3.結論

 冒頭において論じたとおり、検索エンジンは、デジタル・ネットワーク社会における情報流通の利便性を向上させ、ネットワーク上における知的創造サイクルを活性化させる原動力として期待される。
 したがって、検索エンジンにおける著作物の利用行為が、著作権法上の課題を惹起している現状を踏まえれば、著作者の権利との調和について衡量し、総体として文化の一層の発展に寄与するものとなるよう、法制度のあり方を検討する意義は大きい。
 かかる検討に当たっては、まずは、法目的に照らしつつ、現実的妥当性が確保されるものとなるよう、現行制度における解釈による対応の可能性が模索されるべきである。しかしながら、第2−1節において論じたように、現行の著作権法下では、どのような解釈論にたつとしても、検索エンジンサービスの一連の行為に関する法的リスクを必ずしも払拭することはできない。
 以上を踏まえれば、著作者の権利との調和と安定的な制度運用に慎重に配慮しつつ、権利制限を講ずることが適切であると結論づけられる。したがって、権利制限の対象範囲のあり方、権利者保護のあり方など残された論点について、早急に結論を得るとともに具体的な立法措置のあり方を明らかにすることが不可欠である。

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