![]() |
|
![]() |
○問題の所在 図書館等は、著作権者の許諾なく「図書館資料」(図書館等の図書、記録その他の資料)を用いて著作物を複製することができ、公表された著作物の一部分に限り、図書館等の利用者の求めに応じて著作物の複製物を提供することができる(第31条第1号)。 国立国会図書館、公共図書館(地方公共団体が設置する図書館及び私立図書館をいう。)、大学図書館(短期大学及び高等専門学校が設置する図書館を含む。)等の間では、総合目録( ![]() ![]() ![]() ○検討結果 図書館等の間で図書館資料の現物貸借が行われている場合、現行法の下においても、( ![]() ![]() ![]() ![]() |
公共図書館数は増加傾向にあるものの、年間受け入れ図書冊数や資料費は伸び悩んでいる。図書館等が増え続ける資料数に対応し、地域住民の生涯学習の拠点としての役割を担っていくためには、図書館等の間での図書館資料の相互協力が重要であることに着目する必要がある。このため、現物貸借された図書館資料については、借用を依頼し現に責任を持って当該資料を管理している貸出先の図書館等において、著作権法第31条第1号の条件を満たす場合には、当該資料の複製をすることができるとする方向で権利制限を行うことが適当であるとする意見が多かった。 他方、本件の複製を認めることとすると権利者の利益を害するおそれがあるとの懸念から、権利制限をするのであれば、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料に限定すべきではないかとの意見があった。また、現物貸借において扱われている図書館資料やそれらのうちどのような図書の複製が求められているかについての実態が明らかではなく、さらに、現在、権利者団体と図書館団体が、現物貸借された図書館資料の複製の取扱いに係る合意の内容について協議を行っているところである。 したがって、本件については、権利者団体と図書館団体との間の協議における合意の内容・推移を見守ることとし、今後、この合意の下では図書館による複製が必ずしも円滑に行われないとして、なお権利制限の必要有りとされる場合には、その具体的な条件について、現物貸借において扱われている図書館資料や図書館の蔵書の実態などを踏まえて検討することが適当である。 |
年度(注2) | 図書館数 | 年間受入図書冊数 | 資料費(注3) |
---|---|---|---|
決算 | |||
1974年 | 989 | 4,681,000冊 | 505,788,000円 |
1984年 | 1,569 | 11,157,000冊 | 1,603,538,000円 |
1989年 | 1,873 | 14,568,000冊 | 2,393,605,000円 |
1994年 | 2,207 | 18,977,000冊 | 3,403,027,000円 |
1995年 | 2,297 | 18,409,000冊 | 3,490,813,000円 |
1996年 | 2,363 | 19,320,000冊 | 3,636,370,000円 |
1997年 | 2,450 | 19,318,000冊 | 3,696,972,000円 |
1998年 | 2,524 | 19,757,000冊 | 3,616,139,000円 |
1999年 | 2,585 | 19,347,000冊 | 3,564,338,000円 |
2000年 | 2,639 | 20,633,000冊 | 3,519,525,000円 |
2001年 | 2,681 | 19,617,000冊 | 3,541,654,000円 |
2002年 | 2,711 | 19,867,000冊 | 3,522,070,000円 |
2003年 | 2,759 | 20,460,000冊 | ![]() |
2004年 | 2,825 | ![]() |
![]() |
都道府県立 | 市区立 | 町村立 | 広域市町村圏 | 私立 | 計 | 前年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
貸出冊数 | 925,913 | 791,347 | 114,059 | 703 | 240 | 1,832,262 | 1,721,355 |
