(浜野委員) 先ほど村上先生がおっしゃったことと近いのですが、56ページの3ポツの実態を踏まえてということで、最近知ったことを参考までに紹介します。アメリカでも私的録音は大きな問題になっていて、P2Pなどの私的録音が本当に音楽産業の売り上げを低下させているのかどうかを調べた学術研究が数件あります(例えば、Mark Latonero, Survey of MP3 Usage: Report on a University Consumption Community. The Norman Lear center, Annenberg School for Communication, University of Southern California, 2000.あるいはFelix Oberholzer-Gee & Koleman S. Strumph, "The Effect of File Sharing on Record Sales." 2004.)。学術研究に関する限り、因果関係はないという結論です。
日本でも、慶應義塾大学の田中辰雄先生がアメリカの研究を元にして研究されていますが、それでも日本でも因果関係は認められない(田中辰雄「著作権の最適水準を求めて」2004)。ダウンロードする人の方が正規の音楽購買活動も積極的で、音楽産業に寄与していると解釈できる結果になっています。
そういった研究に必ず引用されているのが、米下院議会に属していた技術査定局(OFFICE OF TECHNOLOGY ASSESSMENT)が、カセットテープで音楽産業の売り上げを低下させているのではないかということを調べた1989年の調査報告書です。この調査でも因果関係が認められなかったようです(OFFICE OF TECHNOLOGY ASSESSMENT, U.S. CONGRESS, COPYRIGHT & HOME COPYING:TECHNOLOGY CHALLENGES THE LAW 163-65 ,1989)。
ですから、40ページの括弧に囲まれた中に示されているように、「著作権者等の利害を害している」ということが補償金制度の前提となっています。学術研究からすると、その前提が揺らいでしまうことになってしまいます。国状が異なるので、海外の研究がそのまま日本にあてはまるか分かりませんし、発展途上国ではまったく違う結果になると思いますが、こういった報告もあることも踏まえて御検討いただければと思います。