事業であることを前提に、営利性の有無、有償・無償の別、配信事業者と利用者との配信契約の有無等を参酌しつつ具体的な要件を併せて検討中。
- イ レンタル店から借りた音楽CDからの私的録音、適法放送のうち有料放送からの私的録画
これらの利用形態については、私的録音録画の対価が徴収されている実態は確認できなかったことから、仮に第30条の適用範囲から除外するとしても新たな利用秩序の形成は困難であり、結果として違法状態が放置される状況を生み出すだけであることから、検討においては第30条の適用範囲から除外することについては慎重な意見が多かった。