借受冊数 | 113,810 | 1,237,336 | 289,920 | 1,480 | 435 | 1,642,981 | 1,421,711 |
国立 | 公立 | 私立 | 大学計 | 短大 | 高専 | |
---|---|---|---|---|---|---|
図書貸借 貸出冊数 |
57,943 | 7,112 | 62,313 | 127,368 | 1,432 | 121 |
図書貸借 借受冊数 |
53,411 | 8,075 | 56,126 | 117,612 | 2,833 | 991 |
![]() |
○問題の所在 大学図書館等間における文献複写に関する業務は、国立情報学研究所(旧文部省学術情報センター)(NII)が平成4年より提供するNACSIS-ILL( ![]() 現行制度の下では、図書館等は、著作権者の許諾なく「図書館資料」を用いて著作物を複製することができ、公表された著作物の一部分に限り、図書館等の利用者の求めに応じて著作物の複製物を提供することができる(第31条第1号)が、著作物の複製物をファクシミリ送信、インターネット送信等の通信回線を利用する送信を通じて提供できることについて規定はない。このため、大学図書館等の間で実務上広く行われている、図書館等の間における通信回線を利用した文献複写(当該図書館等で所蔵していない図書館資料の複製物を、他の図書館等から取り寄せることをいう。)( ![]() ○検討結果 本件の要望は、NACSIS-ILLを通じて大学図書館等において行われている複製物の提供方法と同様に、大学図書館等に限らず、利用者が身近な公共図書館等を窓口として所蔵館からの所蔵資料の複製物を受け取る方法として、ファクシミリや電子メール等を利用した送信を可能にしようとするものである。特に外国からの複製依頼に関して郵送のみによる対応に限定することは、研究活動等の著しい制限になり不合理であり、我が国が文化の発信に消極的であるとの批判を受けかねないことから、利用者の便宜を拡大することが強く望まれるとする意見があった。 このようなことから、最終的な利用者に、窓口となる図書館から紙媒体による複製物1部を交付した後、中間的に発生した電子的複製物は所蔵館におけるものを含めてすべて廃棄することを条件に、認めてはどうかとする意見が多かった。ただし、大学図書館等に関しては、現状でもNACSIS-ILLを通じて、適切に運用されていると考えられるが、それ以外も含めて広く権利制限を行うことの適否については、大学図書館等間その他公共図書館等間におけるファクシミリ送信等の利用実績・ニーズを踏まえ、現行制度における権利処理の限界、権利制限の対象となる権利の種類、具体的な権利制限の規定の在り方、図書館における執行上のルールなどについて、具体的な問題点の整理が必要である。また現在、権利者団体と図書館団体との間で、図書館がファクシミリ等により複製物を提供できるようにすることについて、協議事項としている。 したがって、本件については、上記の点を踏まえた、図書館関係者による具体的な提案が得られた段階で、権利者団体及び図書館関係者間の協議の状況も踏まえつつ検討することが適当である。 なお、図書館等の間の送信だけでなく、更に進んで、所蔵館から利用者に直接通信回線を利用した送信をすることについて権利制限を行うべきとの見解もあったが、これについては、そもそも図書館の機能を超えているのではないか、権利者の利益が相当に害されるのではないかという指摘があった。 |
7. | 受付館は、当該資料の複製ができるとき、以下の(1)又は(2)のいずれかの方法によって複製物を作成して依頼館に送付する。 | |
(1) | 受付館は当該資料の複製物を作成し、それを依頼館宛に郵便又は宅配便により送付し、依頼館は申込みをした利用者に渡す。 | |
(2) | 受付館は当該資料の複製を行い、依頼館宛に通信回線を利用して送信し、依頼館は紙面に再生した複製物を申込みをした利用者に渡す。通信回線を利用する送信とは、ファクシミリ送信、インターネット送信(画像イメージを電子メールに添付して送信することを含む)(![]() |
|
(中間複製物の破棄) | ||
8. | 前項(2)の場合、当該資料の版面の画像イメージの中間複製物を作成する必要がある場合があるが、そのような中間複製物は、その種類にかかわらず破棄する。すなわち、受付館は、送信のために紙面に再生した複製物又は電子的乃至磁気的な記録としての複製物の一方または両方を中間複製物として作成することになるが、そのいずれも破棄することとし、依頼館は、通信回線を利用する送信を受信したとき、利用者に渡す紙面に再生した複製物以外にも電子的乃至磁気的な記録としての複製物を中間複製物として作成する場合があるが、それも破棄するものとする。 |
|
(契約及び合意の内容) | ||
10. | 著作権管理団体との契約及び合意において規定されている、以下の点について留意しなければならない。 | |
(1) | 契約及び合意の当事者について 現在、契約を締結している相手方は、株式会社日本著作出版権管理システムであり、合意書を取り交わしている相手方は、有限責任中間法人学術著作権協会である。 |
![]() |
○問題の所在 図書館等は、著作権者の許諾なく「図書館資料」を用いて著作物を複製することができ、公表された著作物の一部分に限り、図書館等の利用者の求めに応じて著作物の複製物を提供することができる(第31条第1号)が、それと同様に、図書館等が利用者の求めに応じ、図書館等が設置するインターネット端末からインターネット上の情報をプリントアウトして提供することについても、著作権者の許諾なくできるようにすることが適当であるとの要望がある。 ○検討結果 第31条第1号に基づく著作物の複製が図書館等による行為と解されるのに対して、図書館や公民館等に設置されたインターネット端末を使用して情報をプリントアウトする行為については、その端末の利用者が行為主体であると考えられる。したがって、利用者のこうした行為が、第30条第1項の「私的使用のための複製」に該当する場合や、インターネット上の情報の複製に明示又は黙示の許諾があると考えられる場合など、現行法の枠組みでも自由に行い得るケースが存在するという意見があった。また、図書館等に限り権利制限を行うとした場合、反対解釈により他の目的や施設では不可能と解されるおそれがあるとの意見もあった。 現在までのところ、企業活動を目的とする場合を含めて、インターネット上に公開された情報のプリントアウトについて紛争になったことはほとんどない状況である。また、このようなインターネット端末からインターネット上の情報をプリントアウトして複製物を提供する施設は、社会教育施設における利用者用コンピュータの設置や情報システムネットワークの整備等に伴い、図書館等のみならず公民館、博物館等にも広がっており、本件は図書館等に限った問題ではない。 したがって、図書館等のみならず一般的にどのように提供されているのか、現行法の枠組みで十分であるか否か、どのような手法により対応することが適切か等について、今後必要に応じ検討することが適当である。 |
![]() |
○問題の所在 近年、記録のための技術・媒体の急速な変化に伴う旧式化により、SPレコード、5インチフロッピーディスク、ベータビデオのように、媒体の内容を再生するために必要な機器が市場で入手困難となり、事実上閲覧が不可能となってしまうような状態が生じていることから、新しいメディアに媒体を移し替えて保存するための複製をできるようにすることが適当であるとの要望がある。 ○検討結果 再生手段の技術革新が進むことによって、図書館等で利用できる資料が減ってしまうことになるため、図書館等の使命にかんがみて、本件要望の趣旨に賛同する意見が多数であった。 ただし、当該著作物について新形式の複製物が存在する場合は除くべきではないか、また、入手の困難性に関して判断基準を明確にする必要があるのではないかとの指摘があった。また、現行の第31条第2号は、「図書館資料の保存のため必要がある場合」は著作権者の許諾を得ることなく複製が可能であることを規定しており、このような現行法の枠組みで対処が可能ではないかとの意見もあった したがって、このような現行法の枠組みや権利処理の取組みにより、どこまで対処が可能であるかの限界や、どのような場合に対処可能であるかの判断基準について、今後必要に応じ検討することが適当である。 |
![]() |
○問題の所在 図書館等は、著作権者の許諾なく「図書館資料」(図書館等の図書、記録その他の資料)を用いて著作物を複製することができ、公表された著作物の一部分に限り、図書館等の利用者の求めに応じて著作物の複製物を提供することができる(第31条第1号)が、官公庁広報資料等(国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が、一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物をいう[第32条第2項参照]。)については、一般への周知を目的としていることから、図書館等において報告書等の全部分の複製物を提供できるようにすることが適当であるとの要望がある。 ○検討結果 官公庁作成広報資料については、資料の性格上国民が利用しやすい形で提供すべきではないか、広範に読まれることに意味があり全文の複写はむしろ歓迎すべきことではないか、本来公益目的で作成されたものであり、第32条第2項の対象となる資料については自由に複製を認めて差し支えないのではないか等、本件要望の趣旨に賛同する意見が多数であった。また、米国著作権法第105条の規定( ![]() ただし、官公庁が作成した報告書等について図書館等が全部分の複製物を提供できるように権利制限を行うに当たっては、いかなる機関又は法人が、一般への周知を目的として作成し、そのような権利制限を課すことが適当であるかを検討し、対象となる官公庁の範囲について整理する必要がある。 本件については、基本的に何らかの措置を検討すべき事項と考えるが、著作権者である国等が「図書館における複製可」などの表記を行えば問題は解決し、あえて権利制限規定を見直す必要はないという意見もあったところであり、今後,「自由利用マーク」( ![]() |
![]() |
○問題の所在 第37条第3項は、専ら視覚障害者向けの貸出しの用に供するために、著作権者の許諾なく著作物を録音することができる旨を規定しているが、対象施設としては、視聴覚障害者情報提供施設等に限られ、公共図書館等は含まれていない(著作権法施行令第2条)。また、録音データの公衆送信については権利制限規定がないため、著作権者の許諾を得る必要がある。 一部の公共図書館、点字図書館では、視覚障害者等に対して、著作権者の許諾を得た録音データのインターネット配信を実施している。現行制度は貸出しの用に供するための複製の方法は録音に限定されており、録音以外の複製やこのような録音データ等の公衆送信については著作権者の許諾が必要である。 また、現行制度では、視聴覚障害者情報提供施設等に当たらない国立国会図書館、公共図書館、大学図書館等においては、視覚障害者向けの録音資料の作成につき、著作権者の許諾が必要である。 さらに、現行制度では、上肢障害でページをめくれない人、高齢で活字図書が読めない人、ディスレクシア(難読・不読症)、知的障害者等、読書の手段として録音資料を利用している視覚障害者以外の障害者に対して貸し出すために録音資料を作成するには、著作権者の許諾が必要である。 このような、図書館が障害者に対して行う資料の提供について著作権者の許諾なく行えるようにし、多様な障害者の情報環境の改善を図ることが必要であるとの要望がある。 ○検討結果 障害者による著作物の利用を促進するという趣旨に対しては支持する意見が多数であった。 ただし一方で、一般に読書に障害を持つ人々の用に供するために図書館が複製や公衆送信を自由に行い得るとすることは問題がある、要望の範囲が広範に過ぎる、目的外利用されないようにどのように担保されるかが明らかにされていない、趣旨の明確化が必要であるなどの指摘があり、現行法の基本的な枠組みを変更することなく、障害者への一層の配慮をどのように具体化し得るのか、整理が必要である。 また現在、権利者団体と図書館団体との間で、録音図書の作成に関してガイドラインが締結され、一定の条件の下で公共図書館での複製が可能となっており、あえて権利制限規定を見直す必要性は小さいという意見があった。 したがって、本件については、図書館関係者から障害者にとっての権利制限の必要性を十分踏まえた、より具体的で特定された提案を待って、権利者団体及び図書館関係者間で行っている協議の状況や、国民全体が均等に、より高いレベルでの文化の享受しうるという観点も踏まえつつ検討することが適当である。 |
前のページへ | 次のページへ |
ページの先頭へ | 文部科学省ホームページのトップへ |
Copyright (C) Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